様々な衛生関連ネタに脱線しているシリーズですが、前回はMRSAという薬剤耐性を獲得した恐るべき細菌について見ていたわけですけど、せっかくなので細菌ではなくウイルスからもひとつ、こちらは今やかなりメジャーになった、ノロウイルスの記事がこないだどこかの記事でリンク付きで貼られていたため、今回はこちらさんを見ていこうかなと思います(↓)。
このノロウイルス、僕と同世代の、20世紀を知る方なら同意いただけると思うのですが、昔はマジでこんな病気、見たことも聞いたこともなかったんですよね。
何か、確か21世紀になって突然いきなり聞くようになった気がするわけですけど、それもそのはず、今回も画像がなかったので、アイキャッチ用に電顕写真でノロさんの実態の絵面をお借りさせていただいたWikipediaによると…
…このウイルスが「ノロウイルス」と名付けられたのは2002年のことのようで、もちろんあくまで命名されたのがその時で、2002年にいきなり発生したわけではないですけど(昔は、単なる「冬の下痢・食あたり」と思われていたのではないかと思います)、言うまでもなくそれ以前はノロウイルスという言葉はこの世に存在しなかったんですねぇ~。
(なお、「ノロ」の語源になったのは初めてこのウイルスが同定された、オハイオ州ノーウォークの小学校において集団発生した急性胃腸炎が由来で、「ノーウォークウイルス (Norwalk virus)」から来ているものだということです……と記事を読む前に書いていましたが、これは普通に↓のクリ・クリ記事にも掲載されていましたね。)
今やすっかりおなじみのノロウイルス、幸い僕は一度も罹ったことがないですが、上から下からマーライオンのように液体噴射が続くという地獄絵図になると聞きますし、これは本当に感染したくないウイルスだと言えましょう。
今回も、天下のクリーブランド・クリニックによるまとめ記事で、対策他について学んでおこうと思います。
ノロウイルス(Norovirus)
ノロウイルスは、一般的で非常に感染力の強いウイルスです。吐き気、嘔吐、および下痢を引き起こします。症状は胃腸風邪に似ていますが、原因は異なります。ノロウイルスは、密接な接触や汚染された食物や物質の表面から容易に広がります。ノロウイルスに効くワクチンはありませんが、3日以内には症状が治まります。
概要
ノロウイルスとは何?
ノロウイルスとは、激しい嘔吐と下痢を引き起こすウイルス群のことです。非常に一般的な病気で、感染力も大変強いです。ノロウイルスの流行は通常、寒い季節に起こります。この感染症は、アメリカにおける食中毒の原因の第1位です。
ノロウイルスの最初の集団発生は、1968年にアメリカ・オハイオ州ノーウォーク(Norwalk)の学校で起こりました。このため、ノロウイルスの最初の株はノーウォークウイルスとして知られています。
ノロウイルスと胃腸風邪の違いは何?
ノロウイルスは胃腸炎を引き起こし、これを「胃腸風邪(※英語ではStomach fluなので、『胃腸インフルエンザ』って感じですね)」と呼ぶ方もいらっしゃるかもしれません。インフルエンザウイルスは、胃腸炎ではなく、呼吸器系のインフルエンザを引き起こすものです。
ノロウイルスは何種類が存在するの?
ノロウイルスにはいくつかの型(株)があります。胃や腸に炎症(胃腸炎)を起こすウイルスの仲間で、カリシウイルス科に属します。この科には10のグループがあり、48の型があります。最も一般的な型はGII.4です。
ノロウイルスはどのくらい一般的なの?
ノロウイルスは非常に一般的です。世界では、毎年約6億8500万件の症例が報告されています。そのうち2億件以上が、小児に感染したものだと推定されています。
ノロウイルスは季節性?
ノロウイルスの流行は、赤道より緯度の高い国では11月から4月の間に、赤道より低い緯度の国では4月から9月の間に多く発生します。赤道直下の地域では、通常、特定の季節に流行することはありません。
症状と原因
ノロウイルスの症状はどんなもの?
ノロウイルスの症状には以下が含まれます:
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 胃痛
さらに、以下の症状もあるかもしれません:
- 頭痛
- 発熱
- 体の痛み
症状は通常、ウイルスに感染してから12~48時間後に現れ、1~3日間続きます。
ノロウイルスの症状は子どもと大人で同じ?
