ややこしすぎる塩の分類

あんまりベーシックではなかったかもしれない、やや高度な化学平衡の話(といっても、平衡の中ではベーシックレベルな、ほんのサワリ程度のものでしかありませんでしたが)を前回前々回あたりで見ていました。


これ以上複雑な話になってもおもんないだけなので(既に全然おもんなかった可能性も否めないものの(笑))、その辺の話はひとまずそんな所にして、今回からはまた一連のベーシック・塩基・pHやらを見ていた最近の記事にいただいていたご質問を振り返ることで、掴みにくいポイントの理解を深めて参りましょう。


大変ナイスな着眼点のご質問は、例のごとくアンさんよりいただいたものになります。

いつも本当に温かく丁寧なコメント、心よりお礼申し上げたい限りです…!


特にどの記事へのコメントかは関係ないことがほとんどなので逐一は触れないものの、ご質問をいただいてからその後の記事で既にちょろっと触れていたものとかもあるため、流れ的に冗長になるQ&Aがいくつかあるかもしれませんが、それは単にタイミングの問題であり、既に説明したことをまた聞き返されているというわけではないことにご注意いただければと思います。

繰り返しの内容であっても、ちょうどいい復習になりますし、改めて触れていこうかなと思っとります。

 

ではまずはこちらからですね。

 

塩基性が、トータルで見て基本っていう意味の基ではなく、塩の基(もと)というのはわかりました。が、「アルカリ(塩基)は、酸と混ぜると塩が生まれる」ということは、塩基の塩に惑わされそうになりますが、実はアルカリ自体は塩ではないんですよね?

あれ?でも、塩基性は苦くて、アルカリイオン水も苦味を有する…?

 

⇒これはナイスポイントといいますか、実にややこしい点になっており、正直名前なんてあくまで人間が勝手に決めた/分類しただけの単なる後付けのものでしかないわけで、「絶対的な自然界の理屈としてそうなってる」みたいな話では全くないものといえる気がするかもしれません。

そのため、個人的には「どーでもえぇどす」といえる話になっているかもしれないものの(笑)、一応チェックしていきましょう。


まず定義に立ち戻ると、塩基は「酸と反応して塩(えん)を生じる物質」、(アルカリは、塩基のうち「水に溶ける物質」)、そして塩(えん)は「酸と塩基が反応して、結果として生じる物質」でした。


これを踏まえると……結局、結論としては、「アルカリ自体は、塩であることもないこともある」という、よくあるどっちつかずのクソみたいな話にしかならない感じですね(笑)。


具体的に見てみますと、まず、「酸と反応する物質(かつ水に溶ける)」をアルカリと呼ぶので、その性質をもつ物質の例としては、アンモニア(NH3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、酢酸ナトリウム(CH3COONa)なんかが挙げられます。

そしてアンモニア水酸化ナトリウムは「酸と反応して出来た物質」ではないので決して「塩(えん)」には分類されないものの、酢酸ナトリウムは、これは酸性物質の酢酸とアルカリ性物質の水酸化ナトリウムが反応して生じる物質ですから、ズバリ、これは分類上、間違いなく「塩」といえる代物なんですね。

しかし、酢酸ナトリウムは水に溶かしてアルカリ性を示す物質(=酸と反応して中和が起こる溶液になる)なので、これはアルカリと呼ぶこともできましょう。


とはいえ、普通は既にそれ自身が「塩(えん)」である物質は、あんまり「アルカリ」とか「酸」とか呼ばない気はするっちゃしますけど、一応、定義としては「アルカリ」(そして「塩基」)の要件を満たしているといえるように思います。

結局、そんなの勝手に人が呼んでるだけの話ともいえますから、先ほども書いていた通り、酢酸ナトリウムをアルカリと呼ぶかどうかとかはぶっちゃけどっちでもいい話に思えるのが正直な所です。


