腸について色々見ていたシリーズから、今回もまた一つ、気になった用語をピックアップしてみようと思います。
それが、記事タイトルにも挙げました、SIBO!
SIBOというと、日本語だと「脂肪」に「死亡」にあまりいい印象はない気もしますが、実際の英語でも病気の名前であり、ズバリ、Small Intestinal Bacterial Overgrowthで、まさにそのまんま、小腸内細菌過剰増殖と呼ばれるものですね。
腸内には当然、菌類細菌類が沢山いて、その多くは人間の健康寄与に多大なる貢献を果たしてくれているわけですけど、通常より遥かに大量に増えすぎてしまうと、これまた問題となって症状として現れる…というものでしょう。
…正直、SIBOというキャッチ―な名前ではなく、小腸内細菌過剰増殖症という名前だけだったら気になって見ることも絶対なかったので、げに名前というのは偉大なものです…と思えますけど、そんなわけでせっかくなのでこのSIBOについても、クリーブランド・クリニックのHEALTH LIBRARY記事を参考にさせていただこうと思います。
(SIBO) 小腸内細菌過剰増殖症((SIBO) Small Intestinal Bacterial Overgrowth)
SIBO(小腸内細菌過剰増殖)とは、健康的な消化を維持する腸内微生物のバランスが崩れることです。細菌が多すぎたり、良くない種類の細菌が小腸に住み着いたりすると、ガスや下痢といった不快な症状を引き起こし得ます。また、食物から栄養素を消化吸収する能力を阻害してしまう可能性もあります。
概要
SIBO(小腸内細菌過剰増殖症)とは何?
SIBOとは「small intestinal bacterial overgrowth(小腸内細菌過剰増殖)」の略です。つまり、小腸に住む細菌が増えすぎて、通常なら腸内細菌叢(フローラ)のバランスを保つものが機能していない状態を意味しています。小腸に細菌が生息しているのは正常で健康的なことですが、増えすぎると消化に問題が生じます―特に、それが良くない種類のものであれば、です。良くない細菌は、必要な善玉菌を圧倒してしまい、その細菌のためのものではないものを食べてしまうことで、消化器系を困らせてしまう可能性があるのです。
SIBOはどう起きるの?
人間の体は、化学的および機械的な機能の複雑なネットワークを通じて腸内フローラのバランスを保っています。SIBOが発症する場合、こういった機能の内の1つ以上に障害が起きているに違いありません。胃酸、胆汁、酵素、免疫グロブリンは、小腸内の細菌をコントロールしている化学物質の一部です。様々な条件がこういった化学的機能を阻害する可能性があります。小腸から大腸への食物内容物の排出も、重要な浄化機構です。この機能が遅くなったり損なわれたりすると、小腸の細菌が繁殖する時間が増え、大腸の細菌が這い上がり始める可能性があります。
SIBOは体にどんな影響を与えるの?
小腸内の細菌は炭水化物を消化して、ガスや短鎖脂肪酸に変換します。細菌が増えるということは、ガスやその他の副産物が増えるということを意味し、これは往々にして下痢の引き金となることがあります。細菌はまた、人間のためにあるはずのタンパク質やビタミンB12、それから本来脂肪の消化を助けるためにあるはずの胆汁酸塩も消費してしまいます。これら全てが、脂肪の消化不良や、特にカルシウムや脂溶性ビタミンといった栄養素の吸収不良を引き起こします。その結果、短期的には様々な胃腸症状が現れ、長期的には栄養失調となります。ビタミンやミネラルの欠乏は、長期的には骨や神経系に永続的なダメージを与えかねません。
SIBOはどのくらい一般的なの?
いくつかの研究では、過敏性腸症候群(IBS)の患者さんの80%程がSIBOであると示されています。健康な方々の有病率は不明です。医師は、SIBOは一般的に過小診断されていると考えています。軽症の場合は無症状かもしれませんが、中等症の場合はIBSのような他の疾患と重なる非特異的な症状が多く見られるのです。SIBOは直接検査されることはあまりなく、また、されるにしても、現在用いられている検査は不完全なものとなっています。
症状と原因
SIBOの症状は何?
SIBOの症状は、他の様々な胃腸疾患に似ている可能性があるもので、また多くの場合、他の疾患がSIBOの原因となっています。SIBOの症状の重症度に応じて、以下の症状のいくつか、またはその多くを同時に経験する可能性があります:
- 腹痛
- 腹部膨張
- 吐き気
- 腹部膨満感
- 消化不良
- ガス
- 下痢
- 便秘
- 意図しない体重減少
- 疲労感
SIBOの原因は何?
