役立たずかと思いきや、縁の下の力持ちだった…!

あまりにも細かい…というか酸化還元がじゃんじゃん絡んでくるので難解であり、正直面白みに欠ける話になっているのですが、凄まじい効率を誇る電子伝達系について、実際に電子が伝達されていく様子(の模式図)なんかを順に見始めていたのが前回でした。

 

(まぁ、おもろい・ろくないで言ったら、解糖系もクエン酸回路の各反応経路も別に何にも面白くないというか、どう考えてもYouTubeとかの方が面白いですけど(笑)、電子伝達系は、やっぱり効率的で高級な反応といえますし、「輪をかけて難解」って感じですね。)

 

いずれにせよ、膜に埋まっている4つのポンプ複合体の内、複合体 Iだけごく簡単に見終えていました。

 

残り3つも、早速見ていこうと思います。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/電子伝達系より


早速「複合体 II」ですが、これはズバリ、上記概略イラストをよくご覧いただくと分かる通り、4つの複合体の内、唯一水素イオンを外に汲み出していないもので、こいつだけは実はイオンポンプではない分子になっています。

電子伝達系の最大の目的…というか各複合体のエネルギー合成における最大の貢献は「水素イオンを膜の外に汲み出すこと」ですから、こいつは4つの中で一番貢献度の低いザコだといえる感じですね。

 

とはいえ、なんと実は…!

 

上のイラストをよく見ると、「複合体 II」へは、クエン酸回路から矢印が伸びて、SuccinateをFumarateに変換した後、またクエン酸回路に矢印が戻っていることが窺えると思うんですけれども、何てこたぁない、こいつはこないだクエン酸回路で登場していた、コハク酸→フマル酸という反応を進める、コハク酸ヒドロゲナーゼそのものだったのでした。

 

ja.wikipedia.org

 

ちなみに、「-ate」という接尾辞というか語尾は、「〇〇酸がイオン化したもの」……つまり、イオン化したものは陽イオンとくっついて化合物(塩)をつくりますから、○○酸化合物とか○○塩とか、そういう意味になる感じです。

 

コハク酸は英語だとスクシン酸であり、「Succinic acid」と呼ぶというのはこないだクエン酸回路での登場回で見ていましたけど、基本的に水溶液の中では酸は電離してイオンとなり、塩を形成することがほとんどなため、表記も簡単になりますし英語では「Succinate」と記述されることが多い感じですね(上記、英語版のがそのまま流用されているイラストにもある通り)。

 

フマル酸は「Fumarate」(フマル酸塩)ですし、他にもリン酸なら「phosphate」(リン酸塩・リン酸化合物)だし、あぁあとは、ピルビン酸なんかが「pyruvate」と表記されることが多い、なんてことも以前の記事で書いていました。

 

ということで、クエン酸回路のときにこのコハク酸ヒドロゲナーゼに関して、「こいつはコエンザイムQ10を還元する役割も持っているんですね」などと見ていたんですけど、その還元されたCoQが(上記イラストにもある通り)次の複合体へ伝わって使われていく…という感じになっているんですね。


つまり、これはクエン酸回路で見ていたのと全く同じ反応……要は、「このコハク酸ヒドロゲナーゼという酵素(別名「複合体 II」)は、クエン酸回路と、電子伝達系、別の場面で働く酵素なのです」というわけではなく、完全に同一の反応が、クエン酸回路の一部でもあり、電子伝達系の一部にもなっていたと、ただそれだけの話なのでした。

 

一応、電子伝達系の記事に、前回もお借りしたタイプの詳しい概略図があったので、こちらもお借りさせていただきましょう。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/電子伝達系#複合体IIより


そこまでの詳しい反応機序は僕も完全に記憶の彼方で忘れていたんですけど、何気にこの反応でもFADが絡み、FADは還元された後すぐにまた酸化されて(=自分が酸化されるということは、誰か他人を還元するということ)、この場合、前回も出てきた「鉄硫黄クラスタ」が還元されるわけですが、「還元される」というのは電子を受け取るということですから、要は鉄硫黄クラスターに電子が伝わり、さらにはヘム鉄(Heme/Fe)と呼ばれるこれまた補酵素的な小分子を介し、最終的にはコエンザイムQに電子が伝わって還元される……

…という、意外にも結構色々な反応の起こっている、ザコと見くびるのは失礼だった反応といえる感じですね!

 

せっかくなのでついでに「ヘム」にも目を向けてみますと……

まぁ「ヘモグロビン」と語源を一(いつ)にすることからも分かる通り(というか、「ヘモグロビン」自体が、「ヘム」+「グロビン」というタンパク質から成る複合体ですね)、「ヘム」ってのは「血液」を意味する古代ギリシャ語由来なわけですけど、「血は鉄の味がする」ってのはどなたもご存知な通り、鉄と切っても切れない縁のある分子で……

https://ja.wikipedia.org/wiki/ヘムより

…まぁ切っても切れないというか、普通に弱めの結合で実際にくっついて「錯体」ってものを形成しているわけですが、そんな名前や結合様式はともかく、(aとbの2つ並べて表示したように)一口に「ヘム」といっても微妙に違う構造の分子がいくつか存在しているものの、↑の画像を見れば分かる通り、複雑な蜂の巣のようなリング構造の真ん中に鉄原子Feが鎮座している、こんなやつがメインボディといえる分子ですね。

 

ヘムが実際、コハク酸ヒドロゲナーゼ(複合体 II)においてどのような形で電子を受け取っているのか、そこまでは僕も寡聞にして存じ上げなかったんですけれども、コハク酸ヒドロゲナーゼのウィ記事にはズバリ、

コハク酸ヒドロゲナーゼにおけるヘムの機能はまだ研究段階である。

…と書かれていたように、密接に関わってはいるけれど、詳しくはよぉ分かっていないという感じでしかなかったんですね。

 

とはいえまぁ、ヘム鉄もこの酵素と共存しており、酸化還元反応の最後の方のステップで恐らくCoQの還元に一役買っているのであろうと、そう推測されている感じだと思われます(概略図のイラスト的にも)。

 

ってなわけで、電子伝達系においては一番の落ちこぼれとはいえるものの、実はこいつがいないとクエン酸回路がまわらず、水素イオンを汲み出すために必要なNADHなんかが不足してしまいますから、ATP合成反応における直接的な寄与は小さいものの、呼吸を完遂する上でなくてはならない存在だということで、ザコだなんてとんでもない!という話でした。

(まぁ「ザコ」呼ばわりは、あんたが一人で勝手に言い始めたことじゃん、って話ではあるんですけど(笑))

 

複合体 IVまで一気に見てしまう予定でしたが、相変わらず時間のないせわしい状況が続いており、どうにかこうにかそれっぽい量にはなったので、続きのIIIからはまた次回にまわさせていただこうかなと思います。

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