前回のDIYネタから派生して、youという単語についての話ですが、ちょうど前回の記事に関してもいただいていた質問コメントがあったため、まだ触れていない溜まっているコメントなんかも他にあるわけですけど、今回は続きネタということで、まずはそちらから触れていこうかなと思います。
コメントは毎度おなじみのアンさんからですね。ちなみにDIYネタ以外にもいくつか言及していただいていましたが、そちらもまたいずれ触れるとして、とりあえず今回はDIYネタをピックアップさせていただきましょう。
「Do it yourself」と「Do it by yourself」の違いですが…
なんとなくはわかりますけど、(自分は知ってるってことではなく、言ってることはわかるという意味です笑)
Asami Hideoさんの回答の、
「yourself」は、人を特定せずに一般に「自分自身で」という意味を表しています。
ということなら、
隣人1: 業者にガレージのドアを塗ってもらう?隣人2:No, I'll do it myself.(いいや、プロの手は借りず自力でやってみるよ。)
↑この場合の隣人2は、myselfではなくyourselfになるっていうことではないんですか??
やっぱりわかっていない??笑
「あなた」ではなく「人々一般」を表す「you」は、意識したことなかったので、ちょっと気になりますねぇ。続きは次回ということなので、、理解できればいいな。って感じです笑
⇒そこは若干ややこしかったかもしれませんが、フォーラムでネイティブが説明してくれていたこの例文は「do it oneself」と「do it by oneself」の違いについてのものだったので、ここではまぁmyselfでも問題ないというか、実際流れ的にyourselfだとちょっとおかしい感じともいえるんですけど、まぁ要は「それとこれとは少々別の話になっています」という形でしょうか。
とはいえそもそものフォーラムも、「『Do it yourself』と『Do it by yourself』の違いについて」のトピックだったので、もしかしたら質問者も「いや聞きたいのはyourselfなんやが…」と思われていたかもしれませんが、まぁそこは、説明の本質はyouself/myselfの違いではないといいますか、上手いこと回答のエッセンスを汲んで下さいな…というややこしさもあったかもしれませんね。
一方Asamiさんの「『yourself』は、人を特定せずに一般に『自分自身で』という意味を表しています」というのも、あくまでも「そういう用法もある」であって、「yourselfは必ずそういう意味になる」とは決して主張されていない点にも注意が必要…という感じでしょうか。
いうまでもなく、「yourself」には、語りかけている特定の「あなた」を指して「あなた自身の」という意味も存在する形ですね。
…と、その辺を踏まえて、そういう「あなた」という意味がまず第一に来ると思われる「you」という単語ですが、前回ちらっと触れていた通り、僕が日本を発つ前にちょこちょこ評判のいい英語教本を読み漁っていた中で、大変に分かりやすく、かつ全く意識していなかった話が読めて感銘を受けたものがありました。
個人的に英文法・語法的な解説に関して「断トツで役に立った、タメになりすぎたし、これはマジで読んで良かった!」と思える本…というか著者は二名いらっしゃいまして、どちらも確か日本の大学で教鞭を執られていたはずですけど、それがズバリ、マーク・ピーターセンさんとT.D. ミントンさんのお二方で、それぞれシリーズで何冊も著作を出されているので「二冊」という訳ではないのですが、『日本人の英語』と『ここがおかしい 日本人の英文法』がそれぞれの代表作品かなと思われます。
こないだの記事で書いていた、「昔々ある所に、おじいさんはいました」なんて例文を挙げていた冠詞のネタが確かピーターセンさんの著作で触れられていたネタ(具体的に著作に当たったわけではなく、これは適当に思い出して書いていたものでしたが)で、ピーターセンさんの方はかなり読み物としても面白い著作になっており、他にもwillとbe going toの説明とかも、個人的にはミントンさんの解説より分かりやすかった記憶がありますが…
(あぁちなみに、ピーターセンさんの方は、翻訳を介さずご自身で日本語を執筆なさっているという凄まじさです。大人になるまで日本で暮らしたことのない方が日本語で本を書くとか、相当ですね!)
…今回のネタは、ミントンさんの説明が抜群に納得のいくものだったので、そちらから引用させてもらおうかな、と思います。
こちらはオンラインで誰にでも公開されているフォーラムとは違い、市販されている書籍に収録の内容なので、逐一引用するのもどうかと思ったのですが、まぁページにして3ページほどですし、本当に分かりやすいカッチリした説明なので、引用元を明示しつつ、「こういう目から鱗の説明がいっぱいです、極めてオススメの本です!」という宣伝も兼ねることで多少罪滅ぼしの意識も込めて、紹介させていただきましょう(まぁ、そういう宣伝どうこう抜きに、ごく一部の内容であれば、引用という行為は許容されているはずだとは思いますが…)。
では、以下こちら、『ここがおかしい 日本人の英文法』(シリーズ1作目ですね)の26ページからの引用になります。
(youの前段のweについても極めて示唆に富む内容だったので、そちらから始めてみようと思います。
ただ、完全に全部コピーするのもどうかと思ったので、一部の例文等は省略しておきました。)
weがいれば、theyがいる
weは人々一般について日本人が英語で話すときに最も頻繁に選ばれる代名詞でしょう。weで正しいこともありますが、それはみなさんが考えているほど多くはありません!weを使うときに問題となるのは、weを使うとその反対語―つまりthey―の存在が想定されるということです。同様に、theyを使ったときにはweが想定されます。
いくつか具体例を挙げてみましょう。
We have to practice the piano every day if we want to be good at it.
