真水とは…

それでは引き続き、アンさんよりいただいておりましたベーシック(塩基)系のネタに関するご質問に触れてまいりましょう。

 

同じ記事へのコメントで複数のご質問が含まれている場合もありますが、今回は分かりやすくポイントずつ順番に見ていこうと思います。

 

そもそも真水の定義って何ですか?

水素イオンの量によって水も酸性になったりアルカリ性になったりして、pH7は水素イオンの量(濃度)がまぁこれくらいとかいう目安みたいなのがあって、その時の水を真水っていうみたいなこと、、だとしても、

真水でない水はH2Oではないんですよね?

そうなると、それは最早水じゃなくないですか?

 

⇒真水の定義については、ちょうどこのご質問をいただいてからまたその後の記事で触れていました。

(この記事(↓)あたりからですね)

con-cats.hatenablog.com

…そう、真水というのは、水素イオンH水酸化物イオンOHが同数含まれる液体のことで……と書こうと思いましたが、それは「pH 7.0=中性の水の定義」といった方が正確なので、ややこしいにも程がありますがその定義はちょっと違ったかもしれません(笑)。


真水というのは、まぁそもそも厳密な科学用語ではないと思いますけど、僕が記事中で使っていたのは「水分子以外に何も含まない、純粋な水」という意図のものだった感じでした。

(科学用語では、「純水」ですね。とはいえ実践的には「純水」にもグレードがあって、本当に水分子以外一切何も含まないものは現代の科学技術では中々難しく(作っても、一瞬で空気中の二酸化炭素が溶け込んだりするから)、「極めて完全に水のみに近いグレード」のものを「超純水」と呼んだりもしますけど(何かドラゴンボールとかに出て来そうなカッケェ言葉ですが(笑)、実際研究現場でも使われます)、まぁいずれにせよそんな厳密なものではないといえる気もします。

 一応Wikipediaにも記事がありました↓)

ja.wikipedia.org


定義の話に戻ると、「水分子以外に何も含まない、純粋な水」は、「水素イオンH水酸化物イオンOHが同数含まれる液体」ということもできるものの、それはあくまで何というか間接的な定義で、やはり真水=純水というのは、「水分子以外に何も含まない」というのがその定義といえる気がしますね。


さらにいえば、「pH 7.0の液体」という条件に目を向けてみると、これはなんと真水でも満たさないことすらある感じになっています。

…というのも、pHというのは実は温度依存なので、「イオン濃度の掛け算をしたら10-14」という例の話は、実をいうと常温25℃に限ったときの話なのでした。


軽く調べてみたら、こちらのサイト(↓)に各種温度と水のイオン積の値が掲載されていたので、お借りさせていただきましょう。

www.chemguide.co.uk

温度 (°C) イオン積 (mol2 dm-6) 中性のpH
0 0.114 x 10-14 7.47
10 0.293 x 10-14 7.27
20 0.681 x 10-14 7.08
25 1.008 x 10-14 7.00
30 1.471 x 10-14 6.92
40 2.916 x 10-14 6.77
50 5.476 x 10-14 6.63
100 51.3 x 10-14 6.14

 

そう、この表から明らかな通り、何気に温度が高くなると水のイオン積も大きくなり、中性=同数含まれることになる水素イオンの濃度も当然それにつれて大きくなるため、温度が上がれば上がるほど中性のpHは小さくなるんですね!


上の表を見ると、10℃の冷水ならpH 7.27が中性に、50℃の熱水ならpH 6.63が中性になる(=水以外何も存在しない状態のpH)という感じのようです。


…が、そんなことを気にしだしたら正直キリがないので、少なくとも受験化学とかでは、常に「25℃の溶液を考えると…」という但し書きが付く形になっているといえますね。


(ちなみによく見たら25℃のイオン積もドンピシャぴったり10-14ではないですけど、ほぼ10-14に近いので、水素イオンも水酸化物イオンもどちらも四捨五入したら10-7 Mになってる感じだといえましょう。

…一応計算してみたら、25℃の中性pHは6.998…と出たので、まぁちょっと違いますけど、こんなもんはもう7と考えた方が世界は平和なのです(笑))

 

また、上の表、イオン積の単位で使われていた「dm」って見慣れないにも程がありましたけど、これは小学校でしか聞き覚えのない倍数単位「デシ」を使って表した「デシメートル」のことであり、「デシ」は0.1倍を意味するものですから、「立法デシメートル」というのは何てことはない、10 cm x 10 cm x 10 cmで、1000 cm3、つまり1000 ccなので、ズバリこいつは1リットルのことなんですね。

(このイオン積の表では、濃度をかけ合わせているので、分母に来る「dm3」がかけ合わさって「dm-6」となっていた形です。)


…カッコつけず「リットル」を使えや面倒くせぇ!(笑)

 

というか今さらですが、指数表記についても、不慣れな方に向けて基本について書くのを忘れていましたけど、「マイナス○乗」ってのは「○乗分の1」という意味であって、例えば「10-3」ならば「1/103」、つまり1/1000=0.001ということを意味する感じになります。


負の指数を習うのは高校数学だったと思いますが、これは冷静に考えれば非常に簡単な話で、例えば102を10倍すると103になるのは誰でも全く問題ないのではないかと思えますけれども、これを逆向きに考えれば、103=1000を1/10倍(10で割る)すれば102=100になる、じゃあこれをもう一回10で割れば101=10になるし、さらに10で割れば100=1、おまけにもう一回割れば10-1=1/10=0.1になる…と、「ゼロ乗(どんな数でも常に1)」や「マイナス○乗」というものがどういう数になるのかは、逆向きに考えていけば簡単に分かるわけですね。

 

