イオンを片一方だけ分けるのは難しいよ

早速、イオンにまつわるエトセトラな小話を進めて参りましょう。

 

前回の記事では、「水素イオンとかよく聞くけどさ、結局こいつは何物なん?ピンセットでつまんで『これがHだよ~』みたいに言える、実体をもったものなんけ?色は?形は?味は?分かりやすく教えろやオラァン」みたいな話を残して終えていました。


まぁこの辺は、誰しもが中学でイオンとやらを習ったときに疑問に感じる謎だと思うんですけど、分かりやすく説明が可能だったら疑問がモヤモヤ残ったままの人なんているはずないわけで、ほとんどの人が結局何のこっちゃよぉ分からんまま大人になりそのまま死んでいく以上、やはり中々「水素イオン、完全に理解した…」と思える説明は難しく、どうしても「な~んか俄かには信じがたいぜぇ~」と思える話になってしまうのは否めないという感じかもしれませんね。


その理由としては、前回も書いていた通り「小さすぎて目に見えないから」ってのが究極の理由で、要は色もないし形もない物質…あえて書けば「クォーク組成:uudで表されるデルタ粒子」が水素イオンのこと……としかいえないわけですけど(まぁ僕も書いてて何のこっちゃよく分かりませんが(笑)、素粒子論的には水素イオン=陽子(ようし)は、そう定義される物質ってことですね)、そうすると「形がないって何だよ?!形がないなら、世の中に存在してないってことなんちゃうんか?この世にある以上、形があるはずだろ?!」と思える気もするんですけど、しかしよく考えたら液体の水そのものだって色もないし形もない物質(光を屈折だけはするので、存在を目にすることは可能ですが)ですし、更にいうと気体に至っては存在を目に留めることすらできないのに確実にこの世に存在するものだといえますから、案外「色も形もないけど、この世に確かに存在している」ものってのはあるんですよね。


まぁそんな屁理屈をこねくり回すような話はともかく、とはいえは、ちょうどこないだ触れていた通り(↓)、水素イオンが沢山存在すると、どうやら人間は「酸っぱく感じる」ようで、我々はまさかの舌を介してのみその存在が確認できる…という謎物質が水素イオンであるともいえそうですね。

con-cats.hatenablog.com

いずれにせよ、五感情報の王様、つまり五感情報キング(言い換える意味あんのか(笑))は間違いなく視覚なので、目に見えない時点で、何ともイメージがしづらいクズ野郎であるのはもう宿命といえる感じですね。


とはいえ上述の通り、目には見えないけれど確実にこの世に存在することは確かでして、具体的には、中性のお水(pH 7の真水)大体一滴(=0.01 mL)には、水素イオンが約6000億個含まれている(コップ一杯200 mLなら、120兆個ですね)…というのは、こないだの記事(↓)で見ていた通りでした。

con-cats.hatenablog.com

つまり、その辺のコップに水道から水を注ぐだけで、僕らの目の前に実際に「いる」んですね、「やつら」がなんと、「120兆個」も…(そんな思わせぶりに書く話じゃないですけど(笑))。

 

しかし、こいつらは例えばめっちゃよく出来たピンセットで「これこれ、こいつが水素イオン1匹」と、たった1粒の水素イオンを掴んで示すことができるかというと、残念なことにそれは非常に難しいんですね。

それは「色も形もなくて見えないから」ということよりも、「プラスの電気を持った状態の水素イオン1粒を単独で拾い上げることは極めて困難だから」という、何といいますか見た目というより性質的な難しさがある、という話になるように思います。


まず前回書いていた通り、水素イオンは液体の中でないと自由にいられません(=プラスの電気を持った「水素イオン」として我が物顔で単独で存在できるのは、水中のみ。空気中なら、「水分子」とか「水素分子」とか、電気的に中性な「分子」が圧倒的完全に安定型になります)。


遠い将来、超スーパー高性能ピンセットみたいなのができたとして、仮に水素イオン1粒を掴むことができるようになったとしても、魚釣りの様に「かかった!Hや!」と水中からザブーンと引き上げて空気中に晒したその瞬間、水素イオンは何らかの陰イオンと反応して、電気的に中性な分子に戻ることでしょう。

(まぁ引き上げたその瞬間はズブ濡れなので、まだ液体の中にいるともいえるのですが(笑)、「あらゆる水分子をくっつけず水素イオンのみをキャッチする凄いピンセット」みたいなのだったとしても、液体の外に出たら即……って話ですね。)


もちろん、「水素イオンだけを選択的に引き寄せる」みたいなことは、現代の技術でも可能になっています。

「可能になってる」どころか、実は何気にこれまた中学で習ってるような基本的な話でしかなく、例えば水を電気分解すると、陰極からは水素が、陽極からは酸素が発生するなんてことを教わった記憶があるように思うのですが、これは、陰極に水素イオンが引き寄せられて(電子を受け取って)水素に戻る…みたいな話でした。

