モノはどうやって冷やすの?

液体窒素についてちょこまか書いていた最近のシリーズですが、もうちょい粘って記事を水増しさせていただこうと思います(笑)。


既に何度も触れている通り、液体窒素の沸点は-196℃であるため、超冷たい物質なわけですけど、よく考えたら、そもそも通常の環境では気体として存在する窒素を、一体どうやって冷やして液体にまでしているのでしょうか…?

 

もちろん、こないだ書いていた通り、例えば液体ヘリウムなんかは液体窒素より遥かに低温の物質なため(液ヘリの沸点は-269℃……全ての物質が停止する絶対零度より、わずか4℃高いだけ)…

「気体の窒素を液体ヘリウムに接触させれば、どんどん冷えていき、やがて-196℃に達したら液体になる」

…といえるんですけど、しかしこれは問題の先延ばしなだけであり、「じゃあ気体のヘリウムを液体にするのはどうすんのさ?」って話になるわけで、何も解決していない感じですね。


要は、記事タイトルにも挙げました「モノはどうやって冷やすのか?」というのが今回のテーマというかポイントで、よく考えたら、「モノを温める」というのはめちゃくちゃ簡単で、運動ができる人間ならば、例えば手を擦り合わせるだけで摩擦熱が発生しますから、それだけで物体の温度を上昇させることに成功するといえます。


しかし、「冷やす」という行為は、よく考えなくても「そういえば、どうすれば?」と思える難しいアクションだといえましょう。


もちろん、気温より高温の物質であれば、「ふーふーすれば冷えるじゃん」って思えるし、それは間違ってはいないんですけど、まぁ当たり前ですが今考えてるのはそういうことじゃなく(笑)、「例えば気温と同じ温度のものを、もっと積極的に冷やしてやるにはどうすればいいか?」って話ですね。

(改めて、気温と同じ温度のものでも、擦りまくって摩擦熱を伝えてやれば、温度は簡単に上げられることと対比して考えると、冷やすのは極めて難しい、ってのがポイントです。)

 

そしてさらに言えばこれまたもちろん、身近なものを使えば、「冷蔵庫に入れれば冷えるよ」とは言えるんですけれども、これも結局、「冷蔵庫は、庫内の空気をどうやって冷やしてるの?」という点に帰着するため、仕組みを知らないと上手いこと説明できないのがこの辺の話なわけです。


結論から言うと、簡単にいえば、液体と気体が状態変化を起こす際の熱の移動がポイントで、「断熱膨張」と「気化熱」という現象がキーとなっているのでした。

 

以下のWikiP記事(↓)が概要を説明してくれていますが…

ja.wikipedia.org

…やや難解なので、非専門家ながらもうちょい分かりやすくまとめ直してみますと、まず、例えば適当な気体に超高圧をかけてやれば、液体に凝縮します

これはこないだの圧力シリーズでも見ていた話ですが(↓のダイヤモンド記事とかですね)…

con-cats.hatenablog.com

…物質の状態というのは結局「分子同士がどうつながっているか」によって決まるものですから、圧力で思いっきり押しつけてやれば、バラバラに飛び回っている気体分子は自由な気体ではいられず、液体という「自由に形は変えられるけれど、完全に自由に、周りの分子に引っ張られる力を断ち切って一人で遠くへ飛び立っていくことはできない」状態になるわけです。


(圧力鍋を使えば、通常の沸点100℃を超えて水を加熱できる…というのと、ちょうど逆に、圧力(気圧)の低い高山では、平地よりももっと低い温度(富士山頂で、87℃とか)で「よっしゃー、俺らは自由だー」と、液体の水が気体になれる=沸騰するというのなんかが、まさにその理由によるものですね。)


脱線補足が長くなりましたが本題に戻りますと、気体は超高圧下にさらすことで液体になるわけですけど、圧縮することで小さくなったその容器を逆に膨張させると、液体は気体になる(=体積が増加する)わけですが、液体が気化する際に全体の温度が低下します。

これを「断熱膨張」と呼び、スプレー缶でガスを放出し続けると缶が冷えていくという話(参考:↓の記事)が、まさにこの仕組みによるものでした。

con-cats.hatenablog.com

…で、断熱膨張を行う際は同時に圧力の低下も発生するため、膨張時に気化せずに残った液体も最終的には全部蒸発していくことになり、その際に気化熱を奪っていくことになるため、さらに温度が低下します。


この、圧縮→膨張→気化というステップを延々繰り返すことにより(気化したものはまた圧縮して液体に戻してやることで、サイクルの完成)、温度は延々と下げることが可能でして、普通の気体から始まった場合でも、-80℃程度の温度であるドライアイス二酸化炭素が固体になったもの)が得られるし、もっとガンガン冷やせば-196℃の液体窒素も得られると、そういう仕組みになってたんですね。


「じゃあ、液体窒素も、そのステップを繰り返したら延々冷え続けていくわけ?夢の絶対零度、いけるやん!」と思えるかもしれませんが、窒素は融点が-210℃であり、そこまで冷えると窒素が固体になってしまうため、それ以上サイクルを回せなくなってしまうため不可能なんですね!

