(ラスト)英作文で使える便利なつなぎ言葉のまとめ・注意点:then, as a result編

それではシリーズラストとして、前回の最後にもチラッと話に出していましたが、文と文を接続するつなぎ言葉でしばしば誤用もされてしまいがちなthenas a resultについて、見ていこうと思います。


これに関しては、改めてマーク・ピーターセンさんの説明が、一分の隙もないレベルで分かりやすさ・過不足ない網羅性ともに完璧だったので、またまたかなり長々と引用させていただいてしまう形で恐縮極まりないんですけれども、早速その素晴らしい解説をご紹介させていただきましょう。

一部例文等は省略したので、内容の全部はぜひとも、書籍の方をお手に取っていただければと思います。

今回は、『実践 日本人の英語』からの引用になります。

(やや中途半端な始まりですが、「以下の2つの文をつなぐには、どのような言葉を入れればよいであろうか?」という問題が、章の冒頭にあった形ですね。)

 

謎の"Then, ...."

次に、本章冒頭の問題にもどってみよう。2つの文をつないでいる日本語の「そこで」をどう英語にするか?ここにもまた、日本人が誤解しやすい問題がある。「そこで」の前後の英文をもう一度示せば、

  • The results of the first experiment were ambiguous.
    (最初の実験の結果は曖昧なものだった)
  • We decided to try raising the power-supply voltage.
    (我々は電源電圧を上げてみることにした)


実は、もともとの科学論文では、この2つの英文は下記のように書かれていた。

  • The results of the first experiment were ambiguous. Then, we decided to try raising the power-supply voltage.

「問題」に対する答えとして、このように、"Then, ...." を使って文をつないだ読者もおられたのではないだろうか。

ところが、この"Then, ...." は、英語圏の人間にとってはまったく意味不明なのである。特に、もし添削者が日本語の「そこで、……」という言葉がどう使われるかを知らない人だった場合には、文意を知るために「この "Then, ...." はまったく意味がわかりません。これは何を伝えようとしているのでしょうか?」と書き手に訊いてみるしかないのである。

then の3つの用法

まずは、thenの使い方を確認してみる。英語の数多くの重要な副詞の中でも、thenは特に頻繁に用いられるものであるが、その最も基本的な役割は次の3つだ。

(1)「その時」の意味を表す。
 I was living in Matsumoto then.(その時、私は松本に住んでいた)


(2)「次に」の意味を表す。
 First she had white wine, and then she ordered a red.(彼女は最初に白ワインを飲み、次に赤を注文した)


(3)「それなら、だったら」の意味を表す。
 Ayaka:But I don't want to lie to my mother.
 MarkThen you've no choice but to tell her the truth.
(彩香:でも、母には嘘をつきたくないの。
 マーク:だったら、本当のことを話すしかないじゃないか)


私がこれまで添削してきた大学生の英作文のなかでは、(1)と(2)の用法で正しく使われているthenに出会うことは多かったが、(3)の用法で正確に使われているthenは、なぜか見かけた覚えがない。

その代わりというわけではないだろうが、よくあるのが、"Then, ...." という意味不明の形(文頭に置かれたThenにコンマが付いている形)である。日本語の「そこで、……」に見られる「、」の感覚でコンマを付けているだけなのだろうが、英語にはそうした形で文頭にThenをおく用法はないのである。それなのに「文頭のコンマ付き」の形の "Then, ...." が、漠然と「そのために、……」や「それで、……」「そういうわけで、……」の意味を表すつもりで書かれているケースが実に多いようである。

「そこで、……」を表す英語は?

(※本題に入る前段の話、一部省略)

…しかし、冒頭で述べたように、書き手の意図は「そこで、……」であった。こうした漠然とした関係性を表現しつつ、「実験の結果が曖昧であることがわかった」ということと、「我々は電源電圧を上げてみる」ということを論理的につなぐためには、英語としては、

  • The results of the first experiment were ambiguous, and we decided to try raising the power-supply voltage.

