それでは予告通り、前回のGermこと雑菌・病原菌(時々お役立ち菌とか、目に見える大きさの寄生虫を含むことも)というグループの中で最も身近なもののひとつといえます、バクテリアこと細菌についてのHEALTH LIBRARY記事も見ていこうかなと思います。
まぁ記事内でも説明があるかもしれませんが、定義としては、
「微生物の中で、特に遺伝子DNAを剥き出しで細胞内に持っているかなり原始的な生物」
…が、原核生物というグループにも分類される細菌類になるわけですけど、代表例としては大腸菌や乳酸菌が挙げられますね。
大腸菌は「大腸内に見られるから」というとんでもない命名ですけど、しかしそれで言えば、「乳酸菌」ってのは代謝産物をその名に冠している形ですから、人間で例えれば、何か上位の存在が人間のことを「糞尿動物」と言っているようなもので、乳酸菌さんサイドからしたらあまりにも屈辱的な名前になってるとも言えるかもしれません(笑)。
まぁ名前はともかく、乳酸菌は人類にとって有効に活用できる素晴らしいバクテリアですし、何度も書かれている通り、細菌の中にもいいヤツはいるってことですね。
とはいえやはり、「細菌」と聞くとどちらかと言えば体内に入れすぎてしまうと病気を引き起こす悪者の方が目立ちますから(有用な方は普段意識しないですし、話に出てくるとしたら病気関連が多いと思います)、名前のイメージ通り、原始のショボ生物の癖に案外怖いヤツとは言える気がします。
医療機関の立場から、バクテリアをどうまとめてくれているのか、今回も丸っと参考にさせていただきましょう。
細菌(Bacteria)
細菌はとても小さな、単細胞の生命体です。何百万もの異なる種類が存在しています。その多くは体内や体表に存在しており、人間にとって有益な働きをしてくれています。こういった細菌はマイクロバイオーム(微生物叢)を構成し、体を健康に保ってくれているのです。他の細菌の中には、病気をもたらし得るものもいます。医療従事者は、多くの細菌感染を抗生物質で治療することが可能です。
細菌とは何?
細菌は、細胞が1つしかない顕微鏡レベルの小さな生物です。たった1匹という意味の言葉は「bacterium」です(※複数形がbacteriaで、単数形がbacteriumということ)。何百万種類(何十億種類とは言わないまでも)もの細菌が、あなた自身の体内を含め、世界中に存在しています。細菌は皮膚や気道もしくは口の中にいるわけです。消化器系、生殖器系、尿路にも存在します。人間の体内には、その人自身の細胞の10倍以上の細菌細胞が存在すると推定されています。
細菌のメリットは何?
ほとんどの種類の細菌は有害ではありません。中には体に良いものさえいます。こういった有用な細菌は、主に皮膚の上、または腸や消化器官の中に存在しています。これらは常在細菌叢、またはマイクロバイオームと呼ばれ、体内や体表に生息する微生物群を形成しているのです。腸内細菌は、栄養素を吸収し、食物を分解し、有害な細菌の繁殖を防ぐことで、健康を維持してくれています。
細菌のリスクは何?
ほとんどの細菌は無害ですが、ある種の細菌は病気を引き起こす可能性があります。こういった細菌は、病原体の一種とみなされます。病原体とは、病気の原因となり得る微生物のことです。病原体は体内で素早く繁殖し、感染を引き起こす毒(毒素)を産み出すことがあります。有害な細菌の例としては、以下が含まれます:
- 溶連菌(Streptococcus): 溶連菌感染症の原因となる細菌
- ブドウ球菌(Staphylococcus):黄色ブドウ球菌感染症の原因となる細菌
- 大腸菌(Escherichia coli):大腸菌感染症を引き起こす細菌
こういった細菌は、敗血症、すなわち血液中毒を引き起こす最も一般的な雑菌です。この感染症は、細菌が血流に入ることで起こります。血液中の細菌は拡散し、敗血症を引き起こす可能性があるわけです。敗血症は、体内の広範な感染に対する全身性の過剰反応と言えます。
その他の病原性細菌の例には、以下が含まれます:
- アエロコッカス・ウリナエ菌(Aerococcus urinae): 尿路感染症の原因となる尿中の細菌
- クラミジア・トラコマティス菌(Chlamydia trachomatis): クラミジアと呼ばれる性感染症(STI)の原因菌
- 百日咳菌(Bordetella pertussis): 百日咳を引き起こす細菌
抗生物質により、ほとんどの種類の細菌感染症を治療することが可能です。しかし、抗生物質を服用すればするほど、体がその抗生物質に対して耐性を持つ(※効かなくなってしまう)ようになる可能性が高くなります。また、抗生物質を最後まで飲みきらなかったり、処方通りに服用しなかったりしても、耐性菌ができる可能性が高くなってしまいます。
細菌にはどんな種類があるの?
