コップ一杯の水を海に流したら…

それでは引き続き途中状態であったご質問から、次の段落へと歩を進めて参りましょう。


…と思いましたが、前回の「素粒子の自己同一性」について、同じくアンさんよりご質問を賜っており、以前の質問が保留中とはいえこちらは単発ネタでしたし、新鮮な内に触れた方がいいかな、とも思えたため、まずはそちらから順番を入れ替えて見ていこうかと思います。


毎度大変面白いご質問、感謝感激則巻アラレにございます!!

 

なるほど。「区別ができない」というのは、「区別はできないくらい同じだけど、実は微妙に違う」という意味ではなく、「“同じ”どころか、“同じ仕組みで見た目も同じに見える同じもの”というよりももっと同じで区別すらできないくらい超絶同じ」という意味だったんですね。(それがどの程度の同じなのかはわかりませんけど笑)


「自己同一性をもたない」という言葉、聞き慣れなくてイメージできないんですけど、結局、「区別できない」ということなんですよね?

 

⇒まさにその通りで、この地球上に(というか宇宙全体含め)物質というものは無限に思えるぐらい存在するわけですが、全ての物質……自分の体の一部だろうと、着ている服だろうと、今見ているモニターだろうと、納豆だろうと、細かく刻み続けると最終的に全ては素粒子が組み合わさってできた分子や原子に行き着き、非常に面白いことに、体や布やプラスチックや豆は全然全く違うものなのに、実は分子や原子というものは、一切全く区別の付かない、神視点ですら違いを見分けることのできない、完っっ全に同じもの(=素粒子)が集まって出来た物質でしかないんですね。

全く同じ積み木を組み合わせただけなのに、ある場合は筋肉となったり、ある場合は電子機器になったりというのは冷静に考えると大変不思議なものですけど、それが、この世界の成り立っている仕組みなのだ、ということができましょう。

 

また、素粒子というのは今現在完全に同一なわけですから、空間的のみならず時間的にも一切区別が付かないのは当たり前で、例えば1億年前、恐竜が食べていた食料に含まれる有機物を構成する原子を構成する素粒子(ややこしすぎますが(笑))と、今僕が食べた納豆に含まれる有機物…(以下同文)…の素粒子である電子や陽子は、全く同じもので、一切の違いが存在しません。


未来永劫、仮に人類がこの世から消滅しても、電子は重さ約9.11×10-31 kgの粒だし、陽子は水素原子に1つ、酸素原子に6つ含まれる、重さ約1.67×10-27 kgの粒であり続ける…かつ、一見全然異なる物質に含まれる素粒子も、分解バラバラにしたら全てが完全に同一で、バラした瞬間、「これは酸素原子にあった陽子だね、これは鉄原子から生まれた電子だよ」などと考えることは無意味になるわけですね。

(とはいえ、化学反応を考える際には、「酸素原子が鉄原子から電子を奪って酸化し、酸化鉄となる」みたいな風には考えるわけですけど、それはあくまで反応を分かりやすく順番に考えていくために区別しているだけといいますか、まぁ鉄原子にある余剰電子が酸素原子の電子殻に移動して酸化鉄を形成する場合、その電子は鉄から酸素に移動したことは間違いないわけですけれども、移動した瞬間、「どの電子が鉄から来たもので、どの電子が元々酸素が持ってたものか?」は誰にも、神様にも分からないという話ですね。)

 

「じゃあ、世の中の物質は今も昔も完全にまったく同じ電子やら中性子やら陽子やらから成り立ってるってことは、世の中の物質ってのは永久不変なわけ?そんなわけなくない?」

…と思えるかもしれませんが(別に思えないかもしれませんが(笑))、これはもちろんそうではなく、素粒子レベルで同じでも、その組み合わせで水素になったりナトリウムになったりウランになったりするように、分子レベルの組み合わせで出来上がる物質は全く異なるものになりますから、マクロ(巨視的な)視点での物質というものには鮮度も状態もいくらでも異なるものが存在し、決して永久不変な物質というのはありえないともいえましょう。


しかし、ミクロのレベルで見てみたら、今日僕が食べた納豆に含まれていた素粒子は、1億年前恐竜が食べたエサに含まれていた素粒子と、もしかしたら全く同じものであったのかもしれません……

(改めて、素粒子に自己同一性はないため、それを考えることは不可能なのですが、「仮に辿ることができとしたら」、この宇宙を巡り巡って、今日僕が食べた納豆を構成していた陽子の1つは、1億年前恐竜が食べた陽子と、ひょっとしたら同じものだったかもしれない…って話ですね。)

 

…と、これに関連して、まぁ関連といっても微妙に似ているだけで全く違う話ではあるものの(笑)、高校化学の練習問題で解かされて、未だに印象に残っている話を1つ思い出しました。

 

今回ちょっとあまりにも絶望的に時間がなさすぎたので、記事水増しの意味で、それに触れて終わらせていただこうと思います。

 

