DNAとRNAの違いをおさえておこう

RNAが話に登場して以来、まだ一言もRNAの役割というか「こいつは一体何をしているやつなのか?」について説明していなかったので、そういう所に一切触れずに背景知識みたいなのだけをくどくど語るのも不親切かなと思ったのですが…
「基本的に情報が記録されている。レシピ本というか、ハードディスクというかスマホのメモリというか、単なる情報を保存する役割」と簡単に記述できるDNAと比べて、RNAは恐ろしく色々な役割を持つ有能なやつ(いやまぁそう書くとDNAが無能といってるみたいですが、情報を保存するというのももちろん大切な役割ですね)なので、説明を始めるとめちゃくちゃややこしくなってしまうという悩ましさがあるのです。

なので、とりあえずまぁRNAが実際何してるのかは置いておいて、まずは外堀から、分かりやすい点からRNAの特徴をまとめてみようと思います。

DNAとRNAはわずか1文字しか違いがない用語で、前回書いたとおり4種類の文字がひたすらつながってできているという点まで同じの、いわば兄弟分子みたいなものですが、前回までに出していた違いは、

・使われている4種類の文字が、1つだけ違う(DNA=A, C, G, Tに対し、RNA=A, C, G, U

・名前の由来となっているように(DNAのDはDeoxy=「酸素なし」のD)、DNAはRNAに比べて、酸素原子が1つ欠けている

…というものがありました。

「酸素原子が欠けている」という点、具体的には、DNA全体で1つ欠けてるという話ではなく、構成単位である1文字(ヌクレオチド)ごとに1原子酸素が欠けています。

つまり、例えば4種類の文字の1つであるCに着目すると、DNAのdCと、RNAのC、これらは同じ構成要素1文字分ですが、dCはCより酸素が1つ少ないわけですね(逆に、それ以外は全て完璧に同じ)。

要は、例えばDNA1000塩基とRNA1000塩基を比べた場合、DNAは酸素原子が1000個少なくなっている、ということになります。

…うーん、化学構造式を出すと、見慣れない方には「うわ出たよこれ!このキモいの見せられても、意味分からんのだってば!!」と、ハイやる気なくしたー、と思われてしまう可能性が高いため(多分、知識がなかったら、僕ならそう思うので)、あんまり出したくないんですけど、言葉だけよりやっぱり図を出した方が分かりやすいですかね…??

というわけで、はい。

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WikipediadCC)より

違いは、酸素原子Oのみですね。

「…いや、dCからはOHがなくなっとるやん!」と思われるかもしれませんが、この手の構造式では、炭素Cと水素Hは全部丁寧に描いちゃうと多すぎて見た目がグチャグチャになってしまうので、省略されることが多いのです。

なので、OHがHになった時点で、図からは描写が省略されただけで、実際はHが存在しており、違いはOだけなんですね。
(実際、「C」の方の右下のOHが出ている所、これも、本当は上にもHがあるのに、省略されています。「dC」の方は、上につながっているHも、下につながっているH(OHから酸素原子がなくなったのがこれ)も、両方省略されてるわけです。)

むーん、こんな説明、いらんかな…?って気もするものの、せっかく図を挙げたので、もう1点補足しておきましょうか。

ご覧の通りdCとCはたった酸素原子1つの違いだったわけですが、違う文字になっているTとUは、酸素原子の有無以外にも、当然、違いが存在します(だから名前が違う)。

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WikipediaTU)より

…ね?

