今回も引き続き、以前の記事にいただいていたご質問コメントを順に見ていこうと思います。
改めて、ご紹介させていただくコメントはどれもアンさんよりいただいたものですね。
ここの補足をしておきたかった・片手落ちだった…的なポイントのご指摘ご質問、本当に深謝の極みにございます…!
水素イオンはキャッチできない、陸地に上がれば(水の中でなければ)イオンでなく分子になってしまう、っていうのはちょっとだけイメージできました。
水素イオン(陽イオン?)は水から上がると空気中のなんらかの陰イオンと反応して水素分子になるということですよね?
なんらかの陰イオンって、例えば何ですか?具体的に、というか現実的にというか、どういう過程でそうなることが確認できるんですかね?(目視はできないとしても、水素分子になるということは、水素が発生しているということですよね?)
⇒こちらはちょうどこの記事(↓)あたりへのコメントだったようですが…
イオンは原則として水中でのみ単独で漂うことができるものといえる(固体の場合、食塩=塩化ナトリウムのように、ナトリウムイオンNa+と塩化物イオンCl-が電子をお互い分け与えて陰陽両イオンがピッタリくっついており、一方が自由に漂うことは不可能な感じですね)…という話でした。
例として水素イオンを挙げていただけで、もちろん、実際は陰イオンだろうとナトリウムイオンだろうと、単独で自由に漂うことができるの液体の中に限られる、ってことですね。
(とはいえ、特殊な環境下では「固体の中で移動できるイオン」ってのもありますが……
…言うまでもなく特殊な物質に限られる現象であり、例としてニセダイヤモンドとして知られるジルコニアなんかが、高温でジルコニウムイオンZr2+が固体中でも電離しているものとして知られているようですね)
改めて、一般的には、陽イオン・陰イオンに分かれた=電離したイオンというのは、液体の中に限られると考えて問題ないでしょう。
それを踏まえて、ご質問の…というか以前の記事で書いていた「陸地に上がれば(水の中でなければ)イオンでなく分子になってしまう」というのは、まぁあくまで例え話だったとでもいいますか、そもそも単独のイオンだけをキャッチしてそのまま陸地に上げることは不可能なので、より正確には「水の中からいなくなる寸前には、既に分子に戻っている」と書いた方が良かったかもしれません。
つまり、続くご質問、「水素イオン(陽イオン?)は水から上がると空気中のなんらかの陰イオンと反応して水素分子になるということですよね?」については、「空気中の陰イオン」ではなく、「水中の陰イオン」と考えるべきポイントであり、まぁ水であれば、これはどう考えても、対をなす水酸化物イオンOH-と結びついて普通に水分子に戻る…という、面白くも何ともない回答になってしまう感じですね。
(コメントで書かれていた「水素分子」というのは、これは水素原子が電子を共有して作られるものなので、「水素イオン同士が水素分子になる」という現象は、水素イオンってのは水素原子が電子を失った状態ですから、共有する電子は1つもありませんし、ちょっと無理があると思います。
もちろん、中学理科で習った「水の電気分解」であれば、陰極からは水素イオンが集まってきて水素が発生することが知られています。
ですがこれは言うまでもなく、電源から流れてきた電子が大量に陰極に流れ着き、そこで水素イオンにガンガン電子を補給できる形になっているので、電子のない水素イオン同士でも水素分子にじゃんじゃん戻れるから、っていうのが理由ですね。
外部からいくらでも電子を受け取れるありがたい環境でなければ、水素イオン同士が結びついて水素分子になるのは、極めて難しいことだと思います。)
では、他のイオンならどうでしょうか?
例えば食塩水なら、陽イオンとしてナトリウムイオンが存在しています。
こいつを水の中から取り出したらどうなるか…??
まぁ何度も書いている通り、陽イオンだけをキャッチして水の外に出すことはできないわけですけど、逆転の発想で、例えば水を鉄板の上で蒸発させて強引に水をなくしてやったらどうでしょう…?
