他のモデル生物はどうかな~?

それでは早速、人間以外の生物が作るタンパク質は一体どういうアミノ酸構成になっているのか、改めて非常に便利な表を提供してくれていたGenescript社のページの表を参考に、まとめて参りましょう。

 

とはいえこちらのデータは、本来は「アミノ酸の登場頻度」というよりも、「コドンの利用頻度」についてまとめられている表であるため、むしろ遺伝子DNAのコドンの使われ方について着目するものなわけですが、今回はアミノ酸の使われ方にフォーカスを当てている形になります。


なので、表そのものはリンク先のデータそのものをお借りしただけですしそちらを見れば十分ということであえて表自体の引用はせず、アミノ酸の登場頻度(千分率)を計算してグラフにまとめたものを並べていこうと思います。

 

まずは比較対象となる、我らが人間様のアミノ酸頻度のグラフの再掲(3回目)からですね。

 


ちなみに言うまでもないですが、これはヒトゲノム(=人間の持つ全遺伝子DNAの配列、およびどこからどこまでがタンパク質を指定するコード領域なのか、など。「どこからどこまでが遺伝子なのか?」といった情報は、今でも一部は予測領域を含みはしますが…)の解析データから、機械的に全ての遺伝子の「開始コドンATG(メチオニン)から停止コドンまで」(Open Reading Frameで、いわゆるORFと呼ばれる領域)の全アミノ酸をカウントしたものの結果になっている形だと思います。


恐らく、例のタンパク質合成後に取り除かれるシグナル配列とか前駆体部分とかもカウントされているので、実際に人間を構成するタンパク質のアミノ酸構成が完全にこの通りであるわけではないのですが…

(というかそれ以上に、各遺伝子がどれだけスイッチONになって合成されているかは遺伝子=タンパク質によって千差万別ですから、「実際のタンパク質」はほぼ確でこの比通りにはなっていないと思います。

 とはいえしかし、タンパク質を作るための「レシピ」自体はこうなっているということで、「遺伝子によって差」といってもそんなに極端に偏ることもないでしょうから、概ねこんな感じだといえましょう。)

 

では早速、まずは進化の頂点・ヒューマン様から最も遠い位置にいるといっても過言ではない、細菌類である大腸菌のデータを見てみるといたしましょう。

 

大腸菌は、既に以前の「激甘タンパク質・ソーマチンを合成しよう」シリーズで触れていた通り、もはや生物というよりは道具で(笑)、分子生物学ではDNAを増やしたりタンパク質を大量合成したりでめちゃくちゃお世話になるナイスなやつなんですけど、ニオイは当然糞便そのものという感じで、若干非ナイスな、迷惑な輩とはいえるかもしれません(笑)。

グラフは、当然大便色をモチーフとさせていただきました(笑)。


流石にトップがロイシンであるのは揺るぎ無かったですが、四天王はロイシン・アラニン・グリシン・バリンと、炭素と水素しかない単純な雑魚アミノ酸四英傑そのものという感じで、やはり進化の初期の雑魚には、そういうザコアミがお似合い、ってことですね(笑)。

(いや改めて、別に単純なアミノ酸だからといって何かが劣るってわけでもないんですけど、まぁ「特に特徴のない簡単なアミノ酸であること」には変わりないですね、やっぱり)

 

他の特徴として、(以下出てくる他の進化的に高等な生物含め)唯一、一番デカいトリプトファンではなくシステインの利用頻度が一番少なくなっており、システインは「S-S結合」でタンパク質の構造に大きな影響を与えるため、これがあると「より複雑なタンパク質」になりやすいといえますから、やはり進化初期の下等生物は、こういった特徴的なアミノ酸の利用頻度は低かったんだ、といえますね。

 

とはいえまぁちょっとの差で、「全く使われていない」ってわけでもないのですが、そんな感じで大腸菌には「S-S結合」他、タンパク質の複雑な構造を作るための酵素が欠けていることが多く、たまに、「大腸菌にヒトのタンパク質を作らせる場合、複雑な構造のタンパク質は上手く合成されない」という場面もある感じです。


そんなときは、他の単細胞生物、かつ遺伝学分子生物学のモデル生物といえる酵母の力を借りることもある形ですね。

 