存在する事実としては、「酢酸ナトリウムは酢酸と水酸化ナトリウムの中和反応で生じる塩(えん)である」ということ、また、「水に溶かすとアルカリ性を示す」というそれだけであり、これをアルカリと呼ぶかどうかは人それぞれ好きにすればいいだけの、大した問題ではないといえましょう。

 

ちなみに一口に「塩(えん)」といっても、こいつも色々ありまして、まさに今見ていた酢酸ナトリウムのように水に溶かしたら塩基性アルカリ性)を示すものもあれば、食塩NaClのように水に溶かしても中性の塩もあり、さらにはもちろん水に溶かしたら酸性になる塩も存在しています(パッと浮かんだ目ぼしいやつとしては、塩化アンモニウム(NH4Cl)なんかが挙げられます)。


また、それとは別に、塩そのものに酸性物質の「H」が残っている塩を「酸性塩」、塩基性物質の「OH」が残っている塩を「塩基性」、完全に中和した形の「正塩」という3つのグループもあるものの、ぶっちゃけこいつらはマジでどうでもいいグループなので、気にしなくてよいでしょう。

(まぁ化学専攻の方なら大切なポイントかもしれないものの、僕は高校化学でテストに答えるため以外にこいつらの違いが必要な場面に出くわした記憶がありません。)


…どうでもいいとはいえ、話に出した以上一応触れておきますと、酸性塩の例としては、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)とか、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)とかがありますが(どちらも水素イオン由来のHが存在しています=太字)、しかし、先ほど「それとは別に」と書いた通り、こいつらは「酸性塩」という名前のくせに、水に溶かしたときの液性は酸性とは限りません

具体的にはリン酸二水素カリウムは水に溶かしたら酸性になりますが、炭酸水素ナトリウムは、水に溶かしたらなんとアルカリ性になります。


塩基性塩も同じで、単にその分子に「OH」というアルカリ性の象徴が残っているというだけで…

(酸性は水素イオン濃度が高かったですが、アルカリ性は水素イオン濃度が低い→例の「掛け算したら一定」のルールにより、逆に、アルカリ性は「水酸化物イオン濃度が高い」といえるわけですね)

…こちらはあんまり生命科学系では登場しないため個人的には耳馴染みがないものの、高校化学でも名前だけ学ぶものとして塩化水酸化マグネシウム(MgCl(OH))とか、塩化水素銅(CuCl(OH))とかがあり、これらは難溶性塩である(水に溶けにくい)ため、軽く調べてみてもpHの安定した測定は難しいという感じのようです(実際化合物としてもそんなに安定していない…?)。

これらは本当に、「分類のための分類」みたいな、知識として学ぶだけの存在に思います。


一方、「正塩」は一番一般的な、HやOHが残っていない普通の塩ですけど、まさに先ほど触れていた通り、水に溶かした場合に酸性になるものもあれば(NH4Cl)、中性になるものもあるし(NaCl)、アルカリ性になるものもいやがる(CH3COONa)という感じですね。

(なお、NH4ClやCH3COONaの中には「H」がいますけど、これは酸と塩基の中和が中途半端だった結果「水素イオン」として残ったものではなく、アンモニウムイオン、酢酸イオンというカタマリの中に存在するだけの、いわば中途半端に残ったものではなく完全中和産物であるため、正塩になります。)


うーん、ややこしすぎる割に全く発展性も何もない微妙な話ですが、一応、「ある正塩を水に溶かしたら酸性になるかアルカリ性になるか」は高校の時に覚えさせられるもので、これは、「強酸と強塩基からできたものは中性」「強酸と弱塩基からできたものは酸性」「弱酸と強塩基からできたものは塩基性」という、「字面が強い方が勝つ」と覚えればいいだけの分かりやすい話になります。


…って、「強酸」や「弱塩基」も今まで出てきたことがなかったですが、結局、強酸や強塩基というのは「完全にイオンに分かれる酸」であり、例としては塩酸や水酸化ナトリウムが挙げられる感じです。

