ブリキ…トタン…メッキ!!

まだまだいただいていたナイスご質問の途中でした、早速続きに参りましょう。


今回は酸化還元についてチラッと触れていたところについてですね。

酸性の洗剤と塩素系の洗剤を混ぜると塩素が発生するということは、そして「塩素系洗剤から単体の塩素が発生する」という表現になるということは、、えぇと…あれですよね…?酸化と還元は同時に起こる、酸化は酸素がくっついて起こる、もしくは水素が離れて起こる、みたいな感じだったはずなので、、塩素系の洗剤は酸性の洗剤の酸素をもらって(酸化して)、塩素が発生するということ??だとしても、塩素系の洗剤が必ずアルカリ性というわけでもないように、酸性の洗剤が必ずしも酸性ではない…っていうのはちょっとおかしいですね、文章的にも笑

恐らくですけど、酸性の酸と酸化の酸はイコールではないんですよね?(わかりませんけど、今までのパターンから考えて…?笑)


酸性かアルカリ性かは水素イオンの量で決まる(pHに影響を与えるのが水素だから)ということでしたが、この場合の酸性は酸素が多いということではないということと、

酸化還元反応は水素が離れて起こるということでしたが、この場合の水素の移動にpHは関係ないのではないかと思われることと、

同じ水素なのに…、そもそも水素なのに酸性やら酸化やらっていうことさえもややこしいのに…

といった感じで、

とりあえず、いろんなことがごっちゃになって、迷走していることは確かなようです笑

 
⇒ご質問いただいたアンさんはちょうど業務でちょっとだけ用いるため、まさにこの酸化還元の話を職場でちょろっとおさらいした所だったという話なのですが(詳しくはプライバシーのため省略させていただきますが…)、酸化還元の話は、ゆーて水素イオンと水酸化物イオンの動向さえ抑えれば何とかなるともいえる酸性・アルカリ性の話より、圧倒的に難しいですね。


中学では……あぁ、銅に酸素がくっついて酸化銅、みたいな基本のキぐらいは触れた気がしますけど、詳細なメカニズムに関しては完全無視だったような気がします(まぁそれは、そんなこといったら酸性アルカリ性もそうかもしれないものの)。


高校になったら反応式も含めてより詳細なメカニズムを習うわけですが、この酸化還元、「あぁ、これは、もしも先生の教え方が悪かったら一生理解できなかった可能性が高ぇわ」と思えるかなり難解な話で、恐らく割と多くの高校生はマジでよぉ分からんまま終わってしまったのではないかと思える単元に思います。


幸い僕の通ってた高校は進学校だけあって授業が死ぬほど分かりやすく、何とか一命をとりとめたわけですが、本当に「こ~れは教科書の記述だけだったら理解すんの無理やろ…」と思えてならない話でした。


そんなわけで、酸化還元に関する反応式レベルの話は、小難しいこともあって正直クソおもんないにも程がある感じになりそうなので(まぁ、前回の緩衝液の話も、ぶっちゃけつまんなさとしては似たようなもんだったかもしれませんが(笑))、酸化数や半反応式といった酸化還元の小難しい話に触れるのは、(少なくとも今回は)やめておこうと思います。


もっとこう、概念だけで捉えるのでもこの辺の話は十分かなと思える感じですね。


で、それを踏まえて簡単にまとめてみますと、酸化還元というのはちょうどアンさんが書かれていた通り「酸素がくっつく」のが酸化だし、「水素が離れる」のも酸化だし、逆にいえば「酸素が離れる」「水素がくっつく」のは還元だといえる感じなわけですが、言うまでもなく酸化と還元は完全に対をなす現象であり、必ず同時に起こるといえるのも特徴ですね。

(=何かが酸化されたら、絶対に別の何かが還元されている、ということ)


酸化という名前に「酸」があるし、例の中学の酸化銅は極めて分かりやすいのでとっかかりは「酸素がくっつくのが酸化」と習うわけですが、もうちょい概念を一般化すると、実はこれまた「電子の移動」が酸化還元の全てだったのです。


反応式までは触れないものの、ちょうど電子については何度か触れていたので、そこの説明が可能になっていたのは大変ラッキーだといえましょう。

ズバリ、酸化というのは「電子が奪われること」、そして還元というのは「電子が与えられること」であり、改めて、酸化還元というのは結局「電子の移動」に過ぎないといえまして……

