世界を代表する非営利医療機関、クリーブランド・クリニックのHEALTH LIBRARY記事を翻訳引用させていただいているシリーズですが、前回は、地味にたまげるほど長かった、おねしょに関する記事をまとめていました。
「最近とみに時間がないため、ひたすら訳すだけで終わらせられる」という理由でクリ・クリ記事を見ていたはずが、尋常じゃない長さで結構な時間がかかってしまい本末転倒だったんですけどそれはともかく、せっかくなのでおねしょ=夜尿症=Nocturnal Enuresisと似た英語表現である、Nocturia=夜間頻尿に関する記事も、参考までに見てみようかな、と思います。
おねしょはまぁ、やっぱり大人であればそこまで普通はないんじゃないかな、という気がするんですけど…
(ただ、前回はあまりに長くて振り返る余裕もなかったですが、「アメリカの成人の2~3%が一次性夜尿症」というのは、正直、「3%って相当だよ?!間違いじゃなくて本当に!?」と思えましたね。
3%って、大体クラスに1人はいる計算になりますし、100人ぐらい集まる会合とかイベントはそんなに大きい規模でもないですけど、その中に複数人もおねしょに悩んでる人がいるって、マジでそんなにいるの…??…って気がしたんですけど、やはり天下のクリーブランド・クリニックが間違えるわけもなく、調べてみたら出典は医学系の論文だったので、間違いではないようです。
…ただ実は、「一次性夜尿症」という症例は、当初「6ヶ月間、おねしょをしない夜がない」=「6ヶ月以上、毎日おねしょし続けている」と勘違いしてしまったのですが、冷静に考えたらそういう訳ではなく、より正確には、
「6ヶ月以上、おねしょをしなかった夜が存在しない」=「生まれてから今まで、少なくとも6ヶ月に1回は必ずおねしょをしていしまってる」
…という意味で、一瞬「6ヶ月間、毎晩漏らし続けている」と早とちりして「えぇ?30人集まったミーティングとかだと、その中の1人は今日も明日もおねしょしてるってこと??」と思えて違和感が尋常じゃなかったんですけど、流石にそういうことではありませんでした(笑)。
ちなみに二次性夜尿症の方は、「これまでの人生で6ヶ月以上おねしょをしない期間が存在したけれど、またおねしょをするようになってしまった」というもので、普通にこちらよりも、一次性夜尿症=「生まれてからずっと、時折おねしょをしてしまう人」の方が遥かに多いとのことです。)
…と、話が余談で長くなりましたが、一次性夜尿症は成人の2~3%、そして二次性はもっと少ないということで、「おねしょをしなくなったのにまたおねしょをするようになってしまった人」というのは大分少ないように思えるんですけれども、「夜間頻尿」の方は、それよりもっと、加齢やメンタルの失調やその他何らかのきっかけで誰にでも発症しそうな印象がありますし(まぁおねしょも、老人になったら再発しそうではありますけど、何かこっちの方が簡単に来そうな気がします…あくまでまだ記事を読んでいない、僕の勝手な印象ですが…)、睡眠が妨害されるのは本当にこの世で一番拷問に近いことにも思えますから、他人事じゃないかもしれない、という感じでぜひまとめを見ておきたい所です。
珍しく画像付きの記事だったので、アイキャッチ用に、画像もお借りさせていただきましょう(ほとんど無意味な、単なる要約画像でしたが(笑))。
Nocturia(夜間頻尿)
夜間頻尿とは、夜中におしっこが我慢できずに何度も目が覚めてしまう症状です。原因としては、水分の摂り過ぎ、睡眠障害、膀胱閉塞などが考えられます。夜間頻尿の治療には、水分制限や、過活動状態にある膀胱の症状を抑える薬物療法などが含まれます。
概要
夜間頻尿とは何?
