ホタルはどうやって光ってるの?

分類学に端を発し、動物界の最大派閥・節足動物門に話が及んだことから触れていた虫シリーズですが、前回はとても可愛いトラツリアブ(モフモフ虫)とヒメジャノメの幼虫(猫頭)なんかを取り上げていました。

 

特にそれ以上ネタもなかったのですが、ふと、「好かれている虫はどんなのがいるんだろう?やっぱり少年票で、カブト・クワガタとかかな?」と思って調べてみたら……

 

ranking.goo.ne.jp

 

↑のgooランキングのみならず、軽く眺めてみたどのランキングでも、結構圧倒的な大差でトップに輝いていたのが、なんとホタル

 

ja.wikipedia.org

 

…まぁ正直、↑のサムネ画像にもある通り、本体そのものはいかにもなムシムシしてる虫で、「こんな気持ち悪いのが一体なぜ…?」……とはまぁスットボケにも程がある、誰しもその理由が分からないわけはない有名な特質があるわけですけど(笑)、闇夜にポワァ~ンと光るその幻想的な性質が、多くの日本人の心を捉えて離さない人気の秘訣になっているんだといえましょう。

 

ちなみに日本で最も多く見られるのは、↑のサムネにもなっている「ゲンジボタル」という種ですが、小さくてよく分かりにくい↑のサムネとは違い、ゲンジボタル個別記事の写真はもうちょっとハッキリ分かりやすい画になっており……

…貼るかどうか迷いましたが、サムネサイズにまで落ちたらまぁそんなに嫌悪感もなかったので貼っちゃいましょう……正直ぶっちゃけ赤っぽい頭部はまぁプリティさを醸し出してくれてるとはいえ、頭以外の胴体・脚・触覚はこれはもうハッキリ言ってGそのもの……

 

ja.wikipedia.org

 

…う~ん、虫嫌いを治すリハビリにはいいかもしれませんが、やっぱり全体の造形そのものとしては、いかにもな虫さんといえちゃいますね。

 

とはいえやはり、「光」というのはとても温かくまた美しいもので、特に個体が識別できないぐらい離れた川向こうとかで見る夏のホタルとかは格別な雰囲気があるといえましょう、↓のような光っている様子を見れば、人気ナンバーワンなのも納得の良さがありますねぇ~!

https://ja.wikipedia.org/wiki/ホタルより

こちらはゲンジボタルではなく、メスだけが光る、学名Lampyris noctilucaという、通称グローワーム(「成長する」のgrowではなく、「発光する」のglow)だそうですけど、そういえばゲンジボタルの方はウィ記事冒頭にあった通り、近年学名が変更になったとのことで、2022年より属名がNipponoluciolaとなったようです。

 

日本を象徴する、美しい光を放つ虫ということが一目で分かる感じの、これは大変良い名前をもらえた感じだといえましょう。


ちなみに「ゲンジボタル」という和名は、これもウィ記事にその記述がありました通り、その由来の主流な説としては、

『平家打倒の夢破れ、無念の最期を遂げた源頼政の思いが夜空に高く飛び舞う蛍に喩えられた』

…というものになるようですけど、個人的には「『光るゲンジ』で、シャレ…?」とも子供の頃は思った記憶があるものの、一応それが由来とも考えられるという説はあるっちゃあるみたいですね…!

(もっとも、伝説のアイドルグループ・光GENJIではなく、紫式部による古典・源氏物語の主人公がその由来なのは当然ですけど(笑)、しかし、僕世代の人は間違いなく、物心ついた瞬間に日本中を席巻していたのが光GENJIでしたから、むしろ古典で源氏物語を習った際、「いや光GENJIのパクリじゃん(笑)」と……はまぁいくら何でも古典を習う中学生でそんな時系列の誤解を起こすわけはなかったですけど、どうしても僕の中だと「ヒカルゲンジ」というのは、古典の傑作に出てくるロリコンおじさんではなく、ローラースケート&諸星くんのあの「♪よ~うこそ~ ここ~へ~」がオリジナルのものとして浮かんでしまいますねぇ~(笑)。)

 

