今回も引き続き、アンさんよりいただいていたご質問を見ていく形ですね。
こちらは、石灰ファミリーに触れていたこちらの記事(↓)へのコメントです。
早速参りましょう。
石灰ファミリーについては、石灰はカルシウムっていうぼんやりした知識しかなく、違いについては全く認識していませんでしたが、登場していた4つの石灰って、ファミリーというくらいなので、まぁ当然っちゃ当然なのかもしれませんけど、、
生石灰と水で消石灰、消石灰と水で石灰水、石灰水と二酸化炭素で石灰石、
みたいに横に繋がった感じなんですね。(縦かもしれませんけど笑)
『「石灰石にうすい塩酸をかけると、二酸化炭素が発生する」ということからも分かる通り、「酸と反応する物質」であるため、こいつも間違いなく塩基性物質だといえる…』ということで、ちょっとややこしいことを言いますが、塩基が酸と反応してできた二酸化炭素は「塩(えん)」ということになりますか?そして、石灰水と二酸化炭素が反応してできた石灰石も「塩(えん)」なんですよね?(記事中に書いてありましたね。)ということは、、というか、「塩(えん)」っていうのは、ただ塩基が酸と反応してできたものをそう呼ぶだけってことなんですかね?
もしそうなら、敢えてややこしくなりそうな「塩(えん)」じゃなくても、何でも良かったんじゃないですか?笑
⇒まぁ「ファミリー」は僕が勝手に呼んでただけで正式名称でも何でもないのですが(笑)、そう呼びたくなるぐらいに、お互いに密接につながりのある間柄という感じですね。
二段落目の、「塩基が酸と反応してできた二酸化炭素は『塩(えん)』ということになりますか?」という部分は、これは実に鋭いポイントで難しい所ですけど、そもそもの石灰石と希塩酸の反応はこういう形になります。
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + CO2 + H2O
この場合、もちろん石灰石=炭酸カルシウムは、酸(塩酸)と反応するため塩基性物質といえるんですけど、純粋な塩基というより、実はこれ自身が既に塩なんですよね(カルシウムイオンと炭酸イオンがくっついたもの)。
なので、純粋なアルカリではないことから、いわばこいつの陰イオン(炭酸イオン)からは、水以外にもう1つ別の物質が生成するといえまして、それが二酸化炭素であり、要はこれは反応で生じる副産物、いうなればゴミみたいなものといえる感じだと思います。
(ちなみに陽イオンの方からは塩化カルシウムが生じるわけですが、これは完全に紛うことなき「塩(えん)」ですね。)
つまり、この反応で生じる塩は塩化カルシウムであり、二酸化炭素はまぁ不純物…ってわけでもないですが、水みたいなものといえますから、水を塩とは決して呼ばないように、二酸化炭素も塩とは呼べない感じになっています。
(二酸化炭素は炭素を含むのに有機物のグループにも入りませんから、まぁ独特なやつって感じですね。)
とはいえ改めて、その辺は単なるネーミングで、そこまでこだわる意味がない点かなとは思います。
(=別に二酸化炭素が塩だろうが塩じゃなかろうが、この反応が上のような反応式になることさえ知っていればどうでもいいともいえる。)
続いての「石灰水と二酸化炭素が反応してできた石灰石も「塩(えん)」なんですよね?」は、あぁまさに今上で書いていた通り、石灰石=炭酸カルシウムは塩ですね。
結局「塩」というのは、まさにこないだの記事(↓)で多少触れていた通り…
…アンさんの書かれていた「酸と塩基が反応してできたものをそう呼ぶ」というのは本当にその通りで、「そんなややこしい名前付けんなや!」ってのもまさにその通りだといえましょう(笑)。
(でもまぁ「塩のもと」で塩基なわけで、あえていえば「塩基」の方が、もっとこう何というか、ハッキリ違う名前でもよかったのに…って思える感じかもですね。
その意味では「アルカリ」の方がいい名前である気はします。)
それでは関連ご質問の続きに参りましょう。
「ジェットボックス」ですが、確か1度紐を引っ張った経験があって、崎陽軒のシウマイは食べたことないので、何だったんだろう…?と思って考えてみましたところ…
↑全部は読んでいませんが、この感じだと神戸の駅弁だったのかもしれません。
あつあつになったという記憶すらありませんけど笑
こちら、↑有料記事なので、続きを無料で教えてください笑
は、わかりましたけど。
化学式に熱って何やねんって感じです笑
あ、でも、個包装のお菓子なんかに入っている乾燥剤みたいなやつ、開封すると熱くなりますよね?それも恐らく、化学式に熱ですね?笑
⇒へぇ~、今でこそ崎陽軒のシウマイとかが有名ですが、日本初の加熱式弁当は、神戸発だったんですね…!
