補足:またまた数について…今度は1000万だ!!

完全に話の途中だったので早速続きへ……とその前に、前回の補足記事(主に形について)について、改めてご質問提供者のアンさんから猛烈に素晴らしいご視点(多くの人も同じ疑問をもつと思われる、触れておくべき点)のコメントをいただいていたので、まずそちらからいってみるとしましょう。

あぁ…ここは自分の中でちょっと曖昧だった部分だったわけだけど、、
『その特定のアミノ酸は(tRNAに渡した直後以外は)常に酵素上でスタンバッてる感じなため』
っていうことで、納得ぅ!

細かい部分かもだが、前回の図の『アミノ酸の結合ポケット』っていう言葉と絵から入ってきたイメージで、ポケットは空いてる状態?って感じだったので、お目当のtRNAを見つけた(すれ違った)タイミングでそこにアミノ酸はあるのか、ない場合もある?(「そのアミノ酸を持っていたら」っていう表現になったのは、ポケットが空いてるタイミングですれ違った場合は渡せないよね?っていう意味だった感じ)…なければどんな流れ?っていうちょっとした引っかかりがあった、ってこっちゃね。

アミノ酸は常にスタンバッてる』ということで、ばっちりクリアになったってなもんよ。

tRNAはだいたい同じ形(クローバー型)だったけど、このクソでかいrRNAは特に同じような形になるってこともない感じなんかな?

前に出てきた大腸菌の二次構造図と、塩基数も形も(パッと見だけじゃが)違うっぽいし。

そして、これも簡単に分解されて、次また出来上がった時には、こんなに大きくて複雑でも、同じ形になってるってぇことなんすかね?(ステムやループの入り方)…っていうか、リボソームは1細胞にひとつだけ?

だとしたら、『ヒトのリボソーム』はたった1種類??あれ?全員同じなわけないか、、人によって違うってことなのかな?個体で見たらリボソームは1種類ってことけ???

一応補足の補足となりますが、前回は大々的に「アミノ酸、常時スタンバイ!」とか書いていましたけど、これは必ずしも「酵素の特性としてどんな時でも必ず絶対にアミノ酸がスタンバイされている」というわけではなく、より正確には「アミノ酸は細胞内に十分な濃度存在することが多いから、tRNAにアミノ酸を渡してもすぐに補充されるため、実質、事実上ほぼ常にスタンバってるといえる」という感じですね。

酵素が自分でアミノ酸をどこからともなく産み出すとかして、どんな時でも常に必ずアミノ酸がポケットに入っているというわけではないのでご注意を、という念のための但し書き的な補足でした。

つまり、もし細胞の中にアミノ酸が圧倒的に不足している状況になったら、普通に空っぽの酵素がいっぱい存在することになる、ってことですね。

じゃあもしそんな状況になったらどうなるの、という話ですが、それは当然、アミノ酸不足でせっかくくっついたtRNAにアミノ酸を渡せないということで、結果、tRNAによるアミノ酸の運搬が停止し、タンパク質合成も行えませんから、要はズバリ栄養失調ということで人間だったら体調を崩すし、ずーっとそれが続くと最悪死ぬって感じですね。

逆にいえば、健康である以上、tRNAは酵素によってガンガンアミノ酸チャージされている、といえましょう。


…と気軽に「アミノ酸はいっぱいあるのでぇ…」とか書きましたが、実際アミノ酸は細胞内にどのぐらいあるんでしょうか…?

検索してみたら、様々な生物学に関する数字を載せてくれているbionumbers.orgというサイトがヒットしたので、こちらを参考にさせていただきましょう。

book.bionumbers.org
ズバリ上記リンクにある通り、大腸菌1細胞内には、最も多く含まれるアミノ酸グルタミン酸だと、96 mM!!

って、Mという単位でいわれてもよぉ分かりませんが(これは高校化学で習う、モル濃度のことですね。まぁモルとかの辺の話も、多くの人が挫折しがちな学習内容筆頭な気もしますが、これは難しいこたぁなく、6×1023(10の23乗)個のものをまとめてそう呼んでいるだけの単位ですね。12個のものをまとめて「ダース」と呼ぶのと完全に全く同じ感覚で、6×1023個のものをまとめて「モル」と呼んでいるという本当にそれだけです。数が大きすぎて混乱しがちですが、例えば「自転車が2ダース」だったら、自転車は24個、車輪は48個存在するというのと同じで、「水分子が1モル」だったら、水分子や酸素原子は6×1023個、水素原子は12×1023個存在する、というそれだけの話ってことですね。)

…っと、また但し書きが長くなりましたが、いずれにせよMだと分かりにくいので個数に直すと、ちょうど記事内でも触れられている通り、約100 mMというのは、大腸菌1細胞でいうと、約1000万分子に相当するということで、めちゃくちゃな数のアミノ酸が細胞の中にはうじゃうじゃ存在しているということがご理解いただけるように思います。

(もっとも、グルタミン酸以外の他の少な目のアミノ酸はそこまでの数はないものの、それでも確実にあの小さい菌カスの中に万単位で含まれていますから、酵素のポケットが空き次第バンバン補充されるというイメージに問題はないといえましょう。)


続いてコメント後半のrRNAについて……

rRNAは、まぁあまりにもデカいのでもはや平面状に表すのは無理なため、描かれている二次構造には正直あんまり意味はなく(一応ステム(二重鎖)とかは実際に形成されているものを表していることが多いとはいえますが、無理くり紙に書いてるだけなので、二次構造の形自体には意味がない感じです。拡大して見てみると、上手くつなげて描くことができず、本来ひとつながりで並んでいる塩基のはずが紙面の都合でとんでもない位置にワープしているやつとかもありますしね、現実の形を反映しているわけではありません。そもそもtRNAのクローバーも、現実的に実際のtRNA分子はL字型っぽいわけで、これだってさほど意味のある形ではないともいえるわけです)、あえてより形を意識した模式図で書くなら、これはやはりもう細かい塩基の配置は無視して、小さい方のrRNAと大きい方のrRNAとで、だるま型になる感じですね。