科学者は、いくつかの方法で細菌を分類し、定義しています。
学名
科学者が細菌を分類する方法のひとつに、学名があります。学名には、属名―細菌の特徴に基づくもの―と、属名の下の種名が含まれます。例えば、「Clostridium botulinum(クロストリジウム属・ボツリヌス)」はボツリヌス症を引き起こす細菌の学名です。1つの種の中でも、研究者が異なるタイプ、すなわち菌株を発見することがあります。
(※日本語はすぐ下の段落をご参照ください。)
細菌の形
科学者が細菌を分類するもう一つの方法は、その形です。基本的な細菌の形は3つあります:
- 球状 (Spheres) またはボール状 (ball-shaped)(球菌 (cocci bacteria))(※~コッカスという名前でよく聞きます)
- 棒状 (Rod-shaped) の細菌(桿菌 (bacilli))(※~バチルスという名前でよく聞きます)
- 螺子 (Spirals) またはらせん状 (helixes)(スピロヘータ (spirochetes))
酸素の必要性
科学者たちは、生きて成長するために酸素を必要とするかどうかによっても細菌を分類しています。酸素を必要とする細菌は好気性 (aerobes) と呼ばれます。酸素があると生きて成長できない細菌は嫌気性 (anaerobes) と呼ばれます。酸素があってもなくても生きて成長できる細菌も存在します。これらは通性細菌 (facultative bacteria) と呼ばれています。
遺伝子構成
科学者が細菌を分類するもう一つの方法は、遺伝子構成です。各細菌はそれぞれ異なった遺伝子構成を持っています。これを遺伝子型 (genotype) と呼びます。専門的な検査では、それぞれの細菌の遺伝子型を調べることで、違いを同定することが可能です。
染色
科学者は、細菌に特殊な化学物質(染色剤)を滴下した後の色によって細菌を分類しています。一般的な染色法のひとつにグラム染色と呼ばれるものがあります。細菌はグラム陽性とグラム陰性に分類され得ます。グラム陽性菌とグラム陰性菌では、特定の抗生物質に対する反応が異なるため、グラム染色は治療の指針にもなります。
グラム陽性菌ってどんなもの?
科学者はグラム染色でどの色に染まるかによって、細菌をグラム陽性とグラム陰性に分類しています。染まり方が異なるのは、細胞壁が異なるからです。「陽性(ポジティブ)」と「陰性(ネガティブ)」は、「良い」とか「悪い」とかいう意味ではありません。グラム陽性菌はグラム染色下で青から紫色に見えます。グラム陽性菌の例には以下が含まれます:
- コリネバクテリウム属(Corynebacterium)(※ジフテリア菌などを含むグループ、ただしクサヤ菌も含まれるので、有用菌もいるようです)
- クロストリジウム属(Clostridium)(※先ほど出てきたボツリヌス菌を含む、病原性の強い細菌グループ)
- リステリア菌(Listeria)(※食中毒の原因菌)
グラム陰性菌ってどんなもの?
グラム陰性菌はグラム染色下で赤色からピンク色に見えます。グラム陽性菌とは異なるタイプの感染症を引き起こします。また、治療に必要な抗生物質の種類も異なります。グラム陰性菌の例には以下が含まれます:
- シュードモナス属(Pseudomonas)(※緑膿菌などを含む、厄介なグループ)
- プロテウス属(Proteus)(※弱い感染力ながら院内感染を引き起こすこともあるグループ)
- クレブシエラ属(Klebsiella)(※肺炎を引き起こすことの多いグループ)
細菌 vs ウイルス、その違いは何?
