前回の記事では、ジュースどころか果物や野菜、果ては人間といった、全然液体っぽくないやつらですら、少なくとも生物はほとんどが水でできているのです…なんてことを見ていました。
結局、ものを溶かしまくったら水だってドロドロになりますし、場合によってはゼリーみたいに、水分を含んだまま固体になれることもあるわけで、溶け込んでる中身によっては、「常温でも液体ではない水分」すら普通に存在するということですね。
今回は前回触れていたご質問の続きで、「液体でも水溶液でないもの、水でない(水分子が含まれない)液体も当然あるかと思うんですけど…」という部分からつながっている話になる形です。
早速参りましょう。
例えばお酒だと…?(エタノールは水ではない液体ということでしたが、そのイメージで、アルコールは水ではなく、お酒も水ではないのでは?という安易な妄想もしつつ…)
といった感じで、何が水溶液で、何が水溶液じゃないのか、分子レベルに解体すればわかるとかそんなことかもしれませんけど、感覚的にパッとわかるようなことでもないと思えるのは、私だけでしょうかね?笑
まぁ、水溶液だからどうっていうこともないのか、実際はどうってことあるのか、それすらもよくわかりませんけど、水素が特別という事実もあるように、水も特別に違いないですし、、と、どこまでいくのか、ちょっと自分でもわからなくなってきましたので、後はお任せしたいと思います笑
⇒そう、いかにも水には全く思えない、むしろ液体ですらないものでさえも、実は水が主役なことが多いのです…なんて書いていましたが、もちろん、水が全く存在しない物質もいくらでもありますし、当然、液体なのに水ではないものも世の中にはごまんと存在する感じですね。
とはいえやはり、生物が作り出す液体はほぼ例外なく水が基本といえ…
(改めて、むしろ固体ですら基本は水ベースで出来ているレベルですね。ラッパのマークの大幸薬品にナイス分析記事があったので紹介させていただくと…
…画像もナイスだったのでアイキャッチ用にお借りさせていただきましたけど(笑)、まさかの、大便はどう考えても固形物かと思いきや(下痢じゃなければ(笑))、7~8割が水分でできているってことで(もちろん下痢の場合、90%を超えることだってあることでしょう(笑))、確か新生児は80%が水ってことでしたから、まさかの、赤ちゃんとクソはほぼ同じものだった…?
(いやだから残りの成分が違いすぎるから、水分量が一緒でも全く違うものになるっつーの(笑)))
…と、脱線補足が長くなりましたけど、パッと考えても、生物…少なくとも人間が自分で分泌したり体内を構成している液体成分は、水のみだといえましょう。
では、水以外の液体には何があるのでしょうか…?
これは結局、「有機溶媒」と呼ばれるものになるわけですね。
(もっとも、有機物ではない=炭素を含まない液体も中にはありますが、例えば代表的なのは常温で唯一の液体である金属の水銀なんかが挙げられますけど、ぶっちゃけ水銀は「いやただの融けた金属やん」と思える、全然水らしくない感じですし…
あとこれまで触れたことはなかった気がしますが、常温で液体の元素は水銀以外にもうひとつ存在しまして、全くマイナーな気がする、臭素がそうなんですね(↓)。
ja.wikipedia.org
…要は、金属にも非金属にも常温で液体の元素は1つずつあり、単体で液体なのは、この世で水銀と臭素だけになっています(当然、超高温にすれば鉄だろうと液体になりますから、「常温常圧で」という但し書き込みですけどね)。)
臭素も赤褐色ですし、何気に単体で無色透明の液体は存在しませんから、「水っぽい液体」は、確定で、「水か、有機溶媒か」のどちらかだといえましょう。