「何かが酸化された」というのは、「何かから電子が失われた」と完全に同義であり、失われた電子はこの世から雲散霧消していなくなるわけではなく、何か別の原子や分子に移動するだけですから、酸化が起こったら必ず「何か別の物質が電子を得た=還元された」といえることになるわけですね。


これを踏まえると、「酸素がくっつく」ことがなぜ酸化と呼ばれるのかがハッキリ分かるといえましょう。

酸素というのは、(この記事(↓)ら辺から触れていましたが)一番外側のL殻に電子を6個持っているのでした。

con-cats.hatenablog.com
で、この辺の記事で何度も触れていた通り、電子は外側の殻に8個入って超安定するため、電子6個持ちの酸素というのは、マジで「電子が2つ足りない!誰かから電子が欲しい!」と思い続けてるやつなんですね。

したがって、酸素原子というのは、酸素余りの原子から電子を奪いとりがちなものであるといえ、その、酸素原子によって電子を奪われたものは「酸化された」と言い、逆にこのとき、当然酸素原子自身は「還元された」といえるわけですね。

(一番単純な酸化銅の例なら、銅は酸素とくっつくことで酸化された、逆に酸素は銅とくっつくことで還元されたといえるわけです。

 これまた何度も書いている通り、原子がくっつくというのは詰まるところ電子のやり取りによって起こる現象だといえるわけで、「銅と酸素がくっつく」ってのは、言い換えれば「銅が余っている電子を差し出し、酸素がそれを受け取ることで、原子同士が手を結んでひとつの物質となった」といえますから、まさに酸化還元反応が起こったことが分かりやすいといえましょう)


そんなわけで、「酸化」というと酸素が絡んできそうな気がするわけですが、これは罠というか単なる紛らわしいネーミングなだけで、別に酸素が絡まなくても酸化還元は普通に起こります。

まさに先ほど書いていた通り、「水素とくっつく」も多くの場合酸化還元反応の一種であり、これまた復習ですが、水素というのは電子を1つ放り出して陽イオンになりやすい原子でした。

これは言い換えると、「誰かに電子を与える」ということですから、水素とくっついたものは当然電子を受け取る=水素とくっついたものは還元された、といえることになるわけですね。


いうまでもなく、酸素も水素も関与しない酸化還元反応も無限に存在します。


一番代表的なのは金属同士の電子の授受で、金属原子というのは(水素原子同様)基本的に電子を放出して陽イオンになりやすい物質でした。


この、「陽イオンになりやすさ」は、まさにこないだの記事(↓)で見ていたイオン化傾向の通りなわけですけど…

con-cats.hatenablog.com
陽イオンになりやすい」ということは、要するにつまるところ「電子を放出しやすい」ということですから、陽イオンになりやすいものほど電子を失いやすい=酸化されやすいといえるわけです。

(微妙にややこしいですが、落ち着いて冷静に考えれば、完全に筋の通った話になっているため、案外分かりやすい話ではないかと思います)


上の記事で見ていたイオン化傾向の覚え方を再掲しておくと、こんな感じでした。

競馬かな、まあ当てにすんな、ひどすぎる借金

(K>Ba>Ca>Na>Mg>Al>Zn(亜鉛)>Fe(鉄)>Ni>Sn(スズ)>Pb(鉛)>H>Cu(銅)>Hg(水銀)>Ag(銀)>Pt(白金)>Au(金))


つまり、序列の最初にある金属ほど酸化されやすいといえ、最後のものほど酸化されにくいといえるんですね。

また今さらですが、「酸化」というのは「電子が奪われる」という話からも何となくイメージが湧く通り……というかぶっちゃけ別に説明されなくても小学生でも知っている通り、金属が酸化されたら、錆びて輝きがなくなるといえる現象になっています。


それを考えると、金(きん・ゴールド)や白金(プラチナ)、銀なんかは、非常に錆びにくくいつまでも輝き続ける物質(貴金属)であるのは誰しも知っていることですから、序列後ろの方が酸化されにくいものだというのは容易にご想像いただけることでしょう。


…で、それを踏まえて、まさに高校の酸化還元の単元で習う話になりますが、この世界には合金などと呼ばれる、金属の表面を別の金属で覆った、いわゆるメッキした物質が存在します。


「メッキ」なんて僕はトルネコの大冒険とかでしか聞いたことがない謎単語でしたが(あぁ、ミニ四駆で「金メッキボディ」みたいなのがあって、「うわカッケェー」と思った記憶もあるので、そこまで謎単語ではなかったかもしれませんけど(笑))、これは金属表面を別の金属で被膜処理することですね。


メッキ製品は色々な所で目にするものの、「え?それってメッキだったの?」と思えるのがまさに高校化学のこの単元で習う、記事タイトルにもしました二大合金!


