スプレー缶が冷えるのは……

前回の記事では、圧力と温度の関係について、冷凍庫なんかの例を出してちょろっと書いていました。

 

あぁでももっと分かりやすいものに、スプレー缶なんかがあったかもしれませんね!

 

前回、数式(まぁ数字はないので文字式ですが)は別にどうでもいいでしょう…と書いていましたがまぁせっかくなので出してみると、例の「ボイルの法則」と「シャルルの法則」の併せ技で、「ボイル・シャルルの法則」などとも呼ばれますが、気体というものは…

  • (圧力 × 体積)/(温度)= 一定

…という性質があることが、偉い人……というか、当たり前ですけどボイルさんとシャルルさんによって提唱され、実際実験しても本当に正しいものだとして実証されたんですね。

(やっぱり文字が絡むと拒否感を示す方が多い気がするので、文字式ですらなく日本語式にしましたが、文字で表すと、

PV / T = k(kは定数)

とか、

P1V1 / T1 =P2V2 / T2」(状態1でのP1(圧力)とV1(体積)をかけてT1(温度)で割った値は、状態2でのP2(圧力)とV2(体積)をかけてT2(温度)で割った値と必ず一致する)

とか表されますが、意味する所は日本語の通りですね)

 

つまり、気体というのはこの関係が成り立つからこそ、前回の冷凍庫の例だと…


・温度の高い空気が庫内で急激に冷やされた場合、上の式の分母が小さくなる

→分子(ややこしいですけど、分数の分子のことで、気体の原子分子の分子ではありません。同じ言葉とか、ややこしすぎ(笑))の内、体積は、冷凍庫の中なので一定

→この掛け算割り算が「一定」になるためには(分母が小さくなったんだから当然分子も小さくする必要がある)、分子の内、圧力が小さくならなくてはいけない

⇒つまり、庫内の圧力が低下し、要は中から外に向かって強い「引っ張る力」が発生し、扉を開けることが困難になる

 

…って流れになっているというわけですね。

 

で、スプレー缶の例ですが、まず何の話かといいますと、スプレー缶を使い切る際、完全に中のガスがなくなるまでボタンをプッシュし続けると、缶がめっちゃんこ冷えて氷のようにチベたくなる(下手したら凍傷の危険性あり)…というのは、恐らくどなたも経験されたことがあるのではないでしょうか。


これもまさに、冷凍庫の場合と同様……


・スプレー缶内部の気体がほぼ完全になくなっていく際、缶の内圧が一気に極めて低下する

→例の関係式から、「体積一定・圧力低下」という現象が起こると、温度も同じように低下することになる
(=分子が小さくなるのに全体の値が一定なんだから、分母も小さくなる必要アリ)


…といえるわけですね。

 

……と、何気に僕は今の今までそうだと思ってたんですが、よく考えてみたら実は、これは厳密にいうとボイル・シャルルの法則とは関係ない話になっていました。

 

例の関係式は、条件として「同じ分子数の気体であれば、必ずPV/Tの値が一定」というものであり、スプレーの例は、よぉ考えたら缶内の気体が外部にガンガン漏れて分子数が減ってますから、前提条件が崩れているので、あの式でどうこう言える話ではなかったんですね。


…とすると一体どういう理屈でスプレー缶は冷えるのだろう、と不思議に思えましたが、これは「断熱膨張」という現象で説明ができるもののようです。

 

「断熱膨張」については、以前気圧の説明でお世話になった山賀さんの記事にこれまたクッソ分かりやすい解説があったので、その記事リンクをご紹介させていただきましょう。

www.s-yamaga.jp

ページ最上部から早速断熱膨張の話がありますが、結局、「体積が大きくなると、分子の跳ね返り速度が遅くなることにつながるので、熱運動が落ちる=冷える」という流れだということで、分子レベルでの動きをイメージすれば、結構容易に思い描くことのできる話だといえる気がします。

 

ということで、スプレー缶の場合は…

 

・スプレー缶から気体が放射される際、気体は缶内から缶外へと飛び立つことで体積が大きく膨張する

→この体積変化の際、膨張する気体が熱を奪っていく(言い換えると、熱エネルギーが膨張という仕事に置き換わる)ため、缶内の気体は冷却される


…という流れになるわけですが、それを踏まえると、実は特に最後中身が空になる瞬間以外でも、スプレーを噴出する際は常に冷却は起きているようですけど、最後使い切る場合以外、あんまり冷える感覚はない気もしますね(でもまぁ、長くシューッとしてると、たまに缶が多少冷たくなる気がすることも、そういえばあるかもしれませんが)。

 

