色のある世界

こないだ、筋ジスについての補足記事を書きましたが、その補足記事でまたいくつか書こうと思って忘れていた(というかスペース的に後回しにした)話があったので、補足の補足をしておくとしましょう。

まず、筋ジスはX染色体に乗っているジストロフィン遺伝子(超巨大・200万塩基)の異常で起こるもの、つまり男性特有の、いわゆる伴性遺伝だと書いていましたが(ちなみに、高校のとき、授業で習うまでは字面だけを見て「はんせいいでん」だと思ってたんですけど、正式名称は「ばんせいいでん」ですね)、あくまでそれは筋ジスの内の最もメジャーなタイプであるデュシェンヌ型(DMD)の場合であって、その他のタイプの中には、性別を問わず発症する筋ジスも存在します、ということは、実際に世の中に少なからぬ患者さんもいらっしゃる病気でもありますし、より正確に、きちんと補足しておかねばいけないな、と思った次第です。

具体的には、例えば日本では先天性筋ジストロフィー(出生時から筋力の低下が認められるタイプ)の中で最もよくみられる症例である、福山型という筋ジス(Fukuyama type congenital muscular dystrophyでFCMD)は、9番染色体に乗っている、発見者の福山幸夫さんの名前をとってフクチンと名付けられた遺伝子に異常が起こることが原因といわれています。

こちらは常染色体上の遺伝子ですから、当然、男女の違いなく発症するもので、Wikipediaによると…

・日本特有の疾患、ほとんどの症例が日本人で、他国での報告は稀

・保因者は80人に1人、発生率は出生26000人に1人

…とのことですね。

例によってゲノムブラウザでこの遺伝子名fukutin、遺伝子略号FKTNを確認してみると…

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/gdv/browser/genome/?id=GCF_000001405.36より

97834塩基という、これまた結構大きな遺伝子で、Cited Variationsのセクションにも、当然、変異例がたくさん報告されています。

フクチンと遺伝子名自体は可愛らしいのですが、当然生まれながらにして筋力が低下するという深刻な症例で(筋肉というのは、手足だけではなく、心臓・内臓なども筋肉の力で蠕動運動をする必要があることに注意しましょう)、多くの患者さんは10歳代で亡くなられてしまう、今現在でもまだ根治ができていない難病です。

色々な技術が加速度的に進歩している分子生物学生命科学ですから、将来、必ず根治につながる治療法が見つかってくれることを、心より願ってやみません。


伴性遺伝に話を戻すと、他にもよく知られている有名なものとして、色覚異常なんかがありますね。

これも、基本的に男性特有のものであるということは、恐らく多くの方がご存知でしょう。

こちらは、複数の遺伝子が関わってくる若干複雑なタイプなんですけど、基本的には色を認識するために必要な「オプシン」というタンパク質、これが上手く働かないと、色を上手く認識できなくなるわけですが、そのオプシンを作るための遺伝子が、X染色体上に乗っているんですね。

(正確には、赤オプシンと緑オプシン(当然、それぞれ、赤色と緑色の認識に使われる)がX染色体上に存在するので、一番メジャーな色覚異常である「赤緑色覚異常」が、伴性遺伝で男性によく現れる、ということですね。)

ということで、X染色体を1本しか持たない男性により多く現れる症例ではあるものの、筋ジスとは違い命に関わるものではないですから、当然、女性が異常型遺伝子を2本セットで持つ場合もあるので、必ずしも男性のみに現れるものではないんですね。

でももちろん、割合として、圧倒的に男性の方が多くなるわけです。
(男性では20人に1人(クラスに1人ぐらい)、女性では500人に1人ぐらい(学校全体に1人ぐらい?でも案外いらっしゃるんですね)といわれています。)

僕は色覚異常ではないんですけど……って、まぁ色については、よくいわれている通りこれは案外哲学的な命題であり、「あなたの見ているリンゴの赤と私の見ているリンゴの赤が、同じ『赤』である保証はどこにあるのか?」みたいな禅問答に陥りがちなんですけど、まぁそういうしょうもないやり取りはこの際おいといて、Color blindnessでGoogle検索したら横にでてきた画像、これ↓を見ても…

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Google検索結果より(https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/poor-color-vision/symptoms-causes/syc-20354988がソースとのこと)

僕の目からは2つのリンゴは完全に違う色に見えているので、まぁ色覚異常ではないと自分では思ってるわけですが、バカにしているとかそういうわけでは全くないんですけど、赤緑色覚異常の方は、赤い方のリンゴも上の画像のグレーのものとほぼ同じように見えてしまうということで、これはやっぱりちょっと可哀想に思えてしまう・できることなら違いを見せてあげたいな、と思えてしまいますね…。
(もちろん、その人にとってはそれが世界なのであり、それは見えてる人の傲慢な意見なのかもしれませんが…。)

この話を聞くと、必ず思い出すのが、ずっと前に話題になってたこのYouTubeの動画です(もう6年も前ですか…)。

色覚異常のパパに、色覚補正のサングラスみたいなのをプレゼントするというものですが、言葉なんて分からなくても何も関係ない、本当にグッと来る、心の底から素晴らしい動画だと思います。

www.youtube.com
無邪気な子ども達(あえて意図してなのか、みんなカラフルな服を着せられているのも微笑ましいです)と、めっちゃ絵になるダンディなパパですが、生まれてはじめて見る鮮やかな世界に思わず……これは感極まりますね。

「あぁ、世界って、こんなに色鮮やかだったんだ…。子供たちの瞳は、こんなにきれいだったのか…」という感動が見ているこっちにも伝わってきて、本当に心打たれます。

こんなに人を幸せにする技術もそうそうないよな…と思える素晴らしいメガネですが、こちらはカリフォルニアを拠点にしているエンクロマ社の商品ということで、日本から直接買うことはできないようですけれど…
(なぜか1ページだけ日本語化されている公式ページはありましたが)

enchroma.com
代理店で、通販をやってくれるところもいくつかヒットしたので、気になる方は調べてみてもいいかもしれませんね。

また、エンクロマ以外にも、日本の企業含め類似製品は結構出されているようなので(1-2万円とかそのぐらいで、そこまでデタラメに高くはないのもいいですね)、もし色覚異常に自覚があって興味のある方がいらっしゃったら、手を出してみると世界が変わるかもしれないですね。

(ただ、合うかどうかは個人差もある、みたいな情報も見た気がしますし、外で常用するのには向かない、という情報もあるようなので、あくまで一時的な色の体験にしかならないのかもしれませんが、それでも、これはきっと試してみる価値のある体験ではないだろうか、と思えます。)

そんなわけで今回は遺伝の話から偉大なメガネの紹介(&めっちゃいい動画の紹介…これ以外にも、色々な色覚異常の方の色覚補正グラス初体験動画があるので、感動の共有として、興味ある方は漁ってみてもいいかもしれませんね。「color blind glesses reaction」とかで検索すると、たくさんヒットします)になりましたが、人々の幸せにつながる素晴らしい商品&テクノロジーに拍手を送りたいとともに、今後ますます技術が発展して、誰でも完璧に補正できるタイプのものが、気軽に、100円ショップで買えるぐらいにまで普及してくれることを願いたい限りです。


あともう一つ伴性遺伝で有名な話に触れてみようと思いましたが、最近ずっと記事が長すぎるので、この辺で一旦区切ってそちらはまた次回へ続くという、水増し感覚でいかせていただくとしましょう。

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