つなぎ言葉の前後にコンマは必要?(becauseやand編)

引き続きいただいたコメントから話を広げさせてもらう形ですが、今回は、前回見ていた内容でも既に関連したことにちらほら触れていた、コンマについてですね。

前回よりさらに遡って、一連のつなぎ言葉シリーズの最初の方でいただいていたコメントになりますが、もちろん、送信者はおなじみアンさんになります。

いつも本当に、大変丁寧なメッセージを送っていただけまして、改めて心よりお礼申し上げたい限りです!

 

本題とは違うかもしれませんが、接続詞の前後にコンマが必要かどうかっていうのは前回から思っていて、文と文を繋ぐ場合でもandなんかだと必ずしも必要というわけでもなさそうですが、今回書かれていたhoweverは文中に差し込まれる場合でも前後に必ず必要という感じでしたよね?文と文を繋ぐ場合でもやっぱり前後に必要という感じなんでしょうか?

thereforeは、後にコンマがあるかないかで大げささが違うとかも書かれていましたね。あ、でも文中に差し込んでコンマなしで大げささをなくすことができるようにも書いてあったので…howeverも同じ感じで必ず必要というわけでもないんでしょうかね?

(どっちかにして!っていう感じですが笑)


becauseやsoなんかは、文頭でも文中でもコンマがついてるイメージはあまりないですが(howeverはついてるイメージでした)、あぁでも、soの後にはコンマがあるような気もしますねぇ…


例によって、例外が多いパターンなような気もしますし、ちょっと難しそうですね。


⇒ズバリ、接続詞や接続副詞といったつなぎ言葉の前後に来るコンマについて……こいつぁまた何ともややこしすぎるやつらですね!


一番分かりやすいのからいくと、becauseのような従属節を導く接続詞の場合、前置きならbecause節が終わって主節に行く前に必ずコンマを置く、逆に後置き(主節が先で、because節で後からその理由を説明)なら置いてはいけない、というのがありますね。

具体的に例文で示せば、明らかといえましょう。

  • Because my neighbor complained, I stopped singing loudly.
  • I stopped singing loudly because my neighbor complained.
    (隣人から苦情が来たので、大声で歌うのをやめた。)

…と、これは間違いなく分かりやすいルールだと思っていたのですが、こないだ参考にしていたマーク・ピーターセンさんの『実践 日本人の英語』で、まさかの例外が挙げられていました…!

僕自身さほど意識していなかったポイントだったのですが、言われてみれば「なるほどそうなんだ」と思える点でした。

せっかくなので、上で適当に作った例文を使って、そちらにも触れておこうと思います。


まず、後者の例文を否定形にしたとき、その意味がどうなるかをチェックしてみましょう。

  • I didn't stop singing loudly because my neighbor complained.

この文は、実は意味が二通り存在し、これだけではどちらの意味なのかがはっきり取れないんですね。

解釈の1つ目は、notがstopを否定する形で、「隣人に苦情を言われたから、大声で歌うのをやめなかった」という、まぁ意地になってあえて歌い続けるというクソ野郎的な感じ、一方2つ目は、notは少し離れたbecause節の部分を否定する形で、「大声で歌うのをやめたのは、隣人から苦情が来たからというわけではない」というものになり、まぁ意味的にはこちらの方が自然にも思えますけど(どちらも何か意地を張っている気もしますが(笑)、前者はあえて迷惑をかけ続けるというどうしようもない感じで、論理的に破綻してますしね(笑))、文法的にはどちらの解釈も可能で、英文自体も間違いではないとのことです。


そして、このままではどちらの意味と断言できず曖昧な文になるので、このようにそのままの形ではハッキリしない場合に限り、後置きbecauseの前にコンマを置いて意味を区切ることが許されている、ってことなんですね…!


つまり、コンマで区切って、notがかかっているのは離れたbecauseじゃありませんよ、ということを↓のように明示してやれば…

  • I didn't stop singing loudly, because my neighbor complained.

…これだと、「隣人に苦情を言われたので、大声で歌うのをやめなかった」という(しょうもない方の)意味で確定する形なわけですね(改めて、流れが酷すぎるので例文が良くなかったかもしれませんが(笑))。


では後者の「歌うのはやめたけど、それは苦情を言われたからじゃあねぇんだ」という意味を確定させたいならどうするかというと、これはもうごっそり構造を変えて、

  • I stopped singing loudly, but that was not because my neighbor complained.