これは恐らく、普段はその温度変化が缶内に残存するガスの圧力変化などで相殺され、スプレー缶のボディに温度変化がそこまで伝わることはないものの、いよいよガスが完全に空になる瞬間には、断熱膨張による冷却効果が金属の缶にダイレクトに伝わり、冷たくなる…って感じだといえるように思えます。

 

ちなみに、軽く検索したら「ボイル・シャルルの法則」の応用としてこのスプレー缶の話を出している解説記事も散見されましたが、まぁ一見「圧力低下→温度低下」になっているのでまさにそれが理由とも思えてしまうものの(僕もそう思ってましたしね)、実際は前提条件(=分子数が一定)が崩れているため、このスプレー缶の冷えはボイシャルとは関係ない(というより、適用が適切ではない)話になっていた感じでした。

 

まぁスプレー缶は関係なかったものの、せっかくなのでボイシャル関係式の方の注意点に触れておくと、まぁ前回もちらっと書いてましたが、この関係式を用いる際は、単位に注意することが必要になります。

 

…というか、せっかくなのでこいつらに、さらに「分子数」まで加えた、気体の状態を表す関係式・完全版の話をご紹介しましょう。

高校化学でもまさにボイル→シャルル→ボイル・シャルルと習った次に満を持して登場してくる話ですが、全てが1つの式に収まった究極の式~気体の状態方程式~がこれだ、食らいやがれ…!

  • PV=nRT

そう、気体の状態方程式というムズそうな名前の、この「ピーブイ・イコール・エヌアールティー」が、気体の状態を表す素晴らしい式でして、これを使えば気体の状態が分かるんですね(そのまんま過ぎますけど(笑))。

 

改めて具体的に、単位も付けて紹介すると…

  • P圧力で、単位は「atm」(天気でよく見る「hPa」は使えない!)
  • V体積で、単位は「L」(これは一番馴染みがありますね)
  • n分子数で、単位は「mol」(「個」ではなく、「モル」で考える必要あり)
  • R気体定数といわれるただの数字で、具体的には「0.082
  • T温度で、単位は「K」(馴染み深い「℃」は使えない!)

…って感じですけど、これから言えることは、「ある一定の大きさ・温度の空間に、ある分子数の気体を入れたら、必ず同じ圧力を示す」ってことで、つまり逆にいえば、ある空間の圧力を変えるには、体積か、分子数か、温度かを変えればいい(むしろそれ以外に圧力を変える要因は存在しない)…という前回見ていた話にもつながるわけですね。

(同じ左辺にある体積は反比例の関係があり、右辺にある分子数と温度は比例関係にあることも、ここから容易に導き出せます。)

 

ちなみに、分子数についての「個」と「モル」は、単に倍数関係にあるものなので(6×1023個が1 mol)、「個」で考えたとしても、定数の「R」の値が変わるだけで一応問題ないとはいえるんですけど、普通はmolで考えるのが一般的って感じですね。

(それをいえば、1 atm=1013.25 hPaなので(要は、「1アトム」ってのは、「1気圧」のことになります)、Rさえ変えればhPaを使うこともできます。

 ただし、温度のみは、「K=℃ - 273」と、倍数関係ではなく加減関係にあるので、これは絶対に使えません……まぁ代入すればいいだけなので使えなくはないものの、足し算引き算が加わってしまい、あまりにも式が複雑になってしまうので、絶対温度K(ケルビン)で考えるのが普通…ってことですね。)

 

…って、正直「だから何だよ」って話でしかないんですけど、ここからもう1つのファクター・体積の話に入るつもりでしたが、今回も全く時間が不足でそこまで届きませんでした。

 

一応、スプレー缶の話ができたのでヨシとしたいと思います(笑)。

(さらにいえば、別に圧力と体積にまつわるいいネタなんてほぼ何も浮かんでないともいえるんですが(笑)、まぁ適当に見繕ってみる予定です)

 

アイキャッチ画像は、ずーっと前にも触れていた通り(この記事ですね↓)…

con-cats.hatenablog.com

…僕は8x4(エイト・フォー)の、昔はピンクの缶だったフレッシュフローラルの香りがスゲェ好きでして、大学生の頃自分でも使ってたんですけど、そういえば今は緑を基調としたデザインになってたんでしたね。

 

https://www.kao.co.jp/8x4/products/powderspray/より

 

思い出の商品なので、今回はこちらをアイキャッチ画像に使わせていただきましょう。

なお、(昔と変わってなければ)これはめっちゃ女の子のニオイなので、ぶっちゃけ野郎が使うのはキモいだけかもしれませんが(笑)、割と中性的な可愛らしい青年だった&髪がサラサラでシャンプーのニオイなんかも結構残るタイプだった僕は、ギリセーフ…と甘い判定に期待したいところです(笑)。

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