soがそう良くないなら、何を使えばいいの?

それでは途中状態だった接続詞の話の続きに戻っていきましょう。

 

前々回に出していた話は何気に本当に中途半端で、「そこまで強くない論理のつながりしかない文を『so』でつなげるのはおかしい」ということまでしか語っておらず、じゃあどうすりゃいいのさ、という話までは全く触れていませんでした。


改めておさらいしておくと、こちらはマーク・ピーターセンさんによる『実践 日本人の英語』からの拝借になりますが、例えば「I forgot my wallet today.」と「I have only 310 yen.」の2文をつなげて、「ごめんね。僕、今日、財布を忘れて310円しか持ってないんだ。」という意味の発言をしたい場合、どのような接続詞を用いればよいだろうか?という話ですね。


ここで「I'm sorry. I forgot my wallet today, so I have only 310 yen.」とsoでつなげると、因果関係の結びが強すぎて非論理的な文になってしまっているといえる……というのが前々回見ていた話でしたが、では他の単語はどうなのでしょうか。

 

本の中では候補となる接続詞の選択肢がいくつか挙がっていたんですけど、まぁ選択肢なしで普通に考えてみても出てくる単語は限られていると思うので順にそれっぽいのから見ていきますと、やはりこの話の元ネタであったbecauseなんかがまずパッと浮かんでくる気がします。

そして、理由の説明といえば一番おなじみなのがbecauseですが、そういえば学校の英語で、ほぼ同じ「~なので」という意味で使える単語として、sinceというのも習っていたことを思い出す方も大勢いらっしゃることでしょう。

このsinceは、基本的にbecauseと全く同じ使い方をできる語で、意味も非常に近しいわけですが、ちょうどマーク本でも余談として触れられていましたけれど、実は若干ニュアンスの違いもある語になっています。


せっかくなのでまずはそちらに触れて見ましょう。

こちらも、マークさんの大変分かりやすい説明を引用させていただきくのがベストですね。

 

簡単に言えば、

  • because:原因や理由を、新たな情報として持ち出すときに使う
  • since:聞き手[読み手]がもうすでにわかっているであろうと思われる前提として、原因や理由を持ち出すときに使う

という使い分けだ。たとえば、「僕は酒を飲んだから、運転してはいけない」と伝えたいとする。このとき、もし「酒を飲んだ」ということがすでに相手にわかっているだろうと思われる場合であれば、

  • Since I've been drinking, I shouldn't drive.

と言うが、わかっていないだろうと思われる場合には、

  • Because I've been drinking, I shouldn't drive.

と言う。因果関係の結びつきの度合いに加えて、こうした使い分けもあるので、覚えておくといい。

 

…これは非常に明快な使い分けですね!

基本的に理由説明の王道語はbecauseだと思えますが(恐らくどなたも同意いただけるように思います)、それは取りも直さず、何か理由を説明する際は、多くの場合で相手にとって新情報であることが多いから、というのがその理由といえるように思えます。

どっちがどっちだったかごっちゃになったら、「よく使いそうなbecauseが、よくありそうな『相手にとって未知の新情報を与える』ニュアンスのある語だったな」と思い出せばいいといえましょう。


とはいえしかし、結局の所これ(=相手が知っているのかどうか?)は発言者の勝手な思い込みに過ぎない=主観的な使い分けに過ぎないともいえますから、ネイティブなら無意識レベルでそう使い分けされているのかもしれないものの、我々非ネイティブにとっては、正直そこまで意識しなくてもいい点ではないかとも思います。

(「Because...」で何かの理由を説明して、仮にそれが相手にとって既知情報だったとしても、「おい、俺がそんなことも知らないと思っているのか!!」とぶち切れる人は絶対にいないのではないかと思われます(笑)。

 というかそもそも、実際そこまで徹底して使い分けられているようにも思えませんし、ネイティブでも「まぁ言われてみたら、そういう違いはうっすらあるかもね…?」ぐらいに思ってる人の方が圧倒的に多い印象ですから(英語に限らず日本語でも、厳密にいえばちゃんと使い分けのあるフレーズなのに、ごっちゃで使ってる人も普通に目立つ……というのはいくらでもあると思いますし、言語なんてそんなものでしょう)、この違いはさほど神経を尖らせるようなものでもない気がしますね。

 僕も実際、カジュアルなメールとかでは、「うーん、何かbecauseが続いてて不恰好だし、次はちょっとsinceに変えたろ」ぐらいの適当運用をすることもままありますけど、幸いこれまで「俺が無知だというのか?!」とか「そんな情報を相手が知っていること前提で話すな!!」などとぶち切れられたことは一度もない感じです(笑)。)

 

話が逸れましたが、ま、そういう微妙な差はあるものの、becauseとsinceは同じように使える表現であり(これもおさらいですが、「Because...」で始まった文は、絶対に後半にもう一つ別の文(=主語動詞を含む、完全文)が来ることが予想されるわけですけど、当然、sinceも全く同じですね)、例の財布の話であれば、

  • I'm sorry. Because I forgot my wallet today, I have only 310 yen.
  • I'm sorry. Since I forgot my wallet today, I have only 310 yen.

