前回の記事では、allという単語の、特に「オールする」でおなじみ「オールナイト」という語での用法について、いくつか参考記事を紹介させてもらっていました。
しかし、非常に奥が深いallなだけに、まだまだ興味深い情報のフォーラム記事が他にいくつかあったので、今回まずはそちらから触れていこうと思います。
まず、allは可算名詞の複数形も不可算名詞もどちらも行ける両刀使いという話から、複数の夜を意味して「全ての夜」を表したいなら「all nights」でしょう……などと前回書いていたのですが、StackExchange(SE)の方で、「えっ?」と思える情報を目にしました(↓)。
まずはこちらから参りましょう。
Soumya Thota(質問者):all nightとall the nightの違いは何?具体的にlast night(昨夜)のことを指している場合、「the」を使ってもいいのかな?
周りの人は、nightは単数形で、the nightは複数形で、nightは通常単数形なんだから、all the nightではなく、all nightとすべきって言うんだ。last night(昨夜)のことを話したい場合や、聞き手の人がどの夜のことを話しているのか理解している場合はどうすればよいのだろう。
(※回答1件とコメント1件がついていましたが、実際の表示どおり、質問文についていたコメントから順に参りましょう。)
(コメント)Kate Bunting(今年上位0.21%に位置している超優良回答者):
The nightは複数形ではないよ。All nightは「定型句」だけど、all the nightと言うのは可能で、through[out] the night(夜通し)、during the night(夜の間)などと言うね。all last night(昨夜ずっと)や all that night(その夜ずっと)と言うこともできるよ。
(回答)mango.tango:回答スコア1点
名詞 night は、文脈によって可算または不可算になり得るね。通常、複数形はやはりnightになるけど、いくつかの夜の集合を表現するときはnightsを使うこともできるよ。
- Dealing with sleepless nights is very stressful.
(何日もの眠れない夜と付き合うのはとてもストレスがたまる。)私見では、自分と聴衆(または自分が話している相手)の両方がどの夜のことを指しているのか分かっている場合、特定の夜のことを指しているのであれば、the nightでも問題ないと思うな。
- I'll never forget the night we met.
(僕らが出会った夜のことは決して忘れない。)
質問自体も気になる興味深い点だったんですけど、「えっ?」と思ったのは、mangoさんの回答にあった、「通常、複数形はやはりnightになる」ですね!
nightsというs付きの使い方があるのに、そんなことある?と思って調べてみたら、なんと確かに…!
こちら可愛いカバのアイコンが印象的な、言葉の用法に関する疑問を短くまとめてくれているwordhippoによると、「nightの複数形は何?」という質問に対して、
回答
名詞の night は、可算と不可算になることができます。
より一般的な、よりよく使われるような文脈では、複数形でもnightになります。
しかし、より具体的な文脈では、複数形はnightsにもなり得ます。例えば、various types of nights(様々な種類の夜)や、a collection of nights(いくつもの夜の集合体)について言及する場合などですね。
まさかの、nightsという書き方がありながら、しばしばnightという書き方で複数形を表すこともある(むしろそちらの方がより使われやすい)という、単複同形単語の一種だったとは…!
とはいえ、「all night」という使い方、いわゆる日本語での「オールナイト」と同じ「一晩中」を意味する場合であれば、これは複数のnightを指しているわけではなく、夜通しという意味ですから、これはやっぱり「all+不可算名詞のnight」って考えていいんじゃないかな、って気がしますね。
実際にどういう例で複数形でnightが使われるんだ…?と思ったら、Quoraの方のドンピシャな質問の回答に、例文を示してくれる方がいました。
こちらの記事ですね(↓)
「『night』の複数形は何?」という単純明快な質問で、「nightsに決まってるだろ。深く考えるな」という割と適当に思える回答が上の方にいくつか来ていましたけど、下の方に、いいねの数は0件だったものの、先ほど見ていた話をしっかり踏まえて回答してくれている方がいらっしゃいました。
そちらのみ引用させていただきましょう。
Minnie Suga:
文脈によるね。より一般的な使い方では、複数形は「night」になるよ。「owls wake at night(フクロウは夜目覚める)」ここでは night は複数形だね。なぜならば、複数の夜を指しているからさ。一方、より具体的な文脈では「nights」だね。「How many nights will you be staying?(何泊されますか?)」ここでは、具体的に質問するために使われているので、「nights」は複数形になってるよ。
言われてみれば、at nightは場合によっては複数の夜に言及している気もするものの、しかしこれも、単純に漠然と夜全般を指しているだけの、不可算のnightとも考えられるんとちゃいますのん?…って気も少ししてしまうのですが(笑)、とはいえ名詞の数の概念に精通しているネイティブや用語用法解説サイトさえそう言っているので、ネイティブの頭の中ではきっとそういうイメージがある(nightと書いても、実は複数の夜を意識していることが多い)ということなのでしょう。
これは大変面白いポイントですが、同時に「やっぱり自分らにはその辺の微妙な差異は分かんねぇや」とも思えてしまう点ではありますけど、逆にいえば、その考え方が許されるぐらいなら、「俺ん中では単数で書いてるけど、複数のもんをイメージしてンだけどね」という言い訳が出来そうだともいえるので、「そういうこともあるから、やっぱりあんまり細かい『s』のあるなしとかにこだわらず、好きなように言えばいいと思うよ」と考えてもよいというお墨付きをもらえたと、ポジティブに考えるのがいいのかもしれませんね。
そんなわけで複数形については正直なあなあで良さそう(…とハッキリとは書かれていませんが、「複数形のnight」を聞かれて単複同形のnightが浮かばないネイティブも大勢いるという時点で、割と適当というか微妙な差なのは間違いないと思えます)だったものの、一方、冠詞のあるなしもこれまた微妙すぎて悩ましい点ですね。
こちらに関しても、「ほ~んなるほど」と思えるコメントの付いているものがまたまたSEフォーラムにあったため(↓)、せっかくなので紹介させていただきましょう。
Benjol(質問者、上位4%に位置する優良回答者でもあり):「All the night」と「All night long」に違いはあるの?(質問スコア2点)
この2つの表現にニュアンスの違いはあるのかな。また、どちらを使った方が適切なのか(あるいは、より良く聞こえるのか)、例文はある?
