補足ネタに脱線を続けていましたが、改めてご質問でお尋ねに与っていた点に戻ってまいりましょう。
既に何度も引用コピペさせてもらっていますが、以下のアンさんよりいただいていたご質問ですね。
銅についてですが、
銅イオンもやっぱり液体の中でしか存在せず、コレっていう(私がわかるレベルの)ものはパッとは出てこないというのはわかりました。
例えば10円玉もそうですし、銅そのもの(固体)っていうのは、銅イオンと何らかの陰イオンが手を繋いでいるということですが、「何らかの」陰イオンと書かれているように、陰イオンはたいして重要でもない感じなんですかね?陽イオンである銅イオンの方をとって銅というくらいですし。(逆に銅の陽イオンだから銅イオンということなのかもしれませんけど)
⇒そんなわけで、前半の「銅イオンは液体の中にしか存在しない」というのは、ここ最近の記事で見ていた通り、自由に動けて、他の原子なりイオンなりと反応する準備万端の銅イオンというのが液体の中にしか存在しない……と考えれば、これはまさにその通りの話になっています。
ただし、単体の銅、つまり10円玉なんかで目にする金属の銅も、実は銅イオン同士が手をつないだ状態であるともいえるっちゃいえるんですけど、しかし実際は、全体を漂っているとはいえ等量の電子も一緒に存在している形になっていますから、「別のイオンなどと容易に反応できる状態の、いわゆるプラスの電気が剥き出しの銅イオン」ではないといえますから、やはり単独で遊離しているイオンは液体のみという考えは問題なくOKといえる……というのは前回触れていたことのおさらいでした。
そして後半の「銅そのもの(固体)っていうのは、銅イオンと何らかの陰イオンが手を繋いでいる」という部分は、改めて、例えば酸化されて表面がくすんだ銅なんかは、銅イオンと酸化物イオンが手をつないだ物質といえますけれども、金属の銅そのもの本体は、銅イオンのみがつながった物質といえる形です……ってのも前回触れていた話で、その次のポイントに行きますと…
「『何らかの』陰イオンと書かれているように、陰イオンはたいして重要でもない感じなんですかね?」という部分は、これはそうでもない感じ、つまり、パートナーである陰イオンも、どんな物質になるかにおいてクソほど重要、といえる点になっています。
例えば同じ金属であるナトリウムで考えると、陰イオンに塩化物イオンが来ますと、これはNaClでただの食塩になる一方、水酸化物イオンが来ますと、NaOHで、代表的な強塩基性物質の水酸化ナトリウムになるという感じで、「しょっぱくてオイチー!」物質から、舐めてしまうと「苦くて舌が爛れ死ぬぅ…!」という危険物質に様変わりするわけですね。
そんなわけで、銅の化合物も、パートナーの陰イオンによって様々に、色も性質も変わってくる感じになっています。
とはいえ、イオン結合の物質は金属の方が大きい元素であることが多いですし、銅の化合物は基本どれも「まぁ銅っぽい」感じといえますから、どちらかといえば陽イオン側の銅イオンが主役で、陰イオンはちょっと彩りをそえるだけの添え物的なイメージは、決して間違っているわけではないと言えるかもしれませんね。
陰イオンがついてどのような物質になるかは、高校の無機化学に範囲で、代表的なものをひたすら覚えさせられる感じになっています。
銅にはどんな化合物があるでしょうか。
WikiP先生の記事(↓)に代表的なものが挙がっていたので、拝借させていただきましょう。
主な銅の化合物
まさに、高校化学で簡単な性質について覚えさせられたおなじみのやつらですね。
とはいえ硫化銅や塩化銅は、ウィ記事の内容も貧弱ですし、特に試験に出ることもまずなかったかな、と思える雑魚かもしれません。
(むしろ、硫化銅より水酸化銅とかの方がより「主な」感があるような…って気もしますが(笑))
やはり中学以来おなじみの酸化銅と、あとは粉末も溶液も鮮やかな青でおなじみの硫酸銅が、「銅といえばこれ」的な、よりおなじみのやつらといえる感じでしょうか。
(まぁ、硫酸銅は自分の実験でたまに使うことがあるから馴染みがあるだけかもしれず、そないそこまでメジャー化合物でもないかもしれませんけれども、生化学の分野では本当に割とよく使う物質になっています。)
それよりも気になるのが、塩化銅や酸化銅の横にある、ローマ数字 (I) と (II)……
これは何ぞやと思えるポイントですけど、実は、そもそも銅という元素は、例の周期表を見ていた記事を思い出していただけると分かる通り……
…銅は11族……例の、挙動があやふやであんまり分かりやすい形にはなっていない、真ん中に位置する「魔境ゾーン」にいる元素でして、必ずしも電子2個を失って二価の陽イオンになるとは限らず、場合によっては電子を1個だけ失って一価の陽イオンとなって安定することもある物質だったんですね!
