いきなり、唐突に、よく分かる有機化学講座

このブログ一体何なん?と書いてて自分でも思うわけですが(笑)、いつもとてもご丁寧なコメントを下さるアンさんから、前回の記事で触れていたDNAやRNAヌクレオチド)の化学構造式について、

「理解しなくていいとのことだけど、いくらなんでもこれは謎すぎぃ!何も知らない私のような人からしたら、全く意味が分からん…!あの2つの図を見比べても、Oが1つ足りないだけとは、絶っ対にならないってばよ。こんなもん、分かるかーぃ!(笑)」

…みたいな質問というかコメントをいただいていました(いうまでもなく、個人情報(?)保護のため、口調は完全に変えてありますが)。

改めて、全く背景知識がないとして前回の説明を見てみると……「いや分かるかーぃ!(笑)」と、これはイミフ過ぎてワロタと自分でもなったため、今回、緊急でこいつの補足説明に打って出ることと相成りました。

実際、前回書いた通り「覚える必要も理解する必要もない、どうでもいいネタ」ではあるんですけど、よく考えたら、記事で説明しているあらゆる話がどうでもいい話でしかないですしね(笑)。

そもそも、「全くどうでもいいなら出さない、逆に出すなら、分かるように説明すべき」というのが正しい姿勢であって、「どうでもいいけど、こんなんもあるよ。まぁどうでもいいから、詳しく説明もしないけどね」というのは最悪のパターンですから、これはあまりにも中途半端すぎました。

そんなわけで、分子生物学から遺伝学を経て今度はいきなり有機化学になりますが、別に誰も「分子生物学の話が聞きたい!」なんてそもそも一言もいっていませんし、時間をかけてでも補足説明しておくのが一番ですね。


そう、この辺の話は、化学の中でも有機化学というジャンルになるのです。

そうするとそもそも有機化学とは何か?」から始める必要がありますが、これは当然、有機物を扱う分野ですね。

そうすると「いや有機物って何だよ(怒)!」となるわけですけど、これは日常生活でも「有機栽培」とかで目にするわけですが、一言でズバリ、「炭素を含む物質」でファイナルアンサーです。

まぁ「いや炭素って何だよ(憤怒)!!」となるかもしれませんが、こればっかりは、炭素は炭素、純品なら木炭とかスミみたいな黒い物体だけど、他の原子とくっつくと信じられないぐらい色んなバリエーションを生み出せる物質(「炭素」のくせに黒ですらなくなり、様々な色すら作れる)……という、何のこっちゃ分かったような分からんような説明になってしまうものの、とにかく炭素を含む物質は、それだけで有機物と呼ばれるグループに入るわけですね。

で、「有機物」という言葉のイメージから何となく誰でも浮かぶと思うんですけど、有機物というのは生き物特有の物質で、基本的に生物は有機物からできています。

肉、骨、肌、髪、爪、内臓……全て有機物です。

もう少しミクロな視点でいうと、炭水化物タンパク質脂肪という3大栄養素に加えて、DNARNAも全て有機物です。

どれだけ生活や生物に密着しているかが分かりますね。

そうすると逆に、じゃあ無機物って何なんだよ、となりますが、これは当然、「炭素を含まない物質全て」です。

(酸素と水素のみ)、鉄とかアルミニウムとかの金属、身近で口に含むものといえば、(塩素とナトリウム)とかの「ミネラル」と呼ばれるものが代表的な無機物になります。
(ただし、例外として、二酸化炭素なんかは、炭素を含むけど無機物と分類されます。
 でも、そんなのただ人間が勝手に分類しているだけの単なるグループわけなんで、そんな細かいことはどうでもいいです。
 炭素を含むものは基本、有機物と覚えればOKでしょう。)

イメージとして、無機物は腐らない有機物は腐るというのは概ね正しいので、そんな印象を抱いておくといいかもしれませんね。
(いや水は腐るじゃん!と思われるかもしれませんが、それは、水に溶け込んだ有機物が原因で腐っているのであって、水自体は腐りません。)


有機化学は高校化学で習いますが、逆にいうと高校で化学を選択されなかった方は、例の前回画像を貼った構造式とか、マジで人生で一度も触れることがない謎の絵であり続けると思うんですけど、これが案外、めっちゃ簡単で、しかも結構面白いのです。

割と生活に密着しているということもあり、覚えることは多いけれど案外楽しく、さらに他の分野と比べてあんまり難しくないので、受験ではスーパー得点源になりがちという、ナイスな科目なのです。

高校化学は大きく理論・無機・有機化学に分けられますが、難易度的には断然理論や無機の方が難しいですね。

(ただ、僕みたいに暗記が得意な人が好きな科目であって、覚えるのが嫌いな人にとっては、有機は地獄ともいわれますが…。)