ノロウイルスの症状は通常、小児でも成人でも同じです。大人は子供よりも下痢が多く、子供は大人よりも嘔吐する方が多いということはあるかもしれません。
何がノロウイルスを引き起こすの?
ノロウイルスの原因は、カリシウイルス科のウイルスです。このウイルスが体内に入ると、胃や腸が腫れたり炎症を起こしたりします。これが胃腸炎と呼ばれる症状で、ノロウイルスの症状につながります。
どうやってノロウイルスに感染するの?
ノロウイルス感染症は、以下を含む様々なことを通して感染します:
- ウイルスに感染している人との密接な接触
- 汚染された表面に触れた後、自分の口や鼻に触れる
- 汚染された食品や飲料を飲食する。
ノロウイルスは、アメリカでは汚染された食品が原因の病気の内、最大のものとなっています。このウイルスは通常、ウイルスに感染している人が、他の人に提供する前に食品に触れることで広がります。時折、牡蠣やその他の魚介類を含む特定の食品が、自然にノロウイルスに汚染されていることもあります。
ノロウイルスは伝染するの?
はい、ノロウイルスは感染力が強い、つまり広がりやすいウイルスです。ウイルスに感染すると、体内から何十億個もの小さなウイルス粒子が脱皮し(放出される)、他の人にも病気をうつしてしまいます。ほんの数個のウイルス粒子で、他の人を病気にしてしまうことが分かっています。
ノロウイルスに感染すると、症状が出るまでに12~48時間かかります。発病するまでのこの時間を潜伏期間と呼びます。症状がなくなっても、最長48時間は感染力がある状態のままになっています。
ノロウイルスの危険因子は何?
ノロウイルスにはどんな人でも感染する可能性があります。以下の場合、ノロウイルスに感染する可能性がより高くなるでしょう:
- ウイルスに感染している人と接触した
- 遺伝的に発症しやすい(遺伝的感受性)
ノロウイルスの合併症は何?
ノロウイルスに感染すると、非常に気分が悪くなります。これが、吐いたり下痢をしたりという症状を引き起こし得ます。栄養を体内に留めておくことができなくなると、脱水症状を起こす危険性があります。脱水による症状には以下が含まれます:
- おしっこの回数が減る、またはおしっこの色が濃くなる
- 喉が渇く
- 脱力感やめまいがする
- 頭痛がする
子供には、上記の症状のほかに、以下のような症状が見られることがあるかもしれません:
- 涙を流さずに泣く
- 騒ぐ
- 一日中眠そうにしている
ノロウイルスは、腸や胃の炎症によって嘔吐や下痢を起こしてしまうため、飲食が困難になり得ます。それでも、食べたり飲んだりする努力は必要です。そのためには、一日を通して食べたり飲んだりする回数を増やす、ゆっくり食べる、それから一口大にしたり、水分を少しずつ摂ったりすることが効果的です。早食いや食べ過ぎは、体が拒否反応を起こしてしまう可能性があります。
診断と検査
ノロウイルスはどう診断されるの?
医療従事者が、患者さんの症状を把握した後、ノロウイルスを診断します。検査は通常必要ありませんが、診断を確定するために大便のサンプルを検査することがあります。免疫系や感染症と闘う能力に影響を与える基礎疾患をお持ちの方の場合は、通常、検査が必要です。
対処と治療
ノロウイルスはどう治療されるの?
ノロウイルスに特効薬はありません。感染症の治療は症状を和らげることに重点が置かれ、1~3日で治まります。以下の方法で症状を抑えることが可能です:
- 水分、特に電解質を含む水分をたくさん摂る
- たっぷり休息をとる
- 柔らかく、あっさりした食べ物を食べる
ノロウイルスのワクチンはあるの?
いいえ、ノロウイルスのワクチンはまだありません。ウイルスから身を守る方法について、現在も研究が進められています。
予防
ノロウイルスは予防できる?
ノロウイルスに感染するリスクを減らすためにできる予防策には、以下が含まれます:
- 石鹸と水で手を頻繁に洗うようにする
- 食べる前に食べ物を洗う(果物や野菜)
- 食べ物(特に魚介類)を十分に加熱するか、適切な温度(少なくとも華氏145度、摂氏62.77度)で調理する。
- ノロウイルスに感染している人との接触を避ける
- 頻繁に触れる表面や物を洗浄・消毒する
- 特に衣服が汚れている場合は、十分に洗濯する
ハンド・サニタイザー(手指消毒剤)の使用は、石鹸と温水による手洗いほど効果的にノロウイルス粒子を死滅させることができません。ノロウイルスに感染している場合は、感染拡大の危険性があるため、食品の調理や他人の世話はしないようにしましょう。
ノロウイルスは2回感染する?
