向きも大事!

前回ついにDNAが二本鎖であることを知った我々一行は、今回さらにDNA・遺伝子・染色体の深淵を覗くことに挑戦してみるのであった…。

色々と説明しておきたい点やまだ触れずに放置したままになっているご質問等もあるのですが、まずは順に、非常に重要で、また気になり度も大きそうなポイントから見ていくとしましょう。

前回、↓みたいな感じで、DNAは二本鎖を形成していると書いたのですが…

等幅フォントが表示されない環境の場合、Aが多い方が広く、Tが多い方が狭くなってしまい(AとTの違いが特に大きいですが、一応、GとCも微妙に幅が違うんですね)、何か微妙なので、ACGT全部同じ数含む例に変更しました)

ATGTTGCGACCA…
TACAACGCTGGT…

これに関して、非専門家的立場から毎度極めて的確にいいご質問をいただけるアンさんから、

「ATGTTGCG…」っていうやつ、“こっちがメイン”みたいなのはわかるようになってるんですか?下の「TACAACGC…」だと別のアミノ酸になっちゃいますよね?

というコメントをいただいていました。

これ、マジで誰しもが思うポイントなんですよね。

結論からいうと、もちろん分かるようになっています

それを可能にしているのが、こないだ話に出していた、遺伝子の中の、アミノ酸指定部分以外の、その他の領域」としていた部分ですね。

色々な仕組みが関与しているので単純に1つのものを指して「ここ!」ということはできませんが(とにかくDNAからタンパク質が作られる流れは複雑で、説明も一筋縄ではいきません。でも、とにかく想像以上によくできているので、「そんなこと可能か?」と疑いの目を向けるより、「スゴい!」と素直に受け入れる心が大切かも、というのは、以前書いたことでした)、分かりやすい部分の一例としては、実際のタンパク質合成(=アミノ酸をつなぐ反応)で働いてくれる、「合成マシーン」を召集するための目印なんかが挙げられますね。

当然、タンパク質合成マシーンは最初のアミノ酸から順番に3塩基ずつスキャンしていって、1つずつ順番にアミノ酸をつなげていきますから、その目印は、最初のコドンの直前に位置しています。

最初のコドンの直前には必ずこの目印があるので、それが1つ「ここから順番にアミノ酸を読み始めます」という目安となっているといえましょう。

ただこれは、大体10塩基ぐらいがその目印なんですが、完全に決まった配列にはなっていないものなので、「強い目印」「弱い目印」なんかがある、結構あやふやなものになっています。

でもそういう曖昧な点もむしろ、その遺伝子(タンパク質)をどれぐらい沢山作るかを制御している、コントロール方法の1つになっているともいえるかもしれませんね(そんなに積極的な制御方法として知られているわけではありませんが、実際強弱はあります)。

(だから、例えばお酒分解酵素ALDH2遺伝子内の、ちょうどこの「目印」の所に、例の1000塩基に1つぐらいの割合で存在する個人差での変異が入っていた場合、目印がより弱くなってしまうなんてこともあるかもしれません。
 その変異を持ってる人は、同じEKの遺伝子型(「飲めるけど、弱い」という表現型)を持っていても、「EK持ち」の人と比べてさらにお酒に弱くなる、ってこともあるかもしれないですね、というお話です(もちろん、たまたま強い目印になる変異が入ったら、「EK持ちの中ではちょっと強め」ということになる可能性も、あるかもしれません)。
 お酒の強さ(に限らず、どんなものでも)が人によって千差万別なのは、そういうたまにある変異(アミノ酸指定部位以外にも)の影響も受けた結果、という風にもいえましょう。
(=ざっくり大きくEEかEKかKKタイプかで酒の強さが分かれ、その中でも、微妙なDNAの違いが、微妙なお酒の強さの違いとなって現れている、ということ。
 ちなみにもちろん、ALDH2以外にもお酒の強さを決める遺伝子はあると思うので(でも、ALDH2の影響が最大のはず)、違う遺伝子の影響も当然、多少はあると思いますけどね)。)


話を目印に戻すと、合成マシーン(色んな機能を持つやつらが集まった、大掛かりなマシーンです)はまずその目印の所に集合し、一通り全員が揃って準備完了となったら、順番に最初のコドンから情報を読んで、アミノ酸をつなげていく感じになっています。

その辺はもうちょい他の話も必要になってくるので、詳細はまたいずれ…という感じにしますが、う~ん、分子生物学入門としては、そこまでは要らないかな?