胃酸の低下(低塩酸症)は、細菌の増殖を抑える体の能力を低下させます。胃酸レベルを低下させる要因には、以下が含まれます:
- H. ピロリ菌感染
- 制酸剤やプロトンポンプ阻害剤といった薬剤の長期使用
- 胃バイパス手術
小腸運動障害とは、老廃物が大腸に排出される前に、小腸に長く滞留しすぎることを意味します。これにより、小腸の細菌が増殖し続け、大腸の細菌が小腸に流入することが可能となってしまいます。この運動障害には以下が含まれます:
- 胃不全麻痺
- 腸閉塞
- 甲状腺機能低下症
小腸の構造的な問題は、腸運動や残留細菌の定期的な除去を阻害し、細菌が蓄積しやすい余分な隙間やくぼみを生じさせ得ます。これらは胃腸疾患または手術の合併症によって引き起こされることがあるものです。この構造的な問題には以下が含まれます:
- 小腸憩室症
- 小腸閉塞
- 腹部の癒着
特定の薬剤の過剰使用が、フローラの正常なバランスを崩す可能性もあります。これには以下が含まれます:
- 抗生物質
- 麻薬
- 胃酸抑制剤
SIBOの危険因子は何?
高齢になると、胃酸や胃の運動レベルが低下し、SIBOを促進する可能性のある薬剤の服用量の増大につながります。
腹部手術や放射線被曝といった医療介入は、小腸の構造的な問題、それから粘膜の損傷を引き起こしかねず、これが免疫に影響を与えてしまいます。
免疫不全疾患は、特定の細菌に対する腸管免疫に影響を与える可能性があります。
特定の胃腸疾患は、腸の運動性に影響を与えたり、以下を含む腸の構造的な問題を引き起こしたりする可能性があります:
- 糖尿病
- 全身性エリテマトーデス(ループス)
- セリアック病
- 炎症性腸疾患
- 過敏性腸症候群
- 膵炎
- 結腸がん
- 強皮症
- 慢性腎不全
- 肝硬変
SIBOの引き金(トリガー)となる食品は何?
食べ物がSIBOの元々の原因になるというわけではありませんが、ある種の食べ物は小腸内の良くない細菌の過剰繁殖を促すものとなっています。そういった細菌の好物を与えていれば、その菌はさらに増殖し、SIBOの症状のトリガーをさらに強く引くことになることでしょう。同様の話として、問題のある菌の好物を絶つことで、過剰繁殖を抑えることが可能です。この戦略に基づいて、多くのSIBO向けの食事療法プランが提案されています。食事法は様々あり、その結果も個人差があります。しかし一般的には、炭水化物の制限を推奨する傾向があります。これには以下が含まれます:
- 砂糖と甘味料
- 果物やでんぷん質の多い野菜
- 乳製品
- 穀物
診断と検査
SIBOなのかIBSなのか、どうすれば分かるの?
SIBOとIBSは多くの症状を共有しており、しかも両方に罹患する可能性があります。主な違いは、細菌過剰増殖は臨床的に確認でき、治療が可能であることです。一方でIBSは、症状が臨床的に説明できない場合に診断される機能障害となっています。
ご自身の症状について医学的な診断を求める場合、ほぼ間違いなくSIBOの他、乳糖不耐症などその他同等の症状についても検査されることでしょう。陽性であれば、そういった疾患の治療を受けることができ、上手くいけば症状は治まります。
症状の全てが治まるわけではない場合は、別の病気にかかっている可能性があります。明らかな原因が見つからない場合は、まさにIBSと診断されることでしょう。時折、SIBOの一因としてIBSが見つかることもあります。
SIBOはどう診断されるの?
SIBOの症状は、他の多くの胃腸疾患と重複しており、その内のいくつかは既に症状としてお持たれになっているものかもしれません。そのため、医療機関で診断を受ける際、SIBOが最初に疑われることはない可能性もあります。しかし、ご自身の症状や病歴からSIBOが疑われる場合、担当医がそれを確認するために呼気検査を勧めてくることがあるかもしれません。この簡単で非侵襲的な検査は、呼気中の水素やメタンの濃度を測定し、腸内にガスを産生する細菌がいるかどうかを調べるものです。数値が一定以上であれば、細菌が豊富であることを示唆しています。
担当医が、SIBOの原因や合併症の徴候を探るために、以下のような追加検査を提案することがあるかもしれません:
- ビタミン欠乏症や血中タンパク質欠乏症の血液検査
- 過剰な未消化脂肪や胆汁酸の便検査(うんちの検査)
- 構造的な問題をチェックするための画像検査
管理と治療
SIBOを治療せず放置するとどうなる?
ガスおよび腹部膨満感、腹痛、ならびに腹部膨張を含むSIBOの一般的な症状は、それだけで十分に不快なものです。しかし、SIBOを放置しておくと、長期的なものを伴う、より深刻な合併症を引き起こす可能性があります。脂肪、タンパク質、炭水化物の吸収不良は、栄養失調やビタミン欠乏症につながり得ます。特にビタミンB12の欠乏は、神経系の問題や貧血を引き起こす可能性があります。カルシウムの吸収不良は、長期的な骨粗鬆症や腎臓結石の原因となりかねません。
SIBOはどうやって治すの?