その酵母(出芽酵母=パン酵母)のアミノ酸頻度については、こんな感じになっていました。


まぁパンはあくまで酵母が小麦粉を発酵させてできるものであり、メインは酵母ではなく小麦粉なのでパンの画像もおかしいかもしれませんけど(笑)、酵母の画像は以前使ったため、パンで代用したとともに(なお、グラフ右上の画像は全てWikipediaからお借りしました)、グラフも食パンカラーを目指してみました(笑)。

 

その辺はともかく、他の生物に比べて、リシンが多く使われていることが目立ちますね。

…まぁ、別にだから何だという特別な話は何もないんですけど(笑)、大腸菌は細菌類で、酵母は菌類であり、前者は原核生物・後者は真核生物と、何気に「核の構造」でいえば酵母は人間と同じグループに属しますから、実は大腸菌酵母との進化レベルの違いは、酵母とヒトの進化レベルの違いよりよっぽど大きいので、酵母目線だと、「俺らに近いのは、大腸菌カスではなく、人間だよ」となっているといえるんですねぇ~。


アミノ酸の利用頻度の全体的な傾向的にも、それは見て取れるように思います(まぁ、微妙な違いですけどね)。

 

なので、先ほど書いていた通り、大腸菌には作れない複雑なタンパク質も、酵母なら作れることはそれなりにある感じといえます。

(あぁ、さっき大腸菌の所で書こうと思って忘れていましたが、アミノ酸頻度のみならず、データ元である「コドン利用頻度」も大きく異なるので、ずーっと前、例のソーマチン関連記事で「大腸菌でタンパク質を作る際は、レアコドンにご注意」なんてことに触れたこともありましたね↓)

con-cats.hatenablog.com

とまぁ、例によってアミノ酸頻度データそのものには特に語ることもないので、各生物のアミノ酸頻度をとっとと見て参りましょう。

 

続いては、「モデル生物」といえば、高校生物を学んだことがない方は全くイメージがないかもしれませんが、実験室で使われる動物として、極めて長い伝統がありめちゃくちゃよく研究されているものに、「キイロショウジョウバエ」という生物がいるのです。

 

こいつは、染色体がたった4対しかなく(ヒトは23対)、しかも巨大で、めちゃくちゃ遺伝学の研究に打ってつけであるという理由から歴史的にめっちゃんこよく使われてきた偉大な生物のわけですが、まぁそこまでグロ虫ではないものの、虫には違いないので若干閲覧注意でしょうか(笑)。

 

特徴として、目が赤いというのが挙げられますが、その目の色についても、どの遺伝子で指定されているかなど既に完全に分かっている感じですね。

グラフカラーも、黄色と赤で決めてみました(どうでもいいにも程があるポイントですが(笑))。


(…と、閲覧注意なため、それなりに無駄にスペースを空けた所で、グラフはこんな感じですね↓)

 

 

ちなみに学名は「Drosophila melanogaster(ドロソフィラ・メラノガスター)」という妙にカッコいい感じなのも、モデル生物としての「格」がある感じだといえましょう(まぁそれは全然関係ないですけど(笑))。

 

やはり虫カスとはいえ多細胞の動物だけあって、進化の系統樹どおり、大腸菌よりは酵母に、酵母よりはヒトに近いアミノ酸構成になっている気がしますね。


来たるべき昆虫食の時代、我々自身のタンパク質・アミノ酸構成に近い感じということで、食事としては優れているのかもしれません……。

(なお、Genscript社のデータには「Insect(昆虫)」というのもあったのですが、データの遺伝子数がなぜかドロソフィラ単独よりも圧倒的に少なかったので、「昆虫全体のデータ」というわけでは全くなさそうだったことから、無視することにしました(笑)。

 昆虫のアミノ酸頻度も見てみたかったのですが、まぁゲノム解析が完了している虫も少なそうですし、仕方ない点でしょうか。


…また、書き忘れていましたが、先ほどの酵母に関しても、「yeast(酵母)」と「Saccharomyces cerevisiae(パン酵母)」の2つがあり、前者は分裂酵母とパン酵母のセットなのかなと思いきや、パン酵母のみのデータより遺伝子の数が少ないものだったのでS. cerevisiaeの方を採用しました。

 ちなみに酵母の学名は「サッカロマイセス・セレビシエ」と読まれる感じですね。)

 

一方、「モデル生物」といえば、実験室で使われていそうな動物ナンバーワンはやはりこちら、マウス先生といえましょう。

 