いやまぁ割と超重要ポイントではあるので、軽く、さわり程度にはその辺も触れておきたいですね(高校生物でも触れる範囲ですし)。

1つ今触れておいてもいいかなと思う簡単な追加知識としては、アミノ酸の1つ目は、実は、必ずメチオニン(コドンでいうと、ATG)になっている!…という点が挙げられます。

なので、ATGは、「開始コドン」とも呼ばれています。
(当然、メチオニンはタンパク質の途中でも出てくるので、「ATGが必ず開始コドン」というわけではありませんけどね。)

全部で何万も知られている全てのタンパク質が、必ず最初はM(メチオニン)で始まるというのも面白いところです。

もちろん、タンパク質の中には、合成後、切断されて生まれ変わって機能を発揮するようになるものとかもいるので、全ての働くタンパク質の頭がMになっているわけではないものの、合成された直後のタンパク質は、必ず頭がMなんですね。

なので、合成マシーン集合の目印とともに、開始コドンATGがいるかどうかも、そのDNAの塊がタンパク質合成の読み枠なのかどうかを探る上で役に立つ(というか最重要な)ポイントともいえるでしょう。

その辺の四方山話も、また20種のアミノ酸について触れるとき(いつになるんだ?)が来たら、色々改めて見てみたいですね。


…と、二本鎖の読む向きの話から、あまりそれとは関係ない合成マシーンの方に話が多少逸れましたが、改めて向きの話に関して、これまた超重要な点を一つ抑えておくとしましょう。

DNAには方向がありますが、二本鎖は、必ず、逆向きでくっついています!

これもややこしいことこの上ないですが、イメージとしては、前を向いた子供たち(子供じゃなくてもいいですけど、整列するのは子供のイメージがあるので)が、左手で前の人の肩(か服の裾でもなんでもいいですけど)を掴むことで一列に、そして右手を右側に伸ばしているイメージを浮かべてみてください。

このとき、この「左手で前の人とつながっている長い列」同士がつながるためには、もう一つの列は、完全に逆向きで列を作らなきゃいけませんよね?

同じ向きを向いている列を横に並べても、自由な右手と右手が離れているので、手をつなぐことができません!

つまり、最初の列の先頭の子がいる場所(のもちろん右手側)に新しい列の最後尾の子を配置し、同じように左手で前の子とつながった長い列を置けば、右手同士で手をつなげるようになるわけです。

(こういうの、マジで絵を描いて示す方が断然早いんですけど、まぁ絵が得意でもないので、言葉だけの長ったらしい説明になってしまい恐縮です。)

これと全く同じく、DNAも、必ず、逆向きの鎖同士しか手をつなげない構造になっている、というわけなんですね。

というかそもそもDNAの向きって何だよ、って話にもなるかと思いますが、まぁDNAにもちゃんと向きがある、って話です(情報量ゼロ)。

構造式を出すのも入門編っぽくないので、「具体的な構造なんてとりあえず知る必要はありませんよ」という意味でこれまた画像は出しませんが、DNAにとっての、「向き」を表す部位は、「5'」「3'」と呼ばれています。

これ本当に名前が悪すぎるんですけど、DNAの向きは、5'→3'という、「3→5じゃないのかよ、分かりにくいな!」という形になっているんですね。

つまり、先ほど最初に書いた二本鎖の例は、より丁寧に書くと、こうなっているわけです。


5'-ATGTTGCGACCA…-3'
3'-TACAACGCTGGT…-5'


