こないだ見ていた「舌の色」記事を皮切りに、個別記事として白い舌について触れ、その後、前回の記事では原因疾患のひとつ、地図状舌について見ていました。
基本的には不衛生なことが原因で生じる白い舌ですが、原因疾患は地図状舌の他にもありまして、今回はこちら、名称としてはよく耳にすることがある気もする、口腔カンジダ症!
こちらカンジダ、英語ではThrushという一単語で(もちろんそのままCandidaという語も使われますが)、このThrushという語は、本義としては鳥の「ツグミ」という意味なわけですけど、どうやら症状として現れる白いカタマリがツグミの胸の白い部分に似ているからその名で呼ばれるようになった、というものらしいですが…
(最近登場してきた、Google検索トップに表示される「AI Overview」情報なので、この機能はまだたまに間違いを平気で表示してるレベルですし、真偽の程は定かではないものの…)
…日本語でも、「口腔カンジダ」の他に、より専門的な医療用語として「鵝口瘡(がこうそう)」とも呼ばれるものもあり、鵝(旧字体で「鵞」とも…この病名の場合、こちらの方がよく使われている印象です)というのはガチョウのことですから、日本語も英語も鳥の名前を使っているという共通点はありますね。
…と、例によって名前はともかく、他に触れたかった話もあるものの、HEALTH LIBRARY記事は長めですし、そちらには記事を読み終えて余裕があったらまた後で触れてみようかなと思います、それでは早速参りましょう。
鵞口瘡(口腔カンジダ症)(Thrush)
鵞口瘡(がこうそう)(※あまり耳慣れないので、以下「口腔カンジダ」表記に統一しようと思います)は、口の中の真菌感染症で、最も頻繁にみられるのは幼児や小児ですが、誰でも罹る可能性がある疾患です。舌や頬の内側にクリーム状の白い病変が形成され得ます。原因としては、特定の薬剤や、ドライマウスや糖尿病といったいくつかの健康状態が挙げられます。治療には通常、抗真菌薬が用いられます。
概要
口腔カンジダ症とは何?
カンジダ症とは、口や喉、およびその他の体の部位で増殖する、真菌(酵母菌)感染症です。鵞口瘡(口腔カンジダ症)を発症すると、舌や頬に白く盛り上がったカッテージチーズのような病変(斑点)が形成され得ます。口腔カンジダはすぐに炎症になりやすく、口の中の痛みや赤みを引き起こします。
口腔カンジダ症は、真菌の一種であるカンジダ菌が過剰に増殖した場合に起こります。口や喉にできる口腔カンジダ症の別名は、oropharyngeal candidiasisです(※日本語では違いがありませんが、「口腔咽頭カンジダ症」という感じですかね)。
医療従事者は、口腔カンジダ症を抗真菌薬で治療します。免疫系が健康であれば、口腔カンジダ症は治療開始後2~3週間で治る軽い症状です。
どんな人が口腔カンジダ症に罹るの?
口腔カンジダ症は誰でも罹る可能性がありますが、以下を含む方々はよりリスクが高いです:
- 生後1ヶ月未満の赤ちゃん
- 幼児
- 65歳以上の成人
- 免疫力が低下している(症状がコントロールしにくい)方
症状と原因
口腔カンジダの症状はどんなもの?
口腔カンジダ症は通常、突然発症します。一般的な徴候は、口の中―通常は舌の上や頬の内側―に、クリーム状で白色の、少し隆起した病変ができることです。口蓋、歯茎、扁桃腺、または喉の奥に病変ができることもあるかもしれません。
その他の症状には以下が含まれ得ます:
- 口の中や口角の発赤や痛み
- 味覚の喪失(味覚障害)
- 口の中の綿状感覚
病変は痛むことがあり、擦ったり歯を磨いたりする際に少し出血することもあるかもしれません。重症の場合、病変が食道に広がり、以下のような症状を引き起こすことがあり得ます:
- 痛みや嚥下困難
- 喉や胸の真ん中あたりに食べ物が詰まる感覚
- 感染が食道を越えて広がった場合、発熱
口腔カンジダ症は、肺、肝臓、皮膚を含む、体の他の部分に広がる可能性があります。これは、ガン、HIVや、その他免疫力が低下している方により多くみられます。
何が口腔カンジダ症を引き起こすの?
