汚れにも2種類ある…!

それではアンさんよりいただいていたご質問の回答続き、早速コメントの再掲から参りましょう。

 

洗剤で汚れを落とすのは記事にあった通り…分子がどうのこうのっていうのも、言われてみればなんとなくぼんやりイメージできたかも?という感じですね。

職場に置いてある洗剤が、重機の油汚れを落とすみたいな用途だと思うのですが、最早液体ではないレベルでじゃりじゃりしているというか、粉というか砂みたいなのが溶け切ってないような見た目で(私は使ったことは無く、なんならポンプに入っている姿しか見たことないですが、そんな風に思える)、ごりごり擦って油を落とすのか何なのか、わからないなりにも「落ちそうな気がする…」と思えるものなんです。ちなみに、オレンジ色です。


それも、やっぱり、分子がどうのこうので、油となんちゃら…みたいなことなんですかね?


…というのは、今思いついただけなんですけど笑

気になっていたのは、手を洗って汚れを落とす場合ではなく、目に見えない菌を落とす(殺す?)場合…!?


以前の記事で、トイレで手を洗うことの重要性(?)を語っておられたことがあったと思いますが、


もちろん私自身も石鹸で手を洗うということはやっていますが、個人的に気になるのは、「目に見えるもの」と、「水回り(濡れること、湿気を含むことによる不快さ)」なので、目に見えない菌については、それほど気にならなかったというのが正直なところでした。(ただ、その辺りのお話を聞いてから、わりとちゃんと気にするようにしてますけど笑)


ということで、この場合、同じ「洗剤で手を洗う」という行為ですが、分子がどうのこうの…という流れとは違う感じなんですか?

洗剤で手を洗えば、必ず菌は死にますか?

 

⇒前半のスクラブ成分(そういえば常識のようにその言葉を使っていましたが、これは「研磨成分が混入した洗剤」的な、いわば美容業界の用語ですね。「scrub」自体は「ごしごし磨く・擦る」といった意味の英単語になります)については前回見ていたので、今回は後半の、「手を洗うこと・汚れ」についてですね。

 

これはまさに、いつか触れてみたいとずっとっていたナイステーマでした、ご質問誠にありがとうございます!

 

ズバリ、これは別にそういう区分けが一般的というわけでは決してないものの、個人的には汚れには大きく分けて2種類あると思っています。

 

それが、「生物学的な汚れ」と「化学的な汚れ」の2つになるわけですが……

 

言うまでもなく前者は「生き物」、まぁ目に見える大きさの動物とかが手についているなんてことはあり得ませんから、基本的には微生物=菌類・細菌類や、厳密には生物の定義からは外れるもののウイルスなんかも生物学的な汚れといえますね。


詳しくは後で見ていくとして、一方の化学的な汚れは、これはズバリ、摂取することで人間に害をなすような分子なりを意図したもので、まぁ「生物学的な汚れ」も人間に害をなすのでその定義も微妙といえるかもしれないものの、要は「生物ではない、単なる物質」って感じでしょうか。

 

まぁより分かりやすく比較して書くとすれば、「生物学的な汚れ」の方は「増える」ってのがその最大の特徴であり、当たり前ですが生物というのは細胞分裂で増殖することができるので、例えば菌の付いた手で栄養豊富な食べ物なんかを触ってしまい、そのまま長い時間が経ってしまうと、爆発的に……ちょうど、指数関数の恐ろしさはドラえもんの「バイバイン」なんかで語られている通りですけど…

(まぁそんなエピソード、ご存じない方のほうが多いかもしれないので「みなさまご存知の」って挙げるもんではないかもですが(笑))

…例えば大腸菌はベストコンディションだと20分に1回分裂するわけですが、1匹の大腸菌が付着して、そのまま一晩、例えば16時間ぐらい放置したとしますと、1匹がどのぐらいに増えるかといいますと…

・1時間で3回分裂=2の3乗

→それが16回=2の48乗

=281474976710656


…つまり、281兆4749億7671万656匹にまで、尋常じゃないレベルで増えてしまうわけですね!

 

生物ってのはまぁDNAとタンパク質でできているものなので、それ自体(物質自体)は別に毒ではないですし、少量であれば、仮に生きたまま摂取しても異物として我々自身が持つ免疫系(あるいは消化器官)で排除できるわけですけど、それだけの数を体内に入れてしまうと、もう排除できる限界量を超えており、体の中で暴れまわって腸内が出血したりその他色々な異変が発生してしまう感じになっているわけです。

(僕が小学生ぐらいの頃に流行った「O157(オー・いちごーなな)」なんかは、まさしく「腸管出血性大腸菌」などと呼ばれている通り、そこまで大量に体内に入れてしまわなくても腸が出血してエラいことになってしまう、危険な大腸菌だ、って感じですね。)

 

とはいえ生物のヤバい点は詰まる所「増える」という点に集約されるので、まぁ仮に5000兆匹の大腸菌とかだと流石に殺しても何か悪い影響はありそうですけど(どんなものでも摂取しすぎると代謝的におかしなことになるので)、基本的には滅菌・殺菌することで生物としての機能を破壊してやれば、それはもう単なるDNAやタンパク質の集合体になっていると言えますから、摂取しても問題ないことになるわけです(あくまで「基本的には」ですけどね)。

 