まぁ「有機溶媒」と聞くと、何となく製品の注意書きとかで見る気のする、「シンナー・ベンジン」なんかが思い浮かび、こいつらは非行少年が吸って遊ぶことから有害なヤベーヤツ、って印象があるかもしれませんけれども、別に有機溶媒はこういうのに限らず、もっといくらでもあるものになります。
代表的なものとしては、やはりアンさんもコメントで例として挙げていただいていた、お酒=エタノールがありますね。
エタノールに関しては、有機物なだけに、ずーっと前の「楽しい有機化学講座」という、そこまであんまり楽しくはなかった(笑)一連のシリーズで触れていました(↓)。
もちろんエタノール自身は液体なんですけど、実は、市販されているお酒には、ある意味当たり前といえるかもしれませんが、水も大量に含まれています(もちろんワインならポリフェノール類とか、ビールなら麦芽由来の成分とか、水以外にも、その他色々含まれているのは他の物質同様ですね)。
「どの程度エタノールが含まれているか?」は、お酒の「度数」などと呼ばれているわけですが、僕は酒を飲まないので全然イメージがないものの、ビールの度数は大体5%だそうで、中瓶一本500 mL(このサイズも僕は全く知らなかったので検索して知ったんですけど、中瓶ってそんなに分かりやすいボリュームだったんですね。一番よく見る、いかにも「ビール瓶」な瓶のことですよね…?)の場合、当然、500 mL × 5%=25 mLのエタノールが含まれている、ってことになるわけですね。
ちなみに、これはめちゃくちゃややこしい話になりますが、濃度の「%」は色々なパターンがあり、質量パーセント濃度があれば体積パーセント濃度もあり、さらには質量/体積で考える濃度もあり……こればっかりは、「どの濃度を考えるか」を明記しない限りどれを考えればいいか誰にも分からない話で、何かの濃度を語る場合は、必ずどれを考えているかを明記する必要があるといえます。
化学の世界では、「w/w」や「wt/vol」みたいな表記が付記されることが多く、「w」はweightで質量、「v」はvolumeで体積のことですけど、濃度の横にこれらの表記がない場合、第三者にはどれなのか分かりませんから、「ウェイト・パー・ウェイトなの?それともウェイト・パー・ボリューム?」と指導者に怒られるわけですね。
(この辺の濃度の話は、さらに高校化学でモル濃度とかも絡んでくるとややこしさは混迷を極めますし、中学時代の濃度計算とかですら結構な割合の生徒が脱落する、かなりの鬼門だと思います。)
ちなみにお酒の度数はどれなのかと思ったら、これは「v/v」、つまり「全体の体積に占めるエタノールの体積の割合」になっているそうで、それを踏まえて、先ほどは「500 mLの中瓶には、エタノールが25 mL」と書いていた感じでした。
(これがもし、例えば「w/v」を意味していた場合、「500 mLの中瓶には、エタノールが25グラム含まれる」となり、また後で触れる予定ですがエタノールは水よりも軽いので、体積的には25 mLよりも大きくなりますから、この表記を採用してしまうと、同じ度数でも酔いやすくなってしまう…って形になってるといえましょう。)
それに関して、1つ面白い話を思い出しました。
先ほどの例で「500 mLの中瓶には、エタノールが25 mLと、水が475 mL入ってるってことなんですね」と書こうと思ったのですが、実はこれは全く正しい表記になっていないのです。
なぜだかお分かりになりますでしょうか…?
実は、水1 mLとエタノール1 mLを混ぜたら、出来上がる液体は、2 mLよりもかなり少なくなるんですね…!