しかし、そんな楽しい有機化学も、電子軌道とかがからんでくると途端にキモくなります(笑)。

が、高校化学の範囲ではほぼ電子軌道は出てこないも同然だし(本格的には大学に入ってから)、当然、今回の説明でもそういう細かい点はガン無視します。

電子軌道なんて知らなくてもサワリは完全に理解できるし、取っ掛かりとしてはそっちの方がいいですしね。

というわけで、油断するとまた前フリだけで終わりそうなので、本題に入りましょう。

有機化学で最重要にしてほぼ全てといっていいポイント、それは、「原子の腕の数」です。

これはもう「そうなっているんだ」と覚えてもらうしかない話なんですけど(理屈を理解するには、例のキモイ電子軌道論が必要)、有機化学の主役・我らが炭素原子Cは、腕が4本出ています。

つまり、炭素原子 (C) は、4つの原子と手をつなぐことができるということなのです。

そして、有機化学に登場する原子は他に、水素 (H)酸素 (O)窒素 (N)がありますが、こいつらはそれぞれ、1本2本3本の腕が出ているという、ちょうど分かりやすく腕の数が違う役者になってるんですね。

(ちなみに、もう1つ一応よく出てくるものとして、リン (P)もあり、こいつは腕が5本もあるんですが、まぁ今回は出てこないので無視してOKでしょう。)

一番分かりやすい例でこの腕について説明すると、誰でもご存知、水のH2Oは、こんな風に描けます。

H-O-H

…ね?

水素からは腕が1本、そして酸素からは腕が2本出ていて、これらが手をつなぐから、水はH2Oとして安定して存在するんですね。

原子というものは、手をつなぐ相手がいたら安定して存在できる物質なのです(そして、手をつないでできた完成形を、「分子」と呼んでいます)。

では腕3本の窒素Nは?

1本しか腕をもたないので、手をつなぐ相手の例として優れている水素Hとのペアを見てみると、こうなりますね。

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そう、Nは腕が3本ありますから、NH3が安定な形となって、これが何を隠そう、小学校でも習う代表的なクサいやつ、アンモニアなんですね。

という感じで、(上は無機化合物の例でしたけど)あらゆる分子は、誰か別の原子と手をつないで存在しているわけです。

有機化学の主役がなぜ炭素かというと、恐らく、腕の数が4本という絶妙な数だったからなんじゃないかな、なんて気がします。

(ちなみに、「じゃあ、もし手をつながなかったらどうなるの?手をつなげない子はいないの?」というのも、恐らく感じられる疑問ではないかと思います。
 これは、つなぐ相手がおらず手がフリーの場合、不安定というか反応性の高い状態であるため、必ず周りにいる誰か他の原子がしゃしゃり出てきて、結局すぐに手をつなぎ直してしまいます。
 なので、「世の中に安定して存在しているものは、みんな手持ちの本数分だけ手をつないでいる」と考えちゃってOKといえましょう。
 なぜなら、単純に、手をつないだ状態の方が圧倒的に楽で安定だからです。
 高いところまでモノを持ち上げて手を離したら必ず下に落ちていくように、フリーになっている腕は必ず一瞬で誰か相手とつながるように、世の中はそういう風にできているんだ、ということですね。

 ただし、例外もあります。例外というにはあまりにもありふれているんですけど、水の中であれば、恐らくどなたでも聞いたことがある用語、イオンになることで、腕余りみたいな状態で存在することもあります。
 「結局それじゃん!」となっちゃいますが、こればっかりは、イオンなんて理科が嫌になる単元No. 1でしょうから、話に出しておいてなんですけど、今は深追いするのはやめておきましょう。
 基本的に、イオン状態でない限り、原子は腕の本数分手をつないで安定して存在している、と考えればOKですね。)

さぁでは早速、前回DNA・RNAの違いを見ていたdCとCをおさらいしてみましょう!

(DNAやRNAの塩基であるCと、炭素原子のCが同じCなので、めっちゃ分かりづらい!!)

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WikipediadCC)より

まず何はともあれ、OとNに着目してみてください。

Oからは必ず2本の腕が、Nからは必ず3本の腕が出ていることが、お分かりになるかと思います。

(ちなみに、Hの腕が1本なのは明らかすぎるので、Hから伸びている腕はしばしば省略されます(省略しても、絶対にどこにつながっているか明らかなので)。
 だから、例えば一番上にあるNH2となっているやつは、より分かりやすく書けば、H-N-Hとなっている、ってことですね(そして、このNはもう1本、下に腕が伸びていて、合計3本)。)

また、NH2の右下にあるNとかから伸びている二重線は、腕二本を一気につないでいる形です。

また、最下部・五角形の正面にある太い線は、これはただ立体感を出すためにカッコつけて書いてるだけで、普通の、腕一本分の一本線です。ややこしいだけだから、カッコつけないで欲しいですね…!

