僕らはいくつのDNAでできてるの?

一連のDNA・染色体シリーズ、前回は唐突にプリン体の謎に迫った形(というほど何の謎にも迫っておらず、ただ「実際どういう分子なのか」を見てみただけ)でしたが、染色体へと話を進める前に、もうちょいDNAに関して脱線できそうなネタが浮かんだので、今回もそちらに逸れてみようかと思います。

 

まぁもう何回も貼っている、「純粋なDNAが形となって現れた状態」の画像がこちらのサムネイル(↓)で…

con-cats.hatenablog.com

 

…既に語り終えた話かと思いきやもうちょっとだけ擦らせていただくと、写真右側の試験管の液体中に漂うDNAは、まぁ大体3.3ミリグラムぐらいのものと仮定して、

「1.4億塩基ぐらいの長さ(=ヒト染色体1本の平均の長さ)のDNAが、約214億分子ぐらい寄り集まってできたもの」

と、計算から求めていた感じでした。

 

そこまで書いても、出てくる数字が大きすぎるだけに正直何のイメージも湧かないのが実際だったかもしれませんけれども、要は「染色体が214億本ぐらい集まって形成されたカタマリ」がこんな感じになると、そういう話だったわけですが……

「そもそも俺ら人間には、どのぐらいの数の染色体があるのさ?このカタマリは、俺らの何分の一ぐらいの存在なん?」

…という問いかけに対してまた考えてみることで、もう少し理解が深まるかもしれませんね。

 

それを考えていく上で、まず、「1つの細胞に染色体は何本あるの?」という話から始めるのが良さそうですが、これはズバリ……まぁせっかくなのでぜひ考えてみていただきたいんですけど、こういうのも正直、きちんと物事が理解できていないと全く見当外れの値が頭に浮かんでしまいがちな話ではないかと思います。

 

「染色体1本の長さは、平均1.4億塩基」ということで、その規模感からいったら、

「細胞の中には染色体は数億本ぐらいあるのかな?…いやいや、塩ひとつぶが『数千京個の分子』が集まってできたものだとか前回言ってたから、億なんて生ぬるいもんじゃなく、兆を通り越して、また京とか垓 (がい) とか、そういう天文学的大きさのケタ数が含まれてるんちゃいますのん?……などという気もしてしまうかもしれないんですけれども……

 

…残念ながらこれはまさかの、全然惜しくもない数字になっているのでした。


まず生命科学の基本として、「細胞」というのはその生物の持つ全遺伝情報が詰まった「核」という構造を含んでおり、いわば「生命の最小単位」「一通り自分自身の遺伝子が全部揃った、自分そのものを形成している小部屋」といえるわけですが…

(まぁ「細胞」も細胞で、一口に「細胞」と言っても様々な形になって色々な細胞が存在しているのが特徴ですから、「染色体」同様、これもまた追って細かく見ないと「な~んか結局よく分かんねぇんだよなぁ…」という気分が晴れないのではないかと思えますけれども、とりあえず今回の本題ではないのでまたいつかの機会としましょう)

…まぁそう聞くと、「全遺伝子が詰まってるんなら、やっぱりめちゃくちゃ数がありそうだけど……もしや「垓」の上の単位になるとか?」と思えるかもしれないんですけど、もう少し冷静に考えてみると……

  • 精子や卵といった生殖細胞は、人間を形成するのに必要な全遺伝子が乗った染色体を、「常染色体として22本、性染色体(XまたはY)として1本」の、合計23本持っており、これらが融合することで、2n=46と表される、受精卵という細胞が誕生し、新しい人間となるのである

 

…なんて話をこないだチョロっと書いていたのも記憶に新しいと思うのですが、そう、受精卵には染色体が46本(=23本で人間に必要な全遺伝子が乗ったセット、それが2組)あり、それを踏まえて考えると、受精卵が単純に(自分をコピーしながら)分裂し続けて増えていった全身のあらゆる細胞もそれと同じで、実はなんと、1つの細胞の中に含まれる染色体の数ってのは、わずか46本でしかなかったんですね!

 

……って、一人で勝手に「億?京?」とか話を進めてただけで、別に誰もそんな風に考えてなかったんですがそれは……って感じだったかもしれませんけれども(笑)、めちゃくちゃな数存在するのは、あくまで染色体を構成するDNA(を構成する、塩基・ヌクレオチド)の数であり、染色体自体は、1つの細胞にたったの46本しか存在しません。

 

ちなみに23種類の染色体は大きさがちょっとずつ違うんですけど、平均すると1.4億塩基というサイズになっているという話だったわけですが……

それを踏まえると、例の画像の白モヤDNA、あいつは「1.4億塩基ぐらいの長さのDNAが、約214億分子ぐらい寄り集まってできたもの」だった感じなわけですけど、「1つの細胞には、46本の染色体が存在する」という話ですから…

(改めて、各染色体のサイズは少しずつ違うんですけど、「平均すると1.4億塩基」ですから、「全部その大きさ」と仮定して問題ない感じですね。それが「平均」というものなので)

…ズバリ、214億÷46で、これを計算すると「約4.65億個の細胞」から得られたDNAが、写真のあいつだったと、そういう話になるのでした!

