水は何個?イオンなら?

スラング「basic」(意味:おもんなさすぎるヤツ)の補足記事で、「basic」には「アルカリ性塩基性)」という意味もありますと書いたばかりに始まっていたベーシック・pH・イオンシリーズの記事、ここ何回かは漠然としたイオンというものの何たるか、およびそのイメージみたいな話をしていましたが、あんまり言う程イメージを思い描く助けになっていなかった気もするものの(笑)、順にもうちょいカッチリした話へ移っていこうと思います。

(大体高校以降の多くの学問チックな話は、ちょっと進めて見ていくと、その前までよく分かんなかった話がいきなり霧が晴れたように分かるようになったりするものです。

…まぁ、晴れないままのことも往々にしてありますけどね(笑))

 

pHを考える上で欠かせない(というかそれそのものの)水素イオン(H)、これと水分子は、アルファベットの個数や電気のプラマイを考慮したら、こんな感じで表せる関係になってるわけですね、みたいな話を前々回あたりにしていました。

 

H2O ⇔ H + OH

 

コップに汲んだ水は、もちろんH2Oという分子が大量に存在している形になっているわけですが、実際、コップの中の水分子はその一部がイオンに分かれているといえるので…

(元々電気的にプラスな水素イオンと電気的にマイナスな水酸化物イオン(OH)とが手をつないだ状態にあるものが水分子なわけですけど、その手が離れて、それぞれ自由に泳ぎ回っている状態だということですね)

…実はこの式は、机上の空論的な単なる言葉遊びではなく、現実のコップの中そのものを表しているといえるのです。


とはいえ、実際は大多数、本当に圧倒的な大差で水分子のままでいるものが多く、イオンとして泳いでいるやつらは、全体のめちゃんこ小さな、ごく限られた割合のもとなっています。

(なので、矢印は、左側をクソデカく描いて、右側はめっちゃ小さく描いた方がより正確な感じですね。)

「めちゃんこ」といっても、実際にどのぐらいの割合の分子がイオンになってるのでしょうか?

せっかくなので計算してみましょう。

 

これは高校化学の範囲になってしまいますが、まぁ計算自体は掛け算割り算のみですから、数字を追っていけば「まぁ言われれば分かる」という話になっているように思います。

(まぁ高校生はこれを何週間、下手したら何年もかけて頑張って理解するわけで、そう簡単に理解できるものでもないとはいえる気もしますが…)


まず出発点…ではないですが比較対象として、水素イオンの数をチェックしておきましょう。

中性の水=pH 7.0の水には、水素イオンが、1リットルあたり、1/107=0.0000001モル含まれているというお話を以前の記事で見ていました。

(これは「なぜ?」というような話ではなく、「偉い人が測定してみたらそうなっていた」というだけの話なので、理屈はない無意味な数字ですね(ただし、同じ温度であれば、世界中いつどこで測ってもそうなります)。)


「モル」というのも慣れないですし、「個数」に直しておくと…

(直し方は、分かりやすいので考えると「1ダース」が「12個」のことなので、例えば「7ダース」は「7×12=84個」であると計算できるのと全く同じように、「1モル」は「6×1023個(6000垓(がい))」のことなので、「1/107 × 6×1023」という計算をすればOKな感じですね)

…これを計算して、1リットルあたり6×1016個……これだと桁が大きすぎて見辛いので、どうせ同じ体積で比べるだけですし今回はグッと小さい水滴、よく聞く「ナノ」という単位を使った、1 nL(ナノリットル)の水滴(残念ながら、目には見えないレベルで極小の、水滴ともいえない超小粒!)で考えると、「ナノ」は「10-9 」なので、計算すると6×107 個、つまり1ナノリットルの水滴の中には6000万個の水素イオンが存在していることになります!


ぶっちゃけもうクソみたいな数字がわんさか出て来すぎて嫌んなりますが(笑)、それを踏まえて水分子の個数を考えてみましょう。


まず基本情報、いわゆる常識として、1リットルの水は1000グラムというのがありますね。

この1000グラムの水というのを、どうにかして「分子の個数」に置き換えたいわけですが、そこで使えるデータは、分子1個の重さ、いわゆる「分子量」ってやつになります。

これ、中学で習ったっけ…?と思って検索してみたら、知恵袋先生によると中学では習わないんですね(↓)。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
…あぁそうか、モルを習っていないから、よく考えたらモルが絡んでくるそいつらを中学で習うわけがなかったですが、ここで使えるのがその「原子量」(やそれを合わせた分子量)で、考え方はめちゃくちゃ簡単です。

 

原子量というのは「1モル」の原子の重さ(グラム)を表すものであり、水素原子Hの原子量1酸素原子Oの原子量16となっています。


めっちゃ簡単な数字ですね。


そう、ズバリ、原子の重さがこんなに見事に綺麗な整数で表せるから、モルというのは「6×1023個」という何だか中途半端にも思える個数をまとめて数え上げる単位として、化学の世界で使われるようになった、ってことだったんですね!

