二重の極み!

こないだ中途半端に話に出したままになっていた脂肪ネタ、今回そちらに触れていこうと思っていたんですが、その前にこちらのネタに触れておく方がいいかなと思ったので、今回はこれ、既に何度か顔は出していたけど詳しくは触れていなかった、二重結合

元々いきなり始まったこの有機化学講座のきっかけだった、DNA・RNAの塩基部分なんかにも既にしれっと存在していましたが、炭素原子Cは腕4本、酸素原子Oは腕が2本あり、お互いに過不足なく手をつないでいる…とかいう有機物の構造の話で、実は、原子同士は腕2本を同時に使ってがっちりつながることもできる、というただそれだけの話ですね。

まぁもちろん、「そもそも腕ってなんだよ、手をつなぐって、実際何がどうなってんのよ?!」という疑問をもたれるかもしれないんですが、これに関しては、もう何度もそう書いて逃げてる通り、電子密度や軌道が絡んでくる話…もうちょい分かりやすく書くと「原子核の周りに存在している電子を、別の原子核共有する」みたいな、全然分かりやすくもないクソみたいな話になってしまうため、少なくとも入門編の今の段階では、気にしないのが一番ですね。

ただ、この辺は図を見ながら考えれば非常に分かりやすい形になってますし、「とりあえずそういうものだ」と受け入れさえしちゃえば、割と簡単に「ホンマや、全部理屈どおりになっとんね!上手いことできてるなぁ~」という感じになって、単純明快かつ色々な新しい知識が得られて面白いので、よく分かんなくてもとりあえずそれでヨシとする価値のある話といえましょう。

相変わらず御託が長くなりましたが、今回の話は二重結合です。

有機化学の主役は炭素C、そして一番簡単な結合相手は腕が1本しかない水素Hなので、常にまずは炭素と水素だけから成る炭化水素から考えていくのが基本なのですが、最も簡単な炭素1つのみから成るメタンCH4は、当たり前ですけど、水素Hが腕1本しかないので、二重結合をもてないんですね!

なので、最も単純な二重結合をもつ物質は、Cが2つ必要であり、この2つの炭素が二重結合で結ばれた(C=C)物質は、地味にどこかで聞いたことのある物質、エチレンと呼ばれるものになります!

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https://ja.wikipedia.org/wiki/エチレンより

こちらWikipediaの画像にもある通り、それぞれの原子間の角度や長さも正確に分かっています。

pmコメート)は、あまり見慣れない単位かもしれませんが、これは0.000000000001メートルですから、どのぐらい短いかというと、まぁ、めちゃくちゃ短いですね(日本語にすると、1兆分の1メートル)。

ちなみにこの手の単位の接頭辞は、1000倍(=103(10の3乗)ごとに変化するということを覚えておくのは、理系知識で最重要のものの1つでしょう。

日本語や中国語は1万倍ごとに単位が変わりますが(万・億・兆…)、欧米圏は1000倍ごとに変わるため(サウザンド・ミリオン・ビリオン…)、この手の単位も欧米中心の考え方でアジア不利ですが、まぁ仕方ないですね。

大きい方は、103kキロ)、106Mメガ)、109Gギガ)、1012Tテラ)ぐらいが日常生活でも登場する単位でしょうか。

一方、 小さい側が、日常生活ではあまり登場しないけど化学や生物では頻繁に出てくるやつらですね。

10-3mミリ)、10-6μマイクロ)、10-9nナノ)、10-12pピコ)、10-15fフェムト)…あたりまでが、実際の研究とかでもよく使う単位です。

(マイクロだけギリシャ文字が出てきますが、これだけアルファベットにしなかった人、頭イカれてるんじゃねーか…?と思いますが、ギリシャ文字が使えない環境では、やむなく似てる文字であるuであらわすことが多いですね(umとか)。)

また、100から1/100(=10-2)までは、この範囲はよく使うものですから1000倍以外にも単位があって、102hヘクト)、101daデカ、これは全く使われませんが)、10-1dデシ)、10-2cセンチ)ですね。

まぁ、hは気圧のヘクトパスカルぐらいしか(面積のヘクタールでも出てきますが、そもそもアールなんて使わないし)、デシは小学校でしか使わない気がするデシリットルぐらいでしか使わない(一応、医療分野では、血糖値とかの検査値として顔を出すこともありますが)ですけどね。

センチだけ、ずば抜けて優秀というかよく登場する有能マンですね(っても、これも長さでしか出てこないですけど)。

覚え方は、まぁこんなの自動的に覚えるレベルですが、ナノがナインということを覚えておくと、ふと忘れてしまったときでも、そこを基準に考えやすい気もします(ピコはナノの次だから…-12乗か、みたいな)。

他にも、センチメートルって、何メートルだっけ?って迷ったときなんかも(そんなこと迷うことなんてない気もするけど)、「centは…100セントで1ドルだっけ?いやアメリカの金も自信がねぇな、あぁ、センチュリー=1世紀は100年だし、パーセントは百分率だから、centは100を意味する用語なのは間違いな!ってことで、1/100だな」とか、そういう、ド忘れしたときのために何か意味のあるもので関連付けをしておくのは大切かもしれませんね。