って正直違いは微妙で、めっちゃ似てますけど、TにはCH3が余計についていることが分かるかと思います(単なる書き方でH3Cとなってますが、CH3と同じことです)。

(なお、前回、「DNAとRNAをハッキリ区別したいときには、DNAの頭にdを足す」などと書きましたが、TとUは文字自体が違うから必ず区別がつくので、TはあえてdTと書かないこともあります。もちろん、dTと書くこともありますけどね。)

Uの方には、相変わらず同じ場所にHが1つ省略されているので、実際の違いは正味CH2分なんですけど、そんなわけで、TとUを比べると、TはOが1つ少ないけどCが1つとHが2つ多い、って感じなわけです。

まぁ大々的に挙げて、細々(こまごま)と図まで挙げて補足説明もしてみたものの、この辺は正直どうでもいいです。

実際に「DNAは、RNAより酸素が少ないからどうこう」とかいう話は一切登場しないので、気にせずに生きても、今後の人生になんらの支障は発生しないと思われます。

むしろ、たった酸素原子1つの違いなのに、細胞や各種生体反応実行マシーンは、これらを厳密に区別しているというのが驚きで、酸素どうこう抜きにして、DNAとRNAは全く違うというイメージをもてればそれでOKでしょう。


ただせっかく構造まで図とともに話に出してしまったので1つだけ発展的な話に触れておくと、「なぜDNAではTが使われているのに、RNAではUなのか?」という疑問の1つの理由は、この辺にあるといわれています。

CとUは上の図を見ても何気に結構そっくりだと思うんですけど(いやまぁ結構違うじゃん、といわれれば結構違いますが)、実際、化学的にCとUはめちゃくちゃ近くって、Cがちょこっと分解されるとUになってしまうことが知られています。

ちょっとした事故でDNAやRNA1塩基の一部分が分解されてしまうというのは、現実的にままありますから、Cは案外簡単にUにすり替わってしまうんですね。

そのとき、DNAであれば、「あぁっ!dCがdUになったぞ!!我々DNAはUは使わないのに、これはおかしい!これはエラーに違いない、直したろ、ちょちょいっとな」って感じで、エラーに気づいて修復することができるんですね!

ちょうど最初に書いたとおり、DNAというのは「情報を保存すること」が最大の使命ですから、これは非常に有益なのです。

もし気づかぬままCがU(=Tと同等の扱いのもの)に変わってしまったら、指定するアミノ酸がガラッと変わってしまって致命的ですから、ここを守るのは遺伝情報保護の生命線ともいえるわけですね。

ちなみにTであれば、Uに比べてたった1つCH3がくっついてるだけなんですけど、これのおかげで簡単にはdCに変換されません(「なんでや、そんな都合いいことあるん?」と思われるかもしれませんが、そうなってるのです)。

なので、TはUよりCH2だけ余計なものがついているので大きくて邪魔だし維持コストも多少かかるし、そもそもわざわざ違う分子を用いることで状況が複雑になってるだけの気もするんですけど、そうするだけのメリットが存在する、って話なんですね。

一方RNAは、情報の保存よりもっと別の、実働マシーン的な役割が中心なので、Tよりコンパクトで扱いやすいUが使われているのではないか、という推測が立つわけですね。

もちろんそれはあくまで人間が後付けで考えた理由であって、実際のところは「そうなってるからそうなんだ、何でわざわざ別の塩基を使ってるのかは、DNAとRNAに聞いてくれたまえ」としかいえない話ではありますが…。


…おっと、書こうと思ってた本題に入る前に、まためちゃくちゃ長くなってしまった!

前置きだけではアレなので、本題である「DNAとRNAの大きな違い」について、せめて最後、表題だけでも触れておくとしましょう。

結構な重要ポイント、それは…

・DNAは二本鎖で存在しているが、RNAは基本的に一本鎖として存在していることが多い

…です!

次回、この点について触れていこうと思います。

RNAの具体的な機能・役割については、その次ぐらいに取り上げていきたいですね。

(くどいですが、今回は結局化学式が出てくる小難しい話が中心になってしまったものの、今後にはあまりつながらないかなりどうでもいい話なので、無理して理解しなくても構わないような内容だと思います。
 もちろん、生命科学系の学生なんかにはそれなりに重要なポイントですが、非専門家の方が教養の一環として学ぶ入門編としては、無駄知識の領域に片足突っ込んでるといえましょう。)

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