…のように、元々複文だったものを、重文にして分かりやすくすればOKということでした。

(この「重文・複文」という文法用語も、高校で習わされて当時あんまり何のためにあるのかよく分からなかったのを思い出しましたが、この辺の話は高1の英文法最初に覚えさせられた記憶もあるものの、正直本当に、ある程度英語に慣れ親しんでからでないとまるで何の意味もないものな気がしますね…。

 いくつか話が広がりそうなので、また後ほど、関連した話に脱線しようと思います。)

 

ちなみにこの辺は案外ややこしいこともあり、実はこのマーク本では、改訂前の版では誤植があったようです。

Amazonのレビューで多くのレビュアーの方も指摘されていましたが、岩波新書の公式ページ(↓)でも、訂正PDFが掲載されていました。

www.iwanami.co.jp
僕の手持ちは改訂前ですが、初版の間違いとしては、上でいう重文に変更した例でも、「I didn't stop...」のままになってしまっていた、かつ日本語も「歌うのをやめなかった」のままになってしまっていた……という感じの複数のミスが存在していた形ですが(もちろん例文の内容は「歌」ではないですけどね)、これは流石に、母国語ではない日本語をご自身で執筆なさっているマークさんですから、複雑な構文の日本語で混乱してしまったのも仕方ないといえましょう(そして編集者は英語のプロではないので、それに気付くのも難しいですしね)。


ちなみに関係ないですが、上のリンクカードの紹介文、まさにこないだから引用させてもらっていた「310円の例文」が掲載されていますね(笑)。

やはりこれは面白い、この本のハイライト的な、大変役に立つネタだといえましょう。



という所で、実は例外はあったものの、それは「否定文とともに用いられて、意味がハッキリしないとき」のみのものであり、原則としてbecauseなんかは、「前置きなら自分の節が終わったらコンマで区切る・後置きならコンマは使わない」というのが分かりやすい基本ルールという感じですね。

 

一方話を少し進めて、他の接続詞、例えばandの方ですが、こちらは、地味に結構ややこしい感じです。

 

丸っと翻訳引用まではしないものの、最近話題のgrammarlyというクラウド文法チェックアプリのサイトに文法解説記事があったので、こちらをもとに話を進めてみるといたしましょう。

 

www.grammarly.com

まず、3つ以上のものを並列して並べる場合、「最後の項目までは全てコンマで並べる」というのも重要ルールですが(=「A, B, C, D and E」という形)、最後の項目の前のandの前にコンマを置くかどうか(つまり、「A, B, C, D and E」とするか、「A, B, C, D, and E」とするか)は、これは基本的に書く人の自由となっています。

この最後のコンマを「Oxford comma(オックスフォード・コンマ)」と呼びますが(オックスフォード大学出版がこのコンマを使用することを指針として定めていたことから)、もちろん同じ文章内でこの最後のコンマを使う/使わないは統一する必要があるものの(=ありなしをランダムにするのではなく、使うなら最後まで使う、使わないなら一切使わないようにする、ということ)、基本的にはどちらを採用するかは書く人の自由ということですね。


僕は、以前聞いていたGrammar Girlのポッドキャスト(↓)で、「シリアル(並列)コンマは、使った方が分かりやすくなるよね」みたいなことが言われていたこともあり、最後のコンマは好んで使う派ですが、案外使わない人も多い印象です。

 

www.quickanddirtytips.com

まぁこの辺の話も考え出すと色々面白い点ですが本題じゃないので置いておくとして、とりあえずいきなり「置いても置かなくてもどっちでもよい」という、緩いから便利とはいえる反面、ルールがないのでどっちにすりゃいいのか無駄に悩む…という形になっている、ってことですね。


本題の話に戻ると、最初のポイント・例文としては、以下はどちらもOKという感じですね。

(OK) The dog is young, well trained, and good natured.

(OK) The dog is young, well trained and good natured.