夜間頻尿とは、夜中におしっこをするために目が覚めてしまう状態のことです。この症状は、nocturnal urinary frequency(夜行性尿頻度…日本語ならこれも「夜間頻尿」ですけどね)とも呼ばれており―夜間におしっこをする回数が多くなります。夜間頻尿は、年齢が高くなるにつれて(通常、60歳以上)よく見られるようになり、性別に関係なく、時に異なる理由で発症します。夜間、おしっこのために一度だけ目が覚めることはよくありますが、おしっこの回数がより多くなる場合、それは基礎疾患や何らかの問題の徴候になっているかもしれません。
昼間はおしっこの量が多いけれど、夜間はトイレに行く回数を制限できる場合、それは頻尿(frequent urination)と呼ばれます。夜間頻尿とは、就寝後、朝目覚めるまでに確実に何度もトイレに行く状態です。基礎疾患が原因であれ、その他の原因であれ、規則正しい睡眠サイクルが妨げられるため、疲労感が残ることがあります。
夜間頻尿はどのぐらい一般的?
夜間頻尿は、50歳以降の成人の50%以上が罹患する一般的な症状です。50歳以降の男性および出生時に男性に割り当てられた人(AMAB)に、より多く見られます。50歳以前では、女性と出生時に女性に割り当てられた人(AFAB)の方に多くみられます。30歳以上では、3人に1人が罹患しています。
症状と原因
夜間頻尿の症状は何?
典型的には、人間は夜間、6~8時間はトイレに起きることなく眠ることができるはずです。しかし、夜間頻尿の人は一晩に複数回おしっこに起きてしまいます。これは正常な睡眠サイクルの乱れを引き起こし、日中の疲れやエネルギー低下につながってしまいます。
夜間頻尿の症状には以下のようなものが含まれます:
- 夜中に2回以上おしっこに起きる。
- 多尿の症例がある場合、おしっこの量が増える。多尿とは、おしっこのミリリットル数(尿総量)が多すぎることですが、必ずしもおしっこの回数が多いわけではありません。
- 日中の疲労感や眠気。これは、おしっこの回数が多いと通常の睡眠サイクルが妨げられるために起こります。
夜間頻尿の最も一般的な原因は何?
男女間の解剖学的な違いが、夜間におしっこで目が覚めることにつながり得る原因として存在します。例えば、男性やAMABには前立腺がありますが、女性やAFABには出産による骨盤臓器脱があります。
全ての人が夜間におしっこに目覚めてしまう原因には、以下が含まれます:
- 就寝前の水分の摂りすぎ: アルコールやカフェインを含む飲料は、事態を更に悪化させる可能性があります。
- 利尿剤を含む薬: 利尿剤(ウォーター・ピルとも)は、体内の余分な水分や塩分を排出させ、おしっこの回数を増やします。
- 膀胱容量の減少: おしっこをするときに、膀胱がまだ完全に満たされていない、あるいは空にならないことがあり得ます。膀胱閉塞、腫れ、感染症、膀胱の痛みなどが、このような状態を引き起こす可能性があります。
- 習慣や日課: おしっこをする必要がなくても、起きておしっこに行くように、知らず知らずの内に自分を訓練してしまっている可能性があります。あるいは、関係ない理由で目が覚めたのに、おしっこをするために目が覚めたと思ってそのままトイレに入ってしまうこともあります。
健康状態によっては、夜間におしっこに目覚める必要性を生じさせることがあります。これには以下が含まれます:
- 多尿(膀胱に溜まりきらないほどのおしっこが出る)
- 糖尿病
- 高血圧
- 前立腺肥大症または前立腺閉塞
- 心臓病またはうっ血性心不全
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群またはその他の睡眠障害
- 骨盤臓器脱
- 出産、妊娠または更年期
- レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
- 浮腫
夜間頻尿の合併症には何がある?