ほとんどの翻訳アニメで出てくる、だるま型のリボソーム、あれが、こいつだったというわけです。

あまりに大きくて複雑すぎて、最早ただの塊として描かれるに過ぎない、って感じですね。

結局、大きすぎるものは最終的にぐちゃっと固まって丸い塊になるだけなんだなぁ、って話だともいえましょう。


一応模式図も見てみますと…

まずはよりリアルな方から、WikipediaにまたしてもアニメGIFがあったので、例によってパクリという名の引用をさせていただきましょう。

こちらは、細菌のリボソームで、だるま型の内小さい方の塊、30Sと呼ばれる方になります。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/リボソームより

なお、rRNAはオレンジで、青い方はタンパク質(そのまま、リボソームタンパク質)です。

リボソームはrRNAだけではなく、タンパク質と協力してあの丸っぽいだるま型を形成しているということなんですね。

これと、より大きい分子である50Sと呼ばれるパーツとがくっついて、だるま型を形成している、というわけです。


一方、こんな複雑な形では描くのも大変ですし、模式図でどう描かれるかというと、まぁあくまで模式図ですしどう描くかは描く人のセンス次第とはいえますけど、イメージ検索でヒットしてきた、セントラルドグマが分かりやす~く全体表示されている、ヤクルト中央研究所の公開してくれていた基礎知識ページの画像がとても良い感じだったので、こちらを引っ張らせていただきましょうか。

f:id:hit-us_con-cats:20211119063002p:plain

https://institute.yakult.co.jp/dictionary/word_6697.phpより

DNAからmRNAができ、だるま型のリボソームがこれをスキャンしながらタンパク質を合成していく、という流れが、とても簡潔に示されています。

拡大図にてリボソームがrRNAからできていることも示されていますし、今引用するのに打ってつけの画像でした(なおもちろん、表示されてはいないけれど、リボソームはrRNAとタンパク質の複合体で出来ている、というのが実際ですね。また、残念ながら、tRNAもこの画像からはハブにされてしまいました(笑))。

 

形に続いてご質問に挙げられていたリボソームの個数、こちらは、もちろん生物種によって、さらに同じ生物でも細胞やそのコンディション(盛んに分裂している細胞か、落ち着いている細胞か、とか)によって大きく異なりますが、我々哺乳類の細胞だと、パッと調べたら1細胞に、これまたまさかの1000万分子ぐらいのリボソームが存在するということです。

(参考:Google検索トップでハイライトされていた、こちらの記事↓より)

www.britannica.com
コンディションによって変わるというのは、まぁ当たり前の話なんですけど、具体的な数はより分析がしやすい大腸菌でよく調べられているようで、2番目ぐらいにヒットしてきたまたまた登場のbionumbers.orgに、分かりやすい表でまとめらていました。

f:id:hit-us_con-cats:20211119063244p:plain

http://book.bionumbers.org/how-many-ribosomes-are-in-a-cell/より

24分で1回分裂するような、メチャクチャなペースで増えまくってる大腸菌(表1番上の行)は、1細胞あたり7万2000個(我々哺乳類の細胞に比べたら、大分少ないですが、まぁ単細胞カスの大腸菌ですしね(笑))ものリボソームが存在していて、逆に、1回分裂するのに100分かかるような大腸菌にしては落ち着いている状態の細胞(1番下の行)だと、リボソームは1細胞に6800個しか存在していないということですね。

当たり前ですがリボソームという巨大分子を作るのには莫大なエネルギーが必要なので、分裂していないようなとき=そんなに沢山の生体分子が必要ではないときには、rRNAの転写スイッチがゆっくりになって無駄なものを作らないように調節されている(もちろんガンガン分裂しているときは、尋常じゃない量のタンパク質が必要になりますから、可能な限りリボソームを総動員して、タンパク合成をしまくっている)…という、これまたよく出来た生命のコントロール機構といえよう、みたいな話って感じですね。


最後改めて形に関しては、もちろん、基本的には、同じ個体が作る、同じ遺伝子から転写されたものは全部同じものになる形ですね。

これだけ巨大な分子ですから、当然、多少の個人差(1塩基単位の変異)はあるかと思いますが、リボソームはあまりにも重要な分子なので、恐らく他のどうでもいい遺伝子に比べると個人差もほとんどなく、極めて高く保存されているものではないかと思われます。

重要な部分に変異が入ったら、それだけで全ての生命活動がアウトになるので、そういう遺伝子をもった個体は誕生できない(=生きて生活している以上、リボソームはほぼ無傷のはず)という感じですね。


いずれにせよ、細かく見たら当然配列などの違いはあるものの、まぁあらゆる生物で、ざっくり見たらだるま型になっているのがリボソームなので、大きい視点で見れば、これまた似てるっちゃ似てるといえるものかもしれません。

少なくとも、大きいパーツと小さいパーツの2つから成り、その境目でmRNAをスキャンするという全体的な構造はマジで大腸菌からバナナからヒトまでマジで完全に同じなので、やはり我々は同じ生物なんだなぁ、という話になってるポイントといえるかもですね。


…ということでまた追加補足のみで長くなりましたが、次回改めて中断状態の部分に戻るといたしましょう。

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