混ぜられないこともあるよ

前回の記事で、液体同士が混ざるとはどういうことか、それっぽい説明をつらつら書き連ねていました。

 

まぁしたり顔で、さも見て来たかのように色々書いていたわけですけど、実際僕も分子レベルの挙動をこの目で見たことがあるわけではなく、それ以上に、説明として書いていた、

「混ざるといっても、両分子が一様・均一に広がるだけ。分子同士がくっつくことはないし、独立して存在している」

…というポイント、これは実は物事をだいぶ単純化して分かりやすく表しているだけで、厳密にはちょっと違う、ともいえるんですけどね……


簡単にいえば、液体同士が混ざり合うのは、ミクロのレベルだと実はこれも結局分子同士の相互作用に依るものともいえるものでして、例の、分子内の電子の偏り=極性による静電気力や、ファンデルワールスと呼ばれる分子間全般に働く力(これも実体は静電的相互作用の一種ですが)などが上手いこと作用して、相性の良い分子同士であれば均一に広がることができ、相性が悪いと分離して層に分かれる……

…という話の方がより現実を正しく表していたわけですけれど、まぁそういった力は弱いものなので、分子同士が接触・融合するという程のものではないですし(下敷きと髪の毛を使った静電気の例のように、「触れてなくても、空間を介して引かれ合う」程度のものですね)、とにかくややこしくなるだけなので前回は触れなかった形だったわけですが、実際やっぱり、分かりやすいイメージとしては「混ざり合った液体の両分子は均一に広がり、独立して漂っている」と考えて問題ないと思います。

 

では、前回引用添付だけしておいて触れるまでには至らなかったご質問後半の方へ参りましょう。

 

ちなみに、溶解度無限大は水と混ぜた場合のみに言えることで、エタノールグリセリンを混ぜてもそうはいかない感じですか?というか、そもそも混ざるんですかね?
そういう場合、エタノールグリセリンが溶けるのか、グリセリンエタノールが溶けるのか…?って、、そんなことはどうでもいいと言われそうですが笑


とまぁ、やっぱりちょっと、そういう問題じゃない?と思ったりもしますが、考え方がわからずモヤモヤしてる感じなので、とりあえずスッキリさせてください笑

 

有機溶媒同士を混ぜた場合における溶解度、これは、もちろんちょうど今さっき補足として書いていた通り、理論的には「分子の極性」なんかが「どの程度混ざり合うか?」を決める重要なファクターになっているため、例えば何でも知ってる化学の大先生であれば、分子の構造と極性などから判断して「これとこれは混ざる、これは混ざらない…」と判断できるのかもしれませんけど、まぁ実際は「混ぜてみなければ分からない」(というか、混ぜれば分かるので考える意味もない)話な感じですね。


僕はエタノールとグリセロールを混ぜたこともそういえば全くなかったので全然印象はないのですが、まぁ、分子構造的に、これは有機化学の素人の直感としては、水エタ・水グリ同様、両者は完全に混ざり合う気がしますね。


しかし、実際僕も経験したことがなかったぐらいですし、「グリセロールのエタノールへの溶解度」というデータは、思いの外ハッキリした記述が見つかりませんでした(英語版Wikipediaにも記述ナシ)。

 

…が、ちゃんと検索したらやはり見つかりましたね、英語サイトですが、例えば↓の科学系のデータ紹介Wikiに、バッチリ掲載されていました。

www.sciencemadness.org

Solubility(溶解度・溶解性)の欄に、「Miscible with ethanol」となっています!


この「Miscible」とは「混和性」という意味で、まぁ何度か「溶解度が無限大」などと書いてましたけど、実際、液-液混合の場合、「溶解度が無限大」って言い方は、まぁ一応間違ってはいないものの、あんまり現実的なニュアンスではないため(普通に液体の体積が増え続けるわけで、「固体を水に溶解する」って感じとは大分違いますしね)、きっちりした場では使われない言い方であり、より正式な専門用語では、ちょうど↓のWikipedia記事でもまとめられていた通り…

 

ja.wikipedia.org

「2つの物質があらゆる比率で混ぜ合わされる性質(すなわち、お互い任意の濃度で完全に溶解する状態)」のことを、「混和性がある」と呼んでいるんですね。

 

つまり、グリセロールとエタノールは「混和性」のある液体同士で、いかなる割合でも、両者は均一に混ざり合うことが可能となっているという感じでした。


ちなみに、「いや液体同士が混ざらないことなんて普通なくない?むしろ混和性がないものなんてあるん?」という気も一瞬するかもしれませんが、上記「混和性」のウィ記事にある通り…

ブタノン(メチルエチルケトン)は水にかなり溶けるが、すべての比率では溶解しないので、これらの溶媒も非混和である

…という感じで、もちろん水と油のようにそもそも一切溶けないものはまぁ当然として、それなりに溶けるものでも、あまりにも量を加えたら溶けなくなる物質も、ちゃんと存在するんですね…!