どうでもいい単位の話で脱線しましたが、二重結合に話を戻すと、炭素と水素だけから成る一番単純なものを「アルカン」と呼んでいるということは以前書きましたけど、ここに二重結合が入ったものは「アルン」という名前というかグループ名になり、「~アン」を「~エン」に変えることで物質名になります。

しかし、一番よく出てくるC2つのこれは、エタン→エテンと思いきや、こいつは慣用名の方が使われるという鬱陶しいパターンで、エチレンと呼ばれるんですね。
(もちろん、エテンと呼んでも間違いではありません。でも、ほとんどそう呼ばれることはない、という例のパターンですね。)

しかも、次に単純なC3つのやつも慣用名呼びが普通で、プロパン→プロペンと思いきやプロピレンになるという罠のような感じ……
(くどいですが、プロペンでも間違ってはいませんけどね。)

一応、C4つからはブタン→ブテンとルール通りのシンプルネーミングにはなりますが、C4以降のものはほとんど登場しない(少なくとも、高校化学の範囲では、名前以外に登場しないレベル)ので、実質「アルケン」というグループ名なのに、「語尾をエンに変える」というルールが役に立つことがほぼないというふざけた感じになっています。

しかし、実はずっと前の記事で、この「エン」については、一度登場していました。

果たして覚えてらっしゃる方などいるのでしょうか、そう、それは、DHAこと、みんな大好き力水

con-cats.hatenablog.com
ドコサヘキサエン酸という口に出して読みたくなる日本語(?)に上の記事で触れていましたが、有機化学の知識を得た現在、改めておさらいしてみましょう。

まず、有機物の全ての始まりというか基本は、炭素骨格です。

このDHAは、炭素がまさかの22個もつながったもので、22は例のギリシャ語由来の言葉docosaから、ドコサンというどこか北海道っぽい可愛い名前のアルカンです。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ドコサンより

構造式は当然、こんなシンプルな、CもHも省略するやつだとただのジグザグという分かりやすいものになります。

こいつに二重結合が1つつけばドコセン(ただ、何番目のCに二重結合がつくかで名前も変わるので、1-ドコセンとか、5-ドコセンとか色々なパターンはありますね)となりますが、DHAは、まさかの、二重結合が6つも!

なので、「OHが2つあるメタンが『メタンオール』」だったみたいな感じで、こいつも、6のギリシャ語ヘキサをつけて、ドコサヘキサエンになるわけです。

(そしてもちろん、位置を明示するために、正確にはドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエンとなります。二重結合の場所は後述の画像でチェックしましょう。)

そして最後、こいつは末端がカルボキシ基(-COOH)になっているのですが、これも既に登場していました、-COOH基をもつものは、カルボン酸というグループになるというルールでしたから(例:ギ酸や酢酸)、語尾に「~酸」がつくわけですね。

ということで完成しましたドコサヘキサエン酸…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ドコサヘキサエン酸より

これまで見てきた知識で、こいつがどういう物質なのかが、完全に手に取るように分かる感じになっていたんですね!

必要な知識は多いけれど、一つ一つ見ていけば全て理解できるようになっているという、有機化学の醍醐味といえましょう。


ちなみに、以前サラッと触れましたが、二重結合は(両手をしっかりつないでいる人同士をイメージしても明らかですが)回転ができないので、エチレンのように全部水素がつながってるなら違いは出ませんが、つながってるものが左右で違う場合、上に炭素が来るか下に炭素が来るかで、別の物質になります
(どこから見ても、どうやって回しても、重ね合わせることができないので。)

これもややこしくなるだけで、入門編では不要な話なので触れなくてもいいんですが、一応参考までに、同じ方に炭素骨格が続いていく方をシス型、一方、反対側(二重結合の一方が上、他方が下)に炭素がつながっている方をトランス型と呼び、化合物名ではシスをZ、トランスをEで表すルールになっています。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/幾何異性体#二重結合のシス-トランス異性より

(これらはドイツ語由来で、ドイツ語を知らないと理屈立って覚えることができないのですが、まぁ「シス」ジーが近いっちゃ近いと覚える感じですかね…?
 構造としては、Zっぽい形をしてるのがトランスで、Eっぽい形なのがシスというのがイラつくポイントですが、語呂合わせで、「同じ(おなZ)、反対(はんたE)」というのも、いい覚え方かもしれません。)

ってことで、DHAは、きっちり正式に書くなら、例によって最初に立体配置の但し書きも必要になるため、満点答案は「(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエン酸」というクソ長ネームになる感じでした(先ほどの画像にもあった通り、DHAの二重結合は全てシス型ですね)。

くどいですが、こういうただややこしくなるだけのネタは、忘れましょう。

別に試験を受けるわけでもない、入門編講座のメリットとして、ややこしいことは無視して面白いこと重要なことだけ見てけばOKというのがありますからね、こういう大量の数字でキモい感じの話なんかは、一切無視に限ります。

今回は結合の話のみで具体的な物質にはほぼ触れませんでしたが、次回、続きでまたちょろっとエチレンから見ていって(別に触れるほどのネタもないんですけどね)、続いて三重結合なんかに発展していこうと思っています。

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