前回の記事では、こないだの記事(↓)で画像付きで触れていた「生の純品DNA」が、一体どのぐらいの数の塩基からできているのか、概算でチェックしてみるなどしていました。
改めて実際の絵があった方が分かりやすい気がしたので、小さなサムネイルですがリンクカードをまたペタッと貼りましたけど、このような白いモヤモヤがまぁ、液体の中に漂っているので「ちょっと湿り気のある(というか濡れた)DNA」であり、乾燥させたらもっと透明に近い、何というかフィルム状の物質になることが多いのですが、とはいえそれは少量だからそうなるのであって、大量にあったらまぁ、半透明だけど多少白っぽくも見えるカタマリになる感じですね。
この白いDNA、ほとんどの方は実物を見たことがないと思いますけど、まぁ何となくイメージがつくのではないかと思います……例えて言えば、こないだ「牛乳を温めたら出来る膜みたいな感じ」と書きましたが、「熱すぎるものを口にして、口の中の皮が剥けたときに、剥がれる薄皮」ってのもかなり近いかな、って気もしましたけど、「んなもん見たことねぇよ(笑)」って話かもしれませんし、まぁ普通に「湯葉」みたいな感じが近いと言えるかもしれません。
いずれにせよ、まぁひとつながりというか丁寧に伸ばしたらつながったまんま結構広げられそうな物質なんですけど(もちろん、適当に扱ったらすぐプチっと切れてしまいがちなのも、口の薄皮(やっぱりその例えが気に入った模様(笑))に近い気もします)、これは、仮にマクロのレベル(=現実世界で見える大きさ)でつながっていたとしても、ミクロのレベル(=分子レベルの、目には見えない大きさ)では沢山の独立したDNA分子が密集してくっついているだけに過ぎない感じです。
なので、前回の計算では、最初「600京個のヌクレオチド(塩基)がつながってできたものが、あのDNA」と書いていたんですけれども…
(ちなみに追記補足的なものですが、前回初稿アップ時は、あのカタマリを「3.3 mg」と仮定した「ミリ」の部分を完全に見落として「3桁多い数」で話を進めてしまっていたため、少し時間が経った後に追記修正しておきました。「約600京塩基」が、あの計算での正しい答えですね)
…実際はそうではなく、「1.4億塩基ぐらいの長さのDNA(それでも十分長いですけど、600京塩基が1列につながったものよりは遥かに短い)が、約214億分子ぐらい寄り集まって作られたモヤモヤである」というのが実態に近い…などと書いていた通り、長さもそこそこ長いけど、まぁそれよりも分子の数自体がとてつもない量集まって出来たものが、あの白い薄皮のカタマリみたいな物質だったと、そういう話でした。
(ちょうど、例えば塩や砂糖も、最小単位としては塩化ナトリウムやスクロースという原子2個あるいは数十個のめちゃくちゃ小さい物質なんですけど、大量に集まることで「1粒の白いもの」に見えるというのと全く同じですね。
食塩1粒は、「ひとつながりのカタマリ」に見えて、実は大量のNaClが集まって出来ているものである…というのはまぁ「そりゃそうでしょうね」と言える常識的な話といえましょう。
…せっかくなので復習がてら今回も実際の数を求めてみますと、食塩1粒の重さは約0.1 mgであり、NaClの分子量(NaClはイオン結晶の物質なので、正確には「分子」ではないのですが、んな細けぇこたぁどうでもいいですね)は58.44 g/molで、1モル=約6000垓個(ちなみに、これもかなりザックリの数なので、正確には少し違う値ですけどね、細かいこたぁ…の精神でいきます(笑))として計算すると……
…例によって単位に気を付けながら立式していけば一瞬で、
0.1 (mg) ÷ 58.44 (g/mol) × 6 × 1023 (個/mol) =1.026694 × 1023 (ミリ個)
…ということで、今回は前回の反省を踏まえて「ミリ」の存在を忘れませんでした(笑)、この「ミリ」=「1/1000」を指数を減らすのに忘れずにちゃんと使って、約1.026694 × 1020 (個)が答ですが、クソみたいに分かりづらい指数表記を日本語に直すと、ズバリ、約1垓個……あともう少しでクソみたいな「垓」とかいう単位ではなく、まだギリギリ馴染みがあると言える「京」という単位で表せたのに残念ですが(笑)、まぁ数字を全部書き下せば分かりやすいかもしれないので書き下してみましょう…ズバリ、塩粒一粒には、おおよそ……
1垓 266京 9404兆 5174億 5379万 8768個
…もの「NaCl(塩化ナトリウム)」という分子が存在している形なんですね、実に大量!!)