「凄いじゃん、水素イオンを集められるんなら、その集まってきたヤツひょいと拾えば、幻の水素イオン単独捕獲に成功するんじゃねぇの?」と思われるかもしれないものの(なぜそこまでして水素イオンを掴みたいのかはともかく(笑))、これも結局、集まってきた水素イオンが電極の棒に付着したってんで、「かかったな、水素イオンいただきだぁ!」と思って棒を引き上げる……のは上述の通り液体から出したら全てがおじゃんなのでそもそもアウトとして、そうではなく、集まってきた水素イオンを棒からこそぎ取ろうとしても、実は水素イオンは電極に付いた瞬間に電子を受け取って水素分子に戻るといえるわけで、「プラスに帯電した水素イオン」をキャッチするのは、結局普通に水の中に漂っているやつを掴むのと同じぐらい困難なことである、って話にすぎないんですね。


他にも生命化学系や、その他産業界でも様々な用途でよく使われているように思いますが、「イオン交換樹脂」なんてのがあるんですけど、これを使っても同じような「イオンを集める」ことが可能ですね。

例えば「陽イオン交換樹脂」は、その水溶液中の陽イオンを吸着し、その後別の溶液をまた流してその溶液の陽イオンと交換する……みたいな感じのこと(適当すぎる説明ですが、まぁ大した話でもないのであまり深く気にしないでください(笑))ができるんですけど、これを使えば、

「水素イオンを吸着しておいて、別の液体にその水素イオンをプレゼントできるということ……あれ?水素イオンの受け渡しができるんなら、一瞬でも水素イオンを掴んでる、ってことにならない?」

…という、夢の「水素イオンキャッチ」が出来ているのではないかとも思えるんですが、これも結局、樹脂に吸着した水素イオンは、その樹脂(=マイナスに帯電)にくっついている間は、いわばその樹脂と反応して分子状態に戻っている(また後で水素イオンだけをはがしてリリースすることも可能(というかそれがイオン交換樹脂の目的)ですが、あくまで樹脂にキャッチされている間は、イオンではなくなっている(=樹脂の陰イオン成分と手をつないでくっついている))といえるため、これも結局「水素イオンを水素イオンのまま集めてキャッチしているわけではない」って感じなんですね。


…正直いきなり出した樹脂とか、説明も全然上手くなくて(笑)何のこっちゃって話の極みにも思えますし、そもそもこれは「説明のための説明」でかなりガバガバなので話半分に聞いてもらった方がいい記述だったんですけれども、あくまで「上手く水素イオンを、プラスの電気を抱えたまま集めたり、取り出したりすることは難しいのです」ということを伝えたかったというお話でした。


この「プラスのイオンだけを一箇所に集めるのは無理」というのは、考えて見たら磁石の話に近い感じかもしれず、例えば「磁石のN極の方、先っぽだけを切ったら、N極だけの磁石にできないのかな?」みたいなことを子供の頃に思われたことがある方もいるかもしれないんですけど、これは絶対に無理で、なぜかというと、磁石を切断したら、切断面を端っことしてまたSとNに別れる…ってのが磁石の仕組みだからですね。


我らがQuoraに、とても分かりやすい図入りの説明がありました。

 

jp.quora.com

回答者のNEKO (Chibineko Suwano)さんの用意された、あまりにも分かりやすすぎる図を引用させていただきましょう。

上記Quora記事、トップ回答より

こんなに、言葉すら必要ない分かりやすい絵は見たことねぇっーーっ!

…ってぐらい分かりやすいですね(笑)。

 

まぁぶっちゃけイオンの分離はそれとは違いますけど(なら何で出したんだよ、って話ですが(笑)、ふと「磁石の話に近いかもね」と思い、調べて見てみた図が分かりやすかったから紹介したくなっただけです(笑))、電気的に偏りのある物を、それだけ単独で取り出すということは、この世界ではそれと同じぐらいに非常に難しい、というお話でした。

 

(もちろん、水の中では、その「電気的に偏った」水素イオンなどが、平気な顔して存在しています。

 ただクドいですがそれはあくまで水の中に限った話であり、そのひとカタマリの水という物体の中では、全体で電気は必ず中性になっています。

 水の場合は当然、水素イオン(+)と、同時に完全に同じ量の水酸化物イオン(-)も存在することで、「その容器の中の水全体」には電気的な偏りが存在しない感じになっているわけですね。)

 

…と、この話をしたら、必ず触れたくなってしまうのが「マイナスイオン」になるわけですけど、僕が中高生だった世紀末あたりから一大ブームとなったこの言葉……

科学的な話をするならば、上述のような理由で、電気的にマイナスに偏ったイオンだけを取り出すどころか浴びることなんて、残念ながら不可能な話になっていると言わざるを得ない感じになってしまうといえましょう。

 

