45億年の時を経て…

いやワンパターン過ぎんだろ、ってタイトルで恐縮ですが(笑)、せっかくなので時間不足で前回ちょっと書き足らなかった放射線ネタをもうちょっと続けて、その後また本題の原子ネタ(そもそもいつの間にそれが本題になったんだよ、って話でもありますけど(笑))に戻っていこうかと思います。


前々回から、原子の構造の話ってんで「陽子・電子・中性子」の話にはじまり…

中性子の数が違う原子=同位体というやつも存在する。同位体の中には、安定して永続的にそのまま存在できるやつもいれば、不安定で時間経過とともに自己崩壊してしまうやつもいる。

 後者は、崩壊するときに放射線をぶっぱする、放射性同位体と呼ばれるやつなのであ~る」

…という、放射線ネタを見ていました。


ちなみに同位体の英語は「isotope」で、放射線は「radiation」であり、「放射性同位体」は「radioisotope」と、「ラジオ・アイソトープ」なんてのはどこかで聞いたことがある気もするワードではないでしょうか。


なので、放射性物質のことを日本ではRadio Isotopeから「RI(アール・アイ)」と略して呼ぶことが極めて多いんですけれども、「radioisotope」は完全に正しい英語であるものの、実はそれを略した「RI」は英語ではほぼ全く使われない略称であり、ほぼ通じない呼び方になっていると思います。

 

そもそも口頭ではあんまり略語を使わないのが英語なんですけど、文字表記であっても「RI」を見たことはほぼ一度もなく(日本人の方が書いたもの以外)、文字で略されるならまだ見るのが「RAM」で、これは「radioactive material」(まさに「放射性物質」の意味)の略ですね。


一方口頭では「ラム」「アールエーエム」なんて呼ばれることすらほぼ全くなく、日本語だと「DNAをRI標識しよう」というのは非常に使われる表現なんで、「RI」が使えないとなると何と言えばいいのか困るんですけど、現場の英語だと、これは実際に使う放射性同位体の名前をそのまま使うことが圧倒的に多い気がします。


つまり、DNAなどに印をつけるのに一番使われるのは「32P」(質量数32のリン。中性子が普通のリンより1つ多いので、不安定な同位体であり、放射能をもつ)なのですが、普通に「32P labeled DNA」(ピー・サーティーツー・レーベルド・DNA=32PでラベルしたDNA)みたいに言われる感じになるわけです。


(まぁあとは普通に「radio-label(レディオ・レーベル)」で「放射線標識する」みたいにもよく言われますが、実際に使う元素・核種を言うことがやっぱり多い印象ですね。

 改めて、日本の研究室のノリで「RI-label」といっても恐らく全く通じないのは要注意点かな、と思います。)

 

…と、ぶっちゃけあんまりどうでもいい英語ネタに脱線しましたが、RIには「半減期」というものが存在する、というのが前回のポイントでした。


改めて、RIというのは不安定な物質であり、一定の時間が経過すると自己崩壊を起こす(そしてその際に、置き土産的に電子ビーム=放射線を発射する)わけですけど、その崩壊を起こすペースは同位体ごとに決まっており、半減期というのは「その時間が経つと、ちょうど全体の半分が崩壊している」ことを表す、まぁ崩壊速度の目安みたいなもんなんですね。


例えば生命系の研究で最もよく使われる32Pは、半減期約14日で、これは「2週間で放射能が半分になるペースで崩壊していく」ということなわけです。


そして、また別のRI、40K(カリウム・フォーティ)の半減期が、冗談かよとも思えるまさかの約13億年だったわけですけど、改めて、これは13億年に1回の確率で崩壊が起こるというわけではなく、「13億年経ったら、ちょうど半分が崩壊している」ペースで崩壊が起こる…ということで、例えば2600億個の40Kがあったら、13億年後には1300億個の40Kが既に崩壊済みになっているということで、単純計算で1年に100個、つまり3日に1回ぐらいは、この地球上のどこかで40Kが崩壊して放射線をぶちまけているというそういう計算になるわけで……

水分子とは違うものの、こないだ見ていた通り、水分子は非常に小さな水滴1滴(3マイクロリットル)に1000京個の分子が存在しているわけで、それを考えたらこの世に分子というのはどれぐらいの数存在するかなんて想像も出来ないレベルですから、「13億年で半分」ペースでも、日々、この地球上では40Kが(多分、今この瞬間も)どこかで壊れて放射線を出していることでしょう。

 

…と、↑は全く前回見ていた話の焼き直しに過ぎない感じでしたが、実は、半減期がもっと長い物質がこの世には(しかも天然に、大量に)存在するのです。

それが、(質量数の数字はともかく)元素の名前はどなたも聞いたことがあるでしょう、ウラン238こと、238U

ja.wikipedia.org

こいつの半減期は、まさかの約45億年で、地球の年齢とほぼ一緒(笑)という、「不安定」な物質のくせして、地球が誕生してから一度も姿を変えたことのないやつがまだ半分近くも存在しているという、長老のような存在なわけですね。