とにかく、どのO・Nを見ても、全部マジでOからは2本の腕が、Nからは3本の腕が出ていて、「ホンマや!よぉできとんなぁ~」と感動すること請け合いなのです。

…と、それを踏まえてぇ~

前回もチラッと書いたのですが、有機物の主役である炭素Cは、主役の宿命として、あまりにも数がありすぎていちいち書いていたらグチャグチャになってしまうので、こういう構造式の図からはしばしば省略されます

なので、腕が伸びている先に何も書かれていない場所は、全て、炭素原子Cになります。

ちなみにこれも前回書いた点ですけど、炭素Cにつながった水素Hも、しばしば省略されます。

Wikipediaの構造式に、CとHが省略されていないパターンはなかったため、自分で書き足してみました。

こちらがdC…

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ね?ごちゃごちゃしてるでしょ?

ちなみに、分かりやすいように赤字で番号も振っておきました。

なおこの番号は僕が適当に振っているわけではなく、こういう風に振るように決められています

構造図に戻りますと、まず、どの炭素も、必ず、4本の腕が出ていることが分かるかと思います。

…まぁ、空いてる所にHをつなげただけで、強引に4本にしてるだけやん、といわれればそうなんですが、実際余った手には本当にHがつながっているので、これは正しい図なのです。

でも例えば2番の炭素なんかは、腕1本ずつ出して2つの窒素Nと、二重結合=二本の腕を差し出して酸素Oとつながっているので、水素とは手をつないでいない感じですね。


そして、ようやく、肝心のdCとCの違いです。

違いは右下、つまり2'(見づらいですが、2番ではなく、2'番)の炭素Cからは、dCでは上にも下にも水素がつながっている一方、RNAの塩基Cは、2'番の炭素Cの腕には1本、-Hではなく、-O-Hがつながっているという感じなんですね。

こう見れば、「違いは酸素原子Oの有無1つのみ」というのは、ようやく明らかといえるのではないかと思います。

ちなみに、右上にある1~6番の部分が「塩基」と呼ばれる部分であり、この例なら「C(シトシン)」という塩基です。

そして、下半分、1'~5'番の炭素と酸素とで作られる五角形のリングが「リボース」と呼ばれる物質で、DNAやRNAの正式名称である「リボ核酸」の「リボ」は、実はこいつから来ているのでした。

(また、塩基の名前はC=シトシンですが、リボースもつながった形だと、シチジンという風に名前が変わります。
 「塩基のCと炭素のCが一緒で分かりづらい!」といいつつ、日本語名を表記しなかったのは、まだシチジンという名前を出していなかったので、いきなり新用語を出しづらかった、という理由があった感じです。)


なお、この5'みたいな番号についてですが、何気に、今までの記事で一度登場したことがありました。

ピンと来ますかね…?

そう、この記事で話に出していた、DNAの向き5'→3'というのは、まさにこの炭素の番号だったのです!

つまり、5'の炭素につながっているOHと、3'の炭素につながっているOHとが手をつなぐことで、DNAやRNAというのは、1文字ずつ伸びていく(平気で1億文字とかつながっていきます)、ってことなんですね。

(ちなみに、正確には、5'のOHと3'のOHは直接手をつないでいるわけではなく、当初登場しないと思っていたのにここでいきなり登場、リン (P) が間に挟まって、手をつなぐ仲立ちをしています。)

まぁ出さなくてもいいかな、と思いましたが、せっかくなので、ウィキペ先生から画像だけ抜粋させていただきましょう。

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Wikipediaより

Pは前述の通り、腕が5本もあるんですね。

そして、PにつながってるOの中の1つに、腕が1本しか使われていないやつがいるんですけど、その酸素原子には「-」という文字がついて、まさに上でいっていたとおり、「イオンになってます」ということが明示されています。

…まぁ、流石にマジで、こんなのを詳細に覚える必要は一切ナッシングです。

ちなみに、上の画像は、上から5'…→dT→dA→…3'となっていますが、めっちゃくちゃ鋭い方ですと、「あれ?T、昨日の画像と違くない?」と思われるかもしれません。

実はこの画像がなくても最後に触れようと思ってたのですが、昨日の画像を改めて貼りますと…

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WikipediaTU)より

Tは、こんな感じでした。

これ、まぁ間違ってはいないんですけど、この図は「炭素Cと、それにつながってる水素Hは省略する」という形で記述されているので、Tの、Uに比べて余計に存在しているCH3、これは、本当は書かなくても全く問題ないんですよね。

つまり、棒を一本書くだけで、「その棒の先には炭素Cが省略されていて、その炭素CにはHが3つ省略されている」ということが確定するため、これは本来書く必要のないCH3だったということなのです。

単に、違いを分かりやすくするために、あえて書いてくれている、という感じなのでしょう。

なので、先ほどのリン (P) でつながった画像では、塩基TについてるCH3は省略されて、棒が一本出ているだけだった、という感じでした。

パッと見は違うけど、実際は同じものなのです、ってことですね。細けぇ~!


というところで、有機化学いきなり入門編、ご理解いただけたでしょうか…?

せっかく有機化学の話に触れたので、次回もうちょい、生活に密着していて面白そうな話だけ、ちょろっと触れてみようかなと思っています。

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