この例でいうと、上の鎖は、最初のAの3'と呼ばれる手が次のTの5'と呼ばれる手とつながっていて、そのTの3'と呼ばれる手が次のGの5'と呼ばれる手とつながっている…というのが延々続いているわけですね。

(なので、子供でいうと、実は既に腕を2本(=両腕を)使って1つの列ができている感じです。
 しかし、DNA(ヌクレオチド)には「第3の腕」があるので、二本鎖形成にはその「第3の腕」が使われているといえましょう。
 当然、前回書いていた通り、Aの第3の腕からは「A」という手が伸びており、この手は「T」という手とのみつなぐことができる、という感じになっているわけですね。)

そして、タンパク質が作られる(アミノ酸の指定)のも、必ず5'→3'の方向にコドンが読まれることで行われていきます。

逆は絶対にないので、もしこのDNAの下の鎖がタンパク質合成に使われるとしても、「TAC AAC GCT GGT」というアミノ酸の並び(アミノ酸1文字表記だと、YNAG)には決してならず、(5'側から読み始めて)「TGG TCG CAA CAT」(WSQH)という、向きも中身も全く違うものになるわけです。

う~ん、正直、これはめちゃくちゃ重要で、最初の頃はこんがらがっちゃいがちな話なんですけど、入門編では別に全く要らない知識でもあるんですけどね…。

でもまぁ「向きがある」こと自体はとても重要なので、抑えておくのは悪くはないといえましょう。


なお、文字で表記していると分かりませんが、実際の分子では、ちょうど子供たちの列のどっちが前か後ろかは一目瞭然であるように、タンパク質合成マシーンにも、もちろんDNAの鎖自体を作るDNA合成マシーンにも、100%確実に向きは意識して取り扱われています。

子供の右手がプラプラ自由になっている長い列が、同じ向きで並んで列同士の手が結ばれることがあり得ない(構造的に、不可能…いやまぁ子供なら右手を強引に体の左側にもっていけばできなくもないですが、何かスゴい甲冑でも着ていて、あんまり自由に腕を動かせないという設定にでもしましょう)のと同様、分子レベルでは、DNA二本鎖は必ず逆向きでくっついている…
また、子供を見ればどっちに顔が向いているのかが一目瞭然であるのと同じように、タンパク質合成マシーンから見れば5'-3'の向きは明らかなので、「子供たちの顔(コドン)を3人ずつ振り返って確認したうえで、アミノ酸を一つずつつないでいく」という決まりになってますから、これも向きがいつもと違ったら明らかですから、逆向きでは絶対にタンパク質合成ができない仕組みになっている…ということなんですね。

ということで、DNA、向きも大事!というお話でした。

なお、当然、タンパク質にも向きがあります。

タンパク質(アミノ酸)の場合は、N→Cと呼ばれる方向ですね。

これもアルファベット順じゃないのかよ!何でや!!

(一応、「アミノ酸」の内、アミノのN(窒素)、酸(カルボン酸)のC(炭素)のことですね。)


(ちなみに余談ですが、「5'」「3'」は、日本語だと「ごダッシュ」「さんダッシュ」と読まれることが多いと思うんですけど、これ何でなんですかね?
 英語だと「ダッシュ」は絶対に「―」(ハイフンの長い版)でしかないので、これだと完璧間違いになってしまいます。
 英語では、「ファイブプライム」「スリープライム」ですね。)

 

書き始めたときは、もっと具体的でスゴい話にまで行く予定だったので、最初「深淵へと赴くのであった…」とか大口を叩いていましたが、例によって全く届きませんでした(笑)。

ちょっと今回の話は、長く書いた割に(入門編としては)あんまり重要ではない(もちろん分子生物学的には超重要なんですけど、「現時点ではあんまり意識する必要がない」という意味で)ので、いつも以上に大したことない(何につながるのか分からない)話になってたかもしれませんが、まぁそういう点も、多少なりとも知れてよかったと思っていただければ幸いです。

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