加熱が始まったら、「これ大丈夫なんか…?」とやや恐怖を感じるぐらい激しくアチアチになるため、気付かないレベルであったのなら、もしかしたら失敗された可能性も無きにしも非ずかもしれません(笑)(どうもこの手の製品は、間違って加熱が始まらないように、かなり丈夫にできているらしいので)。
仕組みの方、実は僕もこないだの石灰ネタでその記事を貼ろうと思ったんですけど、有料記事だったからやめておいた記憶があります(笑)。
検索したら、加熱容器を製造されている株式会社シンギのサイトにほぼ同じイラストがあったので、そちらの画像をお借りさせていただきましょう。
「化学式に熱って何やねん」というのは非常に良いご着眼点で、実はこれは中学で習ういわゆる化学反応式とは全く別物で、高校化学で習う、「熱化学方程式」というものなんですね!
まぁもちろん厳密な記述ではないものの、「方程式」だけあって、式の両辺は化学反応式でおなじみの「→」ではなく、「=」になっています。
あと高校で習うちゃんとした熱化学方程式の特徴としては、
- 物体の状態(固体・液体(溶液)・気体)を併記する
- 熱は「熱」という文字ではなく(笑)、実際に変化する熱量の数字を「kJ(キロジュール)」単位で表す
…ってポイントがありますね。
検索したら、ちょうど似たようなネタで学生と思われる子が知恵袋で問題の質問をしているのを見かけました。
唯一付いた解答は考え方を示すものだけで答を出してくれていなかったので、せっかくなので考え方の紹介とともに解いてみるといたしましょう。
質問というか問題は以下の通りですね。
酸化カルシウムは水と反応すると水酸化カルシウムになり、この反応は次の熱化学方程式で表される。
CaO(固体)+H2O(液)=Ca(OH)2(固)+65kJ
酸化カルシウム2.8gを水200mLに完全に溶解させ、その後すばやく1.0mol/Lの希塩酸200mLを加えた。このとき発生した熱量の合計は何kJか求めよ。ただし、水酸化カルシウムの水への溶解熱は17kJ/mol、中和熱は56kJ/molとする。原子量:Ca 40 O 16
こちらはちゃんと正しい熱化学方程式が記述されていました(まぁ問題文を書き写しただけでしょうから、当たり前ですが)。
この熱化学方程式が意味するところは、「酸化カルシウムを水に溶かすと、水酸化カルシウムとなり、65 kJの熱が発生する」ということですが、ポイントとしては、この65 kJ…というか熱化学方程式が表す熱量というのは、物質1モルを反応させたときに発生する熱を表している、って点ですね。
モルってのは例によって化学に慣れていない方からすると意味不明な単位かと思いますけれども、12個のものをまとめて「1ダース」と呼ぶように、6×1023個のものをまとめて「1モル」と呼んでいるだけの、単なる個数を意味する単位に過ぎない、って話でした。
そして「原子量」というのは、原子1モルの重さ、あえて書けば「g/mol」(=1モルあたりのグラム数)と表すことのできる数字でした。
(なお、以前「原子量は必ず問題文で与えられるので覚える必要はない」と書いていた通り、問題文の最後に必要な原子量はちゃんと記述されています。)
以上を踏まえて、順番に見ていきましょう。
まず、「酸化カルシウム2.8 g」を水に溶かしたわけですけど、熱化学方程式は「1モルの物質を反応させたときに発生する熱」を示しているため、この2.8グラムのCaOが「何モルに当たるのか?」を求める所から始めなければいけない感じですね。
CaOという物質は、最後に表示されている原子量(Caが40、Oが16)から、1モルで56グラムになる、つまり56 g/mol(グラム・パー・モル)であることが分かります。
では、2.8 gのCaOは何モルなのか?
まぁこれは小学生レベルの計算ですけど、こういうときの「掛ければいいのか割ればいいのか、割るならどっちからどっちを割るのか…?」みたいなごっちゃになりがちなポイントは、以前の記事でちょっと書いてましたけど、もう完全に「単位に頼る」のがベストだといえましょう。
つまり、「2.8 g」と「56 g/mol」の2つから、今は「mol」という単位を作りたいので(=「何モルか?」を求めたいから)……
2.8 (g) / 56 (g/mol)
のような割り算をしてやれば、「g」は約分されて消えて、「mol」は分母の分母で分子に移動しますから、残る単位は「mol」となり、今知りたいものを求める計算になっていることが一発で一目瞭然、完全に自信を持って断言できるんですね!