なお、由来が源平合戦清和源氏の方である方がどう考えても正しいと思える理由に、普通に「ヘイケボタル」という少し小型の種もいることが挙げられましょう。

 

ja.wikipedia.org

 

…このサムネ画像を見て、「お?ヘイケボタルは2色に光るのか…?」と思ったら、まぁ赤い方は単なる頭で、光自体はお尻側の、ぼんやりと黄緑に見える方でしたね、当然のことながら。

 

ちなみにこのホタルが光る仕組みですが、これはしっかり分子レベルで解明されているものになっています。


というか、僕の専門である生命科学系研究では実験として非常に良く用いられる材料になっていまして(目的の遺伝子=酵素が作られたかどうかを、上手くこの発光と組み合わせることで、酵素の機能をモニターする…みたいな流れですね)、それがズバリ、ルシフェラーゼ

 

…って、あれ、もしかしたらルシフェラーゼって以前の記事で取り上げたことがあったっけ…?と思ってブログ記事検索をしてみたら、ごくごく簡単に一言だけでしたが、「レーザー光」について見ていたシリーズ(↓)でチョロッと触れたことがありましたね。

 

con-cats.hatenablog.com

 

というかホタル自体もそういえば触れたことがあったように記憶してましたが、それもここでチョロッとだけ話に出していた感じですけど、まぁ細かい分子機構については書いていなかったのでちょっくら記事水増し用に見ておくといたしましょう……


そもそもルシフェラーゼというのは酵素のことであり、この酵素がルシフェリンと呼ばれる化学物質を変換する際に発生するエネルギーから光が放たれるという仕組みになっているわけなのですが、「種によって酵素(=タンパク質)のアミノ酸配列は微妙に違う」という話も以前していた通り、一口にルシフェラーゼと言っても、実はいくつか種類が存在するものになっています。

(ちなみにそれに応じて、ルシフェリンというのも複数の種類があるもので、あくまで総称という感じですね。)

 

生命科学研究でよく使われるのは、ホタルのルシフェラーゼと、もう1つはレニラ (Renilla) と呼んでいて、これは英語であり和名だとウミシイタケになりますけど、まぁ呼びやすいし日本語でもレニラと呼ぶことがほとんどですが……あぁホタルの方は英語で「Firefly」と呼ばれるため、両者は「F-Luc」「R-Luc」(エフ・リュック、アール・リュックのように)と呼んでいることが多い感じですね。

 

例によって、実験で使われる試薬・キットの類は試薬会社がとても分かりやすい解説記事を設けてくれていることが多く、今回も検索しtらヒットしてきました、我らがコスモ・バイオのページからお借りさせていただきましょう。

 

www.cosmobio.co.jp

 

https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/firefly-and-renilla-luciferase-single-tube-assay-kit-bti.asp?entry_id=17221より

…そう、このように、F-Luc、R-Lucはそれぞれ、よく使われる発光基質としてD-Luciferinとcoelenterazineと呼ばれる小さな有機化合物を、それぞれ上のような酸化反応で微妙に構造を変換させることで光を生み出しているわけですけど、まぁこんな反応メカニズム、割とクソどうでもいい話ですね(笑)。

 

実際にチューブの中でそれぞれのルシフェリンと酵素ルシフェラーゼを反応させると、以下の概要イラストにも示されている通り…

https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/firefly-and-renilla-luciferase-single-tube-assay-kit-bti.asp?entry_id=17221より

…本当にチューブの中の溶液が黄色くパァーっと光を放つ感じになっており、僕もこれまで何度もLucアッセイ(何らかの決まった効果を測定する実験のことはよく英語で「アッセイ」と呼びます)をやっていますが、まぁ単なる実験なので闇夜のホタルのような感動はないものの、こんな化学物質&酵素を自前で作り出せるホタルは凄いなぁ…と、まぁそんな感慨もイチイチ感じないものの(笑)、とにかくそんな仕組み(=お尻の辺りで、上の化学反応式を起こしているという形)で蛍は輝いていると、そういうお話でした。

 

といった所で虫ネタはもう完全に出し尽くしたので、次回はまた「門」の方に戻っていこうかなと思います。

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