ビッチの謎に迫る

まぁ迫るほどの謎があるわけでもないですけど(笑)、「ビッチ」という罵倒語・暴言に関して、個人的に気になった点を1つ見ていこうかと思います。

 

大した話でもないのですが、こないだのこの記事(↓)で紹介していた白人少年と黒人少年のケンカ動画にて……

con-cats.hatenablog.com


…白人ボーイが、明らかにより屈強な黒人ボーイに向かって「ビッチ!」と吐き捨てるように言い、周りの生徒から「プーッ クスクスクス」という冷やかしの笑い声が漏れてくるシーンがあったわけですけど、最初僕はこれを見たとき、「いやこんな強そうな少年に『ビッチ』って、興奮しすぎて頭が変になったのかな?そら笑いも起こるわね」などと思えてしまったのですが、冷静に考えたら英語を母語とする人が男女間違えて言ってしまうなんてのもおかしな話ですし、さらにその後見ていた先日のレンドン選手の動画でも、(レンドン選手の聞き間違いの可能性もあるものの)「俺のことビッチっつったな?」と観客につっかかっており、仮にその発言が勘違いであったとしても、少なくともそう勘違いして怒っている以上、「メジャーリーガーという屈強な大男に対してすら、ビッチと野次を飛ばすことは、普通に考えてあり得るとみなすのが自然なのではなかろうか?」……と、考えを改める形になっていたのです。


要は、「ビッチ」というのは「売女・アバズレ・ヤリマン」的な意味の、女性への(女性にのみ使われる)侮辱語だと思っていたんですけど、どうやらそうではなさそうで、どうも英語だと男性に対しても使われる言葉のようだぞ、その場合は一体どういう意味になるのだろう?……というのが、この語に対して抱いた謎だったという感じですね。

 

まぁその点に関しては、実際使われることもあるし、その場合は基本的には「女々しい野郎」というニュアンスになるという、冷静に考えたら「そりゃまあそうでしょうね」としかいえない話でおしまいになるんですけれども(笑)、せっかくなので検索してみたら、そのものではないけれど似たような疑問がStackExchangeの方でなされていたため、今回は(記事水増しのために)そちらに触れてみようと思い立った次第でした。

 

こちらの記事ですね(↓)。

 

english.stackexchange.com

Q&Aがかなり賑わっていて大量のコメントが付いており、全部引用はあまりにも長くなりすぎるため、スコアの高いもの・興味深いもののみを抜粋して引用させていただこうかと思います。

 

user73091(質問者、上位48%に位置する回答者でもあり):「ビッチ」という語に、男性に対応するものはある?(質問スコア19点)

 

「ビッチ」という語を男性に対しても用いることができるってことは知っているんだけど、何となくフェミニン(女性的)なニュアンスがあると感じてしまうんだ。

女性的な意味合い抜きに、「ビッチ」の性質を持つ人を表す口語的な表現はないのかな?

なお、それはさておき、Wikipediaにはこうあるね…

男性に当てはめると、bitchは、自分が見下している人への蔑称になる。

このことは、ビッチが男性に適用される場合、その意味を完全に失うということを示しているのだろうか?この言葉は下品でインフォーマルなものなので、そもそもそんなことは問題ではない…?

(※この質問投稿には、結構な数のコメントが付いていました。回答投稿へいく前に、目ぼしいコメントから見ておきましょう。)

Janus Bahs Jacquet(上位0.51%に位置する超優良回答者):コメントスコア10点

Bitchは、女性に当てはめた場合でも、見下し的な意味を持ち得るよ。しかし、女性に適用される場合は、他の様々な意味も持つ感じだね。最も基本的な意味は、単に「女性を呼ぶ際の軽蔑的で侮辱的な名前」であり、その定義で単に「男性」へと置き換えれば、何百とは言わないまでも、何十もの失礼な言葉が見つかることであろう(asshole(ケツアナ)、 bastards(バスタード)、fucker(ファッカー)、idiot(バカ)、fuckwit(能無し)、shitface(クソ面)など)。これらとビッチの唯一の違いは、ビッチが特に女性を指しているということだね。ビッチの何を、他の全ての語が通用しないような男性に移したいんだい?