(言い換えると、水素原子 6×1023個の重さはちょうど1グラムであり、酸素原子6×1023個の重さはちょうど16グラムとなっているということになります。

 でも、掛け算表記は面倒くさいし、指数をやめてゼロをズラーっと並べるのも大変すぎるので、科学の世界では計算を単純化するため、日常生活で分かりやすい「個」ではなく、それを6×1023個まとめた「モル」という単位で考えることが多い、ってわけですね。)

 

と、ここまで見たら聡明な読者諸氏におかれましてはもう明らかでしょう。

ここまでで、体積と重さの関係、そして重さとモル(個数)の関係が分かったので、この2つを組み合わせれば、とある体積の水に含まれる水分子の個数が求まるんですね!


どういう順番でもいいですが、まぁ上から順にいきましょう。


まず、今考えていた「1ナノリットルの水滴」の重さは、「1 L=1000 g」なので、1 nL(ナノリットル)なら1000 ng(ナノグラム)=0.000001グラムであることが分かります。

(これも0が多すぎてややこしいですが…「1/100000グラム」と、分数表記の方がまだ多少見やすいですかね?分母は0が5つ=6桁です)


一方、個数と重さの方に視点を移すと、水分子H2Oは、Hの原子量が1、Oの原子量が16なので、H2個とO1個分を足し合わせ、18であることが分かります。

これは言い換えると、水分子1モルの重さは18グラムということですが、我々はモルが嫌いなので個数にすると、水分子6×10236000垓個の重さは18グラム(単位がデカすぎて、こっちもこっちでキモイですけど(笑))になります。

 

こいつらを組み合わせて、今知りたいのは「1ナノリットル中の水分子の個数」なわけですが、この手の換算計算は結構苦手な方も多いと思うんですけど、これにはコツがありまして、実は「単位」を考えると余裕になります。


重さと体積の方は、「1ナノリットルあたり0.000001グラム」なので、単位を込めて考えると、これは「0.000001 (g/nL)」と表せます。

分母は、「その単位あたり」ってことですね。


一方個数と重さの方は「6000垓個あたり18グラム」だったので、これは「18/6000 (g/垓個)」(→約分しておくと3/1000 (g/垓個)」と表せます。

(先ほどは分母が1だったので分かりにくかったですが、結局「数字は数字で割り算すればいいし、単位は単位で割り算すればいい」ということなわけです。

 要は、単位もちゃんと一緒に割り算のように記述しておくのがポイントで、以下見る通り、「分数型の単位は極めて有用」ってことですね!)


そして、今求めたいのは「1ナノリットルあたりの個数」なので、求めたい単位は「個/nL」になるわけです。


…ここで、最初の2つの単位を眺めてみると「g/nL」と「g/垓個」となっていますから、ズバリ、「前者÷後者」とすれば、割り算は分子と分母がひっくり返っての掛け算ですから、最終的に「垓個」が分子に移動し、「グラム (g)」は両者で約分されて消えて、残るは「垓個/nL」となってくれるんですね!

(「垓」は「キロ」とか「ミリ」みたいなただの倍数表現ですから、後で数字に直せばOKです。)

 

…この「単位」を使った計算の考え方、理系に進んだ今でこそあまりにも当たり前なんですけど、初めて学んだときは「マジ?割ればいいのか掛ければいいのかいっつも迷ってたけど、これめっちゃ分かりやすいじゃん!何で中学のときは教えてくれなかったんだ!!」と、地味に感動したものです。

(この記事前半の話も、本当は「個/mol」とか「mol / L」とか単位付きで考えれば、それぞれの数字を掛ければいいのか割ればいいのかが一目瞭然で、めちゃくちゃ分かりやすい感じでした。

 気になる方は、改めて単位込みで考えてみられることをオススメですね。)


そんなわけで、上記太字の2つの数字を割り算すれば、自動的に単位も求めたい「個/nL」になってくれるということで、計算してみますと…

0.000001 (g/nL) ÷ 3/1000 (g/垓個) = 0.000001 × 1000/3 = 0.001/3 = 0.0003333…(垓個/nL)

…つまり、水滴1ナノリットルには、0.00033…垓個の水分子が含まれているということが分かりました!