そんなわけで、CaO 2.8グラムというのは、2.8/56で、1/20=0.05ですが、ここも計算問題の鉄則で、小数点とかマジで書くのもメンドイし、位の取り違えが起こる可能性すらある吐き気を催す邪悪ですから、可能な限り「倍数単位」を用いて簡単な数字に変換するのが一番賢いやり方だと思います。
つまり、0.05 molではなく、僕なら絶対にこれは「0.001倍=1/1000倍=10-3倍」を表す「m(ミリ)」を用いて、50 mmol(ミリモル)と表して計算を進めます。
補足が長くなりましたが、計算の結果、この問題では50 mmolのCaOを水と反応させたときに発生する熱を求めればいいということが分かった感じですね。
熱化学方程式を見ると、CaOを水に溶かしてCa(OH)2が生成する際に発生する熱は、65 kJとのことでした。
これは1 molのCaOあたりで生まれる熱ですから、分かりやすい単位を付けると、いわば65 kJ/molということですね。
そして、今実際に反応させるCaOは50 mmolでした。
この2つから、「何キロジュールか?」を求めるにはどうすれば良いでしょうか?
まぁこれは流石に単位を考えなくても余裕ですけど、「kJ/mol」と「mol」から「ジュール」だけを残すには、両者を掛け算してやれば、「mol」が約分されて消えて、求めたい「kJ」だけが残る形になってるわけですね!
そんなわけで、50 (mmol) × 65 (kJ/mol) = 3250
…となるわけですが、ここで倍数単位に注意が必要で、今、左の「mol」には「m(ミリ)」が、右の「kJ/mol」には「k(キロ)」がついていました。
ミリは1/1000倍で、キロは1000倍なので、実は、この計算では倍数単位も相殺されて消えるんですね!
(ミリ×キロ=1)
よって、ここで出した数字の単位は、キロの付かない「ジュール」のみであることに注意が必要といえましょう。
結論は、2.8グラムのCaOを水に溶かしたら、3250 J(キロなしのジュール)の熱が発生するということでした。
ぶっちゃけこれだけでもう今見たい話はほぼ終わりなんですが、この化学の問題集は、もうちょい発展的なことを学生に学んでもらいたいようです。
せっかくなので付き合いましょう。
発生したCa(OH)2は、熱化学方程式をよく見れば分かる通り、「固体状態の水酸化カルシウム」となっていました。
これが水に溶ける際も、実は熱を発生するので(=溶解熱)、そこも考慮する必要があるってことですね。
(まぁ、実際の加熱弁当箱でもこの部分は考慮する必要があるので、ここまでは意味のある考察といえるでしょうか)
どのぐらいの熱が発生するかは、問題文に書いてありますね。
17 kJ/molとのことなので、熱化学方程式を書けば、こんな感じになるわけです。
Ca(OH)2(固)+ H2O(液)= Ca(OH)2(溶液)+ 17 kJ
今回の問題では、50 mmolの水酸化カルシウムが水に溶けるのでした。
(1個の酸化カルシウムから1個の水酸化カルシウムが発生するのは最初の式から明らかですから、50 mmolのCaOは50 mmolのCa(OH)2になってる、ってことですね)
よって、溶解熱も追加で、50 mmol × 17 kJ/mol = 850 J が発生してくる、という形です。
そしてここからが「余計なことしやがって…」と思えるポイントで、なぜか塩酸を加えて中和をするようです。
中和熱は56 kJ/molとのことなのですが、多分問題製作者はここで受験生の知識を問いたかったのでしょう、中和熱の熱化学方程式は、「中和の結果生じる水分子1モルあたりの熱量を表す」という約束があります。
つまり、
Ca(OH)2(溶液)+ 2HCl(溶液)= CaCl2(溶液)+ 2H2O(液)+ 56 kJ
…となるかと思いきや、中和反応においては主役は酸や塩基ではなく「水」なので、水の係数を1にせねばならず、正しくは…
1/2 Ca(OH)2(溶液)+ HCl(溶液)= 1/2CaCl2(溶液)+ H2O(液)+ 56 kJ
こうなるのでした。
とはいえ、今考えている主役分子はCa(OH)2なので、こいつの係数が1になるように、両辺を2倍しましょう。
Ca(OH)2(溶液)+ 2HCl(溶液)= CaCl2(溶液)+ 2H2O(液)+ 112 kJ
ということで、1モルの水酸化カルシウムは、(2モルの塩酸と反応して)112 kJの熱を発生するということが分かるわけですが、今反応させるのは50ミリモルのCa(OH)2であり、塩酸は過剰量加えているので水酸化カルシウムは全部中和反応でなくなる感じですね。
(ベストアンサーには、ヒントとして「全部反応しないかもしれないことに注意」と書かれていましたが、この問題では塩酸は十分量(1 mol/Lを200 mL=200 mmol)加えているので、全てのCa(OH)2が反応するといえます。
例えば塩酸も50 mmolしか加えなかったとしたら、中和反応は1:2の比率で起こるため、25 mmolのCa(OH)2しか反応しないことに注意が必要といえましょう)
よって、中和反応で生まれる熱は、50 mmol × 112 kJ/mol =5600 Jということが分かりました。
ということで、ようやく辿り着いた答ですが、この問題文で行う操作からは、3250 + 850 + 5600=9700 J、つまり9.7 kJの熱が発生するということですね!