これはもう、状況を想像したらすぐにご納得いただけるのではないかと思います。
水の中でナトリウムイオンとして漂っていたNa+は、水が存在する限りイオンでい続けようと粘るんですけど、いざ水がカラカラになってきて、とうとう水がいなくなってしまった時どうなるか……これは言うまでもなく、相棒のCl-と再度イオン結合して、固体の食塩(塩化ナトリウム)としてまた鉄板の上に出現してくる…つまり、乾いた塩水から白い塩が残るという、誰でもイメージ可能な状態に落ち着く、ってことなんですね。
ちなみに、「まぁそうなんかな、って気はするけど、水素イオンは水酸化物イオンとくっついて水になるって話だったじゃん?なら、ナトリウムイオンが水酸化物イオンとくっついてNaOHになったり、水素イオンが塩化物イオンとくっついてHClになったりはせんの?」という疑問を感じられるかもしれませんけれども、これはならないんですね。
というのも、各原子は「イオンになりやすさ」(言い換えると「分子に戻りやすさ」)がありまして、この中で最も分子に戻りやすいのは「水」であるため、水が蒸発していく過程で、率先していなくなるのは確実に「水分子」であるためです。
(まぁこの蒸発の例だと、「分子になりやすさ」というより、「沸点の違い」とかの方が影響が大きい気もしますが、いずれにせよ「食塩水を蒸発させたら、塩酸(HCl)が残ったぞ!」なんてことは絶対にありません。)
せっかくなのでこの機会に、関連ネタといえる「イオン化傾向」にも触れておきましょう。
これはそのものズバリで、溶液の中における「イオンへのなりやすさ」を並べたものですね。
例によって、これも高校化学では語呂で覚えさせられることが多く、語呂はそれぞれ流派があるものの、僕が覚えたのはこんな感じ(↓)でした(上記ウィキページに似たものがありますが、微妙~に違う)。
- 競馬かな、まあ当てにすんな、ひどすぎる借金
(K>Ba>Ca>Na>Mg>Al>Zn(亜鉛)>Fe(鉄)>Ni>Sn(スズ)>Pb(鉛)>H>Cu(銅)>Hg(水銀)>Ag(銀)>Pt(白金)>Au(金))
一番メジャーな覚え方は「貸そうかな、まあ…」だと思いますが、何気にバリウムも一応覚えておいた方が良い原子なので、Baを加えて「競馬かな」と覚えさせられた感じです。
(なお、ウィ記事にはマンガンがアルミニウムの後にいたり、鉄の後にコバルトがいたりしましたが、僕はそれらは覚えなかったですね。実際そいつらが試験で問われた記憶もない気がします。)
「ま・あ・あ」の部分がややこしいんですけど、まぁこれはアルファベット順なのでアルミニウムが先で亜鉛が後と覚える他なく、また、続く部分はしばしば「当てにするな」と教わりますけど、これは絶対に「すんな」と覚えるべきといえますね(単純に、スズはSnなので)。
最後の「ひH・どCu・すHg・ぎAg・借Pt・金Au」も、「『すぎ』だけで水銀くせぇ、『借金』も、前半の『しゃっ』が『白金』の『はっ』だけかよ紛らわしい!」と思えてなりませんけど、これは、中学からの進学組のクラスメイト(中高一貫校で、僕は高校からの入学組みでした)が、「中学んときの先生に、最後は『水道水銀はっきんきん』って習った」と言っており、このフレーズは何気にクッソリズムがよくて覚えやすいため、僕はサポート役として「すいどうすいぎん・はっきんきん」も念のため記憶して、間違えないように注意していました(笑)。
…ま、ぶっちゃけその最終盤のイオン化傾向の違いが重要になるシーンも滅多にというか一度もなかった気がしますけどね(笑)。
ちなみにこれは当然陽イオンになりやすさの序列ですけど、これよりマイナーではあるものの、陰イオンのイオン化傾向も習います。
こちらもウィキペ記事に掲載されており、こちらもほぼ同じ覚え方でしたが微妙~に違い、僕はこう覚えさせられましたね。
最後の「あり」は「あい」ですが、まあまあ覚えやすい感じかな、と思います。
…あ、これを見ると水酸化物イオンより塩化物イオンの方がイオン化傾向が小さい=より分子に戻ろうとする原子だといえる感じでしたが、先ほどの食塩水の蒸発の例は、やはり沸点の違いと、あとは個数バランスの差なんかも加味して(=もしHとClが手を組んでHClになったら、その分減った陽イオンと陰イオンの余りから最終的にNaOHが分子に戻る必要があるけれど、それはNaのイオン化傾向が極めて大きく非常に難しいため、結局HはOHと優先して手を組み、残るのはNaとClになる…みたいな感じ)、蒸発したら塩が残るといえる形ですね。
そんな所で、続きはまた次回とさせていただきましょう。
特に目ぼしいアイキャッチに使えそうな画像もなかったですが、「当てにすんな、酷すぎる借金」というタイトルに相応しい宝石っぽいのが途中あったので、当初リンクカードだけであえて画像をお借りするつもりもなかったものの、永遠の輝き(嘘っぱち)であるジルコニアの画像を使わせていただこうと思います。
酷すぎる借金を負った人にはピッタリの紛い物といえる感じでしょうか(笑)。