アミノ酸20種のまとめ

前回の記事では、アミノ酸の3文字/1文字表記の覚え方なんぞをおもむろにまとめ始めた結果、20個挙げるのは思いのほか時間とスペースを食ってしまい、それだけで話が終わっていました。

 

まぁ覚え方なんて人それぞれですし、特にあの覚え方がスマートってわけでは決してなかったんですけど、僕は最初(高校生物・化学では覚える必要がないので、大学で)覚えたときに、あんな感じで覚えて今に至っています…という感じのお話でした。

 

というか、略式表記よりも、「そもそもの20種類のアミノ酸自体が全く『なんそれ』なんやが…」という話だったかもしれないのですが、これはまぁ、専門外の方は覚える必要なんて1ミリもない話で、逆に専門であればあまりにもよく目にする話すぎるのでいつの間にか覚えてるものになるわけなんですけれども、一応改めてアミノ酸そのものの方にもざっと触れてみるとしますと、やっぱり特徴・構造込みで、グループごとに覚えるのが一番いい気がします。


前回も書いていた通り、アミノ酸は1つの炭素原子を中心に、その4本腕の「側鎖」と呼ばれる部分(残り3本は、水素・アミノ基・カルボキシ基が必ずつながっている)に何がつながっているか?…で全てが決まるものなので、側鎖ごとにまとめて覚えるのがいい感じなわけですね。

 

一番単純なグループは、側鎖に「炭素と水素」という、有機化合物の一番単純なやつがつながったやつらでした。


炭化水素は(ずーっと前、「楽しい有機化学講座」の一番最初にも書いていたと思いますが)「脂肪族」と呼ばれるものなので(炭素と水素のみからなる、電気的な偏り=極性のない有機化合物は、まぁいっちゃえば油に代表される脂肪的なものなわけですね)、こいつらは脂肪族アミノ酸と呼ばれることも多いです。

 

今回は、略式表記に続き、簡単な特徴も併記するといたしましょう。

 

脂肪族アミノ酸

1. グリシン:Gly、G(側鎖に炭素0=水素のみ)

2. アラニン:Ala、A(炭素1)

3. バリン:Val、V(炭素3)

4. ロイシン:Leu、L(炭素4)

5. イソロイシン:Ile、I(炭素4、ロイシンとは炭素鎖の配置が違う)

 

正直、文章だけでは分かりにくいにも程があるので、最後にアミノ酸一覧の画像もお借りして貼り付ける予定です。

(また、分類の方法によっては、上に挙げたものだけが「脂肪族」ではないこともある(=他のアミノ酸がここに入れられることもしばしばある)ことにご注意いただければと思います。)

 

続いては、構造としてはその次に単純ではあるものの、「酸素」が絡んでくるため、まさに水分子がそうであるように電気的な偏り=極性が発生するため、実は特徴的には大きく異なるのが、「OH持ち」の以下の2つですね。

(とはいえ元々アミノ酸自体が全体で極性を持つ分子なので(アミノ基とカルボキシ基の存在により)、「非極性」と言いつつ分子全体としては若干の極性を持つ脂肪族アミノ酸と比べてそこまで劇的な違いはなく、あくまで「分類上は大きく異なる特徴」なだけで、性質としてはそこまで劇的にタンパク質の性質を変えるほどでもない気がします。)

 

側鎖に酸素を持つアミノ酸

6. セリン:Ser、S(OH持ち、炭素は1つ)

7. スレオニン:Thr、T(OH持ち、炭素は2つ)

 

まぁこいつらはどちらも「-OH基(ヒドロキシ基)」持ちで、炭素の数がちょっと違うだけの、兄弟分子って感じですね。

よくセットで「セリン・スレオニン」として登場することが多いです。

 

続いて、ここからは大して特徴のない上の雑魚アミノ酸どもとは違い、結構大きな特徴のある、「タンパク質の性質を変えがち」な強者どもって感じですかね。

(もちろん、例えばセリンが酵素の機能で重要な役割を果たすことも多くありますし、上記メンバーも、必ずしも何の存在価値もない雑魚というわけでは決してありませんが…)

 

まずは、硫黄原子がいるこいつらになります。

 

硫黄を持つアミノ酸

8. メチオニン:Met、M(開始コドン!)

9. システイン:Cys、C(末端に硫黄原子Sがある!)

 

とはいえメチオニンの硫黄が持つ二本の腕は、どちらも炭素とつながっている(炭素と炭素の間に硫黄が存在……これまた文字だけだと分かりにくいですが、図を見れば明らかです)ので、この硫黄は「結合」や「反応」に関わってくることはほぼなく、メチオニンの特徴はやはり「開始コドンであること」が一番の売りだといえましょう。

DNA→RNA→タンパク質という流れで、タンパク質合成が始まる最初のアミノ酸は必ずメチオニンになっているので、各アミノ酸を指定するDNA/RNAの3文字表記をコドンと呼びましたが、こいつは「開始コドン」って呼ばれてるわけですね(ちなみに、ATG(RNAならAUG)です)。

(なお、シグナル配列とか、その他「前駆体」と呼ばれる部分があって、タンパク質合成後切断されるものもしばしばあるので、世の中の酵素の全てがメチオニンで始まるというわけでは決してありませんが……。)

 

一方システインは、分子の末端に硫黄原子Sがいるため、「他のシステイン分子のSと一緒に手をつなぐことで、新たな結合を生成」という、タンパク質の構造を作る上で凄まじく重要な性質を持っています。

深入りはしないものの、「S-S結合」とか「ジスルフィド結合」と呼ばれるもので、そのタンパク質の全体構造を決める上で最重要因子の一つだと言えるぐらいです。


ちなみに硫黄はタマゴのニオイでおなじみですが、まさにこいつらの存在があの臭いを作ってるわけですね(タマゴというのは豊富なタンパク質のカタマリなので当然といえましょう)。


ただ、そういえば純品のMetもCys(=アミノ酸単独の粉末)も、そんなに…というか全くニオイはない印象です。

アミノ酸レベルで硫黄を含むはずなのに、何ででしょうね…?

