使ってみたい!超高速回転ローター!!

色々なネタを提供してくれた遠心機についても、一通り触れようと思っていた話題にはとうとう触れ終えていた感じでした。

(まぁ、「一通り」と言いつつ、バランスの話を無駄に何回もグダグダと語っていただけでしたけど(笑))

 

そんなわけで脱線元のフェノクロ・エタ沈の補足に戻っていこうと思ったのですが、前回の記事でローターの画像を貼った際に、せっかくならローターに関してもうちょい触れてみるのもいいかな…と、時間不足ネタ不足が深刻なあまり、また記事水増し的なスケベ心を出してしまった次第になります(笑)。

 

そもそも何の説明もなく使い始めていた「ローター」というのは一体何なのか?…という話だったかもしれませんが、これはまぁ、「rotor」で、「ローテーション」=「回転」という単語と同根の語であり、日本語にするなら「回転するもの」という感じで、遠心機にセットして高速でグルグル回る、金属(まぁ小型のチビタンとかでは、プラスチックのこともありますが)の、当然チューブをセットするために均等に穴ボコが開けられたカタマリだという感じですね。

 

なので、実際に回るものは遠心機に付けられた「回転軸(というか内部のモーター)」であり、主役はローターというより遠心分離機そのものなので、前回の記事タイトルも今回の記事タイトルも、本当は「ローター」ではなく「遠心機」とする方が適切だったわけですけど、「ローター」という単語は、日常生活で出くわす言葉だといわゆる「ピンクローター」…主に女性用のアダルトグッズがついつい頭に浮かぶものになりますから、記事タイトルにインパクトを出して衆目を集めるべく、あえてちょっと淫靡な響きのする「ローター」という言葉を使ってみた……というアフィカスみたいなことをしていたのでした(笑)。


(ちなみにどうでもいいですけど、このブログははてなブログの無料版ということもあり、収益化は一切されていないので、安心してご覧ください。)

(なお、デバイスによっては表示されているかもしれない広告は、はてなブログが勝手に挿入している、はてな運営による運営のための広告になります。

 無料でブログサービスを使わせてもらっているので、これは運営側にとって当然の権利といえるものだといえましょう。

…って、こんな場末のブログが果たして広告費を稼いでいるのか甚だ疑問であるとともに、そもそもそんな広告うんぬんに関しても、イマドキ別に収益化されていることを気にする方もいないように思われますが(笑))

 

まぁ余談はその辺にして、ローターに関しては、前回貼っていた「穴ボコの開いた金属のカタマリ」が極めて一般的に用いられるローターであり、僕も圧倒的によく使っているタイプのものになるのですが、これは当然、穴が斜めに傾いて開けられているため、セットしたチューブが高速で回転すると、「底の方に向かって遠心力がかかる」という仕組みになってるんですね。

 

しかし、斜めってるとはいえ、というか斜めになっているからこそ、「回転したときの遠心力って、チューブの底にかかるわけではなくない…?」という疑問が生まれるかもしれないのですが(実際僕は初めて使ったとき、「斜めって何か中途半端だな…何か変な力がかかりそう」と思ったものです)、これは実際その通りで、遠心力は、チューブの内壁の、外側に位置する部分に向かってかかり、壁にぶつかった分子は少しずつ壁に沿って下の方へ移動していく感じになっています。

 

なので、微量のDNAなんかを遠心して落としたい場合、状況によってはチューブの壁全体に分子が「べたぁー」っとくっついて広がってしまい、上手く沈殿が形成されないことも稀にあるわけですけど、とはいえ冷静に考えると、

「遠心力がかかった時に、底に全てが集まるようにするために、水平に開けられた穴ボコを用意する」

…という形ですと、穴にチューブをセットするのも取り出すのも非常に困難になるうえ、遠心終了後はチューブの底ではなく、「セットした際に下側に来た内壁」が底面にくる形になってしまうので、取り出す際にせっかく遠心したサンプルが乱れてしまう可能性も大いに高まってしまうなど、不便極まりないんですよね。

(例えばフェノクロ遠心後のように、液体同士を密度勾配に応じて分離する場合ですと、遠心機の減速とともにかかる遠心力も減少し、重力によって液体は容易に移動してしまいますから、完全に水平にセットされたチューブの場合、遠心が終わって取り出したら、綺麗に分離していたはずの界面が乱れてしまっているというレベルではないぐらいのシッチャカメッチャカな感じになってしまうわけです。

 一方、斜め向きの穴であれば、ゆっくり取り出せばそこまで乱れることはない感じになっています。)

 

なので、本当は水平配置が理想ではあるけれど、実用上それは難しいので「斜めに開けた穴」という感じで設計されているわけですが、実は世の中には遠心中、チューブが完全に水平に保たれる形のナイスなローターも存在しているのです。

 

もちろん、上述の理由で、セットするときはチューブが縦方向に存在するのが理想であり、しかし回るときは水平になるのが理想(コンビニ袋に何かを入れて、ジャイアントスイングのようにグルグルと袋を思いっきり回せば、袋は水平方向に維持される…というのでイメージ可能かと思います)なわけですけど、どうすればそれが可能になるかと言いますと、これはローターが稼働した際、まさにチューブが「スイング」してくれればOKなんですね!

 

文字だけでは本当に分かりづらかったかもしれませんが、検索したら、前回もローター画像をお借りしましたベックマン大先生の日本語記事が見つかりました、こちらの記事(↓)が大変参考になる感じだといえましょう。

 

www.beckman.jp

 

まぁこの記事では「固定角ロータ」となっていますが、前回貼った画像にも英語でそう書いてあったように、前回貼っていたような金属のカタマリのローターのことを「アングルローター」と呼んでいるわけですけれども名前はともかく、ローターというのには大きく分けて2種類、アングルローターとスイングローターが存在するという形になっています。

 

スイングローターというのはどういうものなのか…?

