ちょうどイオンの辺りの話に関していただいていたご質問に触れている所です。
今回も早速、アンさんよりいただいていたコメントにございましたご質問の方を見てまいりましょう。
あぁ、、マイナスイオン、陰イオンのことが後半に少し書かれていましたね。
ヘアドライヤーでマイナスイオンが作られているかどうかは置いといて、もしもマイナスイオンであったとしたら髪の毛がしっとりするというのは理論的に説明できるものなんですか?
(これが1番知りたいかも!笑)
⇒マイナスイオンについて……これも、前回同様↓の記事で触れていた話ですが…
…まま、これは実際、消費者庁の命令だかを受けているものが目立ち、絶滅まではしていないもののブーム時よりは「マイナスイオン」を謳う製品が激減していることからも分かるように、一応研究の世界に身を置くものとしては、「いや、商品に何らかの効果を感じる人もいるかもしれないけれど、残念ながらそれはマイナスイオンではないと思う…」と言わざるを得ないというのは↑の記事で書いていた通りなんですけれども、ご質問の、「もしもマイナスイオンが出ているなら…」というのは、「出てないと思うので、何とも…」となってしまうのが率直な所かもしれません。
「企業側は、どういう効能を謳っているんだろう?」と思い検索してみた所、マイナスイオンはやはり大分もう勢いがなくなっていたものの、いわばその進化型と思える、「プラズマクラスター」が、SHARPにより今でも現役でバリバリ開発・販売されているのが目についた感じですね…!
こちらの特集記事では、効能に関して、「浮遊カビ菌を除菌」「浮遊ウイルスの作用を抑える」など期待される現象についての記述はありましたが、そのメカニズムについては記載がありませんでした。
そこでもっとメカニズムの記述のあるものがないか調べてみると、SHARPの中村さん・西川さんによる、日本語解説記事が見つかりました(↓)。
PDFで全編参照可能ですね。
早速垣間見させていただくと、分かりやすい図が目につきました。
図1-2を引っぱらせていただきましょう。
電極に放電することで、正極からはH+が、負極からはO2−が発生するとのことで、一瞬「ん?O2−じゃなくて、O2−…??表記ミスか…?!」と思えたものの、流石にそんなミスが公式記事に存在しているわけなく、これは酸素原子が普通にイオン化したよくある酸化物イオンではなくて、酸素分子に電子が付加された、いわゆるスーパーオキシド(超酸化物)と呼ばれる陰イオンのことのようで、O2−で間違いないようです。
水素イオンはそのまんま普通のイオンですけど、キモはこちらにあるといえそうですね。
こちらは、いわゆる「活性酸素種」と呼ばれるものであり、活性酸素が細胞にダメージを与えるというのは、これは確実に間違いないものとしてよく知られた現象ですから、プラズマクラスターの除菌効果は、この「活性酸素」によるものだといえましょう。
(実際、↑で示した下側の図2では、その通りの説明がなされていますね。図にある「ラジカル」は、まさに活性酸素種が生み出す、極めて反応性の高いものです)
参考までに、我らが厚労省の「活性酸素と酸化ストレス」記事も貼っておきましょう。
細胞老化とかに興味がある方は、この「活性酸素」が人類の敵レベルでとにかく避けたいヤベェやつだというイメージがあるのではないかと思うんですけど、まさにその通りで、細胞がダメージを受けて老化したり障害を受ける極めて大きな要因が、この活性酸素なんですね。
…と、そうすると、「おいおいプラズマクラスター、そんなの発生させるとか大丈夫か…?」と思えるかもしれませんが……
これは、SHARPによると、「人間の皮膚や目、遺伝子などには影響を与えず安全。菌の細胞のみを破壊する」とされていますね。
果たして無機的な物質である活性酸素種がどのように人間の細胞と菌の細胞との見分けをつけているのかは謎なのですが、少なくとも安全性試験はパスしているとのこと…
実際どのような試験でどのような数値になったのかについては一切書かれていないので、僕には詳細が分からないのですが……
っていうかぶっちゃけ、解説記事を読んでいると、正直に申し上げまして、心が苦しい………。
まぁあんまり勝手なことを言ってはいけないですけど(下手したら訴えられるかもしれませんし)、あくまで個人的な勝手な印象というか想像を言わせていただくと、実験されている方も恐らく実をいうと本当は半信半疑な面はあれど(ちゃんと勉強した人なら、「それは流石におかしいのでは…」と思えるはずなので)、会社の方針としてもう「これで行く!」と決まってしまっているから、とにかくそれっぽいデータを、何かのエラーや間違いで生まれたものであっても採用していかざるを得ない…というめっちゃ苦しい立場で研究されてるのではないか……みたいな、そんな気がしてしまいましてですね……
…できねぇ……僕にはどうしてもこの技術の問題点をこれ以上追求することができねぇんだ……!
僕はSHARP製品は昔から結構よく使っていて好きな会社ですし、「プラシーボ効果」は必ずあると思っている立場なので、本当は疑義を挟んでいる論文とかも見ていこうと思っていたのですが、今回はちょっとやめておこうと思います。
一応、Wikipedia記事には、「懐疑的な研究報告」の例も引用付きで紹介されていたため、興味がある方はご自身の目でお確かめください、という形にさせていただきましょう。
改めて、結局製品なんてのは顧客が満足すればそれで良く、まぁプラズマクラスターの空気清浄機とかは実際の効果や満足度の測定・顧客自身による判断が難しいのでちょっとどうだろうか、と思える節はあれど、マイナスイオンドライヤーなんかは、まぁ放電で生じる電気的な変化が髪に良い影響を与えてくれる可能性はなくはないですし(僕にはその原理は分からないものの、繰り返しですが少なくともマイナスイオンではないと思えてしまいますが、例えば「服でこすりまくった下敷きを近づけながら乾かす」みたいな静電気の作用でも似たような効果があるかもしれないのは否定できませんし、「何かはあるかも」って話ですね)、仕組みは分からなくても、とにかく「これはいいものだ。実際私は効果が実感できる!」と思えれば、それは良い製品だと思えてやみません。
(「飛行機の飛び方の詳しい原理はまだ分かってないけど、飛行機は人や物の長距離高速輸送で、人類社会の役に立っている」(まぁそれはほぼガセネタですが)…ってのと近い感じですかね。)
どうしようかめっちゃ迷ったというか、実際ちょっとだけ、もうちょい詳しい点(問題に思える点)についてまとめてはみたんですけど、やっぱりどうしても何だか心苦しいので消して…など繰り返した結果、かなり歯切れが悪く短い記事になってしまいました。
改めて、自分の目で見て理解できる範囲で情報を判断し、良さそうなら使わせてもらう、一方、ちょっとどうだろう…と思えるなら、自分が買うのは忌避させてもらう……みたいなのが一番健全ではないでしょうか、という逃げの姿勢で今回はまとめさせていただこうと思います(笑)。