引き続き、アンさんよりお尋ねいただいていたご質問コメントに触れていこうと思います。
っていうか、まず「塩(えん)」って何やねん!くらいのレベルですが、、
これまた、読んでみても何だかさっぱりわかりませんね笑
水に溶かしたらアルカリ性のものも酸性のものも中性のものもある、塩そのものにも「酸性塩」「塩基性塩」「正塩」がある、そして「酸性塩」のものを水に溶かしても酸性とは限らない、、とまぁ、書いてみただけですけど笑強弱は読んでいるとなんとなくわかりそうな気配があるものの、わからなくても良さそうなニオイがプンプンしてます笑
⇒これも地味にややこしいポイントでしたね(笑)。
しかもよりクソなことに、頑張って理解してもさほど発展性も得られるものも正直何もないという、しょうもなさすぎる話でしかないというのが泣きっ面に蜂とでもいいますか、マジどうでも良さに拍車をかけている点といえましょう(笑)。
しかし冷静に考えると「塩(えん)」というのも案外ボンヤリしたもので、どういう定義で語れば良いのか、例によってウィッキー大先生のお力をお借りしてみようと思います。
化学において塩(えん、Salt)とは、広義には陰イオン(アニオン)と陽イオン(カチオン)から成る化合物のことであり、狭義にはアレニウス酸とアレニウス塩基の中和で生じる物質と定義される。
う~ん分かりやすい!
…のかどうかは正直微妙かもですけど(笑)、まずやっぱり狭い意味の方が具体的で分かりやすいのでそちらか見ていくと、ちょうど前回見ていた「アレニウス」という語が出てきてくれましたが、要は「水に溶けて水素イオンを出すもの」と「水に溶けて水酸化物イオンを出すもの」が反応してできる物質……ということで、この定義をより分かりやすく書けば、ズバリこういうことだと言えそうです。
- 塩とは、水素を含む化合物の水素部分を別の陽イオンに置き換えたものである
「アレニウス酸」は必ず水素原子を含みますし、「アルカリと反応して中和」というのはズバリ、水素イオンが水酸化物イオンと反応して水に戻り、「酸側の陰イオンとアルカリ側の陽イオン」を持った物質が生じる、ということに他なりませんから、結局「水素を含む化合物の、水素を別の陽イオンと置き換えたもの」が塩と考えて問題ないわけですね。
例えば、一番おなじみの酸、塩酸・HClの場合…
Hをナトリウムイオンと置き換えたNaCl(塩化ナトリウム)は塩だし、カリウムイオンと置き換えたKCl(塩化カリウム)も塩だし、マグネシウムイオンと置き換えたMgCl2も、これは塩素の個数が若干変わるもののまぁそれは塩酸2つ分のHが置き換わったと考えれば問題なく、当然これも塩だと、大変分かりやすい感じですね。
他にもよく聞く酸である硫酸・H2SO4の場合も全く同様…
銅イオンと置き換えたCuSO4も、アンモニウムイオンと置き換えた (NH4)2SO4も、まさしく「塩」だといえる感じです。
じゃあ逆に塩でも酸でも塩基でもない物質は何なんだよ、って話になるかもしれませんけど、当然それも普通にいくらでもあり、例えば空気中に最も多量に存在する窒素N2なんてどう考えても酸でも塩基でも塩でもありませんし、複数の原子からなる化合物でも、メタンCH4なんかは、水素を含むにもかかわらず、一切酸・塩基とは関係ない分子(実際、完全なる中性の物質)だといえましょう。
そう、ちょうど先ほどのウィキ説明にもあった通り、広義では「陰イオンと陽イオンから成る化合物」を塩とも言いますから、こないだチラッと見ていた通り、金属と非金属の化合物はイオン結合で出来ているものが多いため、そのほとんどが(広い意味では)塩だといえる……逆にいえば、非金属同士の結合がほとんど(→この場合、多くは共有結合を形成するのでした)である例えば有機物なんかは、酸や塩基とは関係ないものも目立つ、といえそうですね。
(もちろん、有機物の中にも、水の中で普通に水素イオンを出すものだっていっぱいありますから、有機物の酸も、有機物の塩基も、有機物の塩も、普通にいくらでも存在はします。
ただ、そのどれにも分類されない化合物も、それなりに結構ある、ってことですね。)
結局、この場合は意外と「広義の定義」の方が分かりやすかったかもしれず、金属イオン(ナトリウムとか、鉄とか)と非金属イオン(塩素=塩化物イオンとか、硝酸イオンNO3−とか)がくっついていたら、それはもう「塩だね」と考えて間違えないといえましょう。
(「○化△△ウム」という名前の物質は、全て塩だと考えてOK(もちろん、アルカリになる「水酸化△△ウム」は別ですが)ですね。)
ちなみに、Wikipedia冒頭の記述にあった「陰イオン(アニオン)と陽イオン(カチオン)」についてですが、これはまぁ普通にそれぞれの英語がanionとcathionになるということなんですけど、高校化学だとまず出てこなかったものの、大学に入るといきなりアニオンカチオン言い出すので、「どっちがどっちか、知らねーよ!」と憤りを覚えるものなのですが(笑)……
まぁこれは、僕の場合、「anion」の方が、「negative」のnが入ってるので陰っぽいな……と最初は語呂で覚え、その後結局あまりにも多用されるのでいつの間にかもう、例えて言うならば「陰イオンがマイナスのことである」のと同じぐらい当たり前の用語になってしまいましたけど、そういえば「an」が「否定形っぽい」というのは我流の覚え方ですし(否定の接頭辞は「un-」ですしね)、この単語の本当の語源については調べたことがありませんでした。
早速語源(etymology)の先生こと、etymonlineを紐解いてみると…
www.etymonline.com
anionの接頭辞の由来である「ana-」は、なんと「Up」という意味だそうで、当然、対をなす「cathion」の「cath-」は「Down」という意味とのことで、陰イオンがアップ、陽イオンがダウンって、う~ん全然しっくり来ねぇぜぇ~って思える気もしますね。
ところが、実はこの用語にはよりややこしい点がありまして、「電極」を意味する語である「anode」と「cathode」、これは何と、「anion」が「陰イオン」だったのに、「anode」はまさかのまさか、「陽極」という、全く真逆に思える意味(当然「cathode」は「陰極」)になるんですね…!
