ナイスなナンバー、24!

前回、「バランスは取れているの…?」というタイトルの記事にしていましたが、これは実は今回触れるネタの方がより適切な感じで、チビタンの話ではバランスが取れてるか不明な感じなんてなかったのに、そこまで話が届かなかった(でもタイトルはもうつけていて変える暇もなかった)、って形でした。

(※全体を書き終えた後の追記:結局今回もその話には到達しませんでした(笑)。逆に、次回がそのネタになる感じですね。)

 

まぁあまりにもどうでもいい点なので気にせずそのまま進めますと、チビタン(卓上小型簡易遠心機)のローターは6穴(6ウェル)が便利で、8ウェルローターの場合、3本回したいときに同じ重さのチューブを別途用意しなくてはいけないため(そういうチューブのことを「バランス用のチューブ」といいますが、バランスを取るために4本にしなくてはいけない、ってこと)、これは大変手間なのです…という話をしていました。

 

ここから発展して、こないだのフェノクロ・エタ沈記事の話で何度か、「例えば24サンプルを処理する場合なんかは…」みたいなことを書いていたと思うのですが、なぜ24なのか…?

 

それは、「チビタンが6ウェルであることが多い」のと同じ話で、実は高速遠心機のローターは(もちろん多少のバリエーションはあるものの)ほとんどの規格で「24ウェルローター」が採用されているというのがその理由で、まぁ別に必ず24サンプル回すってこともないですけど、一台の遠心機で同時に回せるチューブはそんな感じで24本であることが多いので、24サンプル1セットで色々な実験を組み立てることが多くなっています…という話だったのです。

 

まぁそれは「一度に24サンプルを処理する実験が多い理由」であり、もっと根源的な疑問としては、「遠心機のローターはなぜ24ウェルなのか?」というものがあるわけですけど、これはまぁ、「あの親指サイズのマイクロチューブの大きさと、十分な遠心力を得られるローター半径とから、ちょうど24本ぐらいが扱いやすさなどでベストなサイズ感になったから」という設計上・物理的な理由ももちろんあるものの、「なぜ25でも20でもなく24なのか?」については、前回の話から推測いただけましょう……


ズバリ、「24ウェルのローターというのは、バランスチューブなしで回せるバリエーションが凄まじく豊富だから」なんですね!

 

まぁ中々現物を見ないと想像もしにくいと思いますが、25ウェルローターというのは論外で、対角線上に対称なウェルが位置していませんから、2本のチューブを回すことすらできないゴミなのは明らかですけど……

…20ウェルローターの場合でも、3本とか9本のチューブをバランスよく配置して回すことが不可能になっています。

 

これは結局、「24という数字が、2と3の両方を約数に持つから」に他ならないので、実は6ウェルローターが2, 3, 4, 6本の配置に対応していたのと同様、12, 18, 24, 30, ...ウェルのローターなら同じことがいえるんですけど、いずれにせよ2と3を約数に持つ数の穴が開いている場合、これは非常に対応バリエーションの多い形になっているわけです。

 

(ちなみに、「SpeedVac」という、遠心しながら真空状態にすることで、チューブの中の溶液を蒸発させて濃縮する装置があるんですけど、まぁこいつの専用能力は遠心ではなくあくまで「真空乾燥」がメインの機械であり、「回すためのモノ」ではないとはいえ、共通機器室にある結構古いSpeedVacが、まさかの32ウェルのローターを採用していまして、32って「2の5乗」なのでかなり区切りのいい数字かと思いきや、奇数を約数に持たないため奇数本のバランスが取れないというゴミのような設計でして、

「考えた人頭悪すぎでしょ(笑)」

…と、使うたびに苦笑を浮かべてしまいます。


 改めて、そんな実験はそこまで頻繁にはしないとはいえ、実験を行う際は奇数本を回したいことなんて普通によくあり、しかもこのマシンは遠心しながら中の溶液を少しずつ蒸発させていくので、条件を全く同じにするために、「水の入ったチューブ」よりも、「実際に使っている塩などの入った全く同じサンプル」が理想なので、そんなのをわざわざ用意するのはめちゃくちゃな手間以外の何物でもありませんから、あまりのゴミっぷりに驚きと憤りを禁じ得ない遠心機も中にはあるのです……という話でした(笑)。)

 

話を戻すと、実際、24ウェルローターで、バランスチューブなしに上手いことバランスを取れるチューブは何本のときなのか、全パターンが思い浮かびますでしょうか…?