つまり、酸化銅(I)というのは、銅がCu2+という中学以来おなじみのイオンになって酸素と結合しているのではなく、Cu+という一価の陽イオンとなって、酸化物イオンO2-とくっついている=Cu2Oという物質になっている、って形なわけです。
なぜイオンの価数が変わるのか…?
その理由については、当然これも電子の挙動ですから、例の電子軌道の話になるわけですけど……
簡単に振り返ってみようと思いましたが、高校生と思われる子のYahoo知恵袋の質問に、専門的な知識をお持ちであろう、のんびりネコさんという有志の方が完璧に解説してくださっている記事が見つかりました(↓)。
全て僕が書こうと思ってたのとドンピシャ同じ内容で、「これ俺が書いたことにならんかな…?」と思えましたが(笑)、まぁいずれにせよ発展的な内容なので特にここでは引用もしないものの、非常に分かりやすい説明がされているので、興味のある方はぜひご覧ください、という感じですね。
(一応、例のspd軌道のエネルギーの安定さの順番が入り組んでいることから生じるあやふやさがあるのです、みたいな話だといえましょう。)
そんなわけで銅イオンには実は二種類あり、もちろん電子余りの金属なのでどちらも陽イオンであることには変わりないのですが(流石に、電子が余ってる原子がさらに電子を受け取って安定することはないため、銅が陰イオンになることは通常あり得ない形です)、Cu2+とCu+の2パターンがあって、どちらにも安定的な化合物が存在する、という話でした。
(上記「主な化合物」には明記されていなかったものの、硫化銅や硫酸銅にも一価二価どちらも存在しています。)
とはいえ、中学以来おなじみ「銅はCu2+」というイメージなのは間違いではなく、基本的に通常の条件(常温)でより安定しているのは二価の方であり、普通に理科室で銅と酸素を反応させたらCuOになりますし、硫酸銅も実験室で使うのは100% CuSO4ですね。
一価の銅イオン化合物は、「そういうのもいる」ぐらいで、あんまり意識する必要はないものな気もします。
あとせっかくなので銅についてもう少し、「炎色反応も綺麗」だとか、「導電率が極めて高い」といった豆知識も書こうと思いましたが、何気に炎色反応は既にずっと前、ミネラルシリーズの記事(↓)でちらっと触れたことがありましたね。
ただこの時はあんまり詳しく触れていなかったので、また例によって語呂合わせの覚え方だけ紹介しておきましょう。
高校化学で覚えさせられた炎色反応の色、例のごとく語呂は色々な流派があると思いますが、僕はこれでした。
- リアカーなきK村、動力カット、馬力するべぇ
(Li赤 Na黄 K紫、Cu緑 Ca橙、Ba緑 Sr紅)
というわけで、銅は緑色の炎になるという結構カッコいいやつなんですけど、生で見たら結構印象強かったものの、写真だとそないでもないかもですね(笑)。
炎色反応は、花火なんかでもよく使われますし、緑はバリウムもあるものの恐らく銅の方がより使われているのではないかと思います。
一方、導電率については、銅は極めて高い導電率=電気を非常によく通す物質なんですけど、↓の銅加工.comの解説記事にもある通り……
…実は銀の方が値としては微妙に高く、何となく色も地味だし負け組の印象がある銅はここでもNo. 1になれなかったわけですけど(なお、導電率に関してだけは、金>銀>銅ではなく、銀>銅>金となっています。イオン化傾向は金銀銅の順番なのに、面白いですね)、しかし、その差は微妙&銅はそのショボさのおかげで値段が銀より圧倒的に安いので、普通の電線には銅が使われることが圧倒的に多いわけですね。
良かったな銅、ここでは珍しくおめぇが主役だ!(笑)
あとアイキャッチ画像用に各化合物の色も貼ろうと思いましたが、既に炎色反応で画像はお借りしていたため、リンクカードに表示されるもので十分でしょう。
(最初の塩化銅は、(I)と(II)で微妙に色合いが違うのですが、塩素も黄緑色なだけあって、これはどちらも緑系です。)
それでは次回もまたこの続きのご質問を見ていこうと思います。