のようにandという接続詞を使えば十分である。つまり、冒頭の「問題」の正解は、andということになる。

(※以下、補足説明の段落、省略)

「結果として」

「そこで」のつもりの "Then, ...." と同じく、誤った「ひとつ覚え」のもとに文の冒頭でよく使われる表現が、実は、もう1つある。それは、"As a result, ...." である。この表現がよほど記憶に残っているのか、反射的に用いたとしか思えない英文を見かけることが多い。

たとえば、ある学生が、「祖父はよく釣りに行き、以前は私も一緒に連れて行ってくれたものだ。その結果、私は釣りが好きだ」のつもりで、

  • My grandfather often goes fishing, and he used to take me out with him. As a result, I like fishing.

と書いたことがある。これは、その学生の観点からはいかにも「ロジカル」な表現だったのだろう。しかし、これはロジカルどころか、首をかしげざるをえない英文なのである。

学生のみならず、日本の科学者や工学研究者は特に、「結果」という単語が含まれる和文の英語版を作るときに、条件反射的に result を使う傾向が強い。確かに、日本語の「結果」という名詞の意味は、基本的に英語の名詞のresult(s)の意味とほとんど変わらないので、a result か the result か results the results かという「冠詞と数」の用法さえ正確であれば、resultという語彙選択自体には、多くの場合に問題はない。

ところが、たとえば「交渉の結果、和解を取り付けた」や「結果として、早期退職を考えている教員が増えてきたようである」などのように、日本語の「結果」という言葉は、接続助詞的・副詞的に使われることもある。そういう場合に、それが必ずしもresultを使って「英語に置き換える」ことができるとは限らないのである。とりわけ、文頭の As a result, .... を使うと、同じ意味が表現できないケースが多い。

どんな意味になるか?

1つ例を考えてみよう。「次に、エンジンを小さくした。その結果、燃料消費率は19.5 km/lになった」のつもりで、

  • Next, we reduced the size of the engine. As a result, fuel consumption became 19.5 km/l.

と書いた場合、この英文は、残念ながら次のような意味になってしまう。「次に、エンジンを小さくした。それゆえ順当なことに当然の結果として)燃費は19.5 km/lになった」。

これは書き手の意図とは異なっている。というのも、これでは「エンジンを小さくしたことの当然の結果として、燃費は18 km/lでも20.5 km/lでもなく、他ならぬ19.5 km/lになった」という「強い因果関係」を表してしまうからである。


ここで思い出してほしいのが、前章の「接続詞、力くらべ」で使った例文である。「財布を忘れて、310円しか持っていない」というときに、たとえばbecauseのような「強い因果関係」を表す接続詞を用いると不自然だと述べた。持っていたお金が400円や510円ではなく、310円ジャストだったのはたまたまであって、「財布を忘れた」ということと「310円」という金額には、そこまで「強い因果関係」がないからである。上の例文でも同様に、エンジンを小さくした結果、19.5 km/lという具体的な値になったのは、ある種の「たまたま」であった。ところが、"As a result, ...." と書くと、まるで「エンジンを小さくすれば、我々の狙っている19.5 km/lジャストになるはずだ」と思って、そして、「そうしてみると、やはり、当然のことながら、燃費は19.5 km/lになった」といったような意味になってしまうのである。こんなときは、

(※代替案の例文省略……マークさんに楯突くわけではないですが(笑)、ここで書かれていた案よりも、普通にandでつなぐのが一番な気もします。マークさんがどういう例文を用意していたか気になる方は、書籍をお手に取ってみてください。)


と書き直せば、問題がなくなる。


「従って」「順当なことに」

この文の書き手はおそらく、深く考えてこの表現を選んだわけではなく、「結果」といえばresultを思いつき→resultを含んで文頭にくる表現としては "As a result" が記憶にあり→日本語の「結果として、……」に何となく通じる表現に見えるので→そのまま使った、というだけのことだろう。

ところが、文頭にくる英語の "As a result, ...." は、たとえば、

(※例文省略)

のように、「前に述べた事柄の順当な結果として後の事柄が生じることを示す」役割を果たす。つまり、「従って」「それゆえに」「順当なことに」というのがふさわしい言い方なのである。前に述べた事柄から考えれば、「当然こうなる」あるいは「必然の結果」というような場合にしか、"As a result, ...." は使わないのだ。

そのことを意識すれば、「祖父はよく釣りに行き、以前は私も一緒に連れて行ってくれたものだ。その結果、私は釣りが好きだ」のつもりで、

  • My grandfather often goes fishing, and he used to take me out with him. As a result, I like fishing.