生命科学実験でエタノールはめっちゃ使いますから、僕も学生実験で初めて混ぜたとき、「ホントだ、同じ量を混ぜても、合計した2倍の量よりかなり減るんだね!」と感動したものです(まぁ別に感動するほどの話でもないですけど(笑))。
しかし、同じ量の液体を混ぜたはずなのに、なぜそんなに体積が減ってしまうのか謎だったので、担当の教授に「なんでっすか?」と自分で考えるでもなく丸投げして質問してみた所…
「なんでってあなた、米一升と麦一升を混ぜても、二升にはならないでしょう」
という返答が即戻ってきて、「くぅ~、偉い大学の教授はやっぱり話の分かりやすさが違うぜッ!」などと思ったものです。
そう、液体といっても結局は分子の集まりですから……といっても、1分子レベルでは目に見えませんし、そう言われても中々イメージはつきづらいですけれども、分子が漂うことで何らかの形が生み出されている(=容器の形になっている)液体が混ざると、違うサイズの分子は別の分子が飛び回っている間隙に入り込むとでも言いますか、それぞれ単独で作り出していた体積よりも、全体としてはグッと小さくなってしまうんですね。
(とはいえもちろん、1の水と1のエタを混ぜたら例えば「1.2」にしかならないとかそこまでのレベルではなく、「1.9」ぐらいの体積にはなりますけどね、でも確実に目で見て分かるぐらい、本来両者を足し合わせた「2」の目盛りよりは明らかに少なくなります。)
なので、実験では消毒用エタノールとして70%(v/v)エタノールを用いるんですけど、素人学生は、「70%なら、エタノール7と水3を混ぜればいいんだね」などと勘違いしがちなのですが、実は厳密にはこれは間違いになるわけです。
先ほど書いたように、エタ7と水3を混ぜたら、混ぜ終わって出来た溶液の体積は10にはならずにまぁ9.8ぐらいにまで目減りしますから、これを体積濃度で表すと、
(7/9.8) × 100 = 71.43%
…と、ちょっと濃いエタノール溶液になってしまっているのでした。
とはいえ、まぁ消毒用エタノールの効果はそれでも問題ないですし、むしろエタノールは水より飛びやすい(蒸発しやすい)ので、ちょっとぐらい多く入れた方がむしろ好都合まであるかもしれませんから、実用上問題はないものの、考え方としては間違ってる、って感じなんですね。
(正式には、まずメスシリンダーなんかにエタノールを7割入れて、水をてっぺんまで注ぐ(その場合、入れる水は、7:3の比で計算される量より多くなる)…という形を取る必要があるわけです。)
…と、今回はご質問にありました、「水以外の液体はどんな感じ?」という内容に触れるつもりだったので当初記事タイトルもそうしていたのですが、ちょっとまた時間もなく、「お酒と水を混ぜたら減る」という性質に触れたぐらいで終わりになりそうだった(というか実際なった)ので、タイトルも変更し、言うほど不思議でも何でもない話な気もしましたが(笑)、この辺で続きはまた次回とさせていただこうと思います。
なお、「お酒が減る」と今書いてて思い出した話に、「天使の分け前」や「天使の取り分」という、非常にポエミーでナイスなネーミングのお酒用語がありました。
(お酒には全く詳しくないものの、受験生の頃受講していた通信添削の、生物の読み物で知った話です。)
これは、「蒸留酒の熟成中に、水分とアルコール分が蒸発して、元々の体積から目減りすること」を、専門用語でこう呼ぶわけですが、昔の人はお酒を作る際に「長い熟成中、天使が飲んじまったんだなガハハ」と考えてこの名前にしたんだと思いますけど、英語名の「Angel's share」含め、これは非常に美しくて良いネーミングに思えますねぇ~。
ただ、先ほどネタにしていた「水とアルコールを混ぜたら体積が減る」ってのは、これとは全く関係ない話ですけどね(笑)。
ちなみに、最後思いついたんでもう1つだけ不思議な関係に触れておくと、「水とエタノールは、任意の割合で混ぜ合わすことができる」ってのも、意外と面白い点といえましょう。
例えば食塩は水に溶ける量が決まっていますけど(=水100グラムに、35.8グラムまで)、エタノールの場合、どんな割合でも水に溶かす(=水と均一に混ぜ合わせる)ことが可能で、要は0%エタノール(全部水)から、ちょっと垂らして0.00…1%エタノールもできるし、50%エタノールももちろん、99%エタノールもあれば100%エタノールも普通に液体なので、どの割合でも作れる、って話なんですね。
まぁ、「液体と液体なんだから当たり前じゃん」って思われるかもしれませんけど、例えば同じ液体である有機物(結局これも水以外の液体=有機溶媒の例ですね)、ジエチルエーテルなんかですと…
ja.wikipedia.org
…上記ウィ記事によると水への溶解度は1リットルあたり69グラム=96.72 mLだそうで、それ以上混ぜると、均一には混ざらず水とジエチルエーテルの二層に分離しちゃうんですね!
そんなわけで、液体だろうと水に溶け込める量は決まっているものが多い中、やはり古来より人類の友であったお酒=エタノールは格が違う!
色んな度数のお酒があるように、こいつはどんな割合でも水と仲良く共存できるんですね……というところで、また次回へ続くとさせていただきましょう。