パッと考えても理由が浮かばず、調べる時間もなかったので、将来の課題としたい所です。

 

続いては酸性アミノ酸で、これは分かりやすいですね。

ついでにその中和型も覚えられるのがGOODです。

 

酸性アミノ酸とその兄弟

10. アスパラギン酸Asp、D(酸性、サイズ小(炭素1+COOH))

11. グルタミン酸:Glu、E(酸性、サイズ大(炭素2+COOH))

12. アスパラギン:Asn、N(中和型(酸を作るCOOHが、アンモニアと反応した形)

13. グルタミン:Gln、Q(同じく中和型)

 

(「アンモニアと反応した形」というのは厳密には全く正確ではないですが、まぁアンモニアは代表的なアルカリ性物質ですし、アルカリ的なものと反応して中和されてる、というイメージを持つのが分かりやすいかな…と思ったのでそう記述しました(具体的にはアミノ基になるんですけどね)。

 改めて、下で貼る図を見れば分かる通り、-COOHとNH3が反応し、ちょうどH2Oが取れて「NH2-CO-」という形になる感じです。)

 

一気に四つ片が付いた次は、塩基性アミノ酸ですね。


前回のまとめ方ではヒスチジンを次の「リンググループ」に入れていましたが、Hisは塩基性であるというのも一応重要なポイントなので、そこも覚えておいた方がいいかもしれません。

 

塩基性アミノ酸

14. アルギニン:Arg、R(塩基性アンモニア由来のアミノ基持ち、サイズは大きめ)

15. リシン:Lys、K(塩基性、Argよりちょっと小さい)


まぁこいつらの具体的な炭素数やアミノ基の配置までは、専門課程の大学院生でもしっかり覚えていないことがあるぐらいですし、「こいつらは(あとHisも)塩基性」ってことを覚えればそれで十分だと思います。

 

最後はリング構造ですが、これも、別に「アミノ酸の構造を覚える」のがテーマではなく、「アミノ酸自体を覚える」という話なわけですし、「残り4つ+1つ、リング持ちがいたな」から、残る5つのアミノ酸を思い出せれば十分ではないかと思いますね。

 

一応それぞれの特徴も明記しますが、そこまでは不要といえましょう。

 

リング持ちアミノ酸

16. フェニルアラニン:Phe、F(アラニン+ベンゼン環(=フェニル基))

17. ヒスチジン:His、H(塩基性を持つリング、結構難解な構造(ホームベース型))

18. チロシン:Tyr、Y(フェニルアラニンにOHがついた)

19. トリプトファン:Trp、W(クソデカ・ダブルリング)

20. プロリン:Pro、P(側鎖と主部がリングを構成する例外分子)

 

前回適当に並べてしまいましたが、「塩基性」と「リング」のどちらにも入れられるように、かつ、PheとTyrは大変近いものなので、16番をHisにすべきだったかもしれません。

 

まぁ順番はともかく、大分類でいえば、「脂肪族」に対し「芳香族」といえるこいつらですが、前回も触れていた通りプロリンは全然仲間外れで、リングを持つのに芳香族ではないどころか、こいつだけ唯一、「全アミノ酸が持つアミノ基-NH2」が、側鎖の構成するそのリング構造に関わっているという、とんでもない例外アミノ酸になります。

 

改めて、文だけでの説明よりも画像を見るのが一発ですね。


大学などのアカデミック由来ではなく、普通の教育系企業の画像だったのであんまり無断転載も良くないかなと思ったのですが、パッと調べた限り一番分かりやすくまとめてくれていたので、こちらlumenラーニング社の公開資料からアミノ酸構造一覧画像をお借りさせていただきましょう。


青い部分が各アミノ酸の側鎖ですね。

https://courses.lumenlearning.com/wm-biology1/chapter/reading-amino-acids/より


グループ分けは、僕が上で勝手にまとめていたものと若干違うわけですが、こちらの画像はより「電気的な性質」に着目しており、Nonpolar(非極性、いわば脂肪族ですね)とPolar(極性)、そして電荷チャージあり組(正 (Positive) が塩基性、負 (Negative) が酸性)と、最後はやっぱり芳香族(aromatic)ですね。


一応、メチオニンは硫黄Sが間に挟まれているため、極性がないことから左上の「非極性グループ」に入っているのと、あとは酸性アミノ酸の中和型が「極性組・電荷なし」の所に入っているぐらいの違いでしょうか。


あぁあと「全てのアミノ酸が持つNH2とCOOH」は、水中ではイオン化するため、より現実に即した「NH3とCOO」になっていますが、まあまあ、その辺は大したことないので無視しましょう(笑)。

 

という所で、結局今回もアミノ酸の紹介で無駄に1記事を使ってしまいましたが、まぁ話をする上では知っていた方がいい&基礎教養知識として決して無駄なものでもない気がするので(決して日常生活に役に立つこともないものの(笑))、「こんな風にグループごとに覚えれば、闇雲に20種を覚えるより記憶にも残りやすい(かどうかは分からないものの、特徴も込みで覚えられるというメリットあり)のではないでしょうか」という感じの記事でした。


次回はこれを踏まえて、各消化酵素ネタで触れようと思っていたアミノ酸に関する脱線話に戻って行こうと思います。

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