大多数の人の口や消化管、および皮膚には、少量のカンジダ真菌が存在しています。病気やストレス、あるいは薬がこのバランスを崩すと、この菌が過剰に増殖し、口腔カンジダ症を引き起こしてしまうわけです。
真菌を増殖させ、感染を引き起こしてしまう可能性のある薬には、以下のようなものがあります:
口腔カンジダは感染性なの?
口腔カンジダ症は、リスクのある方(免疫力が低下している方や特定の薬を服用している方など)に感染する可能性があります。免疫系が健康な方の場合、キスやその他の濃厚接触によって口腔カンジダ症が感染することは稀です。ほとんどの場合、口腔カンジダ症は特に伝染性ではありません(つまり、人から人へと広がっていくことはないということです)が、感染力は有しています(つまり、その他の経路でうつる可能性はあるということです)。
口腔カンジダ症に罹患している他の方からうつされる心配がある場合は、その方の唾液(つば)に触れる位置に近付くことは避けるようにしましょう。口腔カンジダ症に罹患している方の近くにいる場合は、できるだけ頻繁に手を洗うのが賢明です。
口腔カンジダ症の危険因子は何?
カンジダ感染は、乳幼児および以下のような方により発症しやすいとされています:
- 糖尿病
- 貧血
- HIV/AIDS(食道―または嚥下管―の口腔カンジダ症はこのグループでよくみられます)
- ガン
- ドライマウス(口腔乾燥症)
- 妊娠(ホルモンの変化が原因です)
- 喫煙
- フィットしていない入れ歯の装着
口腔カンジダ症の合併症は何?
口腔カンジダ症が健康な免疫系を持つ方に合併症を引き起こすことはほとんどありません。しかし、免疫力が低下している場合、カンジダ菌が血流に入り、目、脳、あるいは心臓など、体の他の部位に広がる可能性はあり得ます。このような感染症は重篤で、敗血症性ショックという命に関わる状態になることもあるかもしれません。
診断と検査
口腔カンジダ症はどう診断されるの?
口腔カンジダ症に罹患しているかどうかは、通常、医療従事者が口、舌、頬にある特徴的な白い病変を見れば即座に判別可能です。病変部を軽くブラッシングすると、わずかな出血を伴い得る、赤みがかかった圧痛を呈す部位が生じます。病変部の組織を顕微鏡で観察することで、口腔カンジダ症かどうかを確認することが可能です。
口腔カンジダ症が食道にまで及んでいる場合、医療従事者は以下のことを行うかもしれません:
- 咽頭培養を行う(咽頭の奥を滅菌綿でぬぐい、顕微鏡で微生物を調べる)
- 食道、胃、小腸の内視鏡検査を行う(可動性のある柔軟なチューブの先端に取り付けたライト付きカメラで、この部位の内壁を調べる)
- 食道のX線写真を撮る
管理と治療
口腔カンジダ症はどう治療するの?
口腔カンジダ症の典型的な治療法は抗真菌薬です:
抗真菌薬
医療従事者は通常、口腔カンジダ症の治療に抗真菌薬(ナイスタチンなど)を処方します。この薬は、錠剤、トローチ、または飲み込む前に口の中へ「シュッと振りかける」タイプの液体の形で販売されています。通常、こういった薬は10~14日間服用する必要があります。担当の医療従事者が、患者さんの年齢と感染の原因に基づいて、特定の治療法を推奨してくれることでしょう。
健康な免疫系を持つ小児や成人は、通常、抗真菌治療によく反応します。しかし、免疫力が低下している場合は、口腔カンジダ症の症状がより重くなり、治療が困難になることがあるかもしれません。
治療後、どのくらいで良くなるの?