と書くのはいただけないことがわかるだろう。以前、祖父に釣りに連れて行かれたことがあるからといって、「当然私は今釣りが好きだ」という論理はどこにもないからである。

(※言い換えの例文、省略)

のような言い方に変えれば問題はなくなるのだが、もっと簡単な書き方では、

  • My grandfather often goes fishing, and he used to take me out with him, and I came to like fishing.

のように、andを使って1文にまとめる方法もある。

(※以下、まとめの文、省略)

 

…後半の方から触れてみると、「as a result」というのは、結局の所「Therefore」「Consequently」と同じ「強い因果関係」グループに属するフレーズだということで、あんまり適当に使っちゃ論理関係がおかしくなるのでダメよ、ってことなわけですね。

改めて、日本語で「その結果…」「結果的に…」と言いたい多くの場合、実は「and」でつなぐので十分だという場面がとても多いといえましょう。


一方、前半の「then」ですが、これは、こうして分かりやすい説明で学ぶまでは、まさに僕自身、解説文であったような「そこで、…」ということを言いたい場面で、文冒頭の「Then, ...」という形を100%確実に使ってましたね(笑)。

もちろんthenが(前の文を受けて)文の冒頭に来ることもあるものの、「Why?」「Because」の場合と同様、これは特定の場面でしか使われないものであり、上記の(3)で示されていたように(主に会話文で、相手が言った話を受けて)「ほんなら…」という使い方しかできないという感じであり、これは「そこで、…」とは(若干似てる気がするものの)間違いなく違う用法なので注意が必要なポイントといえましょう。

こちらも結局の所、「and」という語でつなぐ程度で十分なことが多いことを、マークさんがバッチリ示してくれていました。


本当に上記引用の解説が完璧すぎてこれ以上述べることもないわけですが、英作文をする際、もちろん会話なら正直誰も気にしないレベルとすらいえるわけですけれども…

(正直、自分含め、そんな論理関係を気にしなきゃいけないほど上手な英語を話せていないことがほとんどなので、相手からしたら「何言ってるのか、めっちゃ気をつけて・想像力を働かせて聞かないとよぉ分からん」と思しか思えないという、「それ以前の問題」ってやつですね(笑))

…とはいえしかし、しっかりフォーマルで論理的な筋道だった文を示す必要のある書き言葉の場合は、(幸い話し言葉と違って出力後に推敲する時間はあるわけですし)しっかりと気をつけた方がいいポイントいうことですね。


また、これまでの大まかな結論としては、「日本語の緩いつなぎ言葉であれば、andで十分なことがほとんど」というものだったわけですが、しかしそれ以上に、基本的に日本語のつなぎ言葉はそんなに大した意味を持たない、単なる枕詞に過ぎないことも多いため、(こないだも引用していましたけど)マークさんが「多くの場合、添削後、日本人の書いたこういった接続詞が生き残ることはないのですが…」と書いていた通り、そもそも無駄な接続詞はつけなくても良いというのが、特に我々日本語話者が母国語をもとに考えて作った英文では結構頻繁に言える話ではないかな、とも思えます。

接続詞など使わずに、単純に文を並べるだけで全然問題ないというのは、実は英語に限らず日本語でも案外そうなので、「あえて何もつけない勇気」は案外大切で、そこに気をつけるようにすると特に論理的な文章を書く際は全体がグッとしまってくれることも多い、オススメ気を付けポイントといえるかもしれません。

