脇役も見ていこう(前半)

前回の記事で、ようやくクエン酸回路の概略について見ていましたが、先述の通り、もうこれは細かい物質まで把握する必要は皆無の話になっているように思えます。


(まぁそんなこと言ったら解糖系の反応経路・中間産物とかもどうでもいいっちゃどうでもいいし、むしろ高校生物とかだと解糖系の方が端折って語られてたレベルだった気もしますけどね…!)

 

とはいえ、あまりにも時間がない日が続いているため、ネタを考えずに脳死で構造を貼って一言二言浅いことを言って終わりそうな感じで済みそうですから、今回はクエン酸回路の各中間産物、主役たるクエン酸は既に見ていたので、他の脇役たちを見ていくといたしましょう。

 

前回もお借りした、クエン酸回路の詳細図(↓)に…

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/クエン酸回路より

 

…何気に黒い炭素と赤い酸素の球棒モデルで、構造自体は示されていたものの…

(消し炭のイメージと燃焼のイメージとで、こういったボールモデルのカラーは常に、炭素=黒、酸素=赤で、あとは軽いから水素=白、空気のイメージで窒素=青、それから日本語だと名前にも入っているし、卵のイメージなんかからも硫黄=黄色(あぁ、よく見たら硫黄はイラストにも登場していました)ですね。

 他には、塩素が黄緑色の煙であることから、塩素=緑だった気もしますし、あとここ最近登場しまくっている、生体分子で主役ともいえるリンはどうだったかな……と思ったら、流石はウィッキー先生、カラーリングのまとめ記事もありましたね(↓)!

ja.wikipedia.org


…↑のまとめによると、現在幅広く使われている配色だと、リンはオレンジだそうで、まあまあ、赤リン・黄リンなんて言いますし、両者はもうよりイメージまんまのものに取られているので、その中間の橙ってのも納得ですね。)

 

…とカラーリングの脱線が長くなったので仕切り直すと、このイラストは、よく見たらちゃんと二重結合は二本の腕になっているなどしっかり描かれたものにはなっているものの、やっぱり文字を使った構造式よりも視認性は悪いので、どちらかといえば構成・形が把握しやすい「構造式」を順に並べていくことで、クエン酸回路における物質変化を見ていこうかと思います。

 

まず、主役のクエン酸は既に画像も貼り、構造についても何度も「カルボキシ基 -COOHが3つ、それぞれ別の炭素原子とくっついている」と書いていた通り、こんな感じ(↓)の、化学式「C6H8O7」という分子になっています。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/クエン酸より

 

そして、このクエン酸が、脱水反応によりH2Oが失われることで、次の「cis-アコニット酸」になる感じですね。

 

構造異性体の両方が掲載されているページだったので、せっかくですし並べて表示しておきましょう。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/アコニット酸より


シス・トランスについては、以前の「楽しい有機化学講座」シリーズ、二重結合の回なんかに見たことがあって(↓)…

 

con-cats.hatenablog.com

 

…まぁ、二重結合以外の残り2本の腕で、炭素(あるいは同じもの)が同じ側に来るのがシス、反対側に来るのがトランスですけど、こないだの鏡像異性体よりも、紙に書くだけで違いが非常に分かりやすいので、これは覚えやすいものですね。

 

クエン酸回路でクエン酸が変換されてできるのはシス体のアコニット酸になる形です。

 

クエン酸(C6H8O7)からH2Oが取れてC6H6O6になるということで、構造を見比べても、シスになるのは明らかといえますね(クエン酸中央のOHと、画像では省略されているHが合わさって、水分子として取れるだけ)。

 

特にこんな雑魚に用はないのでとっとと次の分子に行きますと…


(実際、こいつは速やかに次の分子に変換されるもので、WikiPクエン酸記事にも、

2, 3 の反応は同一の酵素によるものであり、教科書によっては省略されて

クエン酸 → イソクエン酸

となっている場合も多い。 

…などとありますしね。)

 

…続いてはイソクエン酸で、「イソ」ってのは構造がちょっと違うものにつけられる接頭辞ですから、これはズバリ、クエン酸の配置換えバージョンということで、何気に主役のクエン酸とめちゃ近ですね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/イソクエン酸より

90°回転していて見づらいことこの上ないですが、例の余計な「OH」が、中央の炭素ではなく隣の炭素に移動している形です。


面白いことに、さっき脱水したというのに、なんとここではまた水分子が付加されることで構造が変わるという形で、本当に「アコなんとかさんは何やったん(笑)」レベルなんですけど、まぁ実際生体内ではこういう変換が起こって反応が1つずつ進んでいる感じだといえましょう。

 

とはいえこちらも「クエン酸回路の中間代謝物」であること以外何の特徴もないクソザコ分子なので、さっさと次の分子に移行しますと……

 

…おっ、前回は気付きませんでしたが、そういえば↑のイラストも完全版ではなく、実は端折ってる分子がいたんですね!