抗真菌薬は1~2週間で口腔カンジダ症を治癒させ得ます。残っている真菌を死滅させるために、さらに数日間投薬を続ける必要があるかもしれません。
予防
口腔カンジダ症のリスクを下げるにはどうすればいい?
口腔カンジダ症のリスクを下げるために、以下のことを実行可能です:
- 良い口腔衛生を実践する。歯磨きは1日2回以上、フロスは1日1回以上行いましょう。
- 特定のマウスウォッシュやスプレーは避ける。こういった製品の中には、口腔内の微生物の正常なバランスを崩してしまうものもあり得ます。どのようなものが安全か、かかりつけの歯科医や医師に相談してみてください。
- 定期的に歯科医の診察を受ける。糖尿病の方や入れ歯を使用している方は特に重要です。
- 砂糖や酵母菌(イースト)を含む食品の摂取を控える。パン、ビール、ワインといった飲食物は、カンジダ菌の繁殖を促します。
- 喫煙やタバコの使用を避ける。禁煙の方法については、かかりつけの医師にご相談ください。
見通し/予後
口腔カンジダ症に罹った場合、どんなことが予見される?
治療により、口腔カンジダ症は通常1~2週間で治ります。しかし、症状が長引いたり悪化したりする場合は、医療機関にお知らせください。
受け入れる
いつ医療機関を受診すべき?
口腔カンジダ症の徴候や症状―口内炎、出血、または白く隆起した部分など―が現れたら、医療機関の受診予約をしてください。
口腔カンジダ症の治療で抗真菌薬を服用したにもかかわらず症状が再発した場合は、直ちに医療機関に連絡してください。より重篤な感染症を示唆している可能性があります。
その他のよくある質問
口腔カンジダ症の、家庭で出来る治療法はある?
口腔カンジダ症を治すには抗真菌薬が必要です。しかし、症状を和らげるために、以下の家庭療法を試してみても良いかもしれません:
- 温かい塩水でうがいをする
- プロバイオティクスを摂取する
- 健康な菌を含むヨーグルトを食べる
クリーブランド・クリニックからのメモ
口腔カンジダ症は、口や喉、およびその他の体の部位に影響を及ぼす真菌感染症です。不快で不便な症状と言えます。しかし、免疫系が健康な人であれば、抗真菌薬で簡単に治療可能です。免疫力が低下している方は、口腔カンジダ症を治すのにより困難を伴うかもしれません。口腔カンジダ症の症状が現れたら、かかりつけの医師に相談しましょう。迅速な治療が、体調を回復させることにつながりますよ。
そう、「口腔」カンジダと明記される通り、カンジダというものは他の部位でも発症しがちなもので、これはもう何となくのイメージが湧くと言えましょう、ズバリ、「カンジダ」で調べたら大半が「膣カンジダ」に関する記事がヒットしてくるように、性器、特に構造上内部に入り込んでいて菌類の増殖に都合の良い女性で多く見られる、いわば「お股に生えるカビ」がこのカンジダ菌なんですね。
「性器にできがちだけど、性感染症ではない」とよく強調されるように、体調不良で免疫力が落ちたときに発症しがちな、決して恥ずかしくない症状なわけですけど(まぁ、性感染症を「恥ずかしい」とするのも語弊があるかもしれませんが)、とはいえ、真摯な医療機関であるクリーブランド・クリニックのまとめでは、「稀ではあるが、感染力が皆無なわけではない」となっていましたし、一応注意は必要かもしれません。
しかし改めて、見た目のインパクトほどには生命を脅かすものではないため(そもそも異常増殖してしまっただけで、健康な人間の体表には普通に微量存在する、決して悪玉菌ではないいわゆる「常在菌」ってやつですしね)、口腔であれ性器であれ、カビが生えたように(「生えたように」というか、カビそのものなわけですが)白くなってしまっても慌てないことが肝心だと言えましょう(カンジ(ン)ダだけに(笑))。
僕は幸い身体に真菌が過剰増殖してしまったことは一度もありませんが(カンジダに限らず、水虫とかも)、本当に誰でもいつでも罹る可能性はあるものなので、油断しないようにしたい限りです。