って、正直、「がい」って単位が意味分かんなすぎて全く何の感慨も感動もないですけど(笑)、垓というのは100000000000000000000倍(0が20個)のことであり(=ちょうど、「万」が10000倍(0が4個)を表す文字であるように)、そして0.0003…は小数点以下4桁目から3が続く感じですから、掛け合わせることで、3333333333333333という16桁の数、日本語込みで書けば3333兆3333億3333万3333個の水分子が存在するってことですね!!


(計算のために個数で書き下す場合、どうしても桁数が異様に多くなってしまうのが腹立ちポイントといえますが……普通に、途中まではモルで考えて、最後にモルを「個」に直す方が絶対賢かったですね(笑))

 

話が長くなりすぎてもう忘れてしまいましたが、水素イオンは何個だったでしょうか…?

上の方を見直してみると、水素イオンはこのナノ水滴に6000万個含まれているという感じでした。


水分子の数は3333333333333333個であり、一方6000万個は60000000個ですから、これはどのぐらい違うかというと……めちゃくちゃ違いますね!(笑)


まぁこれも理系の得意技で、「割り切れないものは分数のままにする」「デカイ数は指数を使って表す」のが賢いといえまして、3333兆…という16桁の数は「1/3 × 1017」、一方、6000万は「6 × 107 」となるので、これは何倍の差かといいますと、もちろん普通に割り算してやればよく、

1/3 × 1017÷ (6 × 107) = 1010/18

(「指数の割り算は引き算」というのも、理系重要知識ですね!→ 1017÷ 107=1017-7= 1010

…この太字の分子は1の後に0が10桁続く数ですけど、「割る18」を分かりやすい数にすべく、大量の0から2桁分だけ借りて「100÷18」を考えるとこれは「5.55…」になるので、最終的に一番分かりやすく日本語にするならこいつは「5.55… × 108」倍の違い、つまり、(108というのは「億」なので)水分子約5.6億個に1つの割合で水素イオンが存在しているということが、ついに計算できました!!

 

…いやぁ~、清々しいほどに、「理解してる人には当たり前すぎて退屈・不慣れな人にはめちゃくちゃな数字が出て来すぎて意味不明」という、非常にしょうもない誰得パティーンな記事だったかもしれませんね(笑)。


途中の計算も、指数に慣れていない方のために、分かりやすくなるようなるべく計算式では指数を使わないようにするなど気を利かせたつもりが、逆にただ単に見にくくなっているだけというイマイチな感じでした。


この辺はやはり、「単位を上手に使って考える」「大きな数は指数を使って表す」「数字の分数も途中は計算せず、最後までなるべく分数のままにしておく」というのが、この手の計算の大きなコツといえる気がします。

まぁ、何らかの試験を受ける方でもなければ、こんなの今さら重要でもない話かもしれないものの、日常生活でもたまに使える考え方なので、身につけておくと便利といえるかもしれないですね。


と、計算過程はともかく結果について見直してみますと、「水分子は水中でごく稀に水素イオンと水酸化物イオンに離れて泳ぎ回るやつがいる」と最初に書いていたわけですけど、それはズバリ、水分子5.6億個あってようやくたった1個、つないだ手を離してHとOHに分かれて泳ぎ回るやつが出てくるということで、これはかなり少ない割合といえますね!


ただし逆にいえば、その割合で必ず1つイオンに分離しているものが存在しているのが水分子だということですから、どんな水の中にも必ずイオンは存在しているといえる感じですね。


また、これはあくまで比なので、どんな体積の水であってもその割合でイオンに分かれているといえるわけです。

先ほど考えていた1ナノリットルの水なら水分子約3333兆個に対し水素イオン6000万個だったわけですが、例えばその3万倍の30000ナノリットル(英語の単位は3桁区切りなので、これは30マイクロリットル (μL)とも言います。ここまで来れば、目に見えるサイズの、かなり大きな水滴ですね!)であれば、水分子はまたまた登場、「京」の次の単位である1垓個あることになり、一方水素イオンは1兆8000億個存在することになるため、比率はあくまで約5.6億につき1つ、という感じになります。


そして、この絶妙なバランスが、さらに非常に面白い水の性質へとつながっていくのです……!

 

…って煽るほど面白くもないですけど(笑)、続き、ようやくこないだ書いていた「発展事項」へと歩を進める感じになりそうですね。

 

今回は無味乾燥な計算ばかりでアイキャッチに使える画像が全くなかったので、前回の記事で使おうと思っていたけれど磁石の画像があったので保留していた「マイナスイオンのいらすと」を今回お借りさせていただきましょう。

…まぁ、滝からマイナスイオンは出てないと思いますけどね!(笑)

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