…これ、僕が気付いたのは確か大学院に入ってからで、「アニオン=陰イオン」で散々慣れた後に初めて気が付いて「マジかよ!ずっと勘違いしてた!ややこしっ!!」と思えた気がしますし、実際僕に限らず、こちらに来てから、かなり優秀な大学院生(一応ネイティブではなく中国人ですが)がこの違いを知らず「anode=黒い方(日本語でいう『陰極』)」だと思っており、めっちゃ自分に自信がある子だったので「絶っっ対にanodeはnegative」と頑として譲りませんでしたが、「いや誰しも最初はそう勘違いするんだけど、違うんだって!調べてみなよ」と何度言っても認めず、結局席に戻って調べたのかすら分かりませんでしたが(多分自分の間違いを認めたくないタイプの子なので、調べたとして報告がありませんでした(笑))、優秀な学生でも勘違いしがちな落とし穴だといえましょう。
ちなみに一応、上記参考リンクを貼ったアルクにも注があるように、これは「電極を用いた装置」についていえる話で、生命科学の実験では以前書いたことがあるようにまさにそのパターンの装置で「電気泳動」をよくするため、件の学生とはその装置を見ながら議論になったんですけど…
(赤と黒のケーブルを用い、赤が陽極=anode、黒が陰極=cathodeですね。なお、中国語では日本語と同じで、赤が陽極・黒が陰極のようで、anion・cathionの陰陽は逆転しないという点が、中国人学生の勘違いポイントにもなっていたのではないかと推測されます)
…例えば電池の場合、これは「マイナス極」の方をanodeと呼ぶ場合もあるようです(ただ、普通は英語だと「negative/positive electrode」と呼ばれることが多いので、電池の電極をアノード呼びすることはほとんどない気もしますが…)。
結局「anode」というのは電子が流れ出す場所(電源から電子が集まって、放出される場所)を指すということで、電子はプラスの方に流れるため、「陽極」が「anode」になるってことですね。
そう考えると、こちらはいわば「プラス極」ということなので、anodeという「ana-」=「Up」という意味の接頭辞がついていても、この語であればまぁ納得できるような気がするかもしれません。
まぁ僕は「アニオン(陰イオン)が近付いてくる側がアノード(陽極)」「アノードという語の場合、おなじみのアニオン=陰イオンとは逆になる」みたいな感じで覚えてますけど、もしかしたら元々anodeを基準に考えた方が語源的には分かりやすかったのかもしれませんね。
(…と、さっきからメッタクソややこしいにも程がありますけど、例によってウィキップ先生の記事にそれなりに分かりやすくまとめられていました。
…ただ、ここにも「用語として混乱している」とある通り、ぶっちゃけ英語のanode/cathodeはややこしすぎる欠陥用語に思えてなりません(笑))
関連して、「電気分解のように、電源が別にあって、電極が両端に存在するものを『陽極/陰極』で呼ぶ。電池のように、それ自身が電源であるものは『正極・負極』と呼ぶ」と中学か高校の頃に習って、「そういえばそうだね、意識しないと間違えてしまうなぁ」と思ってたんですけど、上記記事によると「正極・負極」というのは何気に「電位の高い側・低い側という意味で定着している」とのことで、そこに注意すれば、電気分解や電気泳動で使う電極を「正極・負極」と表現しても問題ないのかな、って気もしてきました。
…これまたややこしすぎる上、結局誰しもが混乱するポイントなのは間違いないので、まぁ命名自体が良くない・分かりにくいと諦めて、あんまりこだわらないのが一番賢いといえましょう(笑)。
ということで、塩の話からアニオン・カチオンという英語の話に逸れましたが、時間切れとなったためご質問の続きはまた次回見ていこうと思います。
アイキャッチ画像になりそうなのが何もなかったので、電極の様子が描かれている、「電気分解」のウィキペディア画像をお借りしましょう。
なぜか画像は英語以外の言語ページから拝借されたもののようで、スペルが英語ではないanodo/cathodoとなっていますが、いずれにせよ電極の「+」がアノードで、アニオン(陰イオン)が寄って来る方、一方、「-」の電極がカソードで、カチオン(陽イオン)が寄って来る方だってことですね…!
(なお、電池の「+/-」の日本語漢字呼びの場合、やっぱり個人的には「正極/負極」を使いたいところです。)