(よく考えてみたら、自分自身はAll the nightとは言わないと思うんだけどね、単に、ある人に質問されたので。)
Captain Claptrap(上位32%に位置する優良回答者):回答スコア3点【ベストアンサー】
それらは主に、同じことを言う2つの異なる方法になっているね。
最初のフレーズの「the」は、「night」が単数であると理解されるから、意味がないものでしかないので、削除することが可能だよ。つまり、この2つのフレーズの本当の違いは、二番目のフレーズに「long」という単語が加わっていることだけといえるね。
二番目のフレーズの「long」は否定的な意味合いを含んでいるといえるかもしれないかな。一晩中騒ぐ赤ん坊の世話をしなければならなかった人は2番目のフレーズを使うかもしれないし、一方、よく休んで目覚めた人は単に最初のフレーズを使ってこう言うかもしないね:「I slept all the night.(一晩よく眠れた)」
(このベストアンサーには、コメントが3件ついていました。スコアが高いだけあって、これは大変良いコメントに思います。)
(この回答へのコメント1)Kosmonaut(上位0.29%に位置する超優良回答者):コメントスコア7点
この構文においてはlongは強調を意味しているのだと思う。なので、ネガティブなものはよりネガティブに、ポジティブなものはよりポジティブになるわけだね;例えば、「We partied all night long!(丸一晩中パーティーしてたよ!)」みたいに。
(コメント2)kchau:
Kosmonautさんに同意だね。
(コメント3)Captain Claptrap(この回答投稿者):
うん、それに関しては、Kosmoさんが正しいね。
(以下、その他の回答です。)
Marthaª(上位0.48%に位置する超優良回答者):回答スコア2点
厳密に言えば、その違いは、「all night long」はかなり一般的な表現で、「all the night」はどう贔屓目に見てもぎこちなく聞こえるというものになる。ここで、「all night long」と「all night」の違いについて疑問に思ったのなら、それはまた別の問題となるだろうね。(Flotsam N. Jetsamさん(※先ほどのkosmoさんの改名前のHNでしょうか)が示唆していたように、「long」は強調を加えるが、文法的には両フレーズは交換可能なものといえるよ。)
Hellion(上位0.22%に位置する超優良回答者):回答スコア2点
「All the night」は、一般的な言い回しではなく、詩的な尺度に合う感じで作られたようなものとして聞こえるね。
My boy is so much like the sun, so full of energy, so bright; and also like the sun, he is unconscious throughout all the night.
(我が息子はまさに太陽のようであり、エネルギーに満ち、輝いている;そしてまた太陽のように、夜すがら無我の境地にある。)
…と、正直冠詞のあるなしがポイントではなく、longという単語が添えられている際のイメージについてなるほどと思える点でしたが、元ネタ質問本題の、「all the night」という言い方にはぎこちなさ・ポエム的な響きがあるというのも面白いポイントですねぇ~。
もちろん、面白いだけで、なぜそう聞こえるのかはあまりにも謎ですが、まぁ日本語でも「何かもったいぶった言い方で面白い響きがあるね。理由なんて全くないけど、そう聞こえるんだ」というフレーズはいくらでもありそうというか、むしろハイコンテクストな言語の日本語の方がそういう例は断然多いように思えます。
(まぁ、断然多いと言いつつパッとは思い浮かびませんけど(笑)、例えばまさに回答最後にあった引用文の訳に使った「夜すがら」とか、「そんな言い方滅多にしないよ、小説の文でもあるまいし(笑)」と、別にそう思う明白な根拠というか客観的なデータなどないものの、ほとんどのネイティブ日本人の耳には何となくそう聞こえる、っていうのとちょうど同じパターンってやつですね。)
…と、そんなに長くはないフォーラム記事でしたが、結構な数を引っ張らせてもらったので、案外いい分量になりました。
続いてはいただいていたご質問にようやく再度触れていくところですけど、そちらはまた次回にさせていただきましょう。
今回の記事タイトルでは、nightが単複同形であった驚きから、「いくつもの夜は、同じ?」とか書いていたものの、具体的に「いくつもの夜」と言いたい時は、やっぱりnightsの方が普通に使われる印象なので、これは別にそこまでそうでもなかったかもしれませんが(笑)、ちょうどアイキャッチ画像のネタに使えそうなので、ロマンチックな夜っぽい夜景のいらすとをお借りさせていただきました。
やっぱり、例えば「一緒に過ごした夜のことを覚えていてね」なら、「Remember our night we spent together.」だと特定の一夜に思えてしまいますし、複数の「あの頃の夜全部を…」と言いたい場合、この文でも「Remember our nights we spent together.」の方がいい気はしてしまいますね…!