そういえば、イオンはなぜ水に溶けるのか…?

ここ何回か見ていた石灰ネタから引き続いて、今回は以下の記事で見ていた銅の話に対して、改めていただいていたご質問ですね。

con-cats.hatenablog.com

こちらももちろんアンさんより賜ったものになります、大変触れ甲斐のある面白いポイントのご質問、いつも誠に感謝の限りにございます!!

 

銅についてですが、

銅イオンもやっぱり液体の中でしか存在せず、コレっていう(私がわかるレベルの)ものはパッとは出てこないというのはわかりました。


例えば10円玉もそうですし、銅そのもの(固体)っていうのは、銅イオンと何らかの陰イオンが手を繋いでいるということですが、「何らかの」陰イオンと書かれているように、陰イオンはたいして重要でもない感じなんですかね?陽イオンである銅イオンの方をとって銅というくらいですし。(逆に銅の陽イオンだから銅イオンということなのかもしれませんけど)

 

⇒この辺も、やや説明が片手落ちだったといいますか、初学時は結局イマイチすっきりせずモヤッとしたままになることが多い所だといえましょう。


まず、「『銅イオン』は液体の中にしか存在しない」というのは基本的にそうなわけですが、これは「電離した、それ単独で(=陽イオンとして)水中を漂っている銅イオン」のことであり、銅イオンと何かが手をつないだ物質は普通に固体であろうと安定ともいえる感じになっています。

「イオン結合した状態のもの」という但し書き込みではあるものの、銅イオン自体は固体の中にも普通に存在する(改めて、遊離=電離しておらず、別の陰イオンとカッチリ結合した形で、ではありますが)、ってことですね。


もちろんそこはアンさんのご質問でも「銅そのもの(固体)っていうのは、銅イオンと何らかの陰イオンが手を繋いでいるということですが…」という記述があったので、特に問題なく抑えられていたポイントかと思えますけれども、僕自身、初学時はその辺なんかあんまりよく分かってないままだった気もするので、あえて触れておきました。


要は、「固体の中にもイオンはあるんだけど、それは陰陽の両イオン同士がしっかり手を結んでいる1つの安定した物質であり、水に溶けて初めて、陽イオンと陰イオンは単独で漂うことができる」って話なわけですね。

 

(これも、「結局『手をつなぐ』とか『イオン同士が結合する』ってどーいうことだよ?!」というのも初見イマイチ判然とせず何だかハッキリしない点ではなかろうかと思えるのですが、これは既に以前、↓の記事なんかで触れていた通り、「電子が中途半端に多くて余ってるやつ(主に金属)が、電子不足のやつ(非金属に多い)に電子を差し出して渡してあげることで、両者が電気的にプラスマイナスの関係になって引かれ合ってくっついている」って話に過ぎない感じです。)

con-cats.hatenablog.com


あぁでも、その「イオンが、単独で漂うことができる」って部分も、今まで深く触れませんでしたが「そういや何でなん?」って思えるポイントかもしれませんね。


これは結局、水分子の構造・性質に起因する話になっているのです。


…ぶっちゃけこれは高校化学の範囲も超えた(発展知識として高校でも触れていた気はするものの)、きちんとした話は大学で習う部分になっているのでこれまた細かすぎることな気もするわけですけれども(なので、今まで無視してきたともいえます)、まぁせっかくなのでごく簡単に触れてまいりましょう。

 

水分子というのは、酸素原子と水素原子2つが、電子を分け合って共有結合を作ってつながってるものだ…というのも以前触れていましたけれども、実は共有するといっても電子の分布は均等ではなく、とにかく電子を他のやつらから奪う力が強い酸素の方が、水素よりも強く電子を引き付ける形になっています。

その結果、水分子は酸素原子側が若干のマイナス電気帯び・水素原子側が若干のプラス電気帯びになっている…という、いわゆる「極性」を持った分子になっているといえるのです。


まぁこんな表記は正直どうでもいいんですけど、その電気的な「極性」を議論するために、化学では酸素原子に「δ-」、水素原子に「δ+」という表記を足すことで、「電気的に少し偏りがありますよ~」なんてことを示すことがままあります。

(「δ」は「デルタ」のギリシャ文字で(大文字がΔ、小文字がδですね)、しばしば「非常に小さいもの」を表す際に使われる文字ですね。

 水素と酸素の間には電気的な偏りがあるといっても、あくまで電子は両者で共有されていますから、「極微量な偏り」でしかないわけですね!)