(引用注・訳:「もし上手になりたければ、我々はピアノを毎日練習する必要がある」)この文でweを使うと、「毎日ピアノの練習をする必要のないグループ(=they)」の存在を暗示することになります。その人たちはなんて幸運なんでしょう!
We never know for sure what will happen tomorrow.
(引用注・訳:「私たちは、明日起こることをはっきりと知ることは決してない」)明日起こることを知っている人たち(=they)もいるのでしょうか?
(最後の例文略)
weを使うと(theyが対置されているために)、ある種の排他性や優越性を主張しているように受け取られかねません(もちろん話し手のほうでは、ほとんどそのような意識は持っていないでしょうが)。その結果、ネイティブスピーカーから傲慢な人だと誤って受け取られてしまう恐れもあります。それが、We Japanese…という日本人のよく使う表現がしばしば批判される理由にもなっているわけです。
万人向きのyou
weを使った先の3つの例で、万人に当てはまるような一般的なことを言いたいのであれば、すべてyouを使うほうがはるかに自然な英語になります。
私は何年も日本で英語を教えてきて、日本人の英語学習者に、youを一般の人々の意味で使わせることが非常に難しいことを痛感しています。心理的な抵抗があるとすれば、それはずっと英文和訳ばかりやってきて、youが出てくるといつでも「あなた」と訳す習慣がついてしまったからではないでしょうか。でも現実には、人々一般を表すのに、weよりもyouのほうがずっとよく使われているのです。しかも注意すべきは、そのように使われたyouは I も含む概念だということなのです。Iの反対語としてのyouではないのです。
ある旅行雑誌から、免税店での買い物の記事を一部引用してみましょう。
(海外雑誌の例文、省略)
この記事全部(1ページ)を義務感を感じて読んでみた結果、次のことがわかりました。weは2回のみ、しかもその両方とも免税店調査を実施したレポーターたちのことを指していました。それに対してyouは9回使われ、すべて人々一般を指していました。その他の人称代名詞は登場しませんでした。この引用文のyouを「あなた」と訳しても、(不自然ではあっても)十分理解可能な日本語訳を作ることはできると言う人がいるかもしれませんね。でもそのような訳が誤解を招く場合もあるのです。次の短い会話について考えてみてください。Bが日本人です。
A: Why didn't you introduce me to the person you were talking to?
―この発言ではyouはもちろん「あなた」を表します。
B: I'm sorry. I couldn't remember his name.
A: Oh, I see. You look so stupid when you have to introduce people and can't remember their names, don't you?
A: どうしてあなたが話していた人を紹介してくれなかったの?
B: ごめん。名前を思い出せなかったんだ。
A: あら、そうだったの。人を紹介しなくちゃいけないのに名前が思い出せないときって、間が抜けた感じになってしまうのよね。
日本人のBさんが、このAさんの言葉を頭の中で翻訳して(=「あなたは間抜けに見える」)、自分は馬鹿にされたと感じる姿を、私は容易に想像することができます。このように、場合によっては、youを「あなた」と訳すことは不自然であるばかりでなく、明らかな間違いでもあるのです。
最後に、weがふさわしい場合の例を挙げておきましょう。
We are destroying the earth with our greedy use of natural resources.
われわれは天然資源を貪欲に消費することで地球を破壊しつつある。
このweは人類一般を指していると考えられるかもしれませんが、実はこのような破壊活動に関係していない民族も明らかに存在しているから、weなのです。
したがって、「一般に人は」の意味ではyouを使い、一般論に当てはまらない集団の存在が明らかなときだけ、weを使うようにしてください。
補足する必要が一切何もないぐらい、完璧な解説に思います。
これ以来、僕は(知らなかったら絶対にweで書いたであろう場合などでも)youを頻繁に使うようになりましたが、ただ一つ思うのは、案外アメリカというか英語を使う人々というのは何気に非ネイティブも多く、逆に、「自分を含む『一般に人は』の意味でyouを使うと、もしかしたら違和感を持つ(非ネイティブ)読者もいるというか、コミュニケーションが上手く行かない場合もあるのでは…?」ということも、まぁ実際「何でyouなん?」などと聞かれたことはないですけど、このミントン先生の説明を見ていなかったら僕はそう感じていたであろう場面で使うこともままあるので(実際、「そこ以外は普通に全く小慣れない非ネイティブ英語を使ってるのに、そこだけ何で英語っぽいんだ?」ってのもありそうですしね)、実際に文を書く際は、想定の読者・視聴者を意識する必要があるかもしれない…とも、もしかしたらいえるかもしれませんね。
ということで、引用でかなり長くなってしまいましたし、DIYについては特に語ることもなかったので(笑)、この話題はこの辺にして、次回はまた保留中のご質問に戻っていこうと思います。