膀胱や前立腺に影響を及ぼす多くの疾患が、おしっこのために起きなければならない原因になることがあります。このような基礎疾患を治療しないと、おしっこのために起きる必要のある状態が続いたり、症状が悪化したりすることにつながりかねません。
夜間頻尿のもう一つの合併症は、質の高い睡眠が失われることであり、質の高い睡眠というのは、全体的な健康や心身の良好さ維持にとって重要です。
診断と検査
夜間頻尿はどのように診断されるの?
かかりつけの医療従事者が夜間頻尿の診断を下す手助けをするために、夜間のトイレの回数と、それに関する要素とを記録しておくとよいかもしれません。これには、飲んだ量、トイレの回数、時間、おしっこの量(ミリリットル単位)などが含まれましょう。自分のおしっこの量を知ることは難しいかもしれませんが、お近くの薬局で測定線付きの尿計測瓶を購入できるはずです。または、かかりつけの医療従事者が、持ち帰って使えるものをくれるかもしれません。夜間頻尿の原因や治療法を判断するために、かかりつけの医療従事者はその記録を確認します。服用している全ての薬のリストを作成することも忘れないようにしてください。
かかりつけの医療従事者は、以下のような質問をしてくるかもしれません:
- おしっこで目覚め始めるようになったのはいつからですか?
- 毎晩何回おしっこをする必要がありますか?
- おしっこの量は毎回多いですか、少ないですか?
- おしっこの量は毎回増減していますか?
- 1日にどれくらいのカフェインを飲みますか?
- 夜間頻尿で、十分な睡眠がとれないことがありますか?
- アルコールを含む飲料を飲みますか?飲む場合、毎日どのぐらいですか?
- 最近、食生活を変えましたか?
- どんな薬をいつ飲んでいますか?
かかりつけの医療従事者が、尿検査や尿培養をすることで、感染やタンパク質やその他の要因を調べるかもしれません。
根本的な原因の特定につながるかもしれないその他の検査には、以下のものが含まれ得ます:
- 腎臓の機能を調べる血液検査
- 膀胱の充満状態や排尿状態を見るための、膀胱の画像検査
- 膀胱鏡検査
夜間頻尿については、ほとんどの一般かかりつけ医が対応可能ですが、疾患要因によっては泌尿器科医やその他の専門医を受診する必要がある場合もあります。
管理と治療
夜中の大量のおしっこを止めるにはどうすればいい?
典型的には、基礎疾患を治療することが先決です。例えば、睡眠時無呼吸症候群の場合は、睡眠の専門医に診てもらう必要があります。前立腺肥大の場合は、薬物療法や手術が必要になることもあります。
夜間頻尿の原因が何であるかにかかわらず、かかりつけの医療従事者が何らかの生活習慣の改善を勧めてくることがあります。これは、生活習慣を少し変えることはリスクが低い傾向にあり、また、夜間にトイレに行く回数を減らすことに対し、しばしば大いに効果があるからです。
夜間頻尿のための生活習慣改善には、以下のようなものがあります:
- 夕方の水分制限(特にカフェイン飲料)。
- 午前中または就寝の少なくとも6時間前に利尿薬を服用する。
- 午後の昼寝。昼寝をすると血流に水分が吸収されますが、これは、昼寝の後にトイレに行く必要があるということを意味しています。これにより、夜間にトイレに行く回数を減らすことができるかもしれません。
- 家で座っているときに足を高く上げる。これは体液の良好な分配を助けます。
- 骨盤底筋を強化するための骨盤底筋理学療法。
- 圧迫ストッキングを着用する。これも、体液の良好な分配につながります。
薬物療法は、かかりつけの医療機関が検討する可能性のある、追加的な治療選択肢です。薬物療法には以下のようなものが含まれます:
- 抗コリン薬:過活動状態の膀胱の症状を抑える薬です。40%程度の患者さんが、抗コリン薬で成功を収めています。このタイプの薬の例としては、ミラベグロン(商品名ミルベトリック®)、ダリフェナシン(商品名イネーブルクス®)、オキシブチニン(商品名ディトロパン®)、トルテロジン(商品名デトロール®)などがあります。
- 利尿薬: ブメタニド(商品名ブメックス®)やフロセミド(商品名ラシックス®)といった薬は、おしっこの量を調節するのに役立ちます。
- デスモプレシン(商品名DDAVP®): 腎臓が作るおしっこの量を減らすのに役立ちます。
どのような治療法が最も効果的かについては、必ずかかりつけの医療従事者に相談してください。薬と、どのような治療が最も効果的だと考えられるかということについて、常に質問することも忘れないようにしましょう。
夜、2時間おきにおしっこが出るのはなぜ?