細菌とウイルスは異なる種類の雑菌、つまり微生物です。どちらも感染症を引き起こし、同じような症状を引き起こし得ます。しかし、細菌感染とウイルス感染では、治療方法が異なります。医療従事者は、一部の細菌感染症の治療に抗生物質を使用することがあります。しかし、ウイルスには抗生物質は一切効きません。医療従事者は抗ウイルス剤で一部のウイルスを治療することがありますが、抗ウイルス剤は細菌による感染症には効果がありません。
抗生物質耐性菌とは何?
免疫系がいくつかの細菌を撃退可能なこともありますが、他のケースでは、細菌感染を治療するために抗生物質が必要になることもあります。抗生物質は細菌の細胞壁やDNAを破壊することで効果を発揮します。
抗生物質の使い過ぎは、時に長期にわたる問題を引き起こすことがあり得ます。一部の細菌が抗生物質に対して耐性を持つようになり、新しい菌株によって引き起こされる感染症の治療が難しくなるためです。抗生物質を服用する度に、細菌が抗生物質に対する抵抗力を身につける可能性が高まってしまいます。抗生物質耐性菌の例として、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)があります。
細菌はどのように増殖するの?
ほとんどの細菌は二細胞分裂によって繁殖します。つまり、それぞれの細菌の細胞がDNAを複製してから2つに分裂し、それぞれの新しい細胞がDNAのコピーを1つずつ受け取る、という形です。
細菌は原核生物、それとも真核生物?
細菌には核がないので、原核生物に分類されます。原核生物は、非常に単純な細胞構造を持つ微生物です。細菌には細胞壁があります。細胞壁の中に、細菌の展開図として各細胞の構造が示されます。各細菌には細胞質、リボソーム、およびDNAが含まれています。細胞壁の外側では、1本またはそれ以上の数の細菌性鞭毛が、細菌が動く手助けをしています。
プラスチック食細菌とは何?
2016年、日本の大阪の研究者が、イデオネラ・サカイエンシス(Ideonella sakaiensis)という細菌の一種を発見しました。この細菌は、リサイクル施設の外で、ペットボトルを食べていたのです。
細菌は通常、死んだ有機物を食べますが、この細菌はポリエチレンテレフタレート(PET)と呼ばれる種類のプラスチックを食べていました。プラスチック製のボトルは一般的にPETで作られています(※ペットボトルですね)。この研究者たちがこの細菌を研究し、プラスチックを分解する2種類の消化酵素が産生されていることを発見しました。
この酵素はPETプラスチックしか分解しませんが、研究者は、いつの日かこのタイプのプラスチック食細菌が世界のプラスチック汚染問題に取り組む一助になることを期待しています。
クリーブランド・クリニックからのメモ
細菌には何千もの種類があります。ほとんどの種類の細菌は有害ではありません; 多くは有用でさえあります。そういった有用細菌はマイクロバイオームを構成し、腸内環境を健康に保ってくれています。病原体と呼ばれるその他の細菌は、治療が必要な感染症を引き起こすことがあります。医療従事者は、こういった感染症の多くを治療するために、抗生物質を処方することが可能です。抗生物質は必ず指示通りに服用するようにしてください。
意外と学術的な記述の多い、しっかりしたまとめでした。
(むしろ逆に、生活に役立つ知識はあまりなかったかもしれませんが。)
最後の、堺市で発見されたペットボトル食細菌は面白いですねぇ~。
処理に困るプラゴミを水と二酸化炭素にまで分解してくれる、夢のような細菌もいるということで、本当に将来の更なる応用が期待されます。
雑菌グループに所属する他のやつらは、まぁ細菌と並んでメジャーな真菌、いわゆるカビなんかもありますけど、こちらはむしろ細かく分かれすぎていて1記事にまとまっていたものがなかったため、まぁまたいつか機会があれば…という形にし、次回はまた他の衛生関連ネタを見ていこうかなと思っています。