一方、「化学的な汚れ」というのは、それ自体は単なる物質なので、幸いにして増殖することは決してありません。

 

手についた化学的な汚れは、何か別のものに触れるなどして移動させることで「減っていく」ことはあれ、勝手に皮膚表面の皮脂とかを栄養にして「増殖する」なんてことは決してないわけですね。

 

「ならやっぱり名前的にも生物学的な、バイオハザードな汚れの方が怖いんだね」と思えるかもしれないものの、案外物事はそうは単純にはいかず……

ここが厄介な所で、「生物学的な汚れ」は、ある程度少量なら免疫系で排除できるシステムが我々の体内には備わっているわけですけど、「化学的な汚れ」というのは低分子であることが多く、そういった免疫系をすり抜けるとでも言いますか、その物質の存在自体が有害(=生物のように、「殺せば無害」とはならない)という場合があり、そういった免疫システムや細胞の機能そのものを破壊するとんでもねぇ分子ってのが、往々にして存在しているんですね。

 

その場合、ごく少量を摂取してしまうだけで人間は死んでしまうこともあるため、「時間をおいても勝手に増えることはない」ものの、「ほんのちょっと、ごくわずかな量でも摂取したらアウト」な物質も存在する形で、やはりそれはそれで大変厄介なものだといえましょう。

 

例えば具体的に有名な「人体にとって有害な化学物質」、まぁ一言でそういうのを「毒」と呼ぶわけですけど、子供でも知ってるものに、フグ毒なんかがありますね。

 

まぁ「フグ毒」と聞きますと、「え?フグの毒なら、それは生物学的な汚れってやつちゃいますのん?」って気もするかもしれないんですけど、これは実はフグ自体に毒があるわけではなく、「フグが体内に持っている化学物質が、人間にとって致命的な作用を持つ」という形なので、これこそが代表的な「化学的な汚れ」ってやつなわけですね。

 

名前も恐らくどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか、フグ毒ってやつの正体は、「テトロドトキシン」という割と小さな分子になっています…!

 

ja.wikipedia.org

 

まぁ端っこの一部は欠けていますけどほとんど全体が表示されているので画像の引用は不要でしょう、↑のリンクカードのサムネイル画像にある通り、本当にごく小さな分子(C11H17N3O8)でしかないのですが、生化学の教科書なんかで必ず取り上げられているぐらい作用機序はハッキリ分かっており(フグは日本でおなじみの魚だからか、上記ウィ記事にもある通り、日本人研究者の方が多くを解明した形だと思います)、こいつは細胞のナトリウムチャネルをほぼ完全にブロックすることが知られています。


…ってその辺の話はまさに大学の生化学で出てくる話で、軽く触れてみようと思ったのに今回は時間が無くなったので割愛しますが、要は神経や筋肉の電気信号が完全にシャットアウトされて(これは以前もチラッと触れていましたが、結局、神経とか筋肉が働くのは、イオンが移動することで産み出される、電気の力なんですね。その電気の流れが、完全にブロックされてしまうわけです)、脳からの信号も筋肉の活動も完全に停止となり、このテトロなんちゃらを少しでも吸い込んでしまうと、人間は即死してしまう形になるわけです。

 

どのぐらい強い毒かといいますと、ウィ記事にもちゃんと記載されていました、人間の致死量は1-2 mg程度で、ズバリ、数粒の塩粒程度のテトちゃんを摂取してしまうだけで、即全身麻痺からのお陀仏コースへ……ということで、これは本当に強力で危険極まりない分子だといえましょう。

 

なので、テトド自体は、例えばフグを切ったことで包丁に付着したとしても勝手に増えることは決してないんですけど、わずか数ミリグラム、もう目に見えないレベルのものが付いてしまった場合、その包丁で切った別の刺身なり食品なりにごくわずかでも付着してしまったら大事故になると、そういう危険性が化学的な汚れにはあるのでした。

 

…と、これを踏まえてもうちょい両者の汚れを絡め、アンさんにご質問いただいていた点についてちまちま書いていく予定だったのですが、またしても完全に時間切れとなってしまったため、全くもって中途半端の極みになってしまいますけど、また次回、この続きから始めさせていただこうと思います。

 

アイキャッチ画像は、フグ毒ってことで最も高級なフグであるトラフグ先生にご登場いただきましょう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/トラフグより

上述の通り、実際はフグ自体には毒がなく(というか彼ら自身が毒を作るわけではなく)、どっかの細菌が産生したテトロドトキシンをフグは体内(特に肝臓や卵巣)に溜め込んでしまうという性質があるだけなので、ある意味こいつらは全く悪くないんですね!

(まぁ溜め込んでる時点で、悪いっちゃ悪いですけど(笑))

 

…ま、僕は刺身が苦手なので食べたことも食べたいとも思わないですけど(笑)、古来よりこれを求めて数多の人が倒れていったという大変名高い逸品ですから、死ぬまでに一度は食べてみたいかもしれません。

(とはいえ昔から書いている通り、僕は食に欲がマジでない男なので、勝手にフグを取り上げさせてもらったことに対する、フグへのリップサービス(何それ(笑))が多分に含まれてるかもしれないですが…(笑))

 

当然、汚れには十分ご注意を、って話ですね!

(まぁ調理には免許が必要なので、素人は注意するも何もないわけですが…)

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