 

user73091(質問者):

@JanusBahsJacquetさん、それはどれも使えるんだけれども、男性に対しての普遍的な用語はないかなぁ、と模索しているんだ。女性に対してのビッチと同じようなね。

 

Janus Bahs Jacquet:コメントスコア7点

先ほどの言葉は全て女性にも使えるけれど、どちらかというと男性に適用されることが多いね。ビッチが(汎用的な侮辱として使われる場合)女性にしか適用できないのと同じように、男性にしか適用できない汎用的な侮辱語があるかどうかを聞いているのかな?個人的には、dick(head)がその良い例だと思うけれど、どうだろう。

 

user73091(質問者):

あぁ、そうだね!ありがとう、それは完璧にフィットするね。


(※以下、回答投稿です。読者のスコア的にはコメントも書いていたJanusさんの回答より高いものがありましたが、質問者はJanusさんの回答をベストアンサーに選んだようで、まずそちらからですね。)

Janus Bahs Jacquet:回答スコア34点(質問者の選んだベストアンサー)

コメントで明らかになったことだが、この質問での正確な目標は、汎用的な侮辱として使われるときに「bitch」が女性にのみ適用されるのと同じように、男性のみに適用される汎用的な侮辱語を見つけることなんだね。

そのようなものとして、dick(head)douchebagwanker(主にイギリス英語)、またはprickを提案しよう。

これらは全て、罵声を浴びせられている人について特に何かを暗示したり注目したりすることのない、極めて汎用的な罵倒の言葉であるが(例えば、ターゲットの知能、あるいはその欠如に注目している「idiot(バカ)」「moron(マヌケ)」といった語とは異なり)、女性に向けて使われることはまずない言葉だといえるね。


編集追記:

コメントにも書いたように、これらは汎用的な意味だけでなく、より具体的な意味を持つこともある。誰かが何かについてdickなヤツだと言ったなら、それは通常、その相手が見下したような、強情な、横柄な態度で行動していることを意味している。このニュアンスは、単にこの言葉を代名詞に付加的に使用した場合、つまり、誰かに向かって「You dick!(この野郎!)」と言った場合には欠落するものである。

(※こちらの回答ポストにもいくつか興味深いコメントが付いていたので、一部引用しておきましょう。)

Brilliand

挙げられた用語は、ほとんどが男性の生殖器を指すものであり、だからこそ女性には転用しにくいといえる。そのため、「bitch」よりも「cunt」との共通点が多いといえるのではないか。(「wanker」は 「bitch」に近いかもしれないが。)

 

Janus Bahs Jacquet:コメントスコア3点

@Brilliandさん、その通り―ただし、cuntは(twat同様)女性だけでなく男性にもよく使われるが、男性の生殖器を表すものは女性にはほとんど使われないという事実を除いてね。そして、douchebagは論理的には性別に全く関係なく使われるはずの言葉だが、個人的には女性に使われたのは一度も聞いたことがないように思う。

 

Phil Perry(上位59%に位置する回答者):コメントスコア1点

@JanusBahsJacquetさん、個人的には、その2つの言葉が男性に適用されるのを聞いたことは一度もなく、女性にのみ(侮辱として)適用されると言わざるを得ない。

 

Janus Bahs Jacquet:コメントスコア3点

@Philさん、であるならば、私は、君がアメリカ人であると強く思う―イギリスでは、女性を呼ぶよりも男性を「cunt/twat」と呼ぶ方がより一般的である。おそらく、男性について使う方が(何となく)不快感が少ないからであろう。

ちょっと面白い例として、この記事を参照して欲しい(※残念ながらリンク先のニュース記事は既にリンク切れでした)。

 

Phil Perry

そう、私はアメリカ英語話者で、イギリス英語の下品な言葉にはあまり出会ったことがないね(モンティ・パイソンやベニー・ヒルを好んで覚えているくらいかな)。とにかく、こちらの国では、私が言ったことはまだ有効といえる感じだね。

 

Jaydles(上位10%に位置する優良回答者):コメントスコア4点

「dick」に+1票―少なくとも25~45歳の人の間では、アメリカのスラングで最も近い意味を持つように思う。また、性別が限定されていること以外、これらが完全に汎用的であるかどうかは定かではない。「bitch」と「dick」はどちらも、他者に対して意地悪や粗末な扱いを意味するという点で、特定のネガティブな性質を有しているね。

 