(あくまで、「液⇔気」変化がこのサイクルには重要なわけです。)

 

そう、僕は見たことがないのですが、何気に「液体窒素」どころか、さらに温度の低い「固体窒素」というものが世の中には存在しまして…

 

ja.wikipedia.org

日本語版記事には画像がなかったものの、英語版にはありました(↓)…

 

https://en.wikipedia.org/wiki/Solid_nitrogenより

…まぁただの氷すぎて、こんな画像見ても何の面白みもありませんが(笑)(そもそも氷にも見えない、「何やこれ」な物体でしかないですけど(笑))、これが夢の冷たすぎる物質、固体窒素のようです。

(ちなみに「冷たいもの」の例えとして、僕は松ちゃんの「冷たっ!俺の中2のときの担任ぐらい冷たいやん!」ってネタがめっちゃ好きなんですが、幸い僕の人生で冷たすぎる人間はいなかったので「○○ぐらい冷たい固体窒素」という記述はできませんでした(笑)。)

 

とはいえ、先ほど「固体になったらそれ以上温度は下げられない」と書いたものの、世の中はそんなに単純ではなく、物質には温度以外に圧力というものも状態に大きな影響を与える要因でした。

 

なので、先ほど書いていた通り、「圧力が低いほど分子は自由」という原則から、低圧条件であれば物質はより固体になり辛いといえるわけですけど、その辺の状態変化については、そういった極限状態でどうなるかは実際にやってみないと分からない形になっているといえましょう……

 

調べてみたら、以下の信州大の理科授業コーナーに、窒素の状態図が掲載されていたため見てみた所…

http://www.shinshu-u.ac.jp/project/cst/especial/より

…やはり、かなり低圧にしても、結局は固体になってしまうので、無限に(というか絶対零度にまで)温度を下げることは不可能という感じですね。

 

しかし↑の図を見てみると、大変面白い事実が分かります。

圧力を下げていくと、当然同じ温度でもより「気体でいやすく」なるのですが、窒素の場合、ある程度下がっていくと、固体・液体・気体が共存する、いわゆる「三重点」ってポイントに非常に到達しやすい形になっているんですね…!

 

つまり、液体窒素と気体窒素が混在している状態で圧力を下げると、どんどん液体が気体になっていくわけですけれども、その際に例によって気化熱が液体から奪われ、温度も同時に低下していく形になっています。


で、温度と圧力がどちらも一緒に下がっていく形になるわけですが、面白いことに窒素を大気圧条件から降圧していくとちょうどピッタリ三重点にたどり着きやすい状況になっているようでして、我らがYoutubeを検索したら、固体窒素(Solid nitrogen)作成実験の様子が色々公開されていました。

 

www.youtube.com

トップに出てきたのはこちら(↑)、英語とフランス語の動画でやや分かりにくいかもしれませんが、言葉なんて不要で現象を見るのでも十分楽しめますね。

 

液体窒素実験は1分あたりから)ポンプで内部の空気を除いてやって減圧することで、最初は沸騰する(=液体が気体になる)わけですけど、すぐに温度も低下し、固体窒素が爆誕する…という様子が見事に収められています。

(誕生した固体窒素を水に入れてやると、超低温物質で空気中の二酸化炭素があまりにも冷やされて、ドライアイスができる…って様子も後半で示されていますね。)

 

…と、面白かったのでそんな動画を見ている内にまたしても時間が完全に切れてしまいました。


ちなみに、エアコンや冷蔵庫も、まさにこれと全く同じ仕組み(膨張と気化)で冷やしているので、現在の世の中で「冷やす(温度を下げる)」というのは、基本的に全てこのメカニズムで行われていることだと考えていいように思います。

その辺ももうちょい脱線してみようと思ったのですが、時間不足につき、また次回に持ち越しとさせていただきましょう。

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村