13億年の時を経て…

basicな話からとことん脱線して、前回放射性同位体の話なんかをちょろっとしていました。


その放射線関連の話について、突き詰めると下手したら大学の講義1単位分ぐらいにはなるかもしれないのでそこまで深入りはしないものの、もうちょっとだけ面白そうなポイントのみ掻い摘んで見てみるといたしましょう。


まずはそうですね……前回は水素の同位体として、普通(=陽子1・中性子0、つまり質量数1)の水素「1H」、そこに中性子が1つ増えて体重が2倍になった重水素2H」、さらに中性子が1つ増えて、ここまで来ると物質として不安定になり、永久的にそのままの形で存在することができないトリチウム3H」(β崩壊を起こし、放射線を発した後、中性子が陽子に変わった「3He(ヘリウム・スリー)→※追記注:「陽子2・中性子2」なので、地球上に最も多く存在するヘリウムの形である、普通のヘリウム「4He」のミスでした!)になる)…なんて話を見ていたわけですが、実は、僕も存在することすら知らないぐらいだったんですけど、トリチウムにさらにもっと中性子が追加されたやつらも、少なくとも天然には存在しないものの、人為的に合成することは可能なんだそうですね…!


ちょうど、↓のWikipedia先生の記事にまとめられていましたが…

ja.wikipedia.org


トリチウム中性子が加わった重水素、そいつにさらにもう1つ加えた重水素、さらにもういっちょ重水素、最後おまけに6個目の中性子まで加えられた重水素まで(そのまんまの名前過ぎて、列挙する意味なさすぎますが(笑))、現在の科学技術の力で合成することに成功している、とありますね!


記事の記述を引用させていただくと…

水素5は2001年にロシア、日本、フランスの科学者のチームによって理化学研究所のRIビーム科学研究室で最初に合成された。

水素7は2003年にロシア、日本、フランスの科学者チームによって理化学研究所のRIビーム科学研究室で最初に合成された。

8Hの核は1つの陽子と7つの中性子からなる。現在これ以降の重水素は合成されていない。四重水素以降の重水素は陽子に対し中性子の量が過剰すぎるために、非常に不安定である。…(略)…現在、アメリカや日本、ヨーロッパなどで合成が試みられている。

 

…と、五重水素はなんと21世紀になって初めて合成された幻の存在であり、その2年後に七重水素まで合成に成功したものの、その後20年、八重水素の合成は、未だ人類は成し得ていないという感じなんですねぇ。

案外新しいものですし、これぞ人類の叡智の結晶といえましょう。

(そんなの合成してどうするんだ、という話は、まぁ基礎研究にはつきものの話で実際具体的にはなかなか答えられないんですけど(笑)、「どう役に立つかは分からないけれど、新しいものを創り出す」ことにはやっぱり大きな意味があるように思えます。

 人類はそうやって進歩してきたともいえますしね…!)


この多重水素たち、言うまでもなく、トリチウムの時点で不安定な原子であり放射能をもつため、四重水素(「水素4」とも表すようです)以降もトリチウム同様、全て自己崩壊により放射線をぶっ放す「放射性同位体」になっています。

もちろんより不安定な物質ほどより速やかにぶっ壊れるのも当然でして、四重水素は、平均しておよそ1.5 × 10−22秒、つまり、100垓分の1.5秒(またまた出ました、「京(けい)」の次の単位「がい」ですね(笑))で勝手に壊れるということで、「あっ」という間どころか、(小さすぎることを例えて言うのも中々難しいですけど(笑))一瞬…を通り越して、刹那……は、goo辞書によると「仏語。時間の最小単位。1回指を弾く間に60あるいは65の刹那があるとされる」らしいので、まぁめっちゃ指を早く動かせる人がいたとして、仮に0.09秒で指を弾けたとすると、一刹那は0.0015秒、つまり、一刹那の間に四重水素は1000京個崩壊するぐらいの時間だということで、とにかく超絶短い時間しか存在できないのがこの水素4……というか、むしろ刹那とか全然「時間の最小単位」じゃなさすぎワロタ、仏教用語涙目(笑)。

 

とまぁ時間の短さはともかく、そう、これもせっかくなら触れようかなと思っていたポイントなのですが、実は放射性物質というのは、その物質ごとに「崩壊する時間」の目安が大体決まっているのです。

もちろん完全に一定ではなく、あくまで確率論でしかないのですが、難しいことはともかく、その「壊れやすさの目安」は、「半減期」と呼ばれる値で示されることが多くなっています。