JW Lim:コメントスコア1点

Douche(bag)は間違いなく性別に関係ない言葉だ。女性がdouche(bag)sやtoolと呼ばれるケースをよく耳にするよ。個人的には、Bastardの方が男性に特化していると思えるかな。

 

Janus Bahs Jacquet

@JWさん、ここでも地域的な慣習が作用しているのだろうね。女性がdouche(bag)と呼ばれるのは聞いたことがないが、女性がbastardと呼ばれるのは何度か聞いたことがある。しかし、これは口語の深い話になるので、あまりはっきりしたことは言えない気がするね。


(※続いて最高スコアの回答です。)

ermanen(上位0.22%に位置する超優良回答者):回答スコア39点

最も一般的な意味では、「bastard」が同等の言葉であるといえ、最も普遍的な用語のように思えるね。(英語以外の、他のいくつかの言語の場合でさえも)

「You bastard!」と「You bitch!」のように。それでも、両者の間には異なる感覚が存在することはあり得ると言えよう。状況によるのである。

Etymonlineより:

男性に対する下品な罵倒の言葉としての使用は1830年から確認されている。

 

専門家の出版物からも、私の回答を裏付けるような文章が見つかった。

Andrea Greenbaumによる書籍「Emancipatory Movements in Composition(作曲における解放運動): The Rhetoric of Possibility」(2012年)から:

「Thesaurus of American Slang」では、bitchは 「A woman one dislikes or disapporves of(ある人が嫌いな、または不愉快に思う女性)」と定義されており、さらに詳しく知りたい方は、「ball-busterを参照」のこと。

 名詞。男らしさを奪う、または破壊する人。
 ball-wacker
 bitch
 nut-cruncher (Chapman 10)。

この言葉の現代的な用法は、もはや性的な領域(女性の乱れ)に縛られるものではなく、男性性に対立するものとして意味論的に変容しているのである: 「女性の官能性、肉欲さえ、不倫さえも、男性が女性の中で主に恐れ、軽蔑するものとして取って代わられたのだ。ビッチという言葉の現代的な色彩から判断すると、男性が女性の中で主に恐れ、軽蔑するものは力である」(Gross 151)。男性を侮蔑する同等の言葉であるバスタードとは異なり、ビッチは関係的であり、他者―すなわち男性の敵対者と対立するものとして見られる。ファロクラティックな世界観では、権力は本質的に階層的であり、したがって、女性への権限付与は、男性化によってのみ―つまり、ナッツを砕き、ボールを叩きつけるような、bitchになることでしか得られない。

 

Ashley Montaguによる「The Anatomy of Swearing」(1967年)から(注:〜50年前でも同じ考え方があるということだ。)

女性の場合、bastardに相当するのはbitchである。15世紀の原義では、この言葉は淫らな女性を指しており、この意味は今日でも強く残っているが、より一般的には、非常に不快な女性を意味するようになった。ここでも、この言葉の本来の力は性的な意味合いからきており、さらに現代では、不快な、唾棄すべき、という意味が加わっている。


原義に相当するものとして、manwhoreもある:

スラング)お金のために自分の体を売る男、男性売春婦。 

スラング) 性的パートナーやその関係の感情的な価値を顧みない乱暴な男。

:これは、現代的な用法では、むしろ「slut(ヤリマン)」に相当する。Slutは時々男性にさえ使われるものである。

Wikipediaでは、以下のようにも書かれている:(「ビッチ」について)

元々は14世紀に記録された下品な言葉で、発情期の犬に匹敵するような女性の高い性的欲求を示唆していた。現代の用法では、その意味の幅が広がっている。


urbandictionaryによると、「man bitch」という言葉もある。(注:この用法は一般的ではないが。)

ビッチのような行動をとる男。悪意のある、不快なわがままな人;特に女性のような。弱々しい、卑屈な人。

(※かなり難解な話でしたが、この回答ポストについていたコメント2件を引っ張っておしまいとしましょう。)

Apis Utilis(上位19%に位置する優良回答者):コメントスコア4点

この中では「bastard」が一番納得のいく選択だと思う。

 

Mari-Lou A(上位0.08%に位置する超優良回答者):コメントスコア7点

私ならバスタードを採用して、残りは捨てちゃうかな。

 