ショウジョウバエもマウスも、僕はそこまでメインでは使いませんが、近隣の研究室では非常によく使っていて、どの生命研究系でも盛んに飼育されている動物ですね。

 

ちなみに「マウス」は画像に出した通り「ハツカネズミ」と呼ばれるもので、Genscript社のデータには、他に「ラット」も存在していました。

 

マウスとラットの違いは、どちらも日本語的には「ネズミ」になるわけですけど、具体的には「ハツカネズミ」と「ドブネズミ」の違いがあるんですね。

ラットの方が大型で、実験室ではやはり小型な方が飼育も容易ですし基本的にマウスが使われますけど、せっかくなのでラット先生の方もアミノ酸グラフを見ておきましょうか。

 

 

ネズミ色に、ドブっぽい下水道色を混ぜたグラフカラーにしましたが(笑)、それはともかく、誰がどう考えても進化的に近いマウスとラット、ズバリ、アミノ酸頻度の順番が完全一致!

(…と、当初思ってたんですが、実は最後CysとMetだけ入れ替わってましたね(笑))

 

ショウジョウバエとはちょっと違い、またヒトともちょっと違うので、まさに進化というのは少しずつ遺伝子が変わっていくものなんだなぁ、ということが見て取れるのではないかと思います。

 

なお、動物枠にはもう一つ、「ブタ」さんもいました(笑)。

 

なぜブタなのか、まぁこちらも全ゲノムが解析されてるからなのかもしれませんけど、せっかくなのでブタさんのアミノ酸頻度グラフも見ておきましょう。

 

 

まあまあ、マウスとブタの方が、ブタとヒトよりもちょっと近い感じがするので、ケダモノ同士仲良くしててくださいよ、って感じですかね?(笑)


一応、ロイシンの頻度が他の生物より一番群を抜いて大きいっちゃ大きいので、やはり筋肉を作るのに欠かせないロイシンを豊富に含んでいるのが、お肉が売りであるブーさんなのかな、って気もしますが、しかしBCAAの他のやつらはそこまで突出して高くもないため、気のせいかもしれません(笑)。

 

そんな感じでブタについては「あったので触れてみた」だけでその辺にしておくとして、「モデル生物」の植物版は、果たしてどんな生物が使われているかご存知でしょうか…?

 

こちらは、まぁこれも遺伝学の研究がしやすかったという理由があるんだと思いますが(詳細は不明)、ショウジョウバエの植物版といえるモデル生物はズバリ……

 

 

シロイヌナズナという、植物の品種自体としてはかなりマイナーなやつなんですね!


業界では学名の「アラビドプシス」と呼ばれることが多いですが(英語だとアラビダープシス」って感じですかね)、こちらは(僕は植物はほぼノータッチなので使ったことは学生実験で1回触れたぐらいで、他にはないものの、単なる雑草のくせに本当に植物系の研究室では超主役植物って感じですね)、やはり動物組とはちょっと違うかな?って気もするかもしれません(ゆーて、そんな違いもないですが)。

 

とはいえシロイヌナズナなんて食べませんし、まぁ食べてどうなるかを知るためのデータではないですけど(笑)、植物もせっかくならもう一つぐらい参考に見てみようと思ったら、動物でいうブタ……よく食べるし美味しいやつが、植物でも都合よく公開されていましたよ。

 

ズバリ、トウモロコシの全ゲノムも解明されており(ただ、研究対象としてはそんなに使われていないので、遺伝子レベルの解析は全然進んでない印象ですが)、頻度データが存在していました。

こちらが、コーンだ!!

 

 

…って、ロイシン・アラニン・グリシン・セリン・バリン……とか、むしろなんかクッセェ大腸菌に似てない?と思えたものの(笑)、まぁ必ずしもアミノ酸構成がその生物の遺伝子・タンパク質の中身を決めているものでもないですし、必ずしも進化系統樹どおりの違いにはなっていない、ということも見れた所で、今回のまとめはこの辺で区切りをつけておくといたしましょう。

 

代表的なモデル生物8つ程の各アミノ酸出現頻度を見てみましたが、改めて、大まかには全ての生物が大体似たような傾向だということで、そもそもコドン表は完全に同じものを用いているわけですし、我々生物は悠久の時を経て、同じ原始生物から進化してきたものであることが窺えますね…という雑なまとめで、また次回へ続く感じです。

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