 

ja.wikipedia.org

↑のウィ記事にある通り、これは(まぁ読んで字のごとくですが)「ある放射性同位体が、放射性崩壊によってその内の半分が別の核種に変化するまでにかかる時間」のことであり、要するに「その時間で、大体半分の原子(放射性同位体)が壊れて、放射線を出し、安定な原子に様変わりする」ということですね。


先ほどの四重水素の「100垓分の1.5秒」も半減期のことであり、正確には「100垓分の1.5秒で壊れる」というわけではなく、「その時間で、全体の半分が壊れてトリチウムになる」という話でした。

(あんまり違いがない気もするかもしれませんが、あくまで「その時間で、半分が壊れるぐらいの確率で、こいつらは崩壊することが期待される」ということを言っている感じなわけですね。)


重水素半減期は「100垓分の1.5秒」程度とのことでしたが、果たしてトリチウム半減期はどのぐらいなのでしょう?


これは実は、なんとまさかの、「約12年」!


改めて、これは「12年経つと、今あるトリチウムの約半分が放射線を飛ばして、安定な物質(ヘリウムスリー)になる」という話ですけど、意外と長い……12年もトリチウムのままでいられるなら、むしろそれ結構安定してんじゃん(笑)と思える気がするものの、もちろん、崩壊は常に起こっており、あくまで「約12年で、全体の半分が壊れる」という感じなので、普通に、壊れるトリチウム(言い換えると、放射線を放つトリチウム)というのは常に存在し続けています。


Wikiepdiaには「三重水素はかつては化学や生物学の実験で放射性標識として使われていた(今では使われることは稀になっている)」などとありましたが、実は僕は一度だけですけどトリチウムを実験で使ったことがあります。


紙一枚で防御可能を通り越して、肌で直に食らっても「皮膚ブロック」で体内に貫通すらできない雑魚なので気軽に使いましたが(笑)、もちろん、「12年で半分」になる頻度でしか放射線を出さない物質とはいえ、実験ではどれだけの数のトリチウムを使うと思ってんだ、って話ですから、ちゃんと検出器で放射線を検出可能になっているという感じなわけですね。

(もちろん、もし1個のトリチウムしか使わなかったら、12年待っても放射線シグナルが検出できるかは50%の確率でしかないってことですが(笑)、大量にあれば、ガンガン壊れる奴が現れる、って話って感じです。

 改めて、「トリチウムが作られてから、12年後に一斉に壊れる」というわけでは決してありません。)


ちなみに、「半減期12年」と聞くと、「あまり壊れない=放射線を飛ばさない」というイメージよりもむしろ、「めっちゃ長いこと爆弾のままであり続ける」ともいえますから、先ほどは「雑魚物質なので気軽に扱いました(笑)」とか書いたものの、間違って体内に取り込んでしまうと「長いことずーっと内部から放射線攻撃を食らい続けてしまう」ともいえ、逆に不安な気もしますし(流石に体内から直接放射線をぶっぱされたら、トリチウムでも細胞にダメージがありそうです)、もちろん一応気をつけて扱いはしました。


…とはいえ仮に飲み込んでしまったとしても、人間は代謝しますから、何年もトリチウムが体内にい続けるとも限らず、放射線を食らう前に排出される可能性もあるわけですけどね。

ただ改めて、実験で使うのは分子数個とかそのレベルではなく、それこそこないだ見ていた通り数百兆個の分子とかを取り扱うわけで、もしも飲み込んでしまったとしたら、「12年でようやく半分になる」ものでも、凄まじい数の崩壊=放射線攻撃を食らうことにはなってしまいます。


まぁ実際トリチウムはシグナルも弱いしほとんど使われなくなってるのはその通りなんですけど、特に生命科学系では今でもまだ根強く使われている「32P」(DNAやRNAにはリンが含まれるので、DNAやRNA放射性物質で目印をつけるのに、大変便利なのです)、こちらの半減期は「約14日」となっていまして、2週間で放射能が半分になります。


自分の見たいDNAやRNAにこの放射性物質32P」をくっつけて実験をするわけですけど(放射線検出器で、マーキングしたDNAの挙動を追える、ってことですね)、日が経つごとにその「目印」である放射線は弱まっていくので、新しい「32P」を買ったら、なるべく早く実験を進めないといけないわけなのです。

グズグズしてるとどんどんシグナルが弱くなって、「せっかく32PをDNAに付けたのに、ほとんどがもう壊れて放射線を出さなくなって、検出できなくなっちゃったよ!」となってしまうからですね…!