水のしぶきは、どんなに小さいものでも電気的に必ずプラスマイナスゼロのとんとん・中性になっていますし、帯電したイオンだけが空気中に飛び出てくるなんてことは、少なくとも普通の平地では絶対にあり得ません。


そもそも科学用語としては「マイナスイオン」ではなく「陰イオン」なので、もしかしたら陰イオンのことではなく何か別のものを指している可能性もあるのか…?と思って調べてみたら、一応、ウィキペ先生によると、この言葉は水溶液中のイオンではなく、大気中の分子がイオン化したものを指すとのことで……

ja.wikipedia.org
…分かりやすい例でいえば雷とかが空気中の分子の電離やイオン化により発生するものなので、一応存在しないわけではないとはいえるものの…

(後出しくさいですが(笑)、「イオンは液体の中にだけいるもので、空気中にはない」と何度も書いていましたが、それはあくまで「普通の環境では」という条件付きの話で、例外を全く認めない形ではありませんでした)

…改めてそれは非常に特殊な環境でしか生成され辛いもので、先ほども書いた通り平地の滝とか、片手で持てる家電製品とか、その程度の状況・物質で空気中の分子をイオン化させるのは、これやっぱりちょっと厳しいのではないか、って気がしちゃいますね。


ちなみに僕は大学生の頃、帰省した際、姉に「このマイナスイオンのドライヤー、凄くいいんだよ」と言われて「ププーッ(笑)。マイナスイオンなんて詐欺ですぅ~。大学の講義でも、エセ科学だって断言されてたよ。それは、勘違いしてるだけだね」と返したら、

「いや、偉い先生が何言ってるのか知らないけど、実際髪がめっちゃしっとりするから。こっちは実際経験してものをいってるんで、現実を知りもせず適当言わないで欲しいな。本当に効果がある以上、こっちの勝ち~」

「いやだからそれは、ミクロの霧か何かが出ててそう思ってるだけで、効果はあるのかもしれんけど、残念ながらそれは『マイナスイオン』では絶対ないから。こんなのに騙されるのが身内にいるなんて、恥ずかしいね、ヤレヤレ」

「意固地なのはどっちだ!お前なんかマイナスイオンに消されてしまえ!!」

…と、大の大人が殴り合いのケンカにまで発展……するほどのものなわけは当然なく(笑)、「…絶対ないから」より後の部分は今ノリで適当書いただけのネタですけど(笑)、でもまぁ「マイナスイオンでは絶対ないって」「えぇ~、本当に効果抜群なのに…」とちょっと論争になったのは実際の話で、今でもよく覚えています。


…がしかし、そんな偉そうなことをしたり顔で抜かしながら、実は僕も今はマイナスイオンドライヤーを使ってるんですけどね(笑)。

とはいえもちろん、マイナスイオンそのものは信じてないんですが、実際その姉の話を聞いて以降、「そんなに髪にいいなら、まぁマイナスイオンではないけど、実際何か潤う成分は出とるんだろう。マイナスイオンではないと思うけどね(←頑なに認めない(笑))」と、どんなにいいものなのか気になったのは事実でして、「何か髪に良さ気な企業努力があるのは間違いないだろう」という考えのもと、日本を発つ際、念願のマイナスイオンドライヤーを買ってから旅立ったのでした。

(一応、120ボルト対応の商品が、確か当時はマイナスイオン付きしかなかったようにも記憶してますけど、でも、仮に選択肢が他にあったとしても、やっぱり正直どんなものなのかこっそり気になり続けていたのは事実なので、間違いなくマイドラを選んでた感じですね(笑))


ちなみに残念ながら僕には効果の程がほぼ実感できなかったものの、「ま、何らかの工夫は実際されてるんだろうし、流行りに乗るのも悪くありますまい」って感じで、全く後悔もなく、物持ちのいい僕はもう10年以上そのドライヤーを愛用しています。

(流石にちょっと電気回路が劣化してきているので、その内買い換えようかと思っていますが…。)


あ、「マイナスイオン」なんて日本だけの流行りかと思いきや、パッと検索してみたら、アメリAmazonにも、普通に「Ion Hair Dryer」なんてコーナーがちゃんと存在するぐらいだったんですね!

www.amazon.com

次ぎまたドライヤーを買う際、果たしてまたマイドラユーザーになるのか、それとももっと他のエセ科学に騙されるのか……それは僕にも分かりません……買うときに、色々悩んでみようと思います(どうでも良すぎる(笑))。


(あと豆知識として、アメリカ英語では「ion」は「イオン」って発音ですね。めっちゃ違和感あって、言う度に苦痛を感じていますが(笑))

 

…と、今回も結局詳しいpHの話に入る前の雑談みたいなもので時間切れとなってしまいました。

あんまりイオンの何たるかを掴む助けになってるとも思えないものの(笑)、次こそは数字も登場してきて、よりカチッとした話をしていけるかな、と思っています。

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