一方の弱い方は、まさに前回見ていた通り、分子が完全にはイオンに分かれず、その内一部のみが分かれていて「平衡状態」になるものであり、例としては酢酸やアンモニアが挙げられますね。

(強酸塩基・弱酸塩基は、これはもう完全に覚えるしかない話になります。そんなに数は出て来ませんが、ただの知識問題ですね。)


だから、塩酸(=強酸)とアンモニア(=弱アルカリ)が反応して出来た「塩化アンモニウム」という塩は、水に溶かしたら(酸が勝って)酸性になるし、酢酸(=弱酸)と水酸化ナトリウム(=強アルカリ)が反応して出来た「酢酸ナトリウム」は、水に溶かしたら(アルカリが勝って)アルカリ性になる……と、割と分かりやすいというか覚えやすい感じになっています。


(「酸とアルカリが戦って勝つ方(強い方)になる」というのもよぉ分からん覚え方ですが(笑)、結局これは「イオンへの分かれやすさ」に起因している話であり、強酸を形成する陰イオンはめちゃくちゃイオンになりやすいから(それが強酸の定義)、相棒の弱アルカリを形成する陽イオン(こちらは、よりイオンになりにくいやつですね、弱アルカリ性なので)は、それと比べるとイオンから分子に戻りやすい=水の水酸化物イオンとくっついてOH濃度を下げる形で酸性側に傾く……みたいな流れですけど、まぁ書いてて複雑すぎワロタと思える話なので気にされる必要はないものの、一応「強い方に傾く」というのはあながち悪い覚え方でもない感じということですね。)

 

むむーん、ややこしすぎる!

マジで脱線なだけで何ら他のベーシックな話につながるものでもないので、(なら触れんなよって話かもですが(笑)、)よく分からなかったら気にされないのがベストではないかと思います。


塩も、身近な割にややこしい、って話ですね!

 

ご質問最後に書かれていた「味」については、まぁあくまで「一般的に」なので、アルカリ性の液体でも苦くないことはあるって感じでしょうか。

まさにこの記事で触れていた通り、キリン アルカリイオンの水は、結構pH高めなのにかなりスッキリのど越し爽やかでした。

 

続いては、そんな「味」に関する同じ記事へのコメントで、ご質問は含まれなかったのですが興味深いポイントをお伝えいただけたので、触れさせていただきましょう。

 

ちなみに、炭酸水は(お腹が膨れるからダイエットにいいとかいうのを信じて笑)飲んだこともありますけど、ただ気泡の入ってるシュワシュワな水でした。酸味も感じませんでしたが、何の味もないシュワシュワは、美味しくもなく、、というか不味過ぎて1本でやめました笑

紺助さんも是非お試しいただいて、ガッカリしてくださいね笑


⇒やっぱり、シュワシュワしてるのに味がないのは、違和感バリバリ過ぎて「マズイ」になるんですねぇ~。

くぅ~、炭酸水、気になって夜しか眠れないぜ…!

(いやだから気になるなら飲みゃいいだけだろうが(笑))

 


…と、次の質問へ行こうかと思ったのですが、またしてもちょっと時間が足らず、今回はここまでとさせていただきましょう。

まだまだ大変面白い着眼点のご質問が残っているので、次回以降、じっくり触れさせていただこうと思います。


アイキャッチはまたしても何もなかったので、今回のテーマ「塩」のいらすとをお借りしました。


…といっても、やはり日常生活の「塩」だと「しお」になるわけですが、食塩はあくまで色々ある内の「塩(えん)」の一種に過ぎない感じですね。

(代表的な強酸である塩酸と、代表的な強アルカリである水酸化ナトリウムが反応してできるもので、塩の王様とはいえそうですが。)


なお、「しお」も「えん」も英語だと同じ「salt」なので、特に区別はされていないように思います。

読みが異なるだけ、日本語の方が多少分かりやすいといえるかもしれませんね。

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