(ちなみに、実験としてはこの辺の記事(↓)で見ていたようなのが一例です。)

con-cats.hatenablog.com

もちろん、半減期が14日なので、購入後2週間で威力は最初の半分になり、1ヵ月後には1/4、2ヵ月後には1/16と、マジでガンガン衰えていきます。

(ちなみに、「本当にそんな理論通りにその時間で半分になるとかあり得るのぉ~?壊れるか壊れないかは各原子次第のランダム…って話なら、たまたま壊れない強いやつばかりが集まって、偶然普通より長持ちした(あるいはその逆)…みたいなことはないわけ?」と思われるかもしれませんが、マジで、本当に面白いほどに、14日でピッタリ半分の放射線量になりますよ。

 この世の中は本当に、確率で出来ているんですね。)


まぁ「32P」は結構強い放射性物質ですし、絶対に肌に触れないように気をつけて扱うものですが、半減期はわずか14日なので、全く気付かず体のどこかに付着したまま何日も過ごしたとしても、14日後には半分の威力・さらにまた14日後にはさらに半分……とどんどん放射線の量は小さくなっていきますから(いやシャワー浴びろよ、って話ですが(笑)、例えば体内に入ってしまっても、ですね)、「半減期が12年」みたいな「期限長すぎ爆弾」よりはやや安心と言えるかもしれません。

(とはいえ改めて、これはむしろ、「体内で半減した」=「その壊れたものから出された放射線は全部自分が食らった」ともいえますから、必ずしも半減期が短い=安心というのも違うわけですけどね。)

 

おっと、またしても時間が足りなくなってしまいました。

思わせぶりの記事タイトルにしたのに、最後申し訳程度にしか触れられなくなってしまいましたが、ピー・サーティーツーの半減期は14日ですが、トリチウム半減期は12年で、これも結構半減期が長い物質に思えるわけですけど、世の中にはもっと半減期が長い放射性同位体が存在します。


一番有名所の、クソ長半減期物質といえばこちら、ズバリ、「40K」!

ja.wikipedia.org

こちら「カリウム・フォーティ」、半減期はどのぐらいかといいますと、まぁ記事タイトルでネタバレしちゃってますけど、まさかのまさか、「約13億年」!!


長すぎワロタ、もうお前どの生物よりもむしろ安定じゃん(笑)


とはいえこちらも、「13億年に1回崩壊」ではなく、あくまで「13億年経つと、ちょうど半分が崩壊しているペースで壊れ続ける」だといえますから、Wikipedia記事にもある通り、この世にカリウムはどんだけ存在しとんねん、って話から考えると、実際我々はその半減期13億年のカリウム放射線を、普段食らい続ける形になっています。

 

ガイガーカウンター放射線検出器)をお持ちの方はご存知だと思いますが(そんな人いない気もしますが(笑))、別に放射性物質を使う研究室とかじゃなくても、実はこの世界には天然の放射性物質が漂っているのです。

空中にカウンターをかざすと、一定時間ごとに必ず「ピッ、ピッ」と放射線が検出されるんですね。


まぁカリウムフォーティーが空気中に漂っているかはともかく、食品などには確実に含まれているので、我々は放射線を普段からガンガン食べているともいえるわけです。

年を取って免疫力などが下がると、そういう自然から取り込んでしまった放射線が悪さをして細胞がガン化してしまったりするわけですけど、これは誰にも避けることができません。

 

「絶対放射線なんて食べたくない!」と思っても、カリウム40とかは絶対に含まれるので、それを避ける=何も食べずに生きるしかなくなり、残念ながらそれは無理という話なんですね。


Wikipedia記事にもその旨があった通り、また、アイキャッチ画像用に分かりやすい図(↓)を四国電力「学ぼう放射線」記事からお借りしましたが…

 

体の中の放射能の量より

…まさにこのカリウム40が、人間が体内で食らう放射線の内、最大のものになっています(主に食品由来)。


宇宙誕生以来発生し続けて、悠久の時を経て崩壊し続けるカリウム40……恐らくビッグバンやらの大規模爆発時に最も大量に作られ、今は作られるより減る方が多く、K40は時とともに減り続けている感じではあるものの(Wikipediaにも「約46億年前の地球創世時には現在の約12倍のカリウム40が存在していたとされる」とありますね)、太古に生まれた悠久の原子が自らの体内で崩壊し放射線を発するのも、何かロマンを感じるものがあるかもしれません……

 

…ってそんなの特にないので、健康のためにもなるべく自分の中では崩壊してほしくない気がしてなりませんね(笑)。


という所で完全に時間切れとなりました、続きはまた次回とさせていただきましょう。

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