話が逸れましたが、ご質問の方に戻りますと、「真水でない水はH2Oではないんですよね?そうなると、それは最早水じゃなくないですか?」という部分は、これは決してそうではない感じでして、例えばコップ一杯の水にお塩をひと振り加えると、その時点でその水は完全に「真水」ではなくなりますが、しかし、何億兆万個もの水分子は依然として変わらずにそこに存在しています(単なる食塩水ですね)。


むしろ先ほども書いた通り、言うなればこの世に「何も溶け込んでいない完全なる真水」なんてのはほぼ存在しないといえるわけですが、いずれにせよこの世にある真水以外の水も、H2O分子が大量に集まって出来たものであることには変わりありません。

単に、「そこに更に不純物が存在しているかどうか」の差でしかない感じですね。


ということで、やや分かりにくかった「真水」という話ですが、「何かが溶け込んでいても関係ねぇ、H2OはそのままH2Oなんだ」と考えていただければ解決という感じでしょうか。

 

では、続いてのご質問を見ていこうと思います。

pHは液体にしか存在しないというのは、まぁ、それでいいですけど(謎に上から笑)、、

食塩が中性で、それは水に溶かしたらその水は中性のままだから…?食塩水は中性??

ということは、食塩の塩は、塩基性の塩とは無関係なんですね?

 

⇒食塩はNaClであるため、何をどう頑張ってもpHに影響を与えることができません。

pHというのは水素イオン濃度のことであり、NaCl → Na + Cl と分かれた所で水素イオンは増えませんから、pHが変わらないのは至極当然のこと…すなわち食塩を水に溶かしても溶液は中性のまんまになる、っていうことですね。

(まぁ、だからといって食塩のことを「中性物質」とはそんなに呼ばない気もしますけど、一応あえていえば塩化ナトリウムは中性物質だし、水に溶かしてもpHに影響を与えません。

 他には前回見ていた「正塩」という表現もありますが、これは水に溶かして酸性中性アルカリ性のどれになるかとは一切関係ないので、これまた今はあんまり関係ない言い方ですね。)

 

…とはいえ、それは中学理科までの考え方であり、実際は食塩を溶かすことで例の「水のイオン積」はごくわずかに変動するため、厳密にいえば、(極めて微小ではあるものの)pHに全く一切これっぱかしも影響を与えないというわけではないんですけどね。

しかし実はそこまでいくと高校化学の範囲すら軽く超え、僕も正直したり顔で解説できるほど完璧には理解できていない、大学教養課程で学ぶような知識が必要になってきます。


キーワードとしては「イオン活量」や「イオン強度」で、それだけ聞くとそんなに難しそうに聞こえないものの、それらを考慮して導出されたデバイ-ヒュッケルの式というものを用いることで概算可能になるのですが、これがまた凄まじい難しさで、見たことすらない文字まで出てきて笑えますよ、気になる方はぜひWikipedia(↓)なんかをご覧ください(笑)。

ja.wikipedia.org

(ちなみに、この記事にも「dm-3」が出てきていましたし、様々な単位が登場する化学の分野では、紛らわしい「L(リットル)」よりも「dm3(立法デシメートル)」が好まれるのかもしれませんね。)

 

一応、より分かりやすい言葉で説明してくれている知恵袋記事(↓)がありましたが…

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
これでも何のこっちゃと思える不快な数式が出てきますが、まぁ細かいことはともかく、食塩を溶かすと、pHは微妙~に下がる(=水素イオンと水酸化物イオンが、より分かれやすくなるから)とのことで、温度が少し上がるのと同じぐらいの影響はあるようです。


とはいえ、それなりの量を溶かさないと目に見える影響までは見られませんし、逆にドバドバ加えすぎてもまたその影響が見られなくなる(というか、デバイ-ヒュッケルの式が成立しなくなる)ので、これは酸性物質・塩基性物質を加えたときの、pHが如実に大きく変わる状況とはまるで違うというのはいうまでもありません。

直接水素イオンを出すこともないため、「間接的にpHにちょっとした影響を与える程度」(温度のように)という感じだといえましょう。


…と、全く「ベーシック」という概念を無視した無意味な話に脱線してしまいましたが、ご質問の最後の部分「食塩の塩は、塩基性の塩とは無関係なんですね?」に戻りますと、これ……パッと見「いや無関係ではないような…」と思えたものの、食塩の塩は「塩化ナトリウム」の塩、つまり「salt」というより、塩素(chlorine)・塩化物(chloride)の「塩」であるため、そう考えると、塩基性(basic)の「塩」とはあんまり関係がないというのもその通りかもしれない、という気もしてきました。


とはいえ、アンさんは恐らく「食塩は中性ということなら、アルカリ性を意味する言葉だった『塩基性』という語の『塩』とは全く関係ないんだね」という意味でお尋ねになられたと思うんですけど、いわゆる化学用語の「塩(えん)」(=酸と塩基が中和して出来たもの)という意味で考えるならば、食塩を含むいわゆる「塩(えん)」というものは、中性だろうと酸性だろうと、塩基性という語と極めて関係の大きい語だといえる感じです。

(まさに前回見ていた通り、塩というものには溶かして中性になるものもあれば酸性やアルカリ性になるものもあり、液性は色々あれど、どれも「酸と塩基が反応して生じたもの」であるため、まさに「塩のもと」という意の「塩基」とは切っても切り離せない関係の言葉であるといえるわけですね。)

 

といった所で、今回も結構いい分量になったので続きはまた次回とさせていただきましょう。

記事タイトルにもした「真水」ですが、日常生活的には、「海水」の対義語(川や湖の水)ともいえるものであるため、ここ最近困っているアイキャッチ画像は、それっぽい水の循環を描いたいらすとをお借りして難を逃れさせていただこうと思います(笑)。

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