と、これを踏まえて、染色体の話に脱線展開していこうと思っていたのですが、ひとつ、その前にもっとミクロなDNAに関して触れておこうかなと思った話題があったので、まずそちらから見ていくといたしましょう。
それがズバリ、記事タイトルにもしました、「プリン体」についてで……
…まぁこれも実は、ずーっと前の分子生物学入門シリーズでヌクレオチドに触れた際、触れたことがあったのですが…
(この記事(↓)が最初で…
…他にも、もうちょっと突っ込んで触れた記事に、ビタミンについて見ていた時も話しに出してましたね(↓))
せっかくなので改めて、言葉の意味含めて、もうちょいしっかり触れてみようかなと思った次第です。
…ネタ不足・時間不足に悩まされている状況なので、思いついたものは藁でもすがって活用する感じになっております(笑)。
まぁこの「プリン体」ってのも、僕が幼い頃は聞いたこともなく、確か僕が高校生ぐらいの、世紀末あたりにはじめて使われ出した言葉(まぁ言葉自体は当然昔から存在したわけですけど、TVや雑誌で取り上げられ始めたのがその頃…って感じですね)だった気がしますけれども、多分世の中の99%以上の人は、「それが何かは知らないけれど、摂りすぎると良くないらしい。痛風…?」ぐらいのイメージしかないように思いますが、まぁ実際日常生活を送る上ではそれ以上のイメージは必要ないですし、飽食の時代にあっては過剰摂取しがちで悪者になりがちな物質であることは恐らく正しく、これはどなたも共通認識としてお持ちのことといえましょう。
で、「プリン体って何やねん」って話ですけど、これは当然、「茶色いカラメルの下に甘くておいしいプリプリの黄色い部分がある、富士山型のアレ」とは、言うまでもなく一切全く関係ありません。
とはいえまぁ、誰がどう考えても「プリン」なんてあのカップに入ったウマいヤツのイメージしかない言葉で、特に子供なら絶対に「プリン体だってぇ~、大人はあんまり食べない方がいいらしいよ、美味しそうだから食べたい!」って思うと思うんですけど、実際、本当の意味を知ってる僕ですら、「プリン体」とか聞くと、どうしてもあのプッチンプリンがプリ~ンとお皿の上に鎮座して、「美味しいけど体に悪いよ~」と囁いてくるかのようなイメージが頭に浮かんでしまいもすもんね(笑)。
相変わらず本題に入るまでにしょうもなさすぎる前置きが長すぎますが、プリン体とは一体何なのか、これはズバリ、「purine base」という英語で表されるもので、英語だとむしろ「ピューリン」と読まれる感じですけど、とりあえずプッチンプリンの方は英語で「pudding」なのでもう完全に、「ゴリラ」と「ゲリラ」ぐらいに全く違いすぎる言葉になっているものだといえましょう。
ではそのpurineですが、まぁこれは上でリンクを貼っていたビタミンBの記事で画像も貼っていた通り、「プリン」と呼ばれる分子がこの世には存在しており、それと同じ・類似の構造を分子内に持ってるモノを総じて「プリン体」と呼んでいるわけですけれども、では、なぜプリンはプリンなのか?
その謎を探るべく、インターネットの荒波を決死の覚悟で泳いでみたら、3秒ぐらいで見つかりました、アメリカの5ちゃんねること、我らがredditにそのものズバリのスレッドが立っており、回答もあったのでここからお借りするといたしましょう。
(redditの記事は、リンクカードが生成されませんでした。まぁ、シンプルな文字列リンクで十分ですけどね(↓))
「ピリミジンとプリンがそのように呼ばれる理由はあるの?あるなら、なぜ?」
(https://www.reddit.com/r/chemistry/comments/e2ryw/is_there_a_reason_pyrimidines_and_purines_are/)
あまり参考にはならないかもしれないけど、プリン(purine)という名前は「尿(urine)から単離された」を意味する、purum uricumという語に由来するよ。
イミダゾール(imidazole)からは、ピリミジン(pyrimidine)が得られるね。
そう、purineというのは「purum uricum」というラテン語由来の言葉で、これらはpurumが英語のpure、uricumが英語でuric acid(尿酸)という意味であり、ズバリ、「ピュアな尿」という意味の、まさかのプッチンプリンどころか、「純粋なおしっこ」という意味だったということで、そう聞くとそんなやつマジで摂取したくねぇーっ!(笑)
(まぁ、より正確には、reddit回答にあった通り、「尿から単離された」という感じの意味ですけどね、そっちの方がインパクトはデカい気がします(笑))
ちなみにもう一つの「ピリミジン」というのは、同じくDNA塩基も所属するグループで……
…っていうか、なぜ唐突に「プリン」の話を始めたのか、よく考えたらそれすら書いてませんでしたね。
ズバリ、DNAを構成する4つのヌクレオチド「A, C, G, T」は、ちょうどその半分が「プリン塩基」と呼ばれるタイプのもので、もう半分が「ピリミジン塩基」と呼ばれるタイプに分けられているのでした。