 

パッと浮かぶ人は相当に頭が柔らかい方だと思いますが、まず1本だけ回すこと、これは何ウェルローターだろうと絶対に不可能なことですね。

チューブを24個ある穴の1つに入れてそれで終わりですから、絶対に偏りが生まれ、バランスを取って回すことは不可能です。

 

2本の場合は、これはあまりにも余裕で、例によってウェルに順番に1~24の番号を振ったとすると、1番と、その対角線上にある13番のウェルにチューブをセットすれば、両者は軸を中心に対称な位置に存在しますから、回した際に発生する遠心力はちょうど逆向きにかかるため打ち消しあって、力の偏りはなく安定した回転が可能になるわけです。

 

そして3本の場合、これが「3」を約数にもつ「24」の素晴らしさで、ズバリ、1, 9, 17番のウェルにチューブをセットすれば、ちょうど正三角形配置となり、バランスよく回すことが可能なんですね!

 

まぁ図は後でまた見るとして、4本以降、偶数本は誰がどう考えてもバランスを取るのは容易といえましょう。

1番と13番に2本入れたら、もう2本、2番と14番で合計4本、さらに3番と15番にも入れたら合計6本……のように追加していけば、追加のチューブは全て対角線上に位置する関係上、力は打ち消し合うので全く問題なく回すことが可能です。

 

(ただ、実際にそうやって回しても何の問題もなく静かに安定して回転しますが、特に超高速で走らせる遠心機のマニュアルでは、

「なるべく全体の偏りがないように、最も分散させた形で配置すること」

…が推奨されています。


 具体的には、1, 2, 13, 14番というウェルに配置するのではなく(これは、それぞれ2穴連続でチューブが入っている感じですね)、1, 7, 13, 19番という、ちょうど軸を中心に6本置き=十字架配置になるようにチューブを入れるのが、最も軸やローターなどに対し機械的に優しいとされているようで、まぁそれは直感的にも明らかな話といえましょう。

 1, 2, 13, 14番だと、回転は安定しているものの、1番サイド・13番サイドに大きな荷重がかかる一方、7番/19番という90度ずれた位置の辺りには何の負荷もかからないので、ローターにちょっと歪な力が加わりそうな気がします。


…まぁ実際は、1, 2番に2本ずつペッと入れる方がセッティングも楽なので、短時間の遠心なら、気にせず偏りがある配置で回すこともありますけどね(笑)、教科書的には、最も分散して配置するのが優れているというか正しい…という話です。

 

 例えば12本配置する際は、1-6番と13-18番という風に、6本連続で配置しても一応問題なく回すことはできるんですけど、より推奨されている置き方は、「1, 3, 5, ...と、一本飛ばしで12本入れていく形」ってことなんですね。)

 

まぁそれはともかく、偶数本の配置はそんなわけで、2~24本(全ウェル利用)まで、全部余裕です。

 

では奇数は…?

 

ここからが面白い所で、5本のチューブを回したい場合、あんまりそういうこと考えるのが得意というか好きじゃない人は、素直に1本足して6本にして回す人もいるわけですが、これは、バランスなんて不要で配置可能になっているのです。

 

まぁ面白いも何も、ちょっと考えれば当たり前な話で、結局「回すことができる状態」ってのは、「力が打ち消し合って、偏りが0」の状態なわけですから、「2本で回せる」し「3本で回せる」なら、その両者を組み合わせれば、「5本で回せる」といえるわけです。

 

改めて、2本のチューブが生み出す遠心力は互いに打ち消し合うのでゼロ、3本のバランスよく配置されたチューブが生み出す遠心力も同じくゼロですから、両者を同時に配置しても、合計の遠心力はゼロとなり、安定した回転が生まれるに決まっているんですね。

 

…ということを応用して、7本なら4本配置+3本配置で可能で、9本の場合は、3本配置の三角形の隣に2本ずつ足せば3×3=9本、さらにそこに2本対角線上に足して11本も配置可能ということがいえまして…


以上のことから、24ウェルローターというのは、1本/23本という、「ウェルが1か所だけ埋まる/空いている」という自明な例を除き、なんと、全てのパターンでバランスチューブなしに安定回転が可能だということが証明されました!