問題としては、

「今、コップ一杯の水がある。この水を海に流し、世界中の海水が完全に混ざるぐらいにまで待った後、再度同じ量の水をコップにすくったら、元々自分がコップから流した水分子はいくつ存在するか?」

…というもので、これはモルを習い立ての頃に出てきた、モルと個数の関係を学べるとともに、分子数というのは莫大であることを知ることのできる、良い問題ですね。


必要な数値としては、まず水分子の数を考えるための水の分子量18(H2Oで、Hの原子量が1、Oの原子量が16という、あの「原子の体重」ですね)、それから分子1モルあたりの個数(専門用語でアボガドロ数といいますが、まぁ言葉はどうでもいいでしょう)は、単純化のために、小数点以下丸めて6×1023 (個/モル)としましょう。


さらに、コップ一杯はまぁ一般的な200 mLとして、海の体積については、その問題でどういう数字が与えられたかは覚えていないものの、ウィッキー先生のデータ(↓)によると…

ja.wikipedia.org

太平洋域の体積は約714(百万km3だそうで、この数字をお借りしましょう。

ただ、「百万立方キロメートル」だと分かりにくいので、科学の世界で使う分かりやすい「リットル」に直してみますと、1立方キロメートルは1012 L(1兆リットル)なので、7.14×108 (7億1400万) km3は、掛け合わせて(前者の単位はL/km3なので、掛け算したらLだけが残ります)、7.14×1020 Lだという感じですね。


以上を用いて、水の個数を考えてみると……


まず、コップ1杯の水は200 mLで、これは水の密度が1 g/mLですからそのまんま200 gとなりまして、まず「200グラムの水には何分子のH2Oが含まれているか」ということから求めるわけですけど、これはまぁ何気に↓の記事で既に見ていた話で…

con-cats.hatenablog.com

改めて、単位を考えれば余裕で、今使えるのは、「200 g」「18 g/mol」「6×1023 個/mol」ですから、これを組み合わせて「個」だけ残せばいいので、200 × 6×1023 / 18とすればよく、これを計算したら、約6.66×1024となりました。


で、まぁ高1の僕はこの辺の話がパッと理解できなかったので、この手の濃度計算に不慣れな方はそういわれてもパッとは納得できないかもしれませんが、「コップ一杯の水を海に流して、またすくう」というのは、結局「コップ一杯 ÷(海全体+コップ一杯)」の希釈をしてやったと考えればいい話であり、この分母のコップ一杯分は海全体と比較するとあまりにも小さすぎて完全に無視できるので、結局上で求めた個数に、希釈倍率として「コップ一杯の体積(リットル表記だと、0.2 L)÷ 海全体の体積」をかけてやればそれでOKなんですね。


ということで、計算式としては意外と単純で、

6.66×1024 (個) × 0.2 / (7.14×1020)=1865

…まぁ大分ざっくりした計算なのでそんな細かい数字は無意味ですから適当に四捨五入すると、たったコップ一杯の水を太平洋全域に拡散させただけだというのに、悠久の時を経てすくい直したら、なんと約1800個もの水分子が、自分の手元に返ってくるという計算になるわけです!!!


…って、果たしてビックリマーク3つほどの驚きがあったかどうかは分かりませんが(笑)、改めて問題を振り返ると、


「コップ一杯の水を、太平洋に流した。サヨナラ私の思い出の水よ…。

…数年後、完全にコップ一杯の水が太平洋全域に広がった後で、またコップに水をすくったら、なんと、あのとき別れたはずの同じ水分子が1800個も、手元に戻ってきたのである!!」


ということで、高校生だった紺助少年は、


「マジで?海に?コップ一杯の水を入れて?完全に世界全体に広がった後でも、また元の水分子に再会できるとか、ロマンじゃ~ん!」


…と大変感動したものです(まぁ濃度計算がなぜそうなるのかイマイチ納得できなかったこともあり、そこまでの感動でもなかったですけど(笑))。


でも実際、「それだけ薄めても同じ分子とまた出会えるんなら、分子レベルで見れば、もうこの世の中を構成する地球上あらゆるものはつながってると考えてもいいじゃん……今日僕が吸った空気の中には、昨日あの子が吐いた空気に含まれていた分子だって、きっと必ず含まれているんだ、もうそれでいいじゃないか……」と、そんな感傷にひたったものです(いや高校生のお前に何があったんだよ(笑))。

 

ってな所で、しょうもない高校化学の問題1つ解いただけで終わってしまい、質問すら中途半端な形になってしまいましたが、あまりにも時間がなかったため、続きはまた次回とさせていただきましょう。

アイキャッチ画像を選ぶ時間も1秒もなかったので、適当にコップの水のいらすとをお借りしました。

せっかく感傷的な問題だったのに、味気ねぇ~(…って言うほど感傷的な問題でも何でもねーから(笑))。

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