はい、ノロウイルスは2回以上感染する可能性があります。ノロウイルスにはいくつかの型が存在しています。最初に感染した型に対する免疫(ウイルスから体を守る力)は少しできますが、全ての型に対応できるわけではありません。つまり、一生の内に何度もノロウイルスに罹る可能性があるということです。ノロウイルスの1つの型に対する免疫ができたとしても、それがずっと続くとは限りません。つまり、1回目の感染と2回目の感染の間には大きな隔たりが生じる可能性があり得る、ということです。
見通し/予後
ノロウイルスに感染した場合、何が予期される?
ノロウイルスの症状は通常、突然かつ激しく現れます。感染が一巡するまでの数日間は、戻したり(嘔吐)、下痢をしたりすることが多いでしょう。食べたり飲んだりすることを考えるだけで、吐き気がすることもあるかもしれません。しかし、食べたり飲んだりしなければ脱水症状を起こす危険性があります。食べたり飲んだりできない場合は、医療機関に連絡してください。
ノロウイルスにはいくつかの型があるため、一度発病しても、体がすべての型のノロウイルスに対する免疫を作っていないため、再び発病する可能性があります。この病気は一時的なもので、長期的な影響は通常ありません。
ノロウイルスはどのくらい体内に留まるの?
ノロウイルスが体内に侵入すると、症状が出る前にウイルスが便(ウンチ)に含まれるようになります。また、症状が治まった後も、2週間ほど体内に留まることがあります。感染力があるのは、症状がなくなってから48時間後までです。
受け入れる
いつ医療機関を受診すべき?
食べたり飲んだりできない場合、医療機関を受診してください。脱水症状を引き起こす可能性があります。また、症状が3日以上続く場合も医療機関に連絡した方が良いでしょう。
医師にどんな質問をすべき?
- 私はノロウイルスか、あるいは他の感染症に罹っているのでしょうか?
- 具合が悪い時の食事や飲み物はどうすればよいですか?
- 気分を良くするために、何か薬を飲んでもよいですか?
- 家族が病気にならないようにするにはどうしたらよいですか?
その他のよくある質問
ノロウイルスとロタウイルスの違いは何?
ノロウイルスとロタウイルスは、どちらも胃や腸に炎症(胃腸炎)を起こす感染症ですが、病態は異なります。
ノロウイルス ロタウイルス カリシウイルス科のウイルス株が原因 レオウイルス科のウイルス株が原因 感染期間は1~3日 感染期間は3~8日 年齢に関係なく誰でも感染する 主に小児が感染し、時に成人も感染する ワクチンはない ワクチンが利用可能
クリーブランド・クリニックからのメモ
ノロウイルスは突然発症し、イライラさせられるウイルスです。食べたり飲んだりしなければならないのに、体がそれをするのに苦労します。幸いなことに、この症状は数日しか続きません。ドカッと食べるのではなく、一日を通してこまめに少量ずつ食べたり飲んだりするようにするとよいでしょう。食べられない場合や症状が3日以上続く場合は、かかりつけの医療機関に連絡してください。感染の拡大を防ぐため、石鹸と水でよく手を洗うようにしましょう。
ノロに罹ったことがない僕ですら知ってるような、ビックリするほど当たり前の話しかなかった(というか、似たようなことを何度もしつこい感じだった)ですが(笑)、まぁ、どなたもご存知の通り、ウイルスの生育にとって都合がいいことから、乾燥・低温の冬に流行しやすい、まさにこれからの時期・年末年始の風物詩といえるものですね。
「ノロかロタか」というのも稀に聞きますが、感染に苦しむ時間が長いということで、ロタの方がキツイ感じなんでしょうか(まぁ、症状のしんどさにもよりますかね)。
本当にこの世の全てを憎みたくなるぐらい、死にたくなるレベルの症状のようですけど、
「絶対に死なないし、最長3日で嘘のようにあっさり治る」
のは本当に間違いない事実なので、いざ罹ってしまっても希望を胸に頑張って耐えるようにしたい所だと言えましょう。
当たり前の情報しかなかった=「こうすれば絶対に防げる」という方法は存在しないことと同義とも言えるので、避けることは難しいですけど、なるべく清潔を心がけて罹るチャンスを小さくしたいものですね。