擦り込み式のジェルは意味があるのか…?

ここ何回かの記事で、「汚れ」について、「生物学的なもの」と「化学的なもの」に分けながらちょいちょい語っていました。

 

まぁその分類は学術的なものではないですし、厳密に「これはどっち」とか考える意味は特にないんですけど、何となくのイメージとして、「勝手に増えるけど、殺せばOK(殺せば無害だし、少量の菌なら体内の免疫で殺せる)」な生物学的な汚れと、「増えはしないけど、殺すことができず、存在そのものが害なので摂取したくないもの」である化学的な汚れと、大体そんな感じで分けていた感じでした。

 

その辺の話も込みでまた1点触れたいネタが残っているのですが、とりあえず元ネタである、アンさんよりいただいていたご質問の方に触れていくといたしましょう。

 

ご質問前半(スクラブ成分について)は既にこないだ見ていたため、まだ触れていなかった後半からの再掲ですね。

 

気になっていたのは、手を洗って汚れを落とす場合ではなく、目に見えない菌を落とす(殺す?)場合…!?


以前の記事で、トイレで手を洗うことの重要性(?)を語っておられたことがあったと思いますが、


もちろん私自身も石鹸で手を洗うということはやっていますが、個人的に気になるのは、「目に見えるもの」と、「水回り(濡れること、湿気を含むことによる不快さ)」なので、目に見えない菌については、それほど気にならなかったというのが正直なところでした。(ただ、その辺りのお話を聞いてから、わりとちゃんと気にするようにしてますけど笑)


ということで、この場合、同じ「洗剤で手を洗う」という行為ですが、分子がどうのこうの…という流れとは違う感じなんですか?

洗剤で手を洗えば、必ず菌は死にますか?

 

⇒「洗剤・石鹸で手を洗えば、菌は完璧にヌッ殺すことができるのか?」というのがご質問ですが、結論から言うと、基本的には完全に死滅させることはできない場合が多いと思いますけど、清潔さは保たれている(=獲得できている)ので全く問題ありません、という形になるかな、と思います。

 

どういうことかと言いますと、まず、基本的に殺菌するためには抗菌作用のある薬剤が必要になるわけですが、もちろん最近の市販のハンドソープとか、特に「薬用」と銘打たれたものは除菌・殺菌成分配合のものもあるわけですけど、昔ながらの普通の固形石鹸(これも以前書いたことがありましたが、高校化学で習う通り、成分としては「高級脂肪酸のナトリウム塩」と呪文のように覚えてしまう、こないだ洗剤シリーズでも触れていた界面活性剤から成る古典的な石鹸・洗剤)には取り立てて抗菌成分は含まれていません。


自宅であれば、香りなどお好みのものを使われているでしょうし、そういうちょっと良さ気なものならイマドキは「除菌も可能」だと思うので、そういうのを導入しているならもちろん十分な作用が期待できるものの、公共施設や会社の備品とかですと、まぁ最低限の特に高機能でもない普通の石鹸・洗剤が置かれていることも多く、そういうもので手を洗っても、積極的に菌を死滅させることにはつながらないんですね。

 

しかし日常生活レベルでは基本的にそれで「清潔さ」に関していえば特に問題はなく、それはなぜかというと、普通に泡と水で洗い流すことで、殺しはせずとも、手から剥がして下水道へと菌を流し捨てることができているからに他なりません。

 

もちろん、小学生男子にありがちな、「やれと言われたから、形だけやってる」みたいな、「セッケンもちゃんと触ったから文句言われる筋合いはございませーん」と言うためだけの、石鹸ちょん撫で・水チョロで「手ぇ洗った実績のみ獲得」みたいなクソみたいなやり方では、まぁ流石にほぼ無意味の極みとはいえるものの(笑)……

 

まぁよくちゃんとした保健の教材とかで紹介されがちな、

「正しい手洗いは、指の間をこうしてこうして……また、手首どころか腕までしっかりと洗い続けることが大事です」

…みたいなレベルまではいかなくとも、普通の人が普通の感覚で満足いくまでセッケンつけてゴシゴシすれば、よっぽどそこから「素手で外科手術をします」(まぁ手術は手袋をはめてするので、それはどんなに清潔にしてもあり得ないですけど(笑))とか、「市販品の寿司を私が握ります」とかしない限り、健康被害につながることはなく、十分な清潔さが得られているのでご安心ください、といえるように思います。

 

…と、その「抗菌」の方の話についてもまた、せっかくなのでもうちょい深入りしてみようと思った点が1つあったのですがその前に、最初にも触れた「汚れ」の種類に関する話で触れておきたい点があったので、そこから参りましょう。

 

特にコロナ禍以降、多くの施設でプッシュタイプの殺菌剤、まぁ液体のエタノールなんかがメインですが、ジェル状・泡状になって出てくるものもよく見かけますけど、そういう「手に擦り込んで、菌を殺してはいオッケー」的な除菌剤があると思うのですが…

 

(こちらでは、こんな感じのやつ(↓)が、マジであらゆる公共施設・スーパーの入り口なんかに設置されるようになった感じで、最近は本当にどこでも見かけますね…

 

https://www.walmart.com/ip/Purell-Advanced-Hand-Sanitizer-Refreshing-Gel-8-oz-Pump-Bottle/600772547より

