コレステロールって何じゃらほい

前回までで脂質の主役たる脂肪酸について、「いいヤツ悪いヤツ」をざっとさらってきました。

しかし、体内で、そして脂肪で、善と悪があるといえば、おそらく100%誰でも聞いたことがある物質といえましょう、コレステロールに触れないわけにはいきませんね。

コレステロールは高校化学では扱いませんし(生物でも、一応名前が出てきて、一言二言役目が紹介されるぐらい?)、かな~り複雑なのでなるべく難しい話は避け、本質からずれない範囲でできる限り単純化して触れてみようと思います。

まず、そもそもコレステロールとは何なのか?

めちゃくちゃ鋭いことに定評のある[どこで?] 本ブログ読者諸兄であればピンとお気づきになるかもしれません、「~オール」で終わる名前の物質ということは…?

そう、なんてこたぁない、こいつはアルコールの一種だったんですね…!

とはいえ、-OH基を有する有機物というだけで、こいつにいわゆるアルコール(お酒)的な性質は、まったくもって皆無です。

ちなみに構造はこんな感じ…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/コレステロールより

う~ん、これはキモい!

炭素がリングを形成していると、途端に複雑怪奇になりますが、まぁ構造なんてどうだっていいでしょう。

ポイントは、リングとかはあれど、コレステロールというのはあくまで炭素と水素が連なってできた物質であり、そして何気に重要なのは、-OH基が存在しているということにあります。

ここで1つおさらい知識として思い出していただきたいのですが、グリセリン(グリセロール)には3つの-OH基があり、こいつらがそれぞれ脂肪酸の-COOH基と合体することでエステル(名前なんてどうでもいいですが)を形成していました。

「脂質」と称される中で最も単純でありかつメジャーなものは、このグリセリン脂肪酸のトリプルエステル(カッコ良くそう呼んだだけで、正しい用語ではありませんけど)なわけですが、結局、コレステロールもアルコールの一種であり、こいつも、脂肪酸エステル結合を形成することで、生体内では基本的に脂肪酸がつながった形で存在しているのです。
(もちろん、-OH基のまま、コレステロール単独の形で存在しているものもありますが。)

だから、まさに一般社会・実生活でのイメージ通り、コレステロールというのは脂肪と密接したつながりのある物質だといえるわけだったんですね。

無論、-OHが3つもあるグリセリンと違って、コレステロールには1つしかありませんから、脂肪酸1つとしか結びつくことができませんが。

あと「コレステロール」という名前から類推できる単語として、ステロイドというものがあるといえましょう。

その名の通り、コレステロールステロイドの一種でもあります。

まぁ、そういうと、「じゃあステロイドって何なん?」という話になりますが、ステロイドというのは先ほど見ていた例の4つのリングがつながった構造をもつものを総合してそういっているだけで、特にそれ以上の説明もないんですけどね。

ステロイドにはホルモン作用をもつものが多いし、生体内で重要な役割をもつグループではありますが、コレステロールはアルコールの仲間でありステロイドの仲間でもあるものの、そのどちらの視点からも特に「それっぽい」性質は目立たないので、その辺のグループ分けは気にする必要もないように思います。

相変わらず、「なら書くなよ(笑)」って話なんですけど、まぁ一応「そういうグループに所属する物質だ」ということを抑えておくのは大事ですしね。


そういう細かい構造みたいな話はつまらんので、もっと生活に密着した話に移行するとしましょうか。

当然、コレステロールといえば、誰しもがご存知、善玉コレステロール悪玉コレステロールなんて言葉がおなじみですね。

最近は(あんまり正しい実態を表していないこともあり)この用語は使われなくなりつつあるようですが、まぁ現実世界ではまだしばしば使われている言葉でしょう。

まず大事な点として、コレステロールはグループ名ではなく固有名詞の物質名であり、「いいコレステロール」「悪いコレステロール」というものが存在するわけではありません。

今まで出てきた多くの用語の、全く逆バージョンですね。

DNAもタンパク質も脂肪酸も、集合名詞・グループ名・総称であり、例えば一口に「脂肪酸」といっても、オレイン酸もあればリノール酸もあればDHA(ドコサヘキサエン酸)もある…という感じで、これらは単一の物質を指す言葉ではありませんでした。
(○○というタンパク質、××という脂肪酸、という形になっている、ってことですね。)

しかしコレステロールは逆に、「善玉」「悪玉」と呼ばれることからも種類がありそうな感を出してるくせして、こいつは先ほど画像で示したのがまさにこれ自身、種類もへったくれもない、コレステロール」というのはこいつでしかないわけです。

じゃあ善玉悪玉ってのは何なんだよ、って話ですが、これは、血液の中で脂質を運搬するために形成される、いわば小さな油玉(もちろん分かりやすくするために今作った適当な用語で、そんな呼ばれ方をする物質はありませんが)の種類の違いなんですね。

まず、脂質=アブラというのは、以前も書きましたしそもそも言うまでもないことですが、水には溶けにくいのです(水と油で、お互いに反発します)。

脂質に限らず、炭素と水素から成る物質は、基本的に水には溶けにくい性質をもつ、というイメージは大事ですね(水とは相性が悪く、逆に、有機物の骨格だけあって、有機溶媒に溶けやすい……有機溶媒ってのは、いわば油っぽい液体ですね)。

しかし、脂質というのは全身あらゆる細胞で重要な物質であり、必要な場所に適宜運搬する必要性がある(もちろん、血液の力を借りて)というのもいうまでもありません。

じゃあどうするかというと、結局生体内では何事もこいつの力を借りることになる、何だかんだでマジでどこにでも顔を出す生体反応の主役といえばこの方、もう皆様おなじみ、タンパク質が、グリセリン脂肪酸トリプルエステル(一番メジャーな脂質ですね。こいつは、もっと簡単かつなじみのある単語で、『中性脂肪』と呼ばれています)やコレステロール脂肪酸といった水に溶けにくい脂質を、ギュッとコンパクトにまとめて、小さな粒子を形成することで、水に溶ける形にまとめてくれているわけです。

水にさえなじめば、血流に乗って、全身くまなくどの細胞にも運搬することができますから、これは本当に重要な粒子ですね。
(油玉と書きましたが、くどいけど油は水に溶けないので、「油を内部にパッケージした、油入り水玉」の方が正確かもしれませんね。)

そして、このとき使われるタンパク質の種類によって、それぞれの脂質の含まれる割合が異なる油入り水玉ができあがり、LDLと呼ばれるタイプを「悪玉コレステロールHDLと呼ばれるタイプを「善玉コレステロールと世間一般では呼んでいる、という話なのでした。


ちょうどキリもいいので、ちょっと最近の記事は長すぎることもありましたし、その辺の善玉悪玉の話、もう少し詳しくは、また次回にまわすとしましょう。

今回は、コレステロールの人となり(モノとなり?)について見た感じですが、「こいつはグループ名ではなく、固有名詞だ」ということさえ抑えられれば、もうそれだけでバッチリといえましょう。
(まぁ、別にいうほど抑える必要のある知識でもなんでもないともいえますけどね。それをいったら、別に受験するわけでもなし、抑える必要のある知識なんて、この一連のネタ全体でそもそも全然ないんですけどね(笑))

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