(といっても、そんなこといったら安定同位体はほぼ全てが宇宙誕生から姿を変えていないまであるので、よく考えたら別に長老でもなんでもなかったかもしれないですけど(笑))

 

このウランは、非常に面白いことに、「全ての同位体が不安定=いつか崩壊して別のものに姿を変える」という放射性同位体であり、まさかの、安定して永久にウランのままでいられるタイプが存在しないという、何とも諸行無常を感じる元素となっています。


ウィッキー先生には「ウランの同位体リスト」が挙げられていましたが…

ja.wikipedia.org
そもそもこいつは原子番号92番、中性子の数は150個弱ということで、↑の記事にある通りかなりの数の同位体が存在するわけですけど、当然「安定度」は千差万別でして、中性子を146個含む先ほどのウラン238(陽子の数=原子番号92、中性子146で、質量数238ですね)の「45億年」は断トツの長さを誇る一方、217U (中性子125個)のように、半減期26ミリ秒(0.026秒)という、1秒もすればほぼ絶滅するぐらいに不安定な輩も存在しています。

(1秒=半分になるのが40回繰り返されるので、たったの1秒で(1/2)40=1兆分の1にまで減少する感じです(笑))


そういった安定性の違いもあり、天然に存在するウランの同位体は3つしかないようで、その選ばれし3名が234U、235U、238Uであり、いうまでもなく最長老半減期45億年の238Uが圧倒的に多く、この地球上の約99.27%がこいつ、そして約0.72%がウラン235、残り小数点以下ゴミのような割合でしか存在しないのが、ウラン234となっているようですね。


半減期が短いものほどよく放射線を出す(壊れやすい)といえますから、「放射能」という観点からいえば半減期が短い後者2つの方が有能であり、その優秀なウラン235の割合が天然存在比である0.72%を下回ったウランは、「劣化ウラン」と呼ばれています。

主に戦争や兵器系の話でしょうか、誰しもどこかで耳にしたことのある言葉だといえましょう。

(とはいえウラン235でも半減期は7億年、ウラン234は25万年のようですが、まぁ45億と比べたら一瞬ですね(一瞬ってこたぁないかもですけど(笑))。)

 

ちなみにこれら3つのウランは実はこないだ見ていたβ崩壊(電子の弾丸が発射され、中性子がマイナス電荷を失って陽子になる)ではなく、α崩壊(アルファ崩壊と呼ばれる別モードの形式で放射線が出されます。


このα崩壊は、電子が飛び出すβ崩壊とは違い、何がどう壊れる/放射線として発射されるかといいますと……

ja.wikipedia.org

https://ja.wikipedia.org/wiki/アルファ崩壊より

またまたせっかくなのでウィキペディア先生の画像もお借りさせていただきました、こちらは何と、「陽子2つ+中性子2つ」という、いわば普通のヘリウム原子と全く同じものが飛び出す形になってるんですね!


ウィ記事にもある通り、電子に比べてこの「陽子2つ+中性子2つ」という塊はとんでもなく重いですから(陽子1つは電子1つの約1800倍だったので、合計7200倍超の重さですね)、実は小粒の電子が弾丸のように放たれるβ崩壊と比べて、このα崩壊は威力がクソみたいに弱く(=大砲の弾が大きすぎて、威力を持って飛ばすことができない!)、α崩壊で放たれる放射線は、実は紙1枚あればガード可能なしょぼい威力になっています。


しかし、クソショボとはいえ放射線には変わりありませんし、そもそも実はウランというのはα崩壊したらそれで終わり(=安定な原子に落ち着く)というわけではなく、崩壊して変化した先の物質もまだ不安定な放射性同位体であり、こいつがさらにβ崩壊を起こしてさらに別の放射性同位体になり…という、いわゆる「ウラン系列」を作る形になっているため…

 

(参考:ウィキペディアから、崩壊で変換していく原子の流れの画像もまたお借りさせていただきましょう)

 

ja.wikipedia.org

https://ja.wikipedia.org/wiki/ウラン系列より

…「紙一枚で防げるとか(笑)。ウラン、ザッコ(笑)」というわけでは決してないんですね…!


と、他にも「同じく全ての同位体が不安定=放射能をもつ原子に、プルトニウムなんかもあります。ウランもプルトニウムも、原爆の材料であったことでおなじみといえましょう」みたいな話にも広げていこうと思いましたが、ちょっとまた時間不足であり、そもそも僕も原子物理学は専門でもないためそこまで突っ込んだ話ができない&できてもあんまり面白くなさそうなので、今回触れておきたかった、

放射線は『電子の弾丸』と書いたものの、実は『ヘリウムの玉(弾丸とはいえない切れの悪さ)』のこともあります」

という点だけは触れられましたし、放射線ネタはここら辺にして、次回はようやっと原子の話に戻っていこうかと思います。


(ちなみに、α崩壊・β崩壊以外にもまだ放射線の種類はありますが、その辺も小難しすぎるのでパスするとして、興味ある方は放射線入門系の書籍をご覧になることをオススメですね…!)

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