続×26・英語スラングシリーズ:「道具」と呼ばれる男たち

前回は補足としてビーフの謎に迫りましたが(迫っただけで、抜本的な解決はせず(笑))、今回はまたスラングシリーズの本題に戻り、続きに参りましょう。


例によって、Verywell familyによる若者スラング55選記事(↓)を参考にさせていただいている形です。

 

www.verywellfamily.com
前々回までで残り1語となっていた「人間関係・人物描写」系のスラング、最後はこちらですね。

 

Tool - 愚かで、不快感にあふれ、粗暴であり、かつ/または自分自身を貶めるような人のこと、ジョックタイプであることが多い。


Toolというのは小学生でも知っている単語で、もちろんツール=道具という意味なわけですが、これを他人に対して使うのは、まぁ考えるまでもなく、誰かを道具呼ばわりなんて明らかに罵倒・侮蔑表現であることは容易に想像がつくわけですけれども、意味は「ツール」呼ばわりから何となく推測されるものとは若干違う感じのようですね。


日本語的な発想だと、誰かを「道具」呼びした場合、それは「パシリ」とか「都合よく便利に使える奴隷的扱い」みたいな感じなのかな、と思える気がしますけど、英語のTool、少なくとも今時のスラングでの使い方は、「ウザい乱暴者・見てて恥ずかしくなるようなバカアホマヌケ」という感じのようで、「ジョックタイプであることが多い」とあることから、基本的に筋骨隆々な男性に向けて使われがちな蔑称だといえましょう。


(ジョックはずっと前、↓のスクールカーストに触れていた記事でもチラッとだけ触れていましたが……

con-cats.hatenablog.com
…まぁ学生時代のスクールカーストでは頂点に位置する、アメフト部のスターなんかが典型例の、パワフルマッチョガイのことですね。参考:Wikipedia(↓))

ja.wikipedia.org

もちろんスクールカースト的には頂点に位置するジョックですが、そもそもカーストトップということは絶対数が少ないともいえるわけで、案外、羨望の眼差しを向けられるのと同じぐらい、陰では結構(カースト下位に位置する大勢の人たちに)バカにされる存在であるような印象もあります。

(まぁそれは嫉妬も込みではあると思いますけど、ステレオタイプなジョックはやっぱりジャイアンタイプのガキ大将であることが多く、特に学校から社会へと舞台が変わると、ナード(オタク)タイプと立場が逆転することも往々にしてある感じですしね。)

 

本来の語義的には「他人に使われる」イメージの強いtoolという言葉が、果たしてなぜ真逆とも思えるジョックくんを揶揄する表現になったのか、例によってSlang.net先生の説明を参考にさせていただきましょう。

https://slang.net/meaning/toolより


まず意味としては「Egotistical jerk」で、「egotistic」は「egoistic」と大変似ている単語ですが、もちろん意味も若干似ているものの、ここで使われていた方の前者は「自意識過剰で、『俺が世界の中心だ』と思っているような自己中」のことであり、一方、後者の「エゴイスティック」は、これは日本語でも聞くやつで、「自分の利益のみを追求する利己的な人」であり、どちらもまぁ自己中な鬱陶しいやつであることには変わらないんですけど(笑)、前者は尊大な感じが伴っており、一方で後者は別に自意識過剰・自信に溢れているというニュアンスは別になく、「何か自分のことばっかり考えててズルいヤツ」って感じだということですね。

そして後半の「jerk」は普通に「嫌なヤツ・馬鹿な男・不愉快な存在・クソ野郎」を意味するかなり強いネガティブな表現で(一応、jerk自体は女性に対しても使うことがあるようですが(ちょうど、日本語でも女性に対して「このヤロー!」と、本来男を意味する「野郎」を使うことがあるのと同じ感じでしょうか)、やっぱり男性を指すことの方が多い印象です)、両者を総合すると、Verywellの元記事と同じ説明になっている形だといえましょう。

 

問題の「このスラングがなぜそういう意味になったのか」についてですが、流石はSlang.net、ちゃんと説明してくれていましたね。


大変分かりやすい話だったので、丸っと翻訳引用させていただきましょう。

昔は、toolは他人が簡単に操作できる人(機械仕掛けの道具のような)を指す言葉としてより一般的に使われていた。しかし、toolが男性の解剖学的な特定の部分を指す代名詞になるにつれて、その解剖学的な部分のように振る舞う男性の代名詞にもなっていった。こうして、toolは、害悪のある、愚かな、威張り散らす、かつ/または無神経な男性を表す言葉として使われるようになったのである。


