本領発揮の呼吸・最終ステップ!

長らく見ていた呼吸ネタも、前回、第二段階でありグルグルと様々な中間体を経由してエネルギーの素が生み出される「クエン酸回路」を、ようやく一通り見終えていました。

 

以前から何度もお借りしていた「細胞呼吸」全体の概略図イラストを改めてお借りする形で戻ってみますと……

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/細胞呼吸より

クエン酸回路がまわることで、同時進行的に(これは「解糖系の最終産物ピルビン酸が使われてクエン酸回路がまわりだす」みたいなハッキリした順番があるわけではない感じですね)進んでいく反応が、ズバリ、最後にしてこれこそが呼吸の本領発揮といえるラストステップ・「電子伝達系」!

 

主力といえるステップなのに無駄に画像が小さい上、これまでの2段階とは違い、炭水化物が形を変えて反応が進んでいく流れとは少し違うので分かりにくいですけど、画像をよく見たらお分かりいただける通り、まずこれは細胞内に存在する小器官(細胞の中に浮かんでいる小さな顆粒、小部屋みたいなもんですね)であるミトコンドリアの、内側の膜(ミトコンドリアは、二重膜であることも特徴です)で行われる反応になっています。

 

こちらはここ最近ずっとお世話になっていた、単独記事により詳細な図が用意されていたクエン酸回路とは違って、ほとんど同じ…どころかカラーリングがしょぼくなってむしろ分かりづらくなってるまであるかもしれませんけど(笑)、少し大きく描かれているものがあったため、こちらも単独記事からの概略図もお借りさせていただきましょう。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/電子伝達系より


…まぁ、やっぱり余計に分かりにくい図に思えますが(笑)、ごくごく簡単にまとめると……

まず、これまでのステップではNADやFADといったビタミンの一種が還元状態に変換される反応もあり、これが後ほど効いてくるのです……などと解糖系・クエン酸回路の説明のときにチラッと書いていましたが、ズバリ、そいつらを積極的に活用した、こんな感じの流れになっているのです。

  1. 還元型のNADHが、改めて酸化される。
    (基礎知識を再度おさらいしておくと、酸化というのは「酸素がくっつく」というのは当たり前すぎて誰でも知ってる話であるものの、全く同じように「水素が離れる(同じく電子が離れる)」というのも立派な酸化反応であり、ここでの「酸化される」というのは、要はNADHから水素イオンが取れるということになっています(もちろん、途中で酸素の力も借りているわけですが)。)

  2. その新たに発生した水素イオンが、ミトコンドリア内膜に埋まっているポンプの力で、膜の外に運ばれる。
    (とはいえ、内膜と外膜の間なので、運ばれた先もまだミトコンドリアの内部であることには変わりありませんが)。

  3. ポンプの力で、水素イオン濃度は内膜を介して強制的に勾配が産まれているが、物質というのは勾配があれば当然、均等に戻ろうとする。
    その、「内膜の中」に戻る道にいるのが、ポンプと同じく内膜に埋まっているATP合成酵素であり、この酵素は、水素イオンを通す度に、ATPを合成することが可能となっている!
    (より正確には、「ADPをリン酸化する」……ATPはリン酸基が3つ(トリ・リン酸)で、ADPはリン酸基が2つ(ジ・リン酸)の分子でした。)


…まぁ案外大した話でもないんですけど、ポイントは水素イオンの移動にあるので、僕が高校の頃はこの反応を「水素伝達系」と習ったものの、実際水素はポンプの力で移動しているだけなので、実際に膜の中で伝達されているのはむしろ酸化還元反応で同じく授受される電子ともいえるからか、今では「電子伝達系」という呼び名に統一化されているとのことですね。

 

(画像をお借りした「電子伝達系」のウィ記事冒頭にも、

水素伝達系という言葉は高校の教科改定で正式になくなった(ただ言葉として使っている人はいる)。

…とありました。)

 

また、↑の説明からも明らかな通り、電子伝達自体も実はATPの合成においてはあくまで主役とはいえない感じですから、「酸化反応が起こることで、ADPがリン酸化されてATPが得られる」というのが本当のポイントといえることもあり、大学で学ぶ代謝では、「酸化的リン酸化」という用語の方がフィーチャーされ、「解糖系・クエン酸(TCA)回路・酸化的リン酸化」という3ステップで語られることも多いですけど…

(最初のイラストを借りた「細胞呼吸」のウィ記事も、(イラストでは「電子伝達系」という言葉も使われていますが)記事本文ではその記述になっていますね)

…しかしまぁ正直、これまた何度も書いている通り、名前なんて人間が勝手に名付けてそう呼んでるだけで、物事の本質的なものでは全くないですから、呼び方なんてどうでもいいといえましょう。

 

大切なのは中身なので、呼吸の目的である「ATPの産生」に目を向けてやりますと、まず、呼吸の出発物質であるグルコース1分子を基準にしますと、解糖系ではATPが2分子、そしてクエン酸回路でもATPが2分子作られていました。

 

もちろん呼吸する主目的であるATP自体は作られているため、エネルギーはきちんと作られているといえるわけですけど、ハッキリ言ってこれは電子伝達系を回すための前座に過ぎず、なぜ生物は酸素を使うようになったか、酸化的リン酸化のエネルギーの凄まじさが、ズバリここに集約されているのです……

 

そう、電子伝達系で産生されるATPはこれまでとは桁違いの大きさを誇り、グルコース1分子あたり、まさかの34 ATP!!

 

酸素を使わない解糖系ではたった2 ATPしかできず、一応酸素を使う「好気呼吸」の一部とはみなされるものの、クエン酸回路でも2 ATPであり、「こちらはあくまで電子伝達系を走らせるための準備期間といえるでしょう」などと書いていた理由もお分かりいただけましょう、酸素を使うことで、圧倒的に高効率でATP=エネルギーを産み出せる形になっているんですね。

 

酸素を使わずに進めることのできる代謝経路と比べて、本当に圧倒的な違いです。

(具体的には、完全に酸素なしで進むのは解糖と乳酸代謝で、2 ATPのみ、一方好気呼吸が進めば38 ATPとなるので19倍もの差(まぁ、その内2 ATPは解糖系自身の寄与なので、2と36の差で18倍といえるかもしれないものの、いずれにせよ大差)になっている形ですね。)

 

約60兆個といわれる全身の細胞にくまなくエネルギーを送り続けるためには、酸素の力を借りないととてもじゃないけど間に合わず、したがって我々は息を止めたらすぐに苦しくなるし、酸素の供給が断たれたらホンの一瞬でコロリとお陀仏してしまう形になっているのでした。

 

しかし実を言いますと、僕も高校の頃に呼吸3ステップでそれぞれ2+2+34のATPが合成されると習ったんですけど、実はこれ、正確にはどうも必ずしもそうではないということが、近年の研究で分かってきているのです。

 

その辺の話にも入っていこうと思っていたのですが、またしても時間のない状況が続いており、そちらに関してはまた次回、せっかくなのでもうちょい細かい点にまで触れてみようかと思います。

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