せっかくなので構造が一覧できるページがないかなぁ、と思ったら、DNAのヌクレオチドである「デオキシリボヌクレオチド」のウィ記事には画像がなかったんですけど、ちょっとだけ違う、RNAを構成するヌクレオチドである「リボヌクレオチド」の方には、4つの塩基が画像で並んでいました。
便利なのでこちらの画像をお借りさせていただきましょう。
なお、DNAは「A, C, G, T」の4種類でしたが、RNAは「T」ではなく「U」になるということで、ここでは「U」の構造が貼られており、「T」がハブにされているので、「T」だけ別途貼っておきましょうか。
ちなみに、「ヌクレオチド」というのは、左側にある「P」に代表される「リン酸基」、真ん中の、酸素原子Oを頂点とする五角形構造の「リボース」、そして右側に、ここが4種類の違いを生んでいる「塩基」が存在する形でして、まずDNAとRNAの違いは、ちょうどDNAの例である「T」をRNAの構造と見比べたらお分かりいただけるでしょう、五角形リボースの右下の頂点についているのが「OH」なのか「H」なのかという違いのみであり、
(「炭素原子につながっている水素原子は省略する」という原則があるので、DNAの方はHが省略されていますけどね。
なお、DNAには「酸素原子O」がないので、「ない」を意味する接頭辞「de」を使って、デ・オキシリボースだから「DNA」となっています。当然、RNAはそのまんま「リボース」だから「R」ですね)
…例えば同じ「A」であれば、DNAとRNAを構成するヌクレオチドは、その「OHかHか」の違い以外は、全て完全に一致しています。
ただし、TとUだけ、「リボースの酸素の有無」以外に塩基も微妙に違うものの(だから違う名前になってるわけですが)、実はTとUを見比べていただければわかる通り、TとUの違いは「線が1本あるかないか」の違いでしかなく、
「線の先には炭素原子があり、炭素は4本腕なので、残り3本の省略された腕には水素原子がくっついている」
という有機化合物の構造を描く際のルールから、より正確には「-CH3」ですけど、「たかがそれが有るか無いかだけ」というめちゃくちゃ些細な違いでしかないんですけれども、生物の持つDNAには必ずTが、RNAには必ずUが使われているぐらい、厳密に使い分けがされている形になっています。
(というかそんなこと言ったら、たった1つの酸素原子あるなしの違いで、DNAとRNAという完全に違う分子になるわけで、1原子の違いは、ミクロの世界ではあまりにも違うともいえるんですね。)
まぁその辺の違いは本題ではないので話を戻すと、結局DNAというか4種のヌクレオチドは「塩基が違う」だけで他は完全に同じなんですけど、果たしてA, C, G, Tのどちらがプリンでどちらがピリミジンなのでしょうか?
これは、最初に貼ったビタミンの記事でも貼ったことのあった、以下の画像を見れば解決ですね。
そう、この「プリン」と同じ構造を持つ塩基はどれかと考えてみたら、見ればいいだけで考えるまでもなく(笑)、AとGが「プリン塩基」であり、一方残りのCとT(そして当然、そっくりなUも)が「ピリミジン塩基」に分類される…というお話なのでした。
まぁ、「そういうグループ分けをしたとして、だから何だよ」って話なんですけど、生化学系の研究ではその分類は案外重要で、「この結合には、ピューリン塩基が関わっており…」みたいな感じで、「プリン」やら「ピリミジン」は、マジで死ぬ程よく聞きまくる違いになっているのです。
正直、プリン体がなぜ痛風につながるのか、ぶっちゃけ僕はそっちの栄養学系はモグリなのでよく分かりませんけど、まぁ多分痛風の人はプリン体の濃度が高く出ているのでしょう。
個人的には、DNAやRNAとして、体の中にそれこそ何億万兆個もプリン塩基化合物なんて存在してるのに、本当にそんな悪者なのかね…?と思えますけれども、まぁ何事も食べ過ぎず、控えめにしておくのに越したことはないのかもしれません。
なお、先ほどのreddit記事で「プリン/ピリミジンの違いの覚え方」を教えてくれている女の子がいたので、最後にそれを引用して今回はおしまいといたしましょう。
めちゃくちゃバカみたいな覚え方なんだけど、プリンが2つの炭素リングをもってることを思い出す方法があるよ。結婚するとき、そのカップルはピュアだから、プリンにはリングが2つあるんだ。…馬鹿にしないでね。敬虔なクリスチャンの女の子が、高校生の時に考えた覚え方だよ。
これを見る限り、英語圏の学生には「Purine」が「Pure」から派生した語であるというのは感覚的に明らかである話なように見受けられますけど、まぁプッチンプリンしか浮かばない日本人には全く通じない、無意味な覚え方ですね(笑)。
とはいえそう、「プリンがリング2つで、ピリミジンはリング1つから成る塩基だ」ってのは、生化学系の学生なら覚えておきたい重要ポイントといえましょう。
一般的には、どうでもいいにも程がありますが(笑)。