(なお、このブログでは、無駄にまどろっこしいつなぎ言葉や、厳密性より親しみやすさ重視の口語的な冗長表現なんかを多用しているので、「お前が言うな」的なやや信頼性に欠けるオススメポイントになってる感じもしてしまいますが(笑)、あくまで、プロフェッショナルな文章を書く際に、意識すると良さ気な点、って感じですね。)

 

そんなわけで、一連の「英作文で使える便利なつなぎ言葉」シリーズでした。

正直、これで全てでは全くもってないですし、マーク本のまだ引用していない該当の章の中ですら、「これは面白いポイントだね!」と思える点はまだまだあったのですが、そちらは書籍をお手に取っていただいた方のために残しておく、あるいはまたの機会があればちょいちょい触れていこうかな、という感じにしておきましょう。

 

実際、これまた前回の最後にちょっと書いていた話ですけど、ちょうど関連ネタにもいくつかご質問をいただいており、次回以降またそれを見ていくことでちょっとずつ補足ネタを広げていこうかな、とも思っています。

今回はその中から一つだけ、thenについて触れられていた部分を取り上げさせていただきましょう。


こちらは、because/sinseやandについて書いていたこちらの記事(→soがそう良くないなら、何を使えばいいの?)にいただいていたコメントですね(特に記事の内容とは直接関係ない、脱線コメントではありますが)。

(もちろん今回も、おなじみのアンさんよりいただいたメッセージです。毎度非常に面白い視点からのコメント、重ね重ね、心よりのお礼を申し上げます。)

 

職場に帰国子女の先輩がいて、発音はちょっと聞き取りにくくてネイティブって感じでも全くないんですけど、普通にペラペラで、ネイティブの人との会話を聞いていると、わりとずっと「ダ…」って言ってるんですよね。

彼の口癖だと思いますが、聞いてみることもできず…笑


私の勝手な予想では、「then」じゃないかと思うんですけど…もしくは、「and」のdかな??とか思ったりも…

何だと思います?笑

thenも接続詞でよく使われますよね?

 

⇒そんなわけで、まぁマークさんも「特に頻繁に用いられる副詞」と書かれてはいましたが、日本語の「そんでさぁ…」的な使われ方は日本人にありがちな誤解なだけで全く存在しないため(改めて、thenには接続詞としての用法は一切なく、品詞としては副詞のみですね。まぁ、副詞ってのはぶっちゃけ接続詞っぽい使われ方もされるので、そんな文法の区分けは全く意味ないものにも個人的には思えますが…)、この「then」は、もちろん結構使われはするものの、そんなに口癖のごとく耳に入ってくるレベルではないんじゃないかなぁ、と思います。


まぁ、もちろんその方の会話を聞いてみないと分からないですけれども、これはやっぱり、「that」じゃないかな、って気がしますね。

thatは当然、中1の一番最初(今は小学校?)で習う「あの」的な代名詞に始まり、関係代名詞・接続詞・関係副詞・限定詞など、多種多様な使われ方がされるもので、毎文出てくるといっても過言ではないレベル、かつ人によっては「ダァ」みたいに言うことも大いにあるので、まぁ多分thatで「ダァーッ」ではないかな、と思います。

あとはまぁ、「the」も「ダ」という感じで言う人もいますが、まぁそれ込みで、濁った「th」の発音を「ダ」っぽく言う癖のある方なのかもしれませんね。

 

という感じで、また次回からはいただいたご質問に触れていこうと思います。

アイキャッチ画像は……「1, 2, 3…ダァーッ!」的なイラストでもないかなと思いましたが流石になかったので(笑)、またマーク本にあった例文から、釣りのいらすとをお借りするといたしましょう。

あの例文は、正直、言われてみないとロジックの違和感にはやっぱり気付きづらいものといえますね。

(正直、「おじいちゃんと一緒に釣りによく行った」という思い出は、「だから当然、僕は釣りが好きになった」という流れでもそこまでおかしくなくない…?と思えるものの、まぁそうならないこともあり得るのは間違いない話で、ネイティブの目からはあの文は完全におかしさが勝ってしまう、ってことですね。)

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村