SIBOはしばしば他の疾患の合併症であり、またこれ自身が合併症を引き起こすことも多いです。SIBOを治療する場合、医療従事者は以下のことに対処する必要があります:
- 過剰増殖そのもの
- SIBOの合併症
- 根本となる原因
抗生物質の投与は、細菌の過剰増殖に対する標準的な治療法です。医療従事者は次いで、最も急性である合併症の対処をしようとすることでしょう。これは、ビタミンやミネラルの不足に対する栄養サポートやサプリメントを意味するかもしれません。あるいは、厳密な短期的食事療法で症状に対処し、次いで、修正されたより長期的な食事療法で栄養を補給し、細菌の過剰増殖を抑制するよう牽制することを意味する可能性もあり得ます。
最終的には、医療従事者はSIBOの根本的な原因を突き止め、治療したいと考えるでしょう。そのためには追加の検査が必要になるかもしれません。運動障害が疑われる場合は、運動促進剤を処方して、腸運動を活発にする手助けをすることがあるかもしれません。構造的な問題が特定されれば、それを改善するための手術を勧められる可能性もあることでしょう。
予防
SIBOの再発はどうやって防ぐの?
SIBOになりやすい基礎疾患をお持ちの場合は特に、抗生物質の投与が終わった数ヶ月後にSIBOの症状が再発してしまうことは珍しくありません。抗生物質は急性の治療法ですが、長期的な解決策ではありません。SIBOの根本的な原因への対処を試みてみることが重要です。時に、SIBOの根本的な原因は、もっと積極的に対処可能な別の病気であることもあります。時には手術で対処できる構造的な問題であることもあります。細菌の増殖を抑えるために、既存の薬やアルコールの使用を調整する必要があるかもしれません。
根本的な原因が特定できない、あるいは解決できない場合は、低炭水化物食およびプロバイオティクスで細菌の過剰増殖を管理してみることが可能です。この手の解決策に関する研究はまだ結論が出ていませんが、事例証拠によれば、役に立つ可能性が示唆されています。特に抗生物質の投与が終わりに近づいている場合、数週間は、炭水化物の過剰摂取で細菌にエサを与えてしまうことを避けるようにしてください。悪玉菌とのバランスをとるために、プロバイオティクスを毎日摂取することで、新たな善玉菌を増やすようにしましょう。
SIBOに対処するための良い食事療法は何?
SIBOの寛解を誘導するために、医療従事者の中には短期間の除外食を勧める人もいます。つまり、一時的に全ての炭水化物を制限して、細菌を飢餓状態にするのです。この食事療法のより厳しいバージョンとして、エレメンタル・ダイエットと呼ばれる事前消化された処方の流動食があります。エレメンタル・ダイエットでは、腸内細菌に消化するものを与えない一方で、必要な栄養はすべて摂取できるようになっています。短期的な、治療目的にのみ処方されるものです。SIBOもその内の一つです。
その他、様々な低炭水化物の食事療法プランが、家庭での除外食や維持食として機能するかもしれません。短期的にこういった食事療法を行い、その後、体内の反応を見ながら、徐々に色々な食品を取り入れていくことが可能です。あるいは、長期的に食事療法を続けることで、自分が力強く成長していることに気が付くことがあるかもしれません。低炭水化物ダイエットには沢山の種類があり、その多くがSIBOに効果があると謳われています。私たちがお勧めするのは、特定炭水化物ダイエット(SCD)と低FODMAPダイエットです。
クリーブランド・クリニックからのメモ
胃腸の諸症状―膨満感やガス、けいれんや消化不良―に悩まされている方は、きっと自己診断を試みたことがあり、それがいかに厄介なものであるかを発見された経験がおありでしょう。あまりにも多くの症状や病態が重なり合っているため、SIBOのような一般的な原因でさえ突き止めるのが難しいのです。医学的な検査は、苦痛の原因を特定するのに役立ちます。また、食事を調整し、その変化が症状にどう影響するかを観察することで、多くのことを学ぶことも可能です。中には、ライフスタイルを変えるだけで、SIBOの症状に対処できる方もいらっしゃるかもしれません。それでも十分でない場合は、抗生物質が必要になる可能性があります―しかし、SIBOが再発しないように、その後数週間は健康な腸を取り戻すように注意しなければなりません。
いくつかこないだ見ていたダイエット(食事療法)もオススメされていました。
IBS同様、やはり厄介な症状ですね。
こんなの見ても何も分かりませんが、ウィッキー先生に診断画像があったため、アイキャッチ用にお借りしておしまいとさせていただきましょう。