やっぱり共有(シェア)することが最強なんだ

前回は、周期表をはじめとして色々見てきた原子の話のまとめとして、電子が微妙に余ってるやつが、電子が微妙に足りないやつに電子を与えることで、陽イオン・陰イオンとなった両者が肩を寄せ合って化合物を形成する、いわゆるイオン結合の作り方を見ていました。


前回お借りしたWikipediaのGIFアニメ画像はフッ化ナトリウムのものでしたが、イオン結合性物質の代表といえばもちろん塩化ナトリウム、NaClの食塩ですね。


イオン結合は、(絶対にそうではないものの基本的に)「電子余り」の原子が「電子不足」の原子に電子を与えることで形成されますから、電子余り=周期表の左側=金属元素と、電子不足=周期表の右側=非金属元素が結合して生まれるものだということもできます。

まさに、ナトリウムと塩素がそうなっているように、ですね。


そして、これは個人的に正直どうでもえぇやん、と思える話なのですが、イオン結合で形成された物質は、(定義にも依るものの)多くの場合、「分子」とは呼びません

理由としては、イオン結合というのは結局の所、陽イオンと陰イオンが電気的な力でお互いを引っ張り合ってくっついているだけなため、いわゆる「水分子」「酸素分子」「酢酸分子」のような、例のイモムシのような分子モデルで示される感じの決まりきった構造を持たないから……というのが主だったものといえましょう。

ただ、確かに「はっきりした1つの分子の形」は持たないものの、まぁでもNaとClが1:1でくっついたもんですし、別に「塩化ナトリウム分子」って呼んでもえぇやん、って個人的には思える気もします。


まぁでも、分子の体重を表すのは「分子量」ですが(「原子量」の合計ですね)、イオン結合性の物質の場合、「分子量」ではなく「式量」と呼べ、なんていわれますし(なぜなら、イオン結合の化合物は分子ではないから)、少なくとも大学受験的な話であれば、イオン結合で形成される物質は分子と呼ばない方が安心といえるかもしれませんね。

(でも改めて、個人的にはそんなのどうでもいいと思えます。)

 

では、その「分子」とは果たして一体どんなブツなのでしょうか…??


それが今回のネタで、分子というのは、実は「複数の原子が、電子を共有して結びついたもの」のことであり、前回見ていたイオン結合ではなく、こうして原子同士を結ぶ方法を「共有結合」と呼んでおり、実はほとんど全ての分子は共有結合によって結ばれたものだったのです。


具体的にどういうことか……Wikipediaの画像はイマイチ分かりやすさに欠けたので、検索してみて「あ、これが分かりやすいかな」と思えたものをお借りさせていただきましょう。


そもそも日本語だと「共有結合」という非常に分かりやすい名前なのですが、「イオン結合」は「Ionic bond」とそのまんまなのに、「共有結合」は残念ながら「Sharing bond」みたいな感じではなく、ほぼ専門用語に近い「Covalent bond」(コゥヴェイレント・ボンドってのが一番近い読みですかね)と呼ばれているのですが、「covalent bond」で検索して出てきたこちらの解説記事のイラストをお借りしました。

https://www.breakingatom.com/learn-the-periodic-table/covalent-bondingより

この画像では、例として塩素原子(Chlorine atom)が共有結合をし、塩素分子(Chlorine molecule)を形成する様子が分かりやすく示されています。


まず左下の小さな枠内が原子2つの状況を描いており、塩素は原子番号17番、つまり17個の電子を持つ原子なわけですけど、この17個は順番にK殻2・L殻8を最大許容量まで満たし、一番外側のM殻には7個が入っている状況=「安定の電子8個まで、1個足らない状況」だというのは、ここ最近の記事で見ていた話のおさらいでした。

(また、最大まで満たされた内部の殻はもう安定していて無視できるので、電子を考える上でのポイントは一番外側の電子殻のみであり、塩素は「17族元素」なので、最外殻には7個(=族の下一桁)の電子が入っている、というのはもう常識で一瞬で分かる話でもある…というのもこないだ見ていた通りですね。)


で、画像では、塩素原子1にある電子が「●」で、塩素原子2にある電子が「×」で分かりやすく示されており、「Chlorine Atoms (unstable)」(塩素原子 不安定)と書かれている通り、塩素原子っちゅうものは電子が非常に中途半端な数=安定の8個から1個だけ足りない形になっていますから、こいつはめちゃんこ不安定、つまり塩素原子単独でこの世に存在することはおよそ不可能な形になっているのです。


では、この電子不足マンである塩素原子は安定するためにどうするかといいますと、「足りなければ分け合って共有しよう」という大変賢く友愛的な精神で、お互いの電子を1つずつ共有するんですね!