長々と書いた割に、「9.7 kJ」とか言われても何の意味も分からなくて、得られるものが何もネェェ~!(笑)
既にかなりややこしいですが、せっかくなので「ジュール」ではなく、「℃の温度変化」にまで最後視点を移してみるといたしましょう。
「J(ジュール)」というのは、検索したらいくらでもデータが出てくる通り(例えば↓の静岡県総合教育センターより)…
水1gの温度を1℃上げるのに必要な熱量は、約4.2Jです。
とありますから、これは「4.2 J/(g・℃)」と表せますね(=1グラムの水・1℃あたり、4.2 Jが必要)。
それを踏まえて、先ほどの計算で求めた反応で、水溶液は何℃上昇したのでしょうか…?
発熱は、9700 Jでした。
問題文を読み直してみると、この反応はまず水200 mLに、さらに塩酸を200 mL加えた、合計400 mL……まぁ塩酸は水とは若干密度が違いますが、ほぼ影響はないと考えて、400ミリリットル=400グラムの水と考えましょう。
「4.2 J/(g・℃)」から、まずグラムを消すと、「400 g」を掛け算すればよく、
4.2 J/(g・℃) × 400 g =1680 J/℃
となり、今考えている「400グラムの水」は、1℃上げるのに1680 Jが必要だということが分かるわけですね!
では、「9700 J」と「1680 J/℃」から求めたい「℃」を残すにはどうすればいいかというと、「前者÷後者」をすれば、「J」は約分して消えて、「℃」は分母の分母で分子に移動してこれだけ残りますからそれで完璧(まぁこれも、単位を考えなくてもこのぐらいなら明らかですが)…
9700/1680=約5.77℃の温度上昇が発生するということなんですね!!
…ってあれ、「たった5.77℃とか、生石灰は弁当をジェット加熱できるんとちゃうんか?5℃ちょいって、そんなんもう誤差やんけ!」と思える気がするかもしれませんが、まあまあ、これはペットボトル1本ぐらいの、400 mLもの水を温めているわけですからね!
しかも、たったの2.8グラムのCaOで、です(小さじ半分ぐらいですね)。
ジェットボックス弁当にどのぐらいの水が入っているのか分かりませんが、まぁ例えば中袋1つ分、20 mLぐらい入ってるとしましょうか。
その場合、水の容量は今考えていた状況の1/20しかないので、当たり前ですが今求めた20倍の温度上昇が見込めるわけで、これだけで115.4℃も上がる計算になり、水の沸点は100℃ですから、余裕で沸騰が起こるぐらいの超加熱が行われることになるんですね!
まぁ上の計算には弁当にはない「塩酸での中和」が入っていましたけど、それを無視しても半分弱の熱の発生であり(普通に9700から中和分の5600を引いた4100が生石灰の反応による発熱ですから、4100/9700倍すればいいだけですね)、水が半分程度なら全く同じ沸騰超えの発熱になるし、あるいは生石灰を倍加えても同じ発熱になるので、弁当箱サイズに設置された小細工でも、沸騰させるのはマジで現実的に容易なぐらいの燃え上がるほどヒート!が発生するのは明らかだといえましょう。
ってことで、無駄にクソ長くなりました…。
正直こんな長々と見るほどの話でもなかった気がしますが(笑)、割と現実の話に密着しているし、面白い内容だったように思います(計算自体は複雑ですが、順を追って、特に単位に着目してやれば、案外小学校の四則演算のみですしね)。
では次回もご質問の続きを見てまいりましょう。