 

「いや、13本とかは?」と思われるかもしれませんが、12本以上のチューブの配置は、何てこたぁない、

「チューブが入ってるウェルと入ってないウェルを入れ替えれば実現可能」

といえますから、2本のチューブが回転可能なら22本のチューブも回転可能ですし、7本のチューブが回転可能なら17本のチューブだって回転可能に決まってるわけですね。

 

(要は、各ウェルにはそもそもローター自身の荷重がかかるわけですけど、チューブを入れたウェルは「チューブ+ローター」の重さが存在しており、チューブなしのウェルは「ローターのみ」の重さが存在していて、それが全体で安定しているわけですから、チューブのあるなしを入れ替えても力のバランスは取れているのは当然だといえましょう。


…本当は最初、「2グラムのチューブが入っているウェル」と「0グラムのチューブが入っているウェル(=空のウェル)」が全体でバランスを保っているんだから、チューブの重さを入れ替えても安定してるに決まってますよね……みたいに書こうと思ったんですが、「0グラムのチューブが入っているウェル」に「重さのあるチューブが入る」ことでバランスが保たれることは、本当に自明か…?とちょっと自信がなかったので…

(まぁ自明なんですけど(笑)、僕のイマイチな物理センスでは「重さがなかったのに、新たに重さが発生する」ことで本当に安定するのかは若干断言しづらい感じでした(笑))

…「空のウェルでも、ローター自身の荷重がかかっている」とすることで、「そもそも元々重さは存在する」という説明にした感じでした。

……ごちゃごちゃ分かりづら過ぎるだけになった気もしますが(笑)。)

 

いずれにせよ結局、半分の12本まで回せることを示せれば、あとは「チューブ入り」と「空」のウェルを入れ替えれば回せるに決まっているから、12本まで考えればOKです、って話なわけですね。

 

…と、本当に言葉にすると何かややこしいですけど、そのことを分かりやすい図にまとめてくれているページが、「アメリカの2ちゃんねる」こと、我らがRedditのスレッドにありました。

 

まぁこんなの描こうと思えば自分で描けますけど、お借りさせていただきましょう。

https://www.reddit.com/r/labrats/comments/yn59uw/inspired_by_yesterdays_centrifuge_post_please/より

青丸が偶数配置で対角線上に相棒がいるチューブ、そして赤丸が三角形配置で、三角形の頂点に相棒がいる形という、大変分かりやすい図示だといえましょう。

 

まぁこの図だと、「7本と17本は、チューブの有無を完全に入れ替えただけ」にはなってませんけど、もちろん白丸と赤丸青丸を入れ替えただけの配置でも安定して回せるため…

(この場合、普通に「先ほどは白が空で色付きがチューブ入りのウェルを示していたけれど、やっぱり変えます、白がチューブ入り」とでも考えれば、元々安定して回ることができていたものが、全体の形のパターンが変わってないのにいきなり不安定になるわけはないですから、「チューブの有無を入れ替えても、安定しているのは自明」…と言えるのではないでしょうか、結局何かややこしいですけど(笑))

…要は、最初に「4本の配置は、『2連-2連』や『十字架型』のように複数パターンあります」と見ていた通り、回転可能な配置は実は1パターンではない(チューブの有無を入れ替えただけのもの以外にも、色々可能)、ってことに過ぎない感じですね。

 

…と、引っ張るネタでは本当にないんですけど、例によってあまりにも時間が不足している日が続いていることもあって、全く同じネタにはなりますが、そこから派生してもう少しだけ触れてみたい話があったので、次回、遠心機ラストとしてそのネタにだけ軽く触れて、またフェノクロ・エタ沈の補足に戻っていこうかと思います。

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