 

…恐らく日本でも類似品は、ややコロナ禍が落ち着いた今でも、至る所で見かけるのではないでしょうか)

 

この手の製品の場合、使ったことがある方にはおなじみだと思うんですけど、上述の通り「手に刷り込んで、モミモミして蒸発させて、それでおしまい」という、古い人間からすると「えっ?洗い流さないの?!」と物足りなさを感じるものになっているようにも思います。

 

恐らく結構な割合の方が、「いやこれ、汚れが手についたまんまじゃね?意味あるん?」と感じられることもあるのではないかと思うのですが、これが結局、今まで語っていた「生物学的な汚れ」と「化学的な汚れ」の話につながるのでした。

 

ズバリ、これ系の製品が目指しているのは「殺菌」、要は「生物学的な汚れの除去」であるため、手に刷り込んで細菌やウイルスを不活化した時点で目的達成で、それが手に残っていようが特に全く問題ないといえるんですね!


特にコロナ禍以降、喫緊の最重要課題は「ウイルスの除去」なわけで、この手の製品は非常に効果的にウイルスを破壊することができるよう設計されているため、死んだアニサキスを食べても何の問題もないように、ひとたび菌やウイルスをヌッ殺してしまえば、それで本当に健康・衛生的には何の問題もない、完璧な方法となっているわけです。

 

こちらは公衆衛生学用語で「擦式消毒法」と呼ばれているものになりますが、実は、ちょうど以下の歯科衛生士さんの情報サイト・dh roomがまとめてくれていた記事(↓)なんかにも挙げられていた通り……

 

dhlife.net

 

(以下の、アメリカ疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention; CDC)によるガイドラインの翻訳版も、世界で最も深い知見を有する一次ソースとして記事中で紹介されていましたね(↓)。

医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン(日本語翻訳版)

https://med.saraya.com/gakujutsu/guideline/pdf/h_hygiene_cdc.pdf

 

…94ページものPDFファイルですが、全ての衛生マニュアルはここに由来するといえるぐらいの、完全版だといえましょう。)

 

…非常に興味深いことに、21世紀になって改訂された現在のCDCガイドラインでは、医療従事者のための衛生管理法の第一手として、石鹸での手洗いよりもこういった擦式の消毒の方が推奨されている感じになっているんですねぇ~。

 

もちろん高い衛生管理が求められる医療従事者でそれなので、一般の人にもそのまま適用できるルールだと思うんですけど、これは結局、基本的に生活する上でいきなり化学的な汚れが付着する可能性は極めて低く、一方、目に見えないだけで空気中および体表には尋常じゃない数の菌類・細菌類がウジャウジャ存在していますから、より積極的に気を付けるべきなのは生物学的な汚れの方であると、そういえる話なわけですね。

 

とはいえ、もしも化学的な汚れが手に付着していたら、スリスリモミモミで終わりのジェルだけでは全然除けていない(その物質はそのまんま手に残っているので)のは、まさに誰しもが不安に思うその通りの状態になってしまっているのも間違いありません。

 

したがって、ガイドラインでも「血液その他、目に見える汚れが付着した場合は、直ちに流水で手を洗うこと」となっています。

 

ですが改めて、特に一般公衆衛生の発達した現代社会で普通に生活している限り、そんな毒物が手に付着するなんてことはまずないわけで、基本的には菌・ウイルスという生物学的な汚れに気を付けるのが最善である、ってことだといえましょう。

 

…と、スリモミジェルに非常に好意的な意見を並べましたが、実は僕自身は、普段あんまり使っていません。


大学・病院のエントランスには自動式もあるものの、今いる研究室近辺の廊下にはプッシュ式しかなく、例によって「肌が触れるプッシュ式って、衛生的じゃなくない?」と思えるのもそうなんですが、それ以上に……

そもそも仕事柄我々は大量の化学物質を扱うので(放射性物質とかも使いますしね)、もちろん基本的に手袋をはめて実験はするものの、全身完全防御をしているわけではないですし、特に食事の前なんかは、石鹸と水で「洗い流す」ことをしないと不安……とまでは言わないものの、まぁ普通に自分にはそっちの方が必要だろと思って、絶対に流水での手洗いを実施している感じです。

 

でもまぁそれは自分の都合というか業務内容的にそうなだけなので、そんな危ないものを触っているわけではない方は、特に冬とか冷たい水で手を洗うのもめんどっちぃですし、便利なジェルモミをして清潔を保つのも良さそうだといえそうですね。

 

(まぁ冬は、特に風が吹き込むエントランスに置いてあるジェルなんかは冷たくなってるかもしれませんし、蒸発させるこの手のものはより「ヒンヤリ」するので、やる気失せるレベルでは同じぐらい(むしろ、お湯が使える流水手洗いより嫌…?)かもしれませんが…)

 

という所でまた完全に時間切れとなってしまったため、途中広げようと思っていた抗菌・殺菌について、あんま広がる気もしないですけどネタは常に不足していることもあり、次回簡単に脱線してみようかな、などと思っています。

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