で、水を水たらしめている最強の特徴が実はこの絶妙な極性であり、これのおかげで水は他の液体にはない様々な特徴があるといえまして、まぁ全部は挙げられないもののその最大のものはやはり、「その極性が産み出す分子同士の引っ張り合う力により、地球上の常温で液体として安定的に存在できる」ということが筆頭だと思いますが、今見ている話関連ではやはり、他の極性を持った物質を容易に溶かすことができる、ってのが重要ポイントとして挙げられましょう。


そう、イオン結合をしている物質が水の中にポチャンと入れられると、実は水分子の極性が、それぞれの陽イオン・陰イオンが分かれて存在できるようサポートしてくれている…といえるんですね!


言葉では分かり辛いかもしれませんが、検索したらとても分かりやすい図があったので、そちらをお借りさせていただきましょう。


以下で引用している図は、こちら、Khan Academyという学習サイトが無料で公開されている学習記事(↓)に掲載されていた図で…

www.khanacademy.org

CC-BY 3.0ライセンスで公開されているものでしたが、元々はこちらOpenStaxというオンライン学習教科書(↓)から引っ張ってきた図だったようですね。

 

openstax.org

ただし、元の図には「δ+」「δ-」の記載がなかったので、これはKhanアカデミーの方が手書きで付け加えてくれていたもののようです。


…と、図の出典に関する御託はともかく、この図は大変分かりやすいですね!

上記Khan Academyの学習記事より

この図は食塩NaClが水に溶けたときの様子を模式的に表したものですが、そう、実は「陽イオンと陰イオンは水の中で電離して遊離している」といっても、世の中プラスの電気をもったものがプラス帯電のまま単独で存在することは不安定すぎて不可能であるため、(事態がややこしくなるだけなのでこれまで一言も書いてきませんでしたが)現実的な実際の状況としては、極性をもった水素原子または酸素原子が、それぞれ陰イオンClまたは陽イオンNaを包み込むようにする形で、元々イオン結合でつながっていたNaClという物質を引き離して、それぞれのイオン単独で安定的に存在することを可能にしている…という感じだったんですね!


繰り返しですが、固体状態だとガッチリ手をつないでいたNaClは、水の中に入ると、極性をもった水分子がその手を解き、両イオンをふわりと包み込んでくれているというのが、食塩が水に溶ける仕組みといえるのでした。

(この水分子に包み込まれた様子を「水和」というわけですが、まぁそんな用語はどうでもいいと思います。)


なので正確にいえば、「陽イオンや陰イオンは単独で漂っている」というのは間違い…とまでは言わないまでも少し語弊のあった表現で、「水分子の、自分とは反対電気をもった原子に囲まれて平和に暮らしている」と書いた方がより正確だったわけですね。

しかし改めて、そもそも大量の水に囲まれているのが「水に溶けた物質」なわけで、これはもう結局「単独で漂っている」と考えても特に問題がないといえますから、色々な化学反応とかを考える際は、こんな感じで微弱な力でくっついているだけの水分子なんて無視して問題ないという感じであるといえましょう。

(実際に中学以来、NaCl → Na + Clという式で、いちいちナトリウムイオンや塩化物イオンに、「・H2O」みたいな表記を付け足すことは一切しません。

 本当はその方が正確な状態を表しているけれど、反応を考える上では、そんなことを考慮する意味がないからですね)


…と、全然ご質問で尋ねられているポイントとは関係なかったですが、何気に極めて重要な話にも思えたので触れてみました。

(まぁ改めて、実際は「イオンは水分子の極性作用で、陽イオンはδ-の酸素が、陰イオンはδ+の水素がくっついてサポートしている」なんて意識する必要も皆無なんですけど、仕組みは知っておくと「どういうこと?」という疑問が解消できる上で役に立つ(かもしれない)、って感じですね。)

 

それを踏まえて、ご質問の内容に踏み入っていこうと思いましたが、またしてもちょっと時間がないもので、そちらはまた次回改めて見ていく形にさせていただこうと思います。

銅についてのあれこれ(まぁ、銅は例で挙げていただけですが、身近な金属ですし説明に打ってつけですね)を、また追って見ていく予定ですね。

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