そう、toolという単語は、やっぱり英語でも元々は「簡単に操作できる人・利用されやすい人」を意味する表現だったようなんですけれども、言葉の響きから転じて、日本語の「ブツ」「イチモツ」みたいな感じでまさかの男性器の隠語みたいなものにもなり、さらにそれが転じて、「『行動原理が下半身』のような男」をバカにする表現へと進化していった、という形のようですね。


要は、画像付きのネットネタでおなじみ、「どしたん、話きこうか?^_^」と似たような感じで(まぁ「おなじみ」ではないかもしれないものの(笑)、ストレートすぎて画像も流石に直接の転載は省略しますが(笑)、元ネタのツイートはもう存在しないようですけど、こちらの記事(↓)で画像や元ネタ込みで紹介されていましたね)……

neetola.com
……まぁ個人的にこのイラストはクッソ面白いネタで初見時クソワロてまった記憶がありますけど、幸い自分はこのタイプではないのでご安心くださいと自己アピールもしておきたい所ですがそれはともかく、そんな感じの語源がこの「tool」にはあったということだったんですね。

 

まぁ下ネタはあんまり得意ではないのでちょっと避けた言い方をすると、日本語で言えばまさに「脳筋」ってのが、俗語っぽさ含めこの「tool」にピッタリの和訳表現だといえそうですね。

脳筋は、Weblio辞書にも項目が存在するぐらいにもう市民権を得た言葉でしたか!

www.weblio.jp
…まぁWeblio辞書はネットスラングにも強いオンライン辞書なので、流石に広辞苑とかにはまだ掲載されていないと思いますが(笑))


とはいえ、「tool」の方が「脳筋」よりもっと「不快なクズ野郎」要素が大きいような感じもあるかもしれませんね。

 

チャット型例文もチェックしておきましょう。

Whatever, don't listen to him. He's such a tool.

(何でもいいけどよ、あいつの言うことを聞いちゃあなんねぇぜ。あの男はとんだ脳筋アホ野郎でしかないからな。)

 

とにかく、脳筋マッチョマンを悪し様に言っている、強いネガティブな表現だという感じですね。


ついでなので、解説文にはもう一つ、類語として見慣れない「douchebag」なるスラングも紹介されていたので、そちらもおまけで触れておくといたしましょう。

https://slang.net/meaning/douchebagより

こちら「Douchebag」、発音から解説されている通り、あまり見慣れない、読み方すら微妙な語ですけど(「ドゥーシュバッグ」って感じですね)、意味は「An arrogant jerk」で、 「arrogant」は「傲慢な・横柄な」という意味ですから、これは「tool」と同義の表現ですね(まぁ類語として紹介されていたので当たり前ですが)。

 

こちら、ちゃんと由来(origin)も一段落を使って解説されていますけれども、そもそものこの単語の本来の意味が、「衛生的な目的で、人間の開口部を洗浄するための医療器具」ということで、かしこまって書かれているもののズバリいえばこれはいわゆる「浣腸」(ただ、この英単語的には、「女性の膣洗浄に使うノズル付きの洗浄器」を指すことの方が多い感じみたいですが)のことですから、そう聞けばもう説明を見るまでもなく、「浣腸野郎」で「カス野郎・クソ野郎」を意味するのは大変自然なものといえましょう。


こちらもチャット型例文をチェックしておくと…

That douchebag is always making up stuff about people.
(あの浣腸カス野郎、いつも他人のでっち上げたホラ話ばっかしてるよな。)

IKR? He's so mean.

(それな!あいつはマジでクズだよ。)


…酷い言われようの男ですけど(笑)、解説文にも「この語は非常に強烈な罵倒語であり、学校やその他フォーマルな場では使うことが禁じれられています。注意して使いましょう」みたいな注があった通り、toolより遥かにキツイ表現なので、使うのは注意……というかこんなものは使わない方が絶対にいい言葉ですね(笑)。

 

ということで、罵倒語で案外話が広がり、今回も1語で結構いい分量になりました。

とはいえここで人間関係スラングのセクションは無事に終わりを迎えた形で、次回からは新しいセクション……2語が組み合わさった「合成スラング」 に入っていくようです。


これは、「○○と××の組み合わせです、以上!」しか語ることがなさそうですし、マジで一瞬で終えられそうですね。


延々と続けるようなシリーズでもないですし、どんどん加速していきたい限りです。

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