…と、他にもややスコアは低くなりますが「son-of-a-bitch(サノバビッチ、ビッチの息子)」だとか「dickがベスト」「絶対bastardだと思う」「原義的には『雌犬』なので、dogとか?」などといった意見もあり、本当にかなり多くの方が参加されている活発なトピックでしたけど、まぁ難しいことは抜きに、「dick(男性器)」「bastard」なんかがまさに、ビッチの男性版に相応しい呼び名といえそうですね。

(上記引用部では、以前スラングシリーズの記事(↓)で見ていたdouchebagや、前回のリストでも出てきていた、イギリス英語で強烈な意味であったwankerなんかも挙げられていましたね。

con-cats.hatenablog.com

…復習にちょうど良い感じでした。)

 

結構長くなりましたが、中々面白いお話だったように思います。

(翻訳まとめだけで力尽き、小学生並の感想で終わる形で恐縮ですが(笑))

 

 

ちなみに最後全然関係ない話に逸れますと、「ビッチ」といえば、僕はファッションブランドを思い出します。


高校生になって、中学までの白一色スニーカーから靴が自由になりまして、好きなものを自由に選べるようになったわけですが、僕が高校入学前に最初に選んだのが、「BITCH」という名の靴だったのです。

…とはいえ僕はファッションも完全にモグリですし、単に見た目が割と気に入ったから選んだだけであり、全くブランド名は意識しておらず、なんなら今でも本当にそうだったかあやふやだったんですけど、「Bitch 靴」で検索したら、オークションサイトでまさしく懐かしの、つま先に「BITCH」と書かれたあの靴が見つかりました!

https://fashion.aucfan.com/yahoo/f140982531/より

僕が選んだのは、紺ではなくベージュだったのですが、ちょっと厚底っぽい感じのこれ、懐かしいですねぇ~。

 

ちなみに、ブランド名なんぞ全く意識していなかったのになぜ覚えているかといいますと、ちょうど、クラスメイトにファッションとかそういうのがマジで好きな子がいまして、新しく履いて来たばかりの頃に、そのクラスメイトが「あ、ビッチの靴履いてるんだ。可愛いじゃん」と言ってきまして、「あぁ見た目が気に入ったから買っただけだったんだけど、割と有名なやつだったんだね」と思えたのが強く印象的だったから、というのがその理由になります。

 

(しかも、「ビッチ↑」という、若い子が言いそうな「カレシ↑」的な尻上がりの発音……他にはまぁこれ自体も古いというか既に絶滅済みですけど(笑)、PHSを「ピッチ」というのと同じ発音だったのが、より印象付ける出来事となった感じでした。

…まぁ、つま先にデカデカと「BITCH」と書かれているので、何度も履いていたから単に刷り込みのような感じで覚えていた、ってのもあるかもしれませんが(笑)、でも、あの若者発音で触れてくれたクラスメイトがいなかったら、特にこの名前は印象に残っていなかったような気もします。)

 

とはいえ、その発言を聞いたとき(もちろん買うとき・デカデカと書かれた文字を見たときも)は、マジで全くそんな単語は人生で一度も聞いたことがなかったので、まさかそんな放送禁止レベルの罵倒語の一種だとは夢にも思いませんでした。

この「ビッチ」って、割と最近になって使われ始めた言葉ですよね?

まぁ僕のいう「最近」は「21世紀になってからは全て」なので、最近と言ってももう20年以上前になりますし(笑) 、単にまだ高校生だったからその手の言葉に触れていなかっただけで、大人なら普通に聞いたことある言葉だったのかもしれませんけど、20世紀の頃は全く、それこそ「カント」なんて全く聞いたことがないレベルで知らない/全く見聞きした記憶のない単語だったイメージがあります。


ファッションに疎いので分からないものの、このファッションブランドも、「ビッチ」の意味がかなり日本人にも浸透するようになってしまい、「ちょっと良くない名前だったかな」と反省しているのではないか……というか、もしかしたらもうつぶれているのでは…?と思ったら、やはり、今ではもう存在しないブランドのようですね(↓)。

middle-edge.jp

デザインは個人的に好きでしたが、やっぱり名前も重要(あんまり汚い単語を使ってはいけない)という話かもしれませんね。

 

では、何度か続いていたダーティーワードシリーズも一区切りで、次回からはまた、途中状態だったご質問を振り返るコーナーに戻っていこうかなと思います。

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