その結果が、画像のメイン・右上枠内に描かれた「Chlorine Molecule (stable)」(塩素分子 安定)の部分で、塩素1の最外殻を見てみると、自分の電子(●)7個に、塩素2の電子(×)1個を共有させてもらうことで合計8個の電子で満たされることになっており、もう書くまでもないでしょう、塩素2の方は、自分の電子(×)7個に、塩素1の電子(●)1個を共有させてもらうことで安定の8電子状況になっているということで、「そんな、電子をシェアするとかありなのぉ?」と思える気もするものの、これはあり中のありといいますか、これこそが世の中の分子を形作っている基本中の基本、共有結合と呼ばれるものになっているわけです。

 

(なお、当たり前ですが、この図は分かりやすく違う記号にしているだけで、実際の電子に全く違いが存在しないというのは、こないだの記事(↓)で見ていた通りですね)

con-cats.hatenablog.com

ちなみに、イオン結合は静電気の力で引き寄せあうだけの、いわば離れた物質同士に働く見えない力によるものなんですけど、この共有結合は物理的に電子を共有することで両原子がガッチリ手を結びついているも同然のものであり、共有結合というのはイオン結合に比べて、圧倒的に強い力での結合になっています。

(というか、原子同士の結合で最強のものです。)


何を隠そう、以前の「楽しい有機化学シリーズ」でよく見ていた「原子同士が手をつないで結合しています」と書いていたのは、実は全てこの共有結合だったのです。


「二重結合」や「三重結合」なんかも話に出したことがありましたが…

con-cats.hatenablog.com

ちょうど先ほどの引用記事の画像2枚目に、都合よく窒素分子の電子共有の様子も描かれていました。

https://www.breakingatom.com/learn-the-periodic-table/covalent-bondingより

そう、窒素は15族元素なので、一番外側の電子殻には電子が5個存在するわけですけど、安定の8個になるために、それぞれの窒素原子が電子を3つずつ出し合って共有して、いわゆる三重結合、非常に強い力で分子を形成しているといえる形だったんですね!

 

それもあって、窒素というのは大変安定な気体分子であり、両原子が3つの電子共有でガッチリ手をつなぎ合っていますから、他の物質とほっとんど全く反応しない(=もう電子の受け渡しを行わない)空気のような存在(←は比喩ですが、実際空気の約80%は窒素ですしね)だといえるわけです。

 

と、ここまでは同種の原子同士による共有のみでしたが、先ほど「有機化学でおなじみ…」と書いた通り、Wikipediaの方の画像では、CH4(メタン)の電子共有の例が紹介されていました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/共有結合より

14族の炭素は、一番外側に電子が4個存在します。

だから、有機の話でしばしば書いていた通り「炭素は腕が4本」という話につながる感じだったわけですね…!


一方、水素は電子が1個のみ存在する物質でした。

水素はK核しかないので電子2個で安定になるわけですが、上図の通り、4つの水素がそれぞれ炭素の電子1つずつを共有し、水素はそれぞれ安定の2個、炭素は合計で8個の電子を保有していることになっているというわけですね!


…とはいえ、「水素って、陽イオンになるって話じゃなかった?何でマイナスの電気を持つ電子をもらって安定なわけ?」みたいな疑問が浮かぶ方もいらっしゃるかもしれず、それもあって水素を最初に説明の例に出すのは微妙に思えたため別の画像をお借りしていたのですが、まぁこれは、実際ちょっとややこしい点になっています。


もちろん水素原子自体は電子を失うことで陽イオンのHになりやすいわけですけど、とはいえ電子を1つ受け取ったら、「K殻がマックスの電子2個で満杯」という安定構造にもなるわけで、どちらがより安定になるのかは反応する相手によりけりだといえる話になっているんですね。

まさにその部分が、保留のままになっているアンさんにお尋ねいただいたご質問のひとつでもあったのですが、その辺はまた後で触れさせていただくといたしましょう。


いずれにせよ、上記メタンのように、電子の共有は異なる原子同士でも普通に行われ、結果として世の中には無限にも思える分子が存在しているといえるんですね。

 

もちろん、「共有することで安定になる=両者は、電子が不足している」といえるので、共有結合は基本的に、電子が足りていないグループである周期表の右側=非金属元素同士で起こることが多い感じですね。

(もちろん金属の絡んだ共有結合も中にはありますが、大抵は「○素」で表される非金属が主役といえましょう。また、いうまでもなく、一番右端の安定18族は、他の原子と共有結合など形成しません。)


他には、二重結合などで出てくるσ結合(シグマ結合)やπ結合(パイ結合)、あるいは芳香族化合物なんかでよく出てくる共鳴の話などありますが、それは大学教養レベルの小難しい話が絡んできますし、気にしなくていいでしょう(なら出すなよ、って話ですが(笑)、まぁWikipediaにもサワリの説明はありますし、興味ある方はそちらをご覧ください、って感じですね)。


では、共有結合の話も(ごくごく簡単にですが)終えた所で、原子やイオンの結合について重要なものは見られたといえるので、次回は途中状態だったご質問の方に戻っていこうと思っています。

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