という文が考えられることになります。


意味はどちらも「すまん、今日財布を忘れたから、310円しか持ってないんだ」となるわけですけど、日本語なら特に全く問題ないように思えるこの文も、英語だと、マークさん判定ではなんと「不自然」と断じられてしまっていた形でした。


その理由は結局、こちらも英語は日本語よりもずっと論理のつながりを重視した言語であるというのがその理由であり、「so」ほどの強い論理関係(おさらい:soは、「当然そうなる」という、必然的な結果を導く緊密な因果関係を表現する接続詞でした)まではいかないものの、becauseもsinceもそれなりに強い因果関係を表す単語だからなんですね。


つまり、(こちらも本で紹介されていた話の抜粋ですが)例えば「圏外だったので、携帯が使えなかった」と言いたい場面なんかで「Because I was out of service-range, my cellphone was useless.」という英文をこさえたのであれば、「圏外であること」と「携帯が使えない」ことの間には強い因果関係があるため、これはbecauseを使うのに相応しい例文といえるわけですが、「財布を忘れた」ことと「310円ある」ということの間には、そこまで強い因果関係が存在しないんですね。

310円あるのはいわばたまたまであり、その時ポケットに入っていた所持金はもしかしたら400円だったかもしれないし510円だったかもしれないわけで、「財布を忘れた」→「310円もっている」という2つの事象をbecauseやsinceでつなぐのは、もちろん完全に間違いではないし意味は確実に伝わるものの、これは英語話者からしたらやや不自然に聞こえてしまう……というお話でした。

(もちろん、英語話者であっても、その辺のロジックを重視しない、恐らく結構な割合の人々にとっては、「別にそんなに違和感ないよ」と感じられる表現であるともいえそうなのは、恐らくそうじゃないかな、と思えますが…。)

 

じゃあいい加減、この場面はどう言えばいいのさ?…という話ですが、これは結局、「and」という味もへったくれもないクソ基礎単語でつなげばそれで十分(というか、本当にそれが一番完璧でベスト)といえる話だったのです!

『I'm sorry. I forgot my wallet today and I have only 310 yen.』


いわば、この台詞で述べたいことなんて、上の方で書いていた「財布を忘れ、310円しかない」というその程度の話ですから、そういう文にピタリなのは、英語では単に「and」に過ぎないのである、という話なわけですね。

他の例文には「(不自然)」「(非論理的)」という但し書きがついている中で、このandを用いた例文には「(完璧)」というお墨付きが与えられていた感じでした。


まさにこのお話は学びが大きく、論理関係がゆるゆる・ふわふわであることの多いのが日本語ですから、頭の中で考えた「○○だから(○○で)、××なんだ」という文をそのまま英語にもっていきたい場合、凝った接続詞は使わないで、「and」で十分であることが地味に極めて多いんですね。

僕もこのおかげで、「あぁ、知らなかったら絶対わざわざbecauseとかsoとかでつなげていたな」という英文で、きちんと最も適切と思われるandを使えている場面が、今でも実にしばしばあるように思えます。

 

…って、口語の場合だと、そうは言ってもめちゃんこ言いやすい「so」とかを何だかんだ(厳密に言えば論理関係がおかしい場面でも)使ってしまっている気もするものの、少なくとも形として残る書き言葉の方では努めて気をつけるようにしていまして、そうすることで論理的にも筋が通っていることになるし、そもそも文章なんてのは簡単な単語が多いほど読みやすくなるのも間違いありませんから、形としてもスッキリした英文を書く手助けになってくれている感じですね。

 

なお、本の方では、他に選択肢として「as」と「for」も挙げられていたのですが、これらは論理・因果関係の緊密度でいうと「since」「because」と全く同じと言って構わないようなんですけれども、こいつらは「語感がフォーマルすぎる」すなわち「文語的過ぎる」ということで、例の財布の英文ではその時点で論外と言える、というお話でした。


より詳しい説明はぜひ書籍をお手に取っていただきたい所ですが、そういえば書き言葉の接続詞について、こないだ書いていた通り僕は個人的にそちらの方がどちらかといえば専門に近く(ってまぁ専門ではないですけど、「普段使いでよく使う」って感じですね)、いくつか自分の気をつけていることを語れそうであるので、もう一回だけ補足ネタとして、次回はより書き言葉に重点を置いた英文レターでのつなぎ言葉を(またマーク本を大いに参考にさせていただきながら)まとめてみようかなと思います。


アイキャッチ画像は、あまりにもネタがなかったので、例文として挙げられていた財布を忘れた人のいらすと(正確には財布を落とした人ですが)を、苦肉の策でお借りするといたしましょう。

では、次回もうちょびっつだけ接続詞ネタに触れる予定です。

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村