 

まぁこちらさんが唯一の省略といえますけど、画像では「イソクエン酸が脱炭酸されてα-ケトグルタル酸」という形になってますけど、Wiki記事中でまとめられていた表の方では省略されずに掲載されていました、実はその間にはもう一つ、オキサロコハク酸なんてのがいるんですね!

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/オキサロコハク酸より

これも当然、クエン酸に大変近いのですが(COOHを3つ持ち)、NADが還元される=自分自身は酸化される反応で生じるものがこれでして、ズバリ、化学式的には水素がいなくなることで(=「酸素がつく」のの反対で、「水素が取れる」のも典型的な「酸化される」現象でした)、クエン酸(やイソクエン酸)ではCOOH以外についているものとしてOHだった所が、二重結合のOになったという感じなんですね。

 

クエン酸は中央にOHでしたが、イソは1つズレた所にOHでしたけど、こちらはイソクエン酸から直接変換されたものなので当然、真ん中からズレた位置の炭素につながった酸素が二重結合になったという形です。

 

(化学式も当然、C6H8O7からHが2つ減った形になっています。)

 

この辺、〇〇酸の前半部が行ったり来たり、似たような接頭辞がついたりつかなかったりで名前は結構ややこしいですけど、逆に、クエン酸回路の流れを覚えることで、「構造→名前」の方向で思い出せる形になっているものかもしれませんね。

(まぁ、僕も覚えたのは遠い昔で、代謝が専門でもないのでこの辺の話はすっかり記憶から薄れていたため、「そうだったそうだった」レベルでしかありませんが(笑))

 

そんなわけでオキサロコハク酸が得られたものの、これまた先ほどのアコなんとかさん(こいつだけ扱いが悪すぎますが(笑))とイソクエン酸の関係と同様、こちらも同じ酵素で速やかに次のステップへと変換されるため、脇役中の脇役であり、イラストからすらハブられていたものだったわけですが、次は満を持して「カキクケコオ」に出てくるメジャーどころ、α-ケトグルタル酸になるわけですね!

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/Α-ケトグルタル酸より


ここでは、例のキーポイントとなる反応、「脱炭酸」が起こるのでした。


なので、化学式も先ほどのオキサロなんちゃらさん(C6H6O7)からCO2を奪い取ってやった、C5H6O5になってる形ですね。

 

もちろん実際の反応機序=電子のやり取りはもうちょい複雑なんですけど、形の上では、真ん中のCOOHからCOOが外れていなくなり、そこと手をつないでいた炭素原子はHのみが結合相手となりますから、構造式のイラストからは省略される形で、上図のように落ち着く感じだといえましょう。

(その辺、有機化学に不慣れな方にはかなり「???」ポイントかもしれませんが……)

 

ちなみにこちらは語呂に採用されていることからも分かる通り(どうしても「カキクケコオ」を贔屓したい模様(笑))、やはりメジャーな分子であり、ウィ記事をご覧いただければ明らかですけど、この人はクエン酸回路以外にも、その他いくつかの生体反応で顔を出してくる重要物質になっています。

(例えば、↓のような「抗老化」機能なんかもあるようで…

抗老化

αケトグルタル酸を線虫に摂取させると寿命が平均しておよそ50%伸びることが示された

…これは初耳でしたが、サプリとかで名前を聞いた覚えまではないものの、中々に面白そうな分子だといえましょう……っていうか寿命+50%とか、スゴすぎぃ!(笑)

 流石に人間で同じ作用が見られることはなさそうですが、これは本当に興味深いですね)

 

…と、そんな感じで僕は学生の頃クエン酸回路の反応を一応ひとつひとつ覚えていた…という話にすぎず、大した内容でもないですし一気に全部見てしまいたかったのですが、例によってちょっと時間切れとなってしまったので、かなり中途半端になってしまって恐縮ですけれども、ちょうど半分ぐらいの「ケ」まで行った所で、回路後半戦はまた次回まとめていこうと思います。

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村