(実際、水とブタノール(=炭素数4のアルコール…エタノールの兄貴分的存在ですね。ちなみに水への溶解度は、100 mLの水に7.7 gのようです)を混ぜたことは僕もありますけど、最初は完全に見た目的にも完全にクリアに混ざり続けるのに、ある程度加え続けていくと泡立つというか白く曇り(濁り)始めてくるような感じで、ちょうど溶解度的にも、コップ一杯の水200 mLに10グラム超のブタノールとか加えようものなら、大分長いことしっかり混ぜ続けないと均一でクリアな液体になりませんし、15.4グラム以上加えると、ついにその細かい泡で曇った溶液は永久に晴れることがなく、むしろ混ぜるのをやめたら層としてキレイに分離してしまう…って形になっているわけです。)

 

いいアイキャッチ画像ネタもないし、ブタノール水溶液の分離の様子でもねぇかな…と検索してみたら、産総研による、バイオブタノールという新エネルギー開発記事に、ちょうどドンピシャのものが見つかったので、お借りさせていただきましょう!

www.aist.go.jp

上記記事の図2より

まぁ、「だから何だよ」ってぐらいのそない大した画像でもないですけど(笑)、むしろバイオブタノールという、「バイオエタノール」はたまに耳にしますけど、より大きなアルコールであるブタノールのエネルギー利用も研究が盛んにされているということで、わずか1%の低濃度ブタノールから80%以上の高濃度ブタノールを回収することに成功した…なんていう記事の内容自体が、中々面白いものでしたね!


今回もまたちょっと時間がないので、ご質問後半を見ただけでおしまいの簡単な記事とさせていただこうと思いますが、まとめとしては、グリセロールとエタノールは、どちらも水と同じように混ぜ混ぜ可能ということで……

あぁちょうどそれに関して面白い話としては、エタノールは70-80%溶液で非常に効果的な殺菌消毒作用を見せるわけですけど、実際素手にかけ続けるとかなり手荒れを引き起こすもので(スッとして爽快なんですが、脱水作用が強力なので、本当に手が乾いたりひび割れやその他アルコールに弱い方ですと赤くなったり荒れの原因になる感じですね)、それを防止するために、消毒用アルコールに1%程度のグリセロールを混ぜて使うレシピなんかもあるみたいですねぇ~。

seineline-media.com

グリセロールには保湿効果があって、手荒れを防いでくれるものといえますから、消毒を頻繁にされる方には、かなりお役立ち知識といえるかもしれませんね。

(まぁ、医療や研究の現場だと、そんなに頻繁な消毒をする場面では手袋を使うことが多いので、あまり意味はないかもしれませんが…)

 

ちなみに、最後また話を混ぜ混ぜネタに戻しますと、先ほど貼った、グリセロールの化学データWikiには、

Miscible with ethanol, methanol, propylene glycol(エタノールメタノールプロピレングリコールと混和性)

Insoluble in acetone, benzene, carbon disulfide, CCl4, chloroform, diethyl ether, petroleum ether, THF, vegetable oils(アセトン、ベンゼン、二硫化炭素、四塩化炭素、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、サラダ油に不溶)


…という詳細な(まぁマイナーな溶媒もあるので、何でこいつらがピックアップされてるのかは謎ですが)溶解性のデータも載っていました。



一方、エタノールの同Wiki記事には…

www.sciencemadness.org

Miscible with almost all organic solvents(ほとんど全ての有機溶媒と混和性)

Immiscible with perfluorocarbons(パーフルオロカーボンと非混和性)


…と、流石はエタノール、ほとんど全ての溶媒と完全混ぜ混ぜ可能とは凄いぜ!…と思いましたが、どう考えても全ての油系がエタノールと混和性を示すことはなくない?と思えたので簡単に調べてみたら……

www.ncbi.nlm.nih.gov
↑こちらの論文で、PAOというオイルの各種アルコールへの溶解性が調べられていましたが、粘度の低いPAOなら「可溶」となっていたものの、粘度が高くなると「不溶」となっていたので、やっぱり流石のエタノールでも、「どんな油とどんな割合でも混ぜることが可能」ってわけではないようです。

 

とはいえ、エタノールは-OH基が極性を作っている一方、炭素と水素の骨格は極性のない部分なので、それなりに極性のある溶液もない溶液とも混ざりやすいという万能性はある気がしますね。

 

あぁそうだ、関連して1つ触れておこうと思っていたネタを思い出したので、最後それだけ触れておしまいとしようと思いますが、グリセリンのウィ記事(↓)に…

ja.wikipedia.org

ミネラルオイルクロロホルムのような無極性溶媒には溶けない


…などとあったんですけど、ミネラルオイル=油は典型的な無極性溶媒(=炭素と水素だけで、電子の偏りがない)なわけですけど、クロロホルムには、電子を強く引っ張る性質のある塩素原子が3つも存在しますから(もちろん炭素と手をつないだ4つの原子全部が塩素なら対称形になり極性はなくなりますが、4つの内1つは水素なので、電子の偏りは結構大きいはずです)、「これは流石に『無極性溶媒』では絶対ないやろ…」と思えてしまえました。

 

まぁお世話になってるウィッキー先生ですが、編集の仕方も知らないしそのまま放置させていただきますけど、有志の手で作られるWikipediaにはやっぱり多少のミスもある、って感じといえそうですね。

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