(この計算についても、まぁこんぐらいのレベルの話なら深く考えずそのままいけると思いますけど、例によって単位も一緒に考えるのが賢い人間のやり方であり、あえて分かりやすい単位をつけると、

「214億 (本の染色体/白モヤ物質)」

「46(本の染色体/細胞)」

…なので、これを割り算すると、単位は「(細胞/白モヤ物質)」が残る形となり、これは日本語でいえば「白モヤ物質1つあたりの、細胞の個数」ってことになるわけですね……何か回りくどくて、むしろ分かりづらいにも程がありますが(笑))

 

ということで、あの白モヤDNAは、約4.65億個の細胞から抽出されたものだと分かりましたが、人間の成体は、合計いくつの細胞からできているのでしょうか…?

これもまぁ諸説ある上、言うまでもなく個人差もある(のみならず細胞分裂や細胞死は毎日行われているので、結構な幅だってあるはず)わけですが、まぁ大体概ね、「60兆個の細胞が集まって一人の人間となっている」と昔からモノの教科書には載っていましたけど、最近の学説では「約37兆個の細胞」という数字が最も有力のようですね。

 

まぁどうせ正確な値は分かりませんし、間を取って最新の定説よりも少し細胞の多い巨人なんかを想定してみまして、約46.5兆個の細胞をもつ人から採取してきたDNAだったと仮定すると(あまりにも計算を楽にしたい意図が透けて見えすぎますが(笑))、あの白モヤは4.65億個の細胞由来のものでしたから、4.65億÷46.5兆=「10万分の1」、つまり人間1人のおよそ0.001%程度にあたるDNAがあのぐらいの大きさになるということで……まぁ、そんな「0.001%」なんて言われても、別に「へぇーそっすか」ぐらいの、特に何の感銘も感動もない話ですけどね(笑)。

 

逆にいえば、あの白いモヤモヤを10万個集めてくれば、人間ひとりの持つ全てのDNAの量ぐらいに相当するということで、まま、これも「10万個集めて…」とか言われても人生で10万個の何かを集めることなんてあるわけないので結局何もイメージつきませんし、言うほど全然おもんない話でしかないかもしれません(笑)。

 

…と、本当は今回も、そんな話から、「そういえば実際DNAってどうやって取るの?」みたいな話に脱線しようと思っていたのですが、何か似たような数字をこねくり回すだけの話で、既に結構いい分量になっていました。

ということで続きはまた次回にまわさせてもらうとして、あぁ、記事タイトルに挙げた、「僕らはいくつのDNAから出来ているのだろうか?」という問については、まぁ、「DNA」って言葉も何だかんだ色んな意味を持つ漠然とした用語であって、「ひとつながりの分子」という意味で言うなら、正直ぶっちゃけひとつながりのDNAがグルグル巻きになってできた「染色体」が46本あれば、それでその人の持つ遺伝情報は完全に網羅されていますから、

「君は、たった46本のDNAから出来ているのである!」

…とも言えますし、「XX個のヌクレオチドから成る分子」を「XX塩基のDNA」と呼ぶなら、

1.4億 (DNA塩基/染色体) × 46 (染色体/細胞) × 46.5兆 (細胞/成体) = 約3000 垓 (DNA塩基/成体)


…ってな計算式で、ズバリ、ヒトの成体1人には、約3000垓塩基ものDNAが含まれているということになりますから、

「君は、なんと3000垓個もの分子がつながった、とてつもない数のDNAで出来ているのである!」

…とも言える感じで、我々は大小どちらでも驚けるお得な物体になっているといえましょう(笑)。

 

まぁ、「どっちにしろワケ分からんわ」って話かもしれませんけど(笑)、ただそれでいえば、そのDNAの概ね半分がプリン塩基に分類されますから、

「俺らは1500垓分子ものプリン体を、遺伝子として全身に抱えているんだよ!」

「な、なんだってー!!」

…なんてことも言えるかもしれませんね(まぁ「ガイ」とかいう単位が身近じゃなさ過ぎて、これまた何の驚きもない気もしますけど(笑))。

 

と、今回はまたまた数字いじりだけのネタだったので、特に画像候補が何もありませんでした。

今回の話とは全く関係ないですけど、最後プリンにも触れていましたし、前回のプリン記事で全く触れなかったもう一方の片割れ、ピリミジンの方も、せっかくなので語源となっている化合物の構造だけ貼っておこうと思います。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ピリミジンより

「リング2つ」がピュアなプリンでしたが、ピリミジンはリング1つ……有名な六角形分子ベンゼン環の、2つの炭素が窒素になっているものという形でした(特にそれ以外何もなし(笑))。

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