夜中に頻繁におしっこをするのは、何らかの基礎疾患の徴候かもしれません。あるいは、寝る前に飲み過ぎている可能性もあり得ます。就寝の2~3時間前には飲み物を控えるなど、簡単な生活習慣の見直しをすると良いかもしれません。それでも上手くいかない場合は、医療機関に相談してください。おしっこの回数があまりにも多い原因が他にあるかどうかを調べるために、投薬や検査が必要な場合もあり得ます。
予防
夜間頻尿は予防できるの?
夜間頻尿は予防できません。多くの場合、基礎疾患の副作用となります。糖尿病などの慢性疾患を管理することで改善することもあるかもしれません。しかし、避けることができない場合もあります。更年期や妊娠の場合、夜間頻尿を防ぐためにできることはあまりありません。
夜間頻尿の原因となっている基礎疾患がない場合は、夕食後の水分摂取を控えるなどの生活習慣の改善が有効になり得ます。
見通し/予後
夜間頻尿は深刻な症状なの?
夜間頻尿は生命を脅かすものではありませんが、その原因となる基礎疾患がそうである可能性はあります。一晩に何度もおしっこが出るということは、より深刻な状態を示している可能性があるため、無視しないことが大切です。しかし、必ずしもそうとは限りません。おしっこの量が他の人より多い人もいます。ですから、検査の結果、医学的な問題がなければ、夜間頻尿が睡眠サイクルを乱さない限り、健康被害を及ぼすかどうかについて心配する必要は一切ありません。
受け入れる
いつ医療機関を受診すべき?
夜間頻尿は治療可能です―無理に我慢する必要のある症状ではありません。一晩に1~2回以上おしっこに起きてしまう場合は、かかりつけの医療従事者にご相談ください。何か他の病気の兆候かもしれませんし、頻繁な覚醒で疲れを感じてしまうかもしれません。
医師にどのような質問をしたらよい?
健康状態について疑問を持つのは普通のことです。夜間頻尿について医療従事者に尋ねられそうな質問には、以下のようなものがあります:
- どのような検査が必要ですか?
- 夜間のおしっこの原因にはどのようなものがありますか?
- どのような治療がお勧めですか?
- これは何かもっと深刻な病気の兆候ですか?
クリーブランド・クリニックからのメモ
夜間頻尿は、困難でイライラを伴う症状です。夜中に何度もおしっこで目が覚めてしまう場合は、医療機関にご相談ください。多くの場合、生活習慣を変えることで大きな変化をもたらすことが可能です。しかし時折、特に膀胱や前立腺に問題がある場合は、薬物療法が必要なこともあります。幸いなことに、ほとんどの場合はほぼ完全に治療可能です。
やはり年齢とともにかなりの可能性で発症するもののようですね。
そして、前回のおねしょもそうでしたが、根拠も不明で僕もこないだ適当に書いていたんですけど、どうやら男性の方がおねしょも(加齢に伴う)夜間頻尿も多いようで、膀胱周りは野郎の方が弱いことが窺えます。
予防はできないけれど、治療は可能ということで、いつか「夜中にトイレで目が覚めすぎる!」となってしまったときは、「治せる」ということを覚えておくのがいいかもしれませんね。