より身近なものから言えば、トタンがそうなんですね!

ja.wikipedia.org


トタンというのは何を隠そう、鉄を亜鉛でメッキしたものだったんですね!!

 

なぜこんなものが古来よりよく用いられているのでしょうか?


それは、イオン化傾向がポイントだったのです。


先ほどの序列を見れば分かる通り、亜鉛というのは鉄よりもイオン化傾向が大きい=より錆びやすい金属だといえるんですね。


つまり、トタンの表面が傷ついて鉄の部分が露出した場合、鉄が酸化されて錆びていく…のではなく、鉄が酸化されたら速やかに周りの亜鉛が電子を鉄に戻してあげて、亜鉛自身が酸化されることで鉄を還元してやる…つまり酸化されて錆びた鉄を元に戻してあげる役割をもっているのが、亜鉛なわけです!

(もちろん、実際にはイオン化傾向の差から、「酸化された鉄を戻す」というより、「亜鉛自身が率先して自分が酸化されることで、鉄を、酸素などの電子を奪ってくるクズ分子から守ってやる」の方がより正確といえますけどね)


ということで、トタンという合金は、ただの鉄板よりも全体として耐食性に優れているといえるわけですが、しかしぶっちゃけ、世の中にあるトタン作りのものは錆びてボロボロなものがほとんど(かつ、トタン自体がそもそも手触り的にもちゃっちい)なので…

(まさに、この画像(↓)の通りのイメージですね(笑))

https://ja.wikipedia.org/wiki/トタンより

…僕なんぞは、この話を習ったときに「そうなん?何か鉄そのものの方がよっぽど強いというか、より良い材質のように思えっけど…」と感じたものでしたけど(笑)、これだけ世の中で幅広く使われている通り、実際雨ざらしの屋根とかで使う場合、圧倒的により丈夫で長持ちするのがトタンであるというのは、理論的にも現実的にもそうだといえる話になるようです。


一方、同じタイミングで習うもう1つの合金、これもまさに鉄のメッキ製品なんですが、「ブリキのおもちゃ」でおなじみのブリキ、こちらは……

 

ja.wikipedia.org

↑のウィッキー先生の記事にある通り、鉄とスズの合金になります。

 

ブリキのおもちゃといわれれば、イマドキの子はもう分からないかもしれませんが、僕は何とかギリギリどういうものか想像がつきます、こちらもウィキP先生から画像をお借りしますが、まさにこういうやつ(↓)ですね!(言葉ではそれ以上言いようがないですが(笑))

https://ja.wikipedia.org/wiki/ブリキより

イオン化傾向を見てみると、スズは鉄より錆びにくいんですね。

なので、錆びやすい鉄を錆びにくいスズで表面加工してやることで、ブリキのおもちゃというのは長く錆びずに状態を保ったままでいられるという、そういう話だったのでした。


(ただし、これは傷が付いて鉄がむき出しになること前提のトタンとは全く逆の話になっていまして、仮に表面に傷が付いて鉄がむき出しになったら、スズはよりイオンになりにくい=電子を確保したがるという性質から、酸素の魔の手が迫ってきたとき、スズより優先的に鉄原子の電子が奪われ続けていくことになり、腐食が全体に加速度的に進行してしまう、という弱点があります。

 なので、古いブリキのおもちゃはボロボロになってることも多いんですね。

…とはいえ、傷が付くと弱いけれど、傷を付けなければ腐食(酸化・錆び)にとても強い…まあまあ、野ざらしのトタンよりは、おもちゃは傷が付く可能性も低いですし、感触や見た目は悪くないですから、ブリキというのはおもちゃにはうってつけの合金だといえましょう。)

 

といったところで、あまりご質問内容に触れられてはいませんでしたが、またちょっと時間もなくなってしまったので今回はこの辺にしておこうと思います。

酸化還元はまたご質問があったような気がするので、また追って触れていけそうな感じですね。

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村