 

これは、記事の画像にも概略図があります通り、チューブは、いわゆる「ホルダー」と呼ばれるチューブケースに入れる形になっているんですが、そのホルダーがローターに「フック」のような爪で引っかけられる設計になっていまして…

セット時はチューブ入りホルダーがぶら下がっているけれど、ローターが回って遠心力がかかり出すと徐々にホルダーは起き上がり(=フックの爪だけで吹き飛ばされずに支えられている感じ)、ある程度のスピードに達したら遠心力が回転軸からちょうど水平90°の方向にかかって、チューブは水平の位置で固定される

…という、大変面白いといいますか賢い仕組みになってるんですね!

 

まぁこれも、言葉だけだと本当に分かりづらく、現物を目にしないと何のこっちゃよく分からないかもしれませんが、まぁ↓の画像も一緒にご覧いただくことで、何となく想像はできるのではないかと思います。

 

https://www.beckman.jp/resources/technologies/centrifugation/dr-beckman/v13より

 

…この通り、下の図2にあたるスイングローターでは、遠心力がチューブの底にかかる感じになっているわけです。

(一方、図1のアングルローターでは、チューブの外側の内壁に当たっている感じですね。)

 

僕はこのスイングローターも使ったことがありまして、よく使うのは、まさにベックマンの記事の解説にもある通り、「ショ糖を用いた密度勾配遠心」という実験になるのですが、まぁその詳細はともかく、この密度勾配遠心というのは大変高速で回すことを要求しており、いわゆる「超遠心」というものを行うため、何気に僕は、

「スイングローターは、超遠心用」

というイメージを持ってしまっていたものの、冷静に考えたら、モノの仕組みとして、こんなフックで引っかけただけの不安定な構造のものより、完全に固定されたアングルローターの方がより高速回転で回すのに適しているため、原理的には「アングルローターの方が高速回転可能」という話だったわけですけど、現実的な実験では、アングルローターで回したい対象でそこまでの遠心力を必要とするものがなく、「最も強い遠心力が必要な実験」がショ糖密度勾配遠心だった、そして密度勾配遠心は、スイングローターを使う必要がある…という、その間違ったイメージはただそれだけの理由だった感じなんですね。

 

ということで、スイングローターは別に高速遠心向きでは決してないものの、実際の実験ではたまたま超高速遠心を必要とする実験で用いられるから、少なくとも僕にとってはスイングローター=超高速遠心というイメージがついていると…いうどうでもいい話だったわけですけど、それはともかく、具体的にはこんな感じのローターを用います。

https://www.beckman.com/centrifuges/rotors/swinging-bucket/331301より


黒い本体っぽい部分がローターで、赤いぶら下がっているやつが、中にチューブを入れて使う「ホルダー」ですね。

(遠心中の様子はフタを閉じるので見えませんが、赤いホルダーがちょうど90°起き上がり、吹き飛ばされないようにフックが支えながら回転し続ける感じです。

 なので、黒いローター本体の部分には、ホルダーが起き上れる窪みがあることが分かるかと思います。)

 

最高回転数は4万 rpm(回/分)で、遠心力は実に28万5000Gにも達するわけですが、ここまでの「G」がかかると本当にわずか数ミリグラムの違いが大きな偏りになって発生してしまうため、この遠心機は極めて尋常じゃなく精密に作られており、例えば各ホルダーには番号が振られていて、それぞれ絶対にローターの対応する番号にぶら下げて使うように指示されています(ローターとホルダーがセットで、完全にバランスが取られるように作られているため)。

 

なお、ホルダーにチューブをセットしたら、チューブ込みのホルダー全体の重さを秤で量って、対角線上に位置する相棒のホルダーとミリグラム単位で完全に一致することを確かめてからセットする必要があるという、非常にセンシティブで気を使う実験なんですけど、そうしないと本当に危険なので大切なポイントなんですね。

 

それだけ精密なモノなだけあって、こんな片手で持てるレベルの金属のカタマリが、お値段なんと3万8701ドル!

現在の為替で、577万5602円という、凄まじく高価すぎる物体で笑いましたが、まぁやはり価格というのはそのものがどれだけ丁寧に作られているかの指標なので、物凄い精密機器であることが窺える形だといえましょう。

 

ちなみに、このホルダーは、超遠心機にセットするわけですが、遠心機自体は、ウィッキー先生の「超遠心機」にまさに写真入りで紹介されていました(↓)。

 

ja.wikipedia.org

 

サムネイルにもなっているこのベックマン・コールター社の遠心機、僕のいる研究部の共通機器室にもほぼ全く同じものが複数台ありますが、こんなやつにセットして使う形になっています。

 

と、超遠心機から派生して、果たして今この世に存在する最高速度の遠心機はどんなのだろう?と思って調べてみた所、ヒットしてきたのは、まさかの日本企業・himac社が手掛けたこちら…

 

www.himac-science.jp

 

…CS-FNXシリーズのこれ、最高回転数はなんと15万rpm

1分で15万回転=1秒間で2500回転ということで、もう想像もつかないぐらいですが、凄い早さですね。

 

…と、もうちょいこれに触れたかったのですが、またしても完全に時間切れとなってしまいました。

次回、この遠心機についてからまた再開させていただきましょう(まぁ、もう「使ってみたいですねぇ!」って話しか残ってないですが(笑))。

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