(その犬は若く、よく訓練されて、気立ても良い。)


ただし、このルール(というか、どっちでも良いという決まり)は3項目以上並列する場合限定で、2項目を並べるだけのときは、コンマをつけてはいけないことになっています。

( × ) The dog is well trained, and good natured.

(OK) The dog is well trained and good natured.

(その犬はよく訓練されており気立ても良い。)

 

上の話は形容詞の並列でしたが、名詞や動詞でも同じです。


( × ) Sam, and Sarah take excellent care of their pets.

(OK) Sam and Sarah take excellent care of their pets.

(サムとサラはペットの面倒を極めてよく見てくれる。)

 

( × ) The dog barks, and plays.

(OK) The dog barks and plays.

(その犬は吼え、遊びまわる。)

(※例によって、この文は単純な現在形なので、今まさに吼えたり遊んだりということを言っているわけではなく、普段よく吼えて遊ぶ犬だ、ってことを言っているだけという点に注意ですね。)

 

まとめると、小さな項目(「well trained」や「good natured」のように2語の形容詞もあるので、「1語」とはいえないのですが、まぁそういうほぼ単語レベルの小さな塊のことですね)を2つ並べる際は、コンマを使ってはいけません、ってことですね。

 

また一方、あえて「小さな項目」としていた通り、大きな塊、要は主語と動詞を含んだ文(文法用語的には節ですね)の場合は話が変わってきます。

主語と動詞を含んだ完全文、いわゆる独立節を並べる場合は、コンマで区切る必要が出てきます。


(OK) On Monday we’ll see the Eiffel Tower, and on Tuesday we’ll visit the Louvre.

(月曜日にはエッフェル塔を見て、火曜日にはルーブル美術館を見学しよう。)

 

しかし、主語がないなど不完全な形の文、いわば非独立節をつなぐ場合は、コンマをつけてはいけません

 

( × ) Sam tossed the ball, and watched the dog chase it.

(OK) Sam tossed the ball and watched the dog chase it.

(サムはボールを投げ、犬がそれを追いかけるのを見た。)

 

上の例では、文の主語Samが一致しているため、andで導く後半の節からは主語のSamが省略されているわけですが、こういう非独立節がつながる場合、コンマはつけないのが決まりってことですね。

 

ところがどっこい、ここが文法のクソな所で、独立節同士をつなげる場合でも、両者が極めて短い場合や緊密につながったものである場合、コンマを落としてもいいとされているようです。

 

(OK) Arthur cooked and Melvin cleaned.

(アーサーは料理をしてメルビンは掃除をした。)

 

上の例文にコンマを加えても間違いではないけれど、記事の中では「若干ぎこちない感じになってしまうかもしれませんね」と書かれていましたし、実際普通はここにコンマは入れないかな、って気がしますね(あえて日本語にも入れませんでしたが、まぁ日本語なら普通に「アーサーは料理し、メルビンは掃除した」でも問題ないというかそっちの方が見やすい気もしますけどね)。

 

ということで、例によってルールがあるかと思いきや例外があり、しかもその例外の基準も漠然としており「短いってどれぐらいからだよ!」と憤りを覚える点ではあるんですけど、そんなもんは書き手の気持ち次第に過ぎませんから、ここは逆にそういう曖昧さを利用してやろうとでも言いますか、基準なんてねぇから好きに書きゃいいんだよ、の精神でいくのがベストだと思えるポイントといえましょう。


andとコンマの使い分けはそんな所ですね。

まぁ一応、そこまで複雑ではないとはいえ、少なくともbecauseよりはめんどっちぃ使い分けがあるのがandといえる感じでしょうか。


先ほどの「重文・複文」うんぬんから、一つ脱線しようと思っていた話があったんですけど、またちょっと時間切れになってしまったので……というかそもそも他のつなぎ言葉のコンマの話にも進める予定だったんですが、becauseやandだけで案外いい分量になったので、続きはまた次回以降とさせていただこうと思います。

 

例によってアイキャッチ画像になりそうなネタも皆無だったので、適当に作った例文・「大声で歌う」に相応しい、風呂場で熱唱する人のイラストでもあればベストだったのですがなかったので、普通に熱唱する人のいらすとをお借りしましょう(笑)。

中身と